未経験の職種に転職する際、志望動機をどのように書くべきか悩んでしまうケースがあります。応募職種の業務経験がないと、選考で不利になるのではないかと感じる人もいるでしょう。しかし、企業側は多角的に求職者を評価するため、未経験職種や初めての転職であっても不安を感じる必要はありません。特に志望動機は、仕事に対する姿勢や熱意などが感じ取れる内容であれば、高く評価される可能性があります。
今回は未経験の職種に応募する際に、志望動機をどう考えてどのように伝えるべきかという疑問を解消します。未経験職種の志望動機を書くうえでのポイントや注意点、履歴書の構成別に書き方を解説します。未経験であることをマイナス要因に思わせないための参考知識として活用してください。
2024年以降も業界・職種未経験の求人は増える?
株式会社マイナビが実施した「中途採用状況調査2024年版(2023年実績)」によると、2024年の中途採用に「積極的」と答えた企業は91.8%という結果です。このうち、経験者・未経験者問わず採用に積極的な企業は33.6%、経験者よりも未経験者採用に積極的な企業は14.9%で、合わせて48.5%にのぼります。中でも未経験者採用に積極的な業種は、環境・エネルギー、IT・通信・インターネット、メーカー、流通・小売・フードサービスがあげられます。人材の流動性は年々高まっており、未経験職種でも転職のチャンスは増加傾向にあるといえるでしょう。
情報引用:中途採用状況調査2024年版(2023年実績) | マイナビキャリアリサーチLab
企業側が未経験の求職者に求めるもの
求人情報を見ていると、「未経験可」「未経験者歓迎」という言葉を見かけることが少なくありません。しかし、未経験であることをマイナスに感じてしまい、企業が何を求めているのかわからないという人もいるでしょう。ここでは、未経験の求職者に企業が求めていることの例を3つ紹介します。
社風や労働環境に合いそうか
たとえ未経験でも、社風や労働環境にマッチする人材であれば、積極的に採用したいと考える企業もいます。入社後に業務経験を積んで習得していくことが前提となりますが、社風や労働環境に合いそうと判断された場合、成長性を見込まれて採用基準を満たす場合があります。
組織や業務に合うポテンシャルがあるか
企業にとってポテンシャルの高い人材であるかも重要な要素です。ポテンシャルとは、潜在能力や将来性といった意味を持つ言葉です。未経験でもポテンシャルを感じる人材は、企業側に将来性を感じさせるため、高く評価されます。ポテンシャルの高さをアピールするためには、これまでに得た経験・スキルを整理し、新しい職場で自分の能力をどう活かせるかを分析しましょう。面接で貢献意欲の高さや成長性をアピールできると、採用される可能性が高まります。
前職で培った経験・スキルをどう活かせるか
前職の経験やスキルが自社の業務に活かせると判断されれば、未経験でも採用されることがあります。前職の経験をもとに活躍が期待できる人材であれば、積極的に採用する可能性が高いといえます。自分の経験をもとに、新たな業務の進め方や施策を提案するなど、あえて前職の経験を前面に出してみても良いかもしれません。
未経験職種の転職でやりがちなNG志望動機の例文
未経験職種の志望動機で、陥りがちなNG例文を紹介します。
私は3年間、営業としての経験を積んできました。マーケティングの領域は初めてですが、相手の心を動かすという点で営業の仕事と共通する部分があると感じ、この職を志望しました。入社後も、営業職で培ったコミュニケーション能力を活かせると考えています。皆さまからのご指導を受けながら、精一杯取り組んでまいります。
このNG例文の注意点は、具体性に欠けることです。例えば「営業とマーケティングの共通する部分」について詳しく書くことで、採用後どのような貢献ができるかを明確に伝えましょう。また、マーケティング職の職務内容をふまえ、資格取得やキャリアアップについても言及すると高評価を得られます。
未経験職種の志望動機を書くときのポイント
ここでは、前章のNG例文のポイントをふまえ、未経験職種の企業に応募するうえで覚えておきたい、良い例文のコツを見ていきましょう。
やる気や熱意をアピールする
未経験であることがマイナス要因にならないくらい、やる気や熱意があることをアピールしましょう。自身が入社することでどんなメリットがあるのか、企業へ明確に伝えることが大切です。ただし、やる気や熱意を重視するあまり、志望動機が抽象的な内容にならないように注意しましょう。
営業チームの資料の作成や売上データの管理などの補助業務を担当した経験を通じて培ったコミュニケーション能力やパソコンスキルを活かし、事務職としてのスキルを向上させ、貴社での貢献を目指しています。
入社後のイメージができるような、具体性を持たせることがポイントです。
志望動機を明確にする
「なぜ未経験にもかかわらず自社に応募してきたのか」という企業側がもっとも知りたい志望動機を明確にすることが大切です。未経験ではあるものの、事業内容に感銘を受けたことを含めてアピールできれば、選考が進んでいくかもしれません。
