企業にとって、離職率は重要な指標のひとつです。転職活動をしている人が求人を見る際の参考にもなります。この記事では日本の平均的な離職率や、離職改善に向けた取り組みについて解説します。従業員の離職を防止したい企業担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
離職率とは
離職率とは、ある時点で働いていた人数に対して、一定期間後に退職した人の割合です。一般的には期初〜期末の1年ごとで計算するケースが多いものの、入社1年後・3年後などの期間で算出する場合もあります。また、目的によって母数となる対象者が変化します。
日本企業の離職率の平均は?
厚生労働省が平成30年度に発表した「平成30年雇用動向調査結果の概況」によると、日本企業全体の離職率は14.6%です。また、一般労働者の離職率が11.3%であるのに対し、パートやアルバイトといった短時間労働者の離職率は23.6%と高い傾向にあります。
離職率の計算方法
離職率は「ある一定期間の離職者数÷期間内の労働者数×100%」で計算できます。例えば、2022年1月1日時点で100人の従業員が在籍しており、2022年1月から12月末までに10人の従業員が退職した場合、2022年1月〜12月の離職率は「10人÷100人×100%=」で「10%」です。ただし、対象の一定期間内に入社した社員は計算に含めないよう注意してください。
離職率が高い業種
一般的に、飲食店や宿泊業は離職率が高い傾向にあります。令和2年に厚生労働省が発表した「令和2年上半期雇用動向調査結果の概要」でも「宿泊業・飲食サービス業」の離職率が15.3%と最も高い数値を示しています。その後に「教育・学習支援業」「サービス業(ほかに分類されないもの)」「生活関連サービス業・娯楽業」が続いていることから、サービス業全体で離職率が高い水準で留まっている点が特徴です。
離職率が高い企業の特徴
離職率が高い企業には、いくつかの共通点があります。ここでは、主な特徴を4つ解説します。
残業や休日出勤が多い
長時間労働によってプライベートな時間が取れず、心身共に疲労が溜まると、従業員は退職を選びやすくなってしまいます。特に、飲食店やサービス業などでこの状況が多く見られます。
給与が低い
労働時間に問題がなくても、給与が低いと従業員の離職を招いてしまいます。従業員の多くは生活のために労働しているため、「今のままでは生活が安定しない」と判断して転職を考えるケースも少なくありません。また、残業代が出ない場合やボーナスが支給されない場合も同様です。
教育体制が整っていない
離職率を考えるうえで、企業の教育体制は重要なポイントです。教育体制が整っていないとスキルアップや成長は見込めないため、転職を考える従業員が多くなってしまいます。また、業務に対して適切な指示やフィードバックを得られないと、従業員のモチベーション低下にもつながります。
いじめやハラスメントが横行している
新しい従業員が入社しても、いじめやハラスメントが横行している職場では安心して働けず、すぐ退職してしまうことが多いです。また、近年は妊婦に対するマタハラや、臭いに関するスメハラなども問題視されています。
離職率が高いことによって発生する問題
従業員の離職が増加すると、さまざまなデメリットを引き起こしやすくなります。ここでは、離職率が高くなることによって発生する問題について解説します。
人手不足が常態化する
離職率が高い企業は人材を安定して確保できず、人手不足が常態化しがちです。人手が足りないと従業員の業務量が多くなり、長時間労働や休日出勤が増えてしまいます。その結果、負担に感じた従業員が退職してしまい、悪循環に陥る可能性があります。
採用・教育コストが無駄になる
採用や教育にかかったコストが無駄になってしまうのもデメリットのひとつです。企業で人材を採用する場合、1人あたり100万近くかかってしまいます。また、研修やOJTなどでも多くの時間や労力を消費します。離職者が多いと、無駄が続く状況が繰り返されてしまうのです。
企業イメージが悪化する
離職率が高い企業は「労働環境が悪そう」「仕事がきつそう」といった悪いイメージをもたれやすくなります。また、ハローワークなどで企業の離職率を確認できるため、求職者が不信感を抱いて応募を避けるケースも少なくありません。企業イメージが悪化するとなおさら人手が集まらなくなり、悪循環を生み出してしまうため要注意です。
離職率を改善するための取り組み例
離職率の高さは多くのデメリットをもたらすため、できるだけ早めの対策が欠かせません。ここでは、離職率を改善するための取り組みについて解説します。
会社の現状を把握する
まずは、従業員の拘束時間や勤務日数、給与形態などを確認し、離職率が高い原因を洗い出します。状況に応じて、従業員に対してアンケートや面談を実施するのもよいでしょう。企業の実態を掴んだら、課題を改善するための施策を検討します。
給与や福利厚生を見直す
離職率改善には、給与の改善が効果的です。労働の対価として釣り合っているか、業界の中でも極端に低い水準になっていないかを調査し、可能な範囲で基本給や給与の見直しを行いましょう。また、従業員のニーズにあった福利厚生を提供することも有効な手段です。
働き方を改善する
離職率の高さが労働環境によって引き起こされている場合、働き方の改善が求められます。長時間労働や休日出勤をできるだけ減らせるように、業務フローの見直しや効率化を行うとよいでしょう。また、フレックスタイム制やテレワークなど、ワークライフバランスを実現しやすい制度を導入するのもおすすめです。
職場環境を改善する
離職率を下げるためにアンケートや面談などを行って現状を把握し、職場の課題や従業員の不満を洗い出しましょう。いじめやハラスメントが横行している場合は、指導やコンプライアンス研修を適宜実施してください。
評価体制を見直す
従業員が「自分の能力や業績が正しく評価されていない」と感じると、離職につながりやすくなります。従業員を適切に評価できる仕組みになっているか、一度体制を見直してみるとよいでしょう。また、上長に対しても、評価者としての研修を行う必要があります。
採用のミスマッチを防ぐ
新しい社員が入社しても、事前に想定していた企業イメージと異なると離職につながりやすくなってしまいます。「どのような人材を採用したいか」を明確にした状態で採用活動を行い、面接の段階でお互いの認識を擦り合わせておきましょう。
まとめ
この記事では、離職率について解説しました。離職率の高い企業はマイナスなイメージを持たれやすく、従業員の採用にも影響が出てしまいます。現状を洗い出したうえで適切な施策を行い、従業員が安定して長く働きやすくなるような企業を目指すことが大切です。