物流業界はインターネットの発展やコロナ禍を機に、年々需要が拡大しています。この記事では、人々の生活に欠かせない物流業界のビジネスモデルや主な仕事内容、今後の展望などについて解説します。物流業界に興味のある方はぜひ参考にしてください。
物流業界のビジネスモデルとは
物流業界は、生産者や棚卸し業者などから依頼を受けて、荷物の輸送や倉庫の貸し出しなどを行う業界です。おもに手数料や配送料などで収益を得ています。物流は対象範囲が広いことから、企業によってさまざまな特色があるのも特徴です。なかには、物流に関する直接的な業務だけでなく、配送の最適化を目的としたコンサルティング事業を担う企業も存在しています。
物流業界の5つのビジネス領域
物流業界のビジネス領域は主に5つに分類されています。ここでは、それぞれの領域について詳しく解説します。
陸運
陸運とは、トラック・クレーン・自動車などを利用し、陸路で荷物の輸送を行う手法です。陸運は小口配送・時間指定配送・置き配など細かなニーズに応えやすく、幅広い地域の輸送に対応できる強みがあります。一方、他の輸送手段と比べて長距離輸送や大量輸送が難しい点がデメリットです。
海運
海運とは、船舶を利用して貨物を運び、港を経由して輸送を行う手法です。海運のなかでも、国内の輸送を担う内航海運と海外への輸送を担う外航海運の2つに分類されます。海運は重量のある大きな荷物を大量に運べるうえに、コストを抑えて長距離輸送できる点が強みです。一方、輸送に時間がかかるのがデメリットです。
空運
空運とは、飛行機を利用して空路で荷物の輸送を行う手法です。空運のなかでも、自社の航空機で輸送する「キャリア」、自社で航空機を持たず、複数の運送事業者と契約して輸送事業を代行する「フォワーダー」、両方の機能を併せ持った「インテグレーター」の3形態に分類されます。飛行機では重量のある荷物は運べず、輸送コストもかかりますが、長距離を短時間で移動できる点が強みです。
鉄道
鉄道は、荷物をコンテナに積んで貨物列車で輸送する手法です。鉄道では、大量の荷物を長距離にわたって時間通り輸送できるメリットがあります。また、ほかの輸送方法と比べて環境に優しいといえるでしょう。ただし、輸送時間の融通が利かず、細かいニーズに対応しづらい点がデメリットです。
倉庫
倉庫は、輸送する荷物の検品・仕分け・荷揃えなどを担当する領域です。そのほかにも、荷物の一時保管や管理の役目を請け負っており、効率的な輸送を支えています。倉庫で取り扱う荷物は多岐にわたり、それぞれの商品に適した環境が整備されています。
物流業界の主な仕事内容
ひとくちに物流業界といっても、仕事内容はかなり幅広いといえます。ここでは、主な仕事内容を6つ紹介します。
保管
保管とは、依頼主から預かった荷物を出荷までの間、倉庫で保管・管理する業務です。基本的には、自社または提携業者が所有する倉庫を利用します。荷物の保管には常温・冷暗所・冷蔵・冷凍といったさまざまな方法があるため、内容に合わせた適切な判断が必要です。
荷役
荷役とは、荷物の積み込み・積み下ろしなどを行う業務です。具体的には、トラックや飛行機などの輸送機関に荷物を積み込む・保管のため倉庫へ入出庫するといった作業が該当します。また、海外と取引する輸出入品については、通関手続きも荷役として担当することがあります。
流通加工
流通加工とは、物流拠点内で荷物に付加価値をつける加工を行う業務です。具体的には、ラベル貼り・値札付け・箱詰め・組み立てなどの作業が該当します。ほとんどの場合、送り主からの依頼を受けて実施されます。
包装
包装とは、梱包材で荷物を保護する業務です。荷物が損傷しないよう、中身や大きさに合わせて専用の容器が使用されることもあります。近年では環境に配慮した取り組みが進められており、リサイクルやリユースできる素材が梱包材として活用され始めています。
輸送・配送
輸送・配送とは、その名の通り荷物を受け取り手のもとまで届ける業務です。ただ荷物を運ぶだけでなく、内容や目的地に応じて輸送機関を選択し、一時保管先の倉庫を手配するなど、的確な輸送計画を立てる必要があります。
情報管理
情報管理とは、物流に関する情報の記録・管理を行う業務です。具体的には、輸送中の荷物の追跡や、荷物に合わせた倉庫の温度・湿度調整などが当てはまります。さらに、輸送の依頼を受けてから配達が完了するまでのデータを収集し、作業の効率化や顧客満足度の向上のために活用します。