前職で貴社の企業向けサーベイシステムを導入し、顧客のアンケート調査に加えて、従業員が店舗で抱える課題や健康状態を把握することができました。店長経験の中で、顧客満足度の高い接客サービスを提供することができると感じ、システムを提供する側になりたいと志望しました。
商品・サービスだけでなく、経営理念、事業の将来性もチェックしましょう。
技術習得への意気込みや工夫を盛り込む
入社後、仕事をするうえで必要な技術を積極的に習得しようと思っていると、志望動機に記載することが大切です。「習得したい」だけでなく、どのような手段・期間で習得しようと考えているのかも書くことで、より確実にアピールできます。
前職ではインターネットやSNSを活用して、食品マーケットの動向や顧客の嗜好の変化を把握し、その情報をスーパーマーケットに提供してきました。これらの経験を通じて、マーケティング職への興味が高まり、マーケティング検定2級を取得しました。
キャリアアップのために現在学んでいることをアピールすると、好印象を与えます。
希望する職種で活かせる経験・スキルを書く
応募する企業での経験がなくても、自身の経験で活かせるものがないかを考えることでアピールの幅が広がります。自身の経験を活かし、既存事業をどのように変えていくのかなどの提案ができれば、未経験であることは企業にとってネックにならないでしょう。
現職でSFAツールが導入され、新規開拓を商品企画やマーケティング部門と協力した結果、新規顧客の約半数をセミナーやメールマーケティングから獲得することができました。この経験から、顧客に効果的な情報を迅速かつ効率的に提供することの重要性を実感しました。IT、特に急速に成長しているSaaSビジネスで自らの能力を試したいと考え、貴社を志望いたします。
自己分析をしっかり行うことで、自身の強みやスキルを明確にしましょう。
これまでの経験・スキルを活かしたビジョンを示す
自身の経験やスキルを、入社後にどう生かしていきたいかを明確にすることが大切です。あくまで志望動機であるため、多少大きなことを書いても問題はありません。「自身の経験やスキルをきっかけに、新たな部署を立ち上げたい」など、強気かつ前向きなことを書くことができれば、熱意があると評価されやすくなります。
貴社において、飲食店向けの営業活動やヒアリング、満足度向上、リピート率向上など様々な取り組みが重要であると認識しております。私はこれまでの経験を活かし、貴社の新規事業立ち上げに貢献したいと考えております。
自己分析からキャリアプランを立て、将来なりたい姿をできる限り明確にイメージするのがポイントです。
構成別に見る志望動機の書き方をおさらい
志望動機を書く際は、書き出し・中盤・結び、それぞれのコツを押さえておくことが大切です。未経験の職種に応募する際は、記載する志望動機の構成が特に重要になるので、しっかり押さえておきましょう。
書き出し部分
書き出し部分には、まずは結論を書くようにしましょう。「なぜ自社を志望したのか」という質問に対し、答えから書くことが大切です。それに続けて「なぜなら」という形で中盤部分を記載していくのがおすすめです。
営業職で培ったコミュニケーション能力や情報収集力を活かし、マーケティング職に挑戦したいと考え、志望いたしました。
中盤部分
書き出し部分で結論から書いたら、結論に対する「理由」を書いていきます。結論を受けて「なぜなら」と書き進めることだけではなく、結びの部分とのつながりも意識することが大切です。
営業職では顧客との関係構築やニーズの把握が主な業務ですが、その過程で市場や競合他社の動向を把握し、顧客の要望にマッチした商品やサービスを提案する必要があります。そこで営業活動の一環として市場調査を行い、顧客の嗜好や需要の変化を把握しました。また、競合他社の商品やサービスの特徴や価格設定などを分析し、自社の製品やサービスの競争力を評価する作業も行いました。これらの共通点を感じる仕事を通じて、営業経験をマーケティング職に活かすことができると感じました。
結び部分
書き出し部分で書いた「結論」を、再度結びとして書きます。「こういった理由があるため、御社を志望しました」と、書き出し・中盤部分と内容が変わらないように、つながりを意識して書くようにしましょう。結び部分まで書き終えたら全体を通して読み、自分の意図が伝わる文章になっているかを確認することも大切です。
これらの経験から、コミュニケーション能力やプロジェクト管理スキルを磨き、マーケティング領域でのキャリアチェンジを志向したいと考えています。マーケティングに必要な知識を積極的に習得し、短期間で貴社に貢献できるよう努力いたします。
志望動機を書くときの注意点
最後に、未経験職種に応募する際の志望動機を書くときに注意すべき点を紹介します。
ネガティブな表現は避ける
