履歴書や職務経歴書で求められることの多い志望動機。多くの志望動機を確認している採用担当者の場合、書き出しで目を引かなければ、そのあとの文章に目を通してもらえない可能性もあります。そのため志望動機の中でも書き出しは、特に重要な部分です。
特に中途採用の場合、どんなに魅力的な経歴があっても読みにくい文章が書かれていると、論理的思考のなさや稚拙さが目立ち、悪い印象を残す可能性があります。
そこで今回は、第一印象を良くする志望動機の「書き出し」について解説します。書き出しパターンや職種別の書き出しを例文も交えて紹介しているので、本記事を参考に自分なりの書き出しを作成してください。
中途採用の転職において志望動機が大切な理由とは?
志望動機の書き出しは、文章を最後まで読み通してもらい、他の応募者よりも高評価を獲得するための重要な部分です。採用担当者は、多くの応募者から寄せられる履歴書などをチェックしています。そのため、ありきたりで印象に残らない志望動機は、しっかり読んでもらえない可能性があります。志望動機をとおして自身の魅力を余すところなく伝えるためにも、採用担当者の心をつかむ書き出しにしましょう。
志望動機の書き出しで押さえたい4つのポイント
中途採用の担当者は、自社の即戦力となる人材を求めています。そのため、志望動機の書き出しが応募する企業とマッチした人材であることを論理的に伝える文章でないと、真剣に読まない可能性が高いでしょう。そこで本章では、採用担当者の興味を引き、書類選考に通りやすい書き出しにおけるポイントを4つ紹介します。
結論を最初に述べる
志望動機の書き出しにはまず結論を記します。なぜ応募企業を志望するのか、理由を始めに書きましょう。
志望動機に限らずビジネスシーンにおいては、結論を最初に伝えるのが基本です。結論を後回しにすると意図が分かりにくく、論理的な思考法ができない印象を持たれます。
「志望動機は〇〇です」といったシンプルな結論から書いても問題ありません。ただし「貴社のサービスに大変強い思い入れがあります」「〇〇の経験を活かして今後は〜〜したい」など、具体的な書き出しから始めるとほかの候補者と差別化しやすいでしょう。
意欲的な姿勢を見せる
志望動機の書き出しでは、意欲的な姿勢を見せることも重要です。そもそも企業が候補者に志望動機を尋ねる理由には、以下の2つが挙げられます。
- 長く働いてくれるか確認したい
- 会社にどの程度の思いを持っているのか把握したい
書き出しで意欲的な姿勢を見せることで、企業側のニーズはカバーできるでしょう。意欲をアピールするためには、企業に興味を持った理由や入社後に成し遂げたいことをエピソード付きで記載することが重要です。エピソードを盛り込み具体的にすることで、説得力が生まれます。
具体的な内容を記載する
具体的な内容を盛り込むことも、志望動機を記載する際に意識すべきです。例えば「応募する企業のどこに魅力を感じたのか」や「何で貢献できるのか」を書くと、企業の理解度や仕事への姿勢が伝わりやすいでしょう。
「貴社の〇〇というビジョンに共感した」「貴社の〇〇という事業内容に惹かれた」など、具体的な内容を盛り込みましょう。
適切な文字数に収める
履歴書に記載する志望動機の書き出しは、60〜100字程度が適切な文字数といわれています。基本的に志望動機全体では採用担当者が30秒から1分で読める300字程度が適切なボリュームであるため、全体の3分の1程度を書き出しに利用すると良いでしょう。ビジネスにおける文章は「結論→根拠→まとめ」の構成で書くと伝わりやすく、採用担当者に好印象を与えられます。書き出し部分はシンプルな表現を心がけると、意図が伝わりやすくなるでしょう。
志望動機の書き出しパターン3選
本章では、志望動機の書き出しパターンを3つ紹介します