エンタープライズ向けフィールドセールスへ、転職のリアル【元大手SaaSセールス責任者コンサルタントによる職種解説付き】

2025年10月24日

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Izul広報チーム

Izul広報チーム

目次

エンタープライズ向けフィールドセールスは、単なる営業職ではありません。大企業を相手に、複雑な意思決定プロセスを動かし、経営層から現場まで多様なステークホルダーを巻き込みながら、課題解決型の提案を行う、まさに「企業の成長に直結する仕事」です。

しかしその分、転職のハードルは高く、単純な営業経験だけでは通用しません。必要なのは「潜在課題を発見し、需要を喚起する力」と「多層的な合意形成を進める力」です。案件の規模も複雑さも大きく、商談は半年から1年以上に及ぶことも珍しくありません。

そこで今回は、自身も大手SaaSでセールス責任者としての経験を持ちながら、求職者のフィールドセールスへの支援実績も豊富なIzulのコンサルタント天野が、この職種の特徴や求められるスキル、転職成功のポイントを解説していきます。後半パートでは、天野が支援して実際にこの職種へ転職した方へのインタビューを通じて、よりリアルな転職者の声もお届けします。

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エンタープライズ向けのフィールドセールスで必要なスキル

特に力を発揮する必要があるのは「潜在課題の発見と需要喚起」、そして「複雑な意思決定プロセスのハンドリング」の2点です。多くの場合、エンタープライズ顧客はすでに自社のシステムや仕組みを整えており、「現状のままでも業務は回っている」状態にあります。そのため、単に製品やサービスを説明しても購買には直結しにくいのが現実です。

ここで重要になるのが、顧客の業務フローや戦略課題を深掘りし、本人たちも気づいていない非効率や機会損失を具体的に示すことです。「このままではリスクがある」「改善の余地がある」と気づいてもらうことで、初めて需要が顕在化していきます。

天野

その需要を経営層・現場・IT部門など多様なステークホルダーに合わせてカスタマイズしながら提案し、合意形成を進めることが求められます。単に商品を販売するのではなく、顧客の成長戦略や組織課題と結びつけ、「なぜ今この投資が必要なのか」を納得感をもって伝える力こそが、エンタープライズフィールドセールスにおいて最も重要なスキルです。

職種ならではの難しさ

エンタープライズセールスの難しさは、商談のスケールと複雑さにあります。対象となるのは主に大企業であり、1件あたりの契約規模が大きく、関係者も多岐にわたります。経営層、現場部門、IT、法務、購買など、意思決定に関わる人が多いため、それぞれの立場や優先事項を理解し、合意を形成していく必要があります。誰が本当の決裁権を持っているのか、どの部門が最も影響力を持つのかを見極めることが難しく、時には「社内政治」への理解も欠かせません。そのため営業サイクルは長期化し、半年から1年以上に及ぶことも少なくありません。進捗も見えにくく、途中で予算や方針が変わることもあるため、粘り強さと柔軟な対応力が求められます。

また、提案内容も単なる製品の販売ではなく、顧客の業務プロセスや課題に深く踏み込み、最適なソリューションを設計することが求められます。導入後の運用や成果まで視野に入れた“伴走型”の営業スタイルが必要であり、技術的知識や業界理解、社内外を巻き込むプロジェクトマネジメント力が不可欠です。

天野

さらに、大企業ほどリスクに敏感であるため、提案の根拠や実績、信頼性が厳しく問われます。小さなミスでも信用を失う恐れがあり、常に高い品質と誠実な対応が求められます。

一方で、一度信頼を得て契約に至ると、長期的なパートナーシップにつながる可能性が高く、企業の成長や変革に貢献できるやりがいも大きい仕事です。難しさの裏には、顧客の本質的な課題を解決し、組織全体を動かすダイナミズムがあります。だからこそ、エンタープライズセールスは単なる営業職ではなく、戦略的かつ総合的なビジネスプロデューサーとしての力が問われる職種だと感じています。

