石油から食料品まで、さまざまなモノを取引する商社。メーカーとよく混同されるほか、商社といっても専門商社と総合商社があるため実態が掴みづらいでしょう。今回は商社について、種類や職種、平均年収など含めて解説します。なお記事後半では、商社に転職を成功させるための3つのポイントも紹介します。
商社とは
商社とは石油や自動車、食料品まで、世の中のあらゆるものを取引する会社のことです。自社で製品を作るのではなく、他の企業から製品を調達して販売します。
商社とメーカーの違い
商社の定義とよく混同される言葉として、メーカーが挙げられます。そもそもメーカーとは食品や自動車、家電など身の回りのさまざまな製品を生産する企業のことです。
商社とメーカーの違いは、自社で製品を作っているかどうかです。先述したように商社は他の企業から製品を調達して流通させるのに対し、メーカーはサービスやモノを生産・販売します。
グループ会社がモノを製造する商社が存在する他、商社機能を備えているメーカー企業もあることが原因で、メーカーと商社は混同されがちです。
商社の種類
商社は大きく、専門商社と総合商社の2種類に分けられます。
専門商社は特定の製品や企業に対して、専門性を有しているのが特徴です。専門分野の経験や知識を活かして、仕入れ先と取引先を仲介する他、製品を流通させます。
これに対して総合商社は文字通り、幅広いサービスや製品を扱う商社のことです。
総合商社は三菱商事や三井物産、伊藤忠商事や住友商事などが、専門商社は株式会社メタルワンや伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社、阪和興業株式会社などが該当します。
総合商社の方が知名度は高いものの、専門商社にはより専門分野に関する知識が習得できるといったメリットがあります。
商社の平均年収
マイナビエージェントが2020年に公開した調査によると、商社全体の平均年収は384万円です。20〜24歳の平均年収は294万円ですが、35〜39歳になると447万円までアップします。業種別の平均年収ランキングでは、電子部品/半導体が460万円とトップで、その後は産業用装置やエネルギーと続きます。
引用:マイナビエージェント 業種別平均年収ランキング【2020年版】
なお総合商社はほとんどの企業が平均年収1,000万を超え、専門商社も伊藤忠エネクスやミツウロコグループHDなどを中心に平均年収800万円を超えています。商社の中でもトップの企業に転職すれば、年収1,000万円も夢ではありません。
なお総合商社など、一部商社の年収が比較的高い理由には以下の3つが挙げられます。
- 在庫を持たないため
- 繁忙期が忙しく、他企業よりもボーナスが高いため
- 海外赴任の場合は手当が支給されるため
商社の職種と仕事内容
商社では主に営業事務や営業、事業計画と呼ばれる職種が活躍しています。本章ではこの3つの職種について、仕事内容を含めながら解説します。
営業
商社と聞いて、最もイメージしやすい職種が企業同士の仲介役として活躍する「営業」です。商社営業の具体的な仕事内容は、専門商社か総合商社かによって異なります。
専門商社の営業職は、新規顧客の開拓だけでなく仕入れ先の確保や、次のトレンドを見つけるためのマーケット分析まで行います。これに対して総合商社の営業職は、新規顧客の獲得や仕入れ先の確保はもちろん、商材のリサーチを行いながら今後売れそうなサービスの開拓まで担当するのが特徴です。
営業といえば、新規顧客の開拓をイメージする方が多いでしょう。しかし、仕入れ先の確保やマーケットリサーチも商社の営業職の重要な業務です。
業務が忙しく休みが取りにくい場合もありますが、さまざまな業務を体験できることや実績がそのまま評価される点は、営業職として働く魅力といえるでしょう。
営業事務
営業事務は営業のサポートを行う職種のことを指します。書類作成や在庫・顧客管理、来客対応などを通じて、営業職がより多くのサービスを売れるようなサポートが主な業務です。
ほとんどの場合、営業事務が作成する書類をもとに営業職は商品やサービスを宣伝します。そのため営業事務がいなければ、営業職は活躍できないといっても過言ではないでしょう。
営業事務は未経験歓迎の求人も多い他、営業感覚が身に付きキャリアパスを描きやすいなど、さまざまなメリットがあります。
事業企画
事業企画は事業立ち上げのための企画を立案し、実務に落とし込む職種です。
具体的には「どんな企業と取引をし、どの分野に注力するのか」を立案し、人事や予算を調整しながら、具体的な戦略まで落とし込んでいきます。
上記の通りマーケティングやコンサルティングなど、幅広い業務に携われる点が事業企画の魅力です。
商社に転職する際に必要なスキル
一般的に商社に転職するためには、以下のスキルが必要だといわれています。
- 語学力
- 枠にとらわれない考え方ができる柔軟性
- コミュニケーション能力
- 体力
- 思考力
商社に転職すると、取引のために日本だけでなく世界中を飛び回ることもあります。そのため、どのシーンでも活躍できるよう体力や語学力、コミュニケーション能力は特に重要です。
商社への転職を成功させるには?
平均年収が高いため、比較的転職を希望する方の多い商社。商社への転職を成功させるためには、本章で紹介する3つのポイントを押さえる必要があります。
各商社企業への理解を深める
業界についてだけでなく、各商社企業への理解を深めることも重要です。特に三井物産・三菱商事・伊藤忠商事・住友商事・丸紅は5大商社と呼ばれ、比較されることも多い人気商社です。
5大商社の面接で「他にも魅力的な商社はあるが、なぜ弊社を志望したのですか?」と他の商社と比較するような質問を投げかけられた場合、各商社企業を理解しておかなければうまく回答することはできません。
なお各商社企業の理解を深める際は、以下の4つの点を重点的に確認すると違いを整理しやすいでしょう。
- 強み
- 社風
- 業績
- 今後の動向
英語力を伸ばす
職種によっては海外との取引も多いため、ある程度の英語力が求められます。総合商社の場合は、最低でもTOEIC730点以上が獲得できる英語力が必要だといわれています。これに対して専門商社の場合は日常会話に加えて、専門用語もある程度話せる英語力が必要です。
また英語の他にもう1言語話せるようになっておけば、転職を有利に進められるでしょう。具体的には中国語やポルトガル語、フランス語は重宝されるといわれています。
なお商社によっては英語力よりもコミュニケーション能力や論理的思考、柔軟な考え方などを重視する場合もあります。各企業で求められる能力は、企業研究を行うことで明らかになるでしょう。
転職エージェントを活用する
商社への転職を成功させるためには、転職エージェントの利用も有効な手段です。そもそも転職エージェントは、自分に合った企業の紹介や面接指導、履歴書添削などを通して、転職活動を多面的にサポートしてくれます。
またエージェントによっては、年収交渉を代行してくれることもあります。企業の給与体系や採用動向に詳しいキャリアアドバイザーが担当してくれるため、自身で交渉するよりも成功確率はアップするでしょう。
まとめ
商社の主な職種に営業や営業事務、事業計画などが挙げられ、やりがいや仕事内容はそれぞれ異なります。
平均年収が高いこともあり、志望する方が多い商社。転職を成功させるためには各企業への理解を深めながら、英語力やコミュニケーション能力などを高めていく必要があります。
なお転職に関して不安や疑問があれば、企業の紹介や転職に関して相談できる転職エージェントを活用してもよいでしょう。