世の中には半導体を使用する機器があふれており、文化や科学の発展には欠かせないものとなっています。半導体業界への転職を検討する際は、業界事情やトレンド、ビジネスモデルなどを理解し、自身の適性を考えることが大切です。この記事では半導体業界をテーマに、動向やトレンド、ビジネスモデル、職種などについて詳しく解説します。
半導体業界とは
半導体業界とは、半導体の開発や設計、販売などを行う業界のことです。半導体はスマートフォンやパソコン、テレビ、冷蔵庫、ロボットなどさまざまな機器に使用されており、技術の発展に大きな影響を与えてきました。
半導体業界の動向やトレンドについて、詳しくみていきましょう。
動向
半導体業界は依然として発展し続けており、さまざまな機器の進化に影響を与えています。近年は半導体不足の影響で自動車やゲーム機の製造に問題が生じていました。半導体は精密機器であり、製造には複雑で高度な技術を必要とするため、異業種が簡単に参入できる業界ではありません。
そのため、半導体の主要メーカーのシェアは大きく変化していない状況です。半導体は、遠隔診療や自動運転、AIのディープラーニング、高速通信の5Gなどに活用されています。
トレンド
2007年までは半導体の高い需要によって拡大を続けてきましたが、2008年以降は消費不況の影響で半導体を使用した機器の販売数が伸び悩み、業績が悪化した企業が続出しました。2012年までは不況が続きましたが、2013年にはスマートフォンやIoTの需要増加によって業績が回復傾向となっています。
また、2017~2018年にかけてはさらにスマートフォンやIoTの需要増加がみられ、2023年時点まで堅調に推移しています。
将来性
半導体は身の回りの機器の多くに使用されており、今後も一定の需要が見込まれます。しかし半導体を使用する機器の需要は変動するため、今後も業績が悪化する時期が到来するでしょう。
しかしながら近年は、自動運転や遠隔医療、仮想空間技術、高速通信の5Gといった新技術が登場しているため、しばらくは堅調に推移することが予想されます。
半導体業界のビジネスモデル
半導体業界には「半導体メーカー」「半導体製造装置メーカー」「半導体商社」があります。ここからはそれぞれの特徴やビジネスモデルについて詳しくみていきましょう。
半導体メーカー
半導体メーカーとは、半導体を製造する企業のことです。原料のケイ素を円柱状にしてスライスした「ウエハー」を作り、それを装置で削り出して半導体を製造します。半導体業界は、半導体メーカーが半導体製造装置メーカーから購入した機器を用いて半導体を製造し、それを半導体商社が買い付けて電子部品・精密機器メーカーに販売する流れです。
そのため、半導体不足になると半導体製造装置メーカーと半導体商社の業績が悪化します。
半導体製造装置メーカー
半導体製造装置メーカーとは、半導体のもととなるウエハーを削り出すための装置を製造する企業のことです。ウエハーを削り出す機械は肉眼では見えないほどに細かな設計のため、一般の製造業者では製造できません。
小さなチリが入ることも許されないため、特殊な水や薬品で洗浄する必要があります。また、ウエハーに通電させないための膜を作る装置やカイロを書く露光装置なども製造しています。
半導体商社
半導体商社とは、半導体を買い付けて電子部品・精密機器メーカーなどに販売する企業です。半導体には高度な技術が用いられているうえに、使用する機器に応じて使い分ける必要があります。半導体商社は、メーカーが求める信頼性が高い半導体を提案します。
半導体業界の職種
半導体業界の職種には、半導体の設計や評価・検証、販売を担当する営業などがあります。それぞれの業務内容や役割などについて詳しくみていきましょう。
設計・研究開発
半導体の研究開発や基盤技術の確立などを担当します。材料の選定から製造方法、組み込む基盤などを考慮して設計しなければなりません。半導体業界を支える特に重要な職種であり、最先端技術を研究できる点に大きな魅力を感じる方もいるでしょう。
評価・検証・改善策の立案
半導体を搭載した機器が正常に動くかどうかや、性能などを評価します。不具合や不良品があった場合は原因を突き止めて、今後に活かす必要があります。また、メーカーの要望どおりの半導体になっているかを確認することも業務の1つです。
営業
国内外の企業へ、顧客のニーズに沿った半導体を提案する職種です。顧客ニーズの把握や受注角度の測定、販売後のアフターフォロー、クライアントと自社をつなぐ窓口など、さまざまな業務を行います。
資材の調達
半導体や半導体製造装置の素材や部品、設計に必要なツールなどを調達する職種です。設計通りの性能を発揮するために、品質に問題がない素材や部品を調達する必要があります。必要に応じて調達のコストを抑えるために新たな取引先を探すことも業務の1つです。
半導体が支えている技術・機能
半導体は、スマートフォンやパソコン、自動車など、身の回りのさまざまな機器に使用されています。半導体が支えている技術・機能について詳しくみていきましょう。
通信機器
インターネットに接続するためのモデムやメモリなどには、半導体が使用されています。スマートフォンやパソコン、インターネット接続が可能な冷蔵庫や電子レンジ、ルーターなど多くの製品において、半導体は不可欠な部品です。インターネットは現代社会において欠かせない機能・技術のため、それを支える半導体の重要性は非常に高いと言えるでしょう。
映像機器
高精細映像の情報処理に、半導体が用いられています。4Kや8Kなど、従来の画質と比べて格段に高精細な映像を再現するには、より小型化した半導体が必要です。テレビの画質は今後も向上することが見込まれているため、半導体は欠かせないものであり続けるでしょう。
先進運転技術
自動運転に必要なカメラやレーダーなどに、半導体技術を用いた電子部品が必要です。自動運転は、車の免許がなくとも車を利用できるようになる可能性がある画期的な技術であり、日本でも研究開発が進められています。
仮想空間技術
仮想空間技術とは、AR(Augmented Reality)やVR(Virtual Reality)などを作る技術のことです。現実世界に仮想世界を重ねる「AR」、仮想世界を作り出す「VR」は、すでにゲームや教育、エンターテインメントなどの分野で用いられています。この仮想空間技術に使用する高性能カメラには半導体が欠かせません。
遠隔医療
遠隔医療とは、医師が患者から離れた場所で機器を操作して外科手術を行うことやオンライン会議ツールを用いて診療することなどの総称です。医師の業務効率化や通院の負担軽減などが期待されています。この遠隔医療を行うために使用するウェアラブル端末やパソコンなどにも半導体が用いられています。
ディープラーニング
ディープラーニングとは、AI(人工知能)が大量のデータから自動的に学習することです。膨大な計算量が必要となるため、特別な大容量計算半導体を使用します。大きな電力が必要なため、省電力化が課題となっています。
まとめ
半導体業界は一時的に業績が悪化したものの、身の回りのさまざまな機器に用いられているため、今後も発展し続けることが見込まれています。職種は半導体の素材の調達や半導体の設計・評価・製造・販売などさまざまです。今回、解説した内容を参考に、半導体業界について理解を深めましょう。