職種ならではの面白さ・やりがい

エンタープライズセールス職ならではの面白さややりがいは、「企業変革の最前線に立てること」と「信頼を軸に長期的な価値を生み出せること」にあります。大企業を相手にする営業は、単に商品を売るのではなく、顧客のビジネス課題を深く理解し、組織全体の変化を促すような提案を行います。自分が関わったプロジェクトが企業の仕組みや働き方を変えたり、数百・数千人規模の社員に影響を与えるような成果につながることもあり、そのスケールの大きさは他の職種では味わえません。

また、複雑な商談を進めるには、経営層から現場担当者まで幅広い層と信頼関係を築く必要があります。多くの関係者と意見をすり合わせ、最終的に「あなたに任せたい」と言われた瞬間には、大きな達成感があります。特に、長期にわたるプロジェクトを通じて顧客からビジネスパートナーとして認められたとき、自分の提案が本当に価値を生んだと実感できます。

天野

提案の自由度が高く、戦略的な思考が求められる点も魅力です。市場や業界動向を踏まえ、最適なソリューションを設計する過程は、営業という枠を超え、まるで経営の一部を担っているような感覚を得られます。自らの知見や経験が企業の成長に直結するという手応えは大きく、挑戦の多い分だけ、成果を得たときの喜びも格別です。

転職難易度が高いとされる理由

エンタープライズ顧客を対象としたフィールドセールスへの転職は、一般的な法人営業と比べても難易度が高いと言えます。大手企業では意思決定プロセスが複雑で関与者も多く、単なる提案力だけでなく、「経営課題を正確に理解し、多様なステークホルダーを巻き込みながら合意形成を進める力」が求められるためです。

こうした理由から「挑戦のハードルが高い」とされる職種ですが、その分だけ得られる経験の質や成長の幅も非常に大きいのが特徴です。

天野

選考において通過しやすいのは、SIerや大手ITベンダー、SaaS企業などで大口顧客を担当し、数千万〜数億円規模の案件をリードした経験を持つ方です。逆に、個人向け営業や中小企業への新規開拓が中心で、短期的に成果を積み上げてきた方にとっては「案件のリードタイムが長い」「意思決定者が多層的」といった特徴はストレッチになる傾向はあります。

イメージとしては、街の飲食店向けに決裁者一人へ提案する営業から、一流ホテルチェーン全体のシステム刷新を経営層・IT部門・現場に横断的に訴求していく営業へシフトするような難易度感です。

ただし、論理的思考力や抽象度の高いコミュニケーション力、さらに学習意欲や成長意欲をしっかり示せれば、ポテンシャルを評価してもらえる余地は十分にあります。

得られるスキル・キャリアパス

この職種で経験を積むことで得られるのは「大規模顧客の意思決定を動かす力」と「複雑なステークホルダーを調整する力」です。経営層から現場担当までを巻き込み、数億円規模の案件をリードする中で、戦略的提案力・課題発見力・長期的なリレーション構築力が磨かれます。

天野

将来的には、エンタープライズ営業のマネージャーや営業統括責任者といった管理職への道はもちろん、カスタマーサクセスやアカウントマネジメントなど顧客深耕型の職種、さらには事業開発や経営企画といった「事業をつくる側」へのキャリアにも広がります。

SaaS領域では特に市場価値が高く、外資系企業やグローバル市場でも通用するスキルセットとなり、スタートアップで営業責任者としてキャリアを築く人も少なくありません。

この職種に向いている人

これまで複雑な調整や課題解決に携わってきた方、そして今後は中長期的に顧客と伴走しながら成果を追いたい方には非常に向いている職種です。

法人営業(特にBtoB領域で大口顧客や複数のステークホルダーを相手にした経験)や、カスタマーサクセス・アカウントマネジメントでの信頼関係構築、さらにコンサルタントやプロジェクトマネージャーとして顧客課題に深く関わってきた経験を持つ方は、その強みを存分に活かすことができます。

天野

一方で志向性としては、短期的な成果よりも、長期的なリレーション構築や戦略的な提案にやりがいを感じられることが重要です。経営層との議論を通じて顧客の未来に貢献したい方、社内外の多様なリソースを活用して成果を最大化できる方、そして営業スキルに加えて業界知識や課題解決力といった専門性を磨いていきたい方に、特に向いている職種です。