特に未経験の職種だと、自信を持てず控えめな書き方をしてしまうことがあります。自信がないことが伝わるような内容は避けるべきです。未経験であることがネガティブ要因にならないよう、熱意を込めて志望動機を書くことが大切です。
どの会社にも当てはまる志望動機は使わない
「御社の事業内容に感銘を受けた」など、漠然とした表現は使わないようにしてください。企業は未経験だからこそ、自社のどこに感銘を受けたのかを知りたいものです。なお複数の企業に応募する場合は、志望動機は企業ごとに書き分けましょう。
給与だけを志望動機にしない
未経験の場合に限らず、給与面を志望動機に書くのはおすすめできません。収入面を優先する人物だと思われ、業務に対する熱意があるのかを疑われてしまいます。特に未経験だと、最初の給与は希望より低くなることも少なくありません。収入より優先したいものがあると、企業側にアピールできる志望動機を意識して書きましょう。
未経験職種に転職する場合の志望動機の例文
未経験者の場合、企業側が見るのは「未経験の職種に応募した理由」です。憧れやイメージだけで応募したと誤解されないよう、前職の経験や仕事に対する姿勢、キャリアプランなどを伝えましょう。入社後の活躍がイメージできる内容を伝えられると好印象を与えられます。ここでは職種別に志望動機の例文を紹介します。
飲食店から営業職への志望動機
営業は顧客とのコミュニケーション能力が問われる職種のため、関係者の多い作業や他者との協力関係を築いた経験などをアピールしましょう。また、ノルマや目標を達成するなど、上昇志向があることも高く評価されます。
5年間、飲食店店長として幅広い年齢層のお客様に接客してきました。評価された事例を共有し、接客スキル向上に貢献することで、全国店舗の顧客満足度上位10%を達成しました。飲食店向けのシステムの進化に興味を持ち、貴社のお客様向けアプリのUIの良さに感銘を受けました。貴社のミッションに共感し、お客様目線を大切にしてきました。ITスキルとして、ブラインドタッチ、Excelを利用した顧客分析、ワードを用いた資料作成が可能です。貴社での営業活動や満足度向上に貢献したいと考えております。
接客業から一般事務への志望動機
一般事務は未経験者の転職先として人気があるため、応募理由に納得感があることが重要です。また、基本的なビジネスマナーやパソコンスキルが求められるため、スキルが備わっていることを明示しましょう。
発注・在庫管理や売上管理といった業務の経験を活かして事務職に転向したいと考え、貴社に応募いたしました。発注・在庫管理や売上管理の経験を持ち、一般事務職への転職を目指しています。約4年間、インテリア・雑貨店舗スタッフとして従事し、幅広い業務を担当してきました。Excelでのマクロ組み立てや効率化を通じて、管理業務にやりがいを感じ、転職を決意しました。貴社の採用サイトで、未経験からの活躍事例を知り、共感し応募いたしました。PCスキルや電話応対経験を活かし、貴社での貢献を心から願っております。
営業からエンジニアへの志望動機
エンジニアに求められるのは進歩する技術を学び続ける姿勢と、関係者と連携できるチームワーク力です。ITスキルだけでなく、コミュニケーション能力があると重宝されるため、過去の共同作業などを盛り込んだ内容にしましょう。
顧客のニーズを把握する営業経験を活かしつつ、自らツールを開発するITエンジニアになりたいと考え、貴社に応募いたしました。現職ではマーケティング支援ツールを販売する営業を務め、顧客の要望に合わせたツール開発に携わり、喜びを感じてきました。貴社の「顧客第一の開発」理念に共感し、自身の目標を達成できる環境と確信しました。プログラミングは未経験ですが、スクールで学ぶことでスキルアップを図り、貴社に貢献したいと思います。
営業から経理への志望動機
経理は簿記などの専門的な知識が求められるため、すでに持っている資格や専門知識習得への姿勢をアピールしましょう。また、正確でスピーディーな業務をこなした経験を盛り込むなど、経理に必要な特性を強調すると評価されるでしょう。
人材紹介会社の営業として、主に採用領域で採用プロセスや手法の提案を行ってきました。数字管理を得意とし、行動を数値化し分析する能力を持っています。人材の重要性を感じていますが、経理にも興味があり、簿記2級を取得し1級取得を目指して勉強中です。貴社は常に新しい分野に挑戦する企業であり、仲間と切磋琢磨できる環境が魅力的です。人材業界の経験と簿記の知識を活かし、貴社に貢献したいと考えています。
まとめ
今回は、未経験職種の企業に応募するうえで、押さえておきたい志望動機の書き方について解説しました。
未経験であることをマイナス要因と捉えてしまう人も多いでしょう。しかし「未経験可」の求人を出している企業は、求職者の熱意や業務への適性などで判断している場合がほとんどです。その旨を理解し、自分自身のスキルやビジョンなどを明確にしたうえで自信を持ってアピールできれば、未経験であることはネガティブ要素にはなりません。
未経験職種での転職を成功させるために、今回紹介した内容をぜひ参考にしてください。