物流業界の平均年収
国税庁の「令和4年分 民間給与実態統計調査」によると、物流業界の平均年収はおよそ395万円です。日本人全体の平均年収は458万円であるため、平均よりやや低い傾向にあることがわかります。ただし、物流業界の業務は多岐にわたるため、職種によって差が生じる場合があります。
物流業界の魅力とやりがい
物流業界は大変なイメージをもたれやすいですが、実際はさまざまな魅力を感じられる仕事です。ここでは、物流の主なやりがいや魅力を4つ紹介します。
日本経済を支えられる
物流業界の業務は、日本の商取引で重要な役割を担っています。また、入社後すぐに現場を任せてもらえるケースも多いため、日本の経済を支えている自覚を持って業務に取り組めるでしょう。自分の仕事が必要不可欠であるという意識は、働くうえで大きなやりがいになります。
仕事がなくなることがない
インターネット技術の発展やオンライン通販の拡大に伴い、物流業界は年々市場が増え続けています。今後も仕事がなくなることは考えづらいため、世界情勢や景気の波に左右されることなく安定して働きやすいでしょう。
自分のペースで業務を進められる
物流業界のなかでも、トラックのドライバーや流通加工作業は比較的自分のペースで業務を進めやすい傾向にあります。また、業務で他人と接する機会が限定されるため、黙々と集中するのが好きな方にもおすすめです。ただし、繁忙期になると業務量が急激に増える可能性があるため注意してください。
先進技術を体感できる
物流業界は現在DX化が求められており、さまざまな企業でIT技術の活用が推進されています。具体的な例として、倉庫の入出庫作業にロボットを導入し、従業員の負担を軽減する取り組みなどが挙げられます。先進技術で業務の効率化を進められる点は、他の業界にはあまりない魅力といえるでしょう。
物流業界の課題と今後の展望
最後に、物流業界の課題と今後の展望について解説します。将来的に物流業界への転職を検討している方はぜひチェックしてみてください。
2024年問題
2024年問題とは、トラックドライバーの時間外労働の上限規制が2024年から適用されることで、人手不足の深刻化が懸念される問題です。この規制はトラックドライバーの労働環境改善のため、厚労省の「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」によって定められました。労働時間を遵守しつつ、限られたドライバーの数で効率よく業務を継続できるよう、さまざまな企業でリードタイムの延長やスイッチ輸送の実施といった取り組みが行われています。
BCPへの対応
日本のインフラを支える物流業界では、自然災害等の緊急事態が発生しても機能し続けられるBCP(事業継続計画)が求められています。実際、国土交通省からは2015年3月に「荷主と物流事業者が連携した BCP 策定のためのガイドライン」、2023年3月には「多様な災害に対応したBCP策定ガイドライン」が提示されています。災害が多い日本において、BCP対応は重要な課題といえるでしょう。
物流業務の効率化
物流業界で人手不足が慢性化している要因の一つとして、ハードワークになりやすいことが挙げられます。この状況を改善するためには、IT技術を取り入れた物流業務の効率化が必要不可欠です。現在はさまざまな企業で自動化のためのシステムやロボットの導入が進められており、業界全体でDX化に取り組んでいます。
モーダルシフトへの対応
モーダルシフトとは、できるだけ環境への負荷が少ない輸送方法に切り替える取り組みです。特にトラックはCO2の排出量が多いため、CO2を削減できる鉄道や船舶などへの転換が求められています。ただし、輸送効率や品質に課題が残るため、サステナビリティに配慮した改善策を今後も検討していく必要があります。
まとめ
この記事では、物流業界の主な仕事内容や今後の展望などについて解説しました。物流業界は人材不足や労働環境の改善などさまざまな課題を抱えている一方、日本の経済を支えるやりがいの大きい仕事です。もし物流業界への転職を目指す場合は、業界の実情に詳しい転職エージェントに相談しながら転職活動を進めるのがよいでしょう。Izulの転職エージェントでは、徹底的にヒアリングしたうえで、求職者のキャリア形成を重視した伴走型のサポートを実施しています。まずは相談からでもお気軽にご利用ください。