他のメンバーの能力や成績との比較によって位置付けを決める相対評価。人件費をコントロールしやすく、評価者の性格や意向が反映されにくいため有効な評価方法です。しかし、場合によっては絶対評価を用いたほうが良い場合もあります。
今回は相対評価について、絶対評価との違いやメリット・デメリットなどについて紹介します。本記事後半では相対評価を活用すべき2つのケースと成功のためのポイントも解説しているので、導入を前向きに考えている担当者の方もぜひご覧ください。
相対評価とは
相対評価とは他人の能力や成績との比較によって、相対的な位置付けを決める評価方法のことです。実際に相対評価を行う際は、あらかじめランクごとの人数割合を決めます。その後能力や成績が高い順にランクを割り当て、評価します。
相対評価と絶対評価の違いとは
相対評価と定義が混同されやすい言葉のひとつに絶対評価があります。絶対評価とは、あらかじめ決められた数値やノルマを達成できたかどうかによって、メンバーを評価する方法のことです。
一次評価で業務成績による絶対評価を行い、二次評価では相対評価を行って順位付けするなど、使い分けている企業もあります。
最近では各社員の評価に対して主観が入りにくい点や、評価基準の透明性などの観点から、絶対評価を重要視している企業も増えています。
相対評価のメリット
相対評価は評価に時間がかからず、人件費をコントロールしやすいといった魅力があります。ここでは、相対評価のメリットを3点紹介します。
評価しやすい
絶対評価と比べて評価項目が少ないため、簡単に評価できるのがメリットです。先述したように相対評価は集団の中で順位をつけ、順位に応じて評価する方法です。そのため明確な基準を設けたり、経験年数や個人の強みなどを考慮する必要がなく、時間をかけずに評価できます。
評価者の性格・意向が反映されにくい
絶対評価の場合は評価者が甘い場合と厳しい場合で評価が変わり、主観も入りやすい傾向にあります。これに対して相対評価は評価者の意向や性格が反映されないため、評価のバラつきを抑えることができます。
人件費をコントロールしやすい
相対評価はあらかじめランクごとの人数割合を決めるため、昇給の対象を絞り、人件費をコントロールできるといったメリットがあります。
対して絶対評価では、万が一多くの社員が昇給の基準をクリアした場合、全メンバーの給料を増額しなければなりません。人件費の関係で基準をクリアしているにもかかわらず、昇給できないといった事態に陥れば、会社に対する信頼も薄れるでしょう。
しかし相対評価ではこういった事態は起こり得ず、人件費を心配することなくメンバーを評価することができます。
相対評価のデメリット
評価者の性格や意向が反映されにくく、評価自体に多くの時間を要さない相対評価ですが、メリットばかりではありません。ここでは、相対評価のデメリットを紹介します。
所属する集団によって評価が異なる
個人のレベルが高かったとしても、集団のレベルが高ければ評価されにくくなってしまいます。対して所属する集団のレベルが低い場合は、成績を残せなかったとしても評価されます。そのため、集団によっては正当な評価ができない点がデメリットといえるでしょう。
メンバーの成長を評価しにくい
相対評価は集団内の位置付けを活用した評価方法であるため、以前に比べて成長したとしても、成績の良いメンバーが評価されます。個人の成長にフォーカスしにくい点は、相対評価のデメリットといえるでしょう。
相対評価では個人の成長は評価しづらいため、過程の部分を審査したい場合には適していません。
メンバーのやる気が削がれる可能性がある
自分が努力をして成長しても、所属する組織のレベルが高ければ評価されにくいため、メンバーのやる気が削がれる可能性があります。働くモチベーションが下がると従業員同士で足を引っ張り合うなど、組織やチームにとって良くない反応が起こる可能性もあります。
しかし場合によっては、従業員に適度な競争意識が生まれ、メンバーが自発的にスキルアップを行うようになるケースも考えられます。社員が高いモチベーションを維持するためには、評価基準をメンバーに公開するといった工夫が必要です。
相対評価を活用すべきケース
上述したように相対評価には、メリット・デメリットが存在します。そのため、場合によっては相対評価のデメリットが先行し、正当な評価を下せない可能性があります。
ここでは相対評価を活用すべきケースを2つ紹介します。
ポジションを決定する場合
社員のポジションや昇格を決める場合は、相対評価の活用がおすすめです。絶対評価では、評価者の性格や意向が反映されてしまう可能性があります。そのため、ポジションなどの重要な要素を決める際は、評価者の影響を受けづらい相対評価が有効です。
給与を決定する場合
給与を決定するケースでも、相対評価の活用をおすすめします。相対評価では事前にランクごとの人数を決めるため、昇給の対象を絞ることが可能です。相対評価は人件費をコントロールしやすいため、会社の原資に限りがある場合において、給与を決定するケースでは相対評価が適しています。
相対評価を成功させるための2つのポイント
場合によってはメンバーのやる気が削がれる可能性があります。そのため、実際に相対評価を導入する際は注意しなければなりません。
ここでは、相対評価を成功させるためのポイントを2つ紹介します。
評価基準を従業員に公開する
相対評価は自分がどんなに成長したとしても、集団のレベルが高ければ評価されにくくなるため、社員が評価基準の不透明性を感じる場面も少なくありません。ランク別の人数といった評価基準は社員に公開し、不満がたまらないような対策をしましょう。
場合によっては絶対評価を利用する
相対評価が適しているケースもあれば、適さないケースもあります。相対評価が適さない場合は、絶対評価を活用してください。
絶対評価が適しているケースは、以下の2つです。
- 会社の理念や価値観を浸透させるために評価する場合
- 社員を成長させるために評価を行う場合
前章で紹介したようにポジションや給与を決定するケースにおいては、相対評価が適しています。このように、場合によって絶対評価と相対評価を使い分け、メンバーからの不満が発生しないよう工夫しましょう。
まとめ
相対評価は、人件費をコントロールしやすく、評価者の性格や意向が反映されにくいといった魅力があります。ただし、個人の成長を評価しにくく、場合によってはメンバーのモチベーションが下がる可能性もあることを認識しておきましょう。
相対評価を成功させるためには、場合によって絶対評価と使い分けることが重要です。具体的に人材育成や、会社理念の浸透を目的にする場合は絶対評価を、給与やポジションを決定する場合は相対評価を活用しましょう。