業界研究や企業研究を行う中で、企業情報に「資本金」という項目を目にすることが多いのではないでしょうか。言葉として目にしたことはあっても、資本金が持つ意味までは理解しきれていない方もいるかもしれません。
今回は資本金の基本から企業情報として掲載される理由、決め方や増やし方について解説します。資本金の多い企業の特徴や懸念点などもあわせて紹介しているので、転職する企業を検討する際の参考にしてください。
資本金とは
企業の設立時、出資者から払い込まれる資金のことを資本金といいます。資本金を提供する出資者には、以下が挙げられます。
- 創業者
- 株主
- 投資家
業績や売上など、企業としての実績に直接関係する金額ではなく、株主資本に分類される点が特徴です。
資本金からわかる情報
資本金を受け取っている企業の多くは、出資先の企業名などを公開しています。出資先を公開することで関係の深い企業などを確認できるため、企業の方向性などを推測しやすくなるでしょう。出資先に有名企業などがあれば「もしかしたら出資先の企業と関われるかもしれない」と、働くうえでの新たなモチベーション形成につながるかもしれません。
資本金が企業概要に書かれている理由
資本金は、企業規模や経営力を判断するための基準として記載されています。企業を設立すること自体には多くの予算は不要です。しかし、資本金が少ないと「事業規模が小さく、経営も安定していない」と判断される恐れがあります。自社にある程度の企業規模があり、安定した経営を実現していることを、資本金の情報からアピールする企業も多いでしょう。
資本金はどのように決められる?
企業を設立する際にかかる金額や、設備にかかる金額を逆算して資本金を決めることが一般的です。また、企業として抱く将来像やビジネスモデルを明確にしたうえで、予算目安などを想定して資本金を決める場合もあります。
一般的に、企業設立自体は1円から実現可能ですが、資本金は企業規模などをアピールするために必要な情報といえます。そのため、以下の観点から資本金をある程度の金額に設定している企業も多いことを認識しておきましょう。
- 融資審査に通過しやすいか
- 事業の許認可が下りるか
- 企業の信用度をアップできるか
- 税負担が変化するか
特に税負担に関しては、多くの企業が懸念している点でもあるため、資本金額の策定とあわせて意識しているポイントといえます。
資本金が多い企業の特徴
資本金が多い企業には、どのような特徴があるのでしょうか。転職活動を進めるうえで重要な情報源ともなるため、以下の観点を参考に資本金の多い企業に共通する特徴について理解しておきましょう。
信用度が高い
資本金の金額が高ければ高いほど、資金力のある企業だという証明になります。資金力だけでなく、資金調達能力が高いこともアピールできるでしょう。資金力・資金調達能力の高い企業は、支払い能力も比例して高い傾向にあります。働くうえで重視したい「安定性」の観点で、資本金の金額が重要になることがわかるでしょう。
また、資本金が高ければ取引先や金融機関からの信用も得られやすいため、企業側にもメリットがあります。
事業の拡大が見込める
資本金が多いことは、活用できる運転資金が多いことと同義です。そのため資本金の多い企業は、事業拡大や新規事業の開始などを、スムーズに実施しやすいといえます。単に売上が増えるだけでは、運転資金は思うように増えません。あくまでベースとなる資本金を多く準備できるかで、企業としての可能性が変化するでしょう。
資本金が多い企業は事業を拡大しやすい傾向にあるため、信用度の観点と同様「安定性」が期待できるといえます。
融資対象になりやすい
資本金が少ないと、融資先から「資産の少ない企業」と判断されます。資産が少ないと融資を受けるうえで不利になるため、信用度の獲得や事業拡大の観点でも不利になるでしょう。ただ資本金が少ないだけでなく、債務超過なども融資を受けられなくなる原因です。資本金が多いことは債務超過の心配がない状態ともいえるため、融資を受けやすくなるでしょう。
転職活動を進めるうえでは、融資の観点まで目を向けることは少ないかもしれません。ただし、信用度や事業拡大も含めて、企業の安定性や将来性といった観点で予備知識として覚えておくことをおすすめします。
企業はどのような方法で資本金を増やしている?
資本金を増やすことは「増資」といい、返済が不要な金銭として扱われます。そのため、以下に挙げる手法で資本金を増やす企業が多いでしょう。
- 利益を資本に組み込む
- 現物を出資する
- 出資を受ける
ここでは、資本金を増やすための方法について、それぞれの内容を紹介します。あくまで企業側の目線となるため、資本金をどう増やしているのかという予備知識としてご覧ください。
利益を資本に組み込む
利益を上げられている状態であれば、利益から税金を引いた金額を資本金に充てられます。自社の利益をそのまま資本金に組み込めるため、第三者との手続きが発生しません。この手法はあくまでも自社が利益を上げている状態でないと活用できないのが特徴です。赤字の状態では資本金として活用できるお金もありません。
現物を出資する
金銭ではなく、現物を出資する形で金銭を得る手法です。自社に眠っている機材や車、土地や建物を出資するのが一般的です。ただし、一般的な中古市場などの概念と同様、購入時と同じ価格で出資できるわけではありません。購入当時1,000万円の値がついていても、売却時は500万円になることも珍しくないでしょう。とはいえ、不要な資材を処分しつつ、効率的に資本金を獲得できる方法には変わりありません。
出資を受ける
もっとも基本的な増資方法です。株式を新たに発行し、株主や投資家から新たに出資を受ける手法といえます。ただし、利益が出た場合は「配当」として見返りを与える必要があります。一般的かつ効率的な手法といえるため、出資を受ける形で資本金を増やしている企業は多いでしょう。
資本金が多い企業の懸念点
資本金が多いと、税金や設立費用などの観点で負担がかかりやすくなります。とはいえ、企業を設立し運営していくためには、運転資金だけでは不十分です。ある程度の資本金は必須といえるため、以下に挙げる注意点を参考に、資本金について考える必要があると覚えておきましょう。もし極端に高い資本金を提示している企業があったら、税負担などの観点から将来性などを予想し、転職活動の参考情報として役立てましょう。
税金の負担が大きい
資本金額が大きくなると、比例して税負担も大きくなります。資本金が1億円以下であれば軽減税率が適用されるものの、1億円を超えてしまうと適用されず、原則通りの税率となってしまいます。
また、設立1期目・2期目に関しては、1,000万円未満の資本金であれば納税義務が免除されやすいでしょう。ただし、資本金が1,000万円以上になると納税義務が課せられるため、税負担が増えてしまいます。
設立費用が高くなる
企業の設立時には、法務局での登記が必要になります。登記時、法務局に「登録免許税」を納めるのが一般的です。この登録免許税は、資本金額に0.7をかけた金額と「15万円」を比較し、低い方が対象となります。したがって、資本金が高いほど登録免許税が高くなります。
資本金額が少ないと、企業に対する信頼感が薄れてしまうという方もいるかもしれません。しかし、登録免許税の観点であえて低く設定している可能性も加味しておきましょう。
まとめ
資本金は、転職先の候補とする企業がどれほどの規模で、どのような企業と提携しているのか判断する基準になります。働くうえで資本金の決定や出資などに直接関わることはないものの、概念として覚えておくことは重要です。資本金について理解を深めておくことで、さまざまな視点で企業の魅力や弱点などを把握しやすくなるでしょう。
転職活動を円滑に進め、かつ自身が理想とする転職先に出会えるよう、資本金の観点も覚えておくことをおすすめします。