転職者インタビュー

ここからは、実際に天野がご支援させていただいてエンタープライズ向けのフィールドセールスに転職された、Nさんへのインタビューをお届けします。転職活動の様子や、実際に働いてみての感想もお聞きしたので、是非参考にしていただければと思います。

このままでは成長が頭打ちになってしまうという危機感

―簡単に、これまでのキャリアを教えてください。

Nさん

大学卒業後、製糖メーカーに入社いたしました。入社から2年間は主に小売業を中心に、大手量販店やスーパーマーケット(SM)を担当しておりました。3年目以降は、代理店や卸を中心とした営業活動に従事しておりました。

3ヶ月ほどの転職活動を経て、いまはSaaS企業のフィールドセールスとして働いています。

―いつ頃から、どんなきっかけで転職を考え始めたのですか?

Nさん

転職を意識し始めたのは社会人3年目頃です。日々営業活動を行っていく中で、新しい挑戦や自身の成長の機会が限られていると感じるようになりました。また、5年後・10年後を見据えたときに、現職のままでは自分の成長に限界があると感じました。そこから「もっと成長できる環境に身を置きたい」と思うようになり、本格的に転職活動を始めたのは4年目の10月頃でした。

感覚的な仕事を「言語化」していく作業

―Nさんは天野と面談を始めた当初「無形商材に関わる営業職」という広い視点で見ていたと伺いました。天野に聞きたいのですが、そこからSaaSやフィールドセールスといった領域を勧めた理由は何があったんですか?

天野

人材業界などでも十分活躍できる方だと思いましたが、それ以上にポテンシャルを発揮できるフィールドがあると感じたんです。

Nさんのこれまでの営業経験が本当に素晴らしくて。お話を伺う中で、目の前のお客様にどう動いてもらうかをしっかり考えながら営業をされていて、有形商材の中でも非常に本質的なアプローチをされていたのが印象的でした。

だからこそ、より幅広い課題解決や提案力が求められるSaaSのフィールドセールス領域をお勧めしました。Nさんなら、そこで確実に力を発揮できると確信していましたね。

Nさん

私も、提案を受けて率直に「挑戦してみたい」と思いました。無形商材といっても、私の中ではある程度関心のある業界が定まっていて、それがIT領域だったんです。特に、これから伸びていく業界で経験を積みたいという思いがありました。

SaaSについてもある程度の知識は持っていたので、「自分の営業経験を活かしながら新しい分野に挑戦できる」と感じましたね。提案されたことに違和感やギャップはなく、自然に興味を持てました。

―有形メーカーの営業だと、新規売上をつくるよりも既存顧客を維持して目標を安定的に達成することが重視される傾向がありますよね。そうした中で、フィールドセールスへの転職支援をする際には、どんな見せ方や工夫を意識したんですか?

天野

当たり前のことではありますが、サービスやプロダクトが自動的に売れるわけではないので、顧客に価値を理解してもらう必要があります。Nさんの営業スタイルはまさにその考え方に通じていたので、「再現性のある課題解決型セールス」として強みを訴求するよう意識しました。

砂糖のように競合との差別化が難しい製品を扱いながらも、どれだけシェアを拡大できるかを考えて提案していた点が非常に印象的でした。しかも、Nさんは卸に対して営業をされていたので、「どうやって卸に売ってもらうか」という二段構えの提案力を強くアピールしました。いわば代理店セールス的な観点で、流通全体をどう動かしていくかを考えながら営業していたんです。

実際には、シェアが高い大手メーカーの中で「ただ売る」だけではなく、組織構造を理解して提案を行い、市場の動向や競合他社の製品利用状況まで把握したうえで、顧客に啓蒙的な提案をしていた。その点をしっかり打ち出すようにしました。

Nさん

もともと私は、扱う商材の特性もあり、顧客に商品の価値をどう理解してもらうかを重視した営業はしていたんです。担当者だけでなく、その先にいる意思決定層など組織全体の構造を把握しながら受注までのプロセスを組み立てるように意識していました。

ただ当時は、そういった営業スタイルを自分の強みとして明確に意識していたわけではなかったんですよね。天野さんと一緒に仕事の棚卸しを行っていく中で、「単なるルート営業ではなく、顧客の課題構造を捉えて提案している」「どんな環境でも再現できる営業プロセスになっている」と言語化してもらい、初めて“再現性のある課題解決型セールス”として整理できた感覚がありました。

それ以降は、単なる成果の話ではなく、どんな考え方・プロセスで結果を出していたのかを説明できるようになり、面接でも自分の営業スタイルをより具体的に伝えられるようになりました。

天野

Nさんは最初の段階から非常にしっかりと書き出してくださっていて、材料自体は豊富にありました。ただ、当初はテーマが少しぼんやりしていたので「具体的にどんな行動をとったのか」「どんな工夫をしたのか」という点を整理していくことを意識しました。そこを一緒に言語化していった形でしたよね。

Nさん

とにかく「言語化」の作業は1番苦労しましたね。営業として日々考えながら行動してはいたものの、感覚的にやっていた部分が多く、改めて意図を説明するのが難しかったです。

特に歴史のある企業だったこともあり、「前任者がやっていたからこうする」といった慣習も多かったので、自分がその行動をなぜ取っていたのかを振り返る作業が必要でした。当時のメールを見返したり、当時の気持ちを思い出したりしながら、一つひとつ丁寧に言葉にしていくことに時間をかけました。

小さな成功体験を積み重ねられることがやりがい

―実際に今、エンタープライズ担当のフィールドセールスとして働いてみてどう感じていますか?

Nさん

本当に毎日が楽しいです。社内でも誰に聞かれても「楽しいです」としか答えていないくらいですね。

一番のやりがいは、業務の中で小さな成功体験を積み重ねられることです。今扱っている商材はエンタープライズ向けで難易度も高く、簡単には売れないのですが、その分お客様と深く関われるのが面白いですね。

私は今製造業向けにプロダクト展開をしている企業にいるのですが、製造業のお客様は、自社の課題をまだ明確に言語化できていないケースも多いので、セールスというよりプロジェクトマネージャーのような立場で一緒に課題を整理していくんです。そのうえで、「自社の製品をどう活用すれば課題を解決できるのか」を一緒に考え、ディスカッションを重ねて合意形成に至る瞬間は本当に嬉しいですし、やりがいを強く感じます。

1社目のときとは全く違う感覚ですか?

Nさん

全く違いますね。だからこそ転職して良かったと感じています。環境も仕事の進め方も大きく変わった分、自己成長を強く実感できています。もちろん、うまくいかず不安になることもありますが、「少しずつでも前に進めている」という実感があるからこそ、前向きに頑張り続けられています。

―最後に、Izulの支援を受けてみての率直な感想を教えてください。

Nさん

本当に不満は一切なく、大満足でした。ここまで丁寧に伴走してもらえるとは思っていなかったので、感謝しかないです。

特に印象に残っているのは、天野さんが毎回面接練習の前に1時間の枠を取ってくださり、整理から模擬面接まで丁寧にサポートしてくれたことです。毎回必ず「Nさんなら絶対いけます」と言ってくださって、その言葉が本当に支えになりました。

転職活動中、不安や迷いが出たときは「とりあえず天野さんと面接したい」と思うほどで、最後まで勇気づけられました。本当にありがとうございました!

―こちらこそお話聞かせていただきありがとうございました!

この支援を担当した人

コンサルタント・天野 修平

天野 修平

新卒でパーソルキャリア株式会社へ入社し、人材紹介の法人営業として200社以上の採用成功を経験。その後、IT系スタートアップを経てSaaS大手の株式会社マネーフォワードへ転職。新規事業であるリーガルテック領域に3人目のセールスとして参画し、入社1年で国内大手企業や外資系トップメーカーを含む100社以上を受注。その後、インサイドセールスのリーダーやセールス責任者としてチームを牽引。個人に寄り添い、可能性を最大化するキャリア支援を実現すべく、株式会社Izulに入社しました。

著者プロフィール

Izul広報チーム

Izul広報チーム

株式会社Izulの広報チームが運用。20代〜30代の若手ハイクラス層から、圧倒的支持を獲得中。働き方や転職のコツなど、キャリアに役立つ情報を発信していきます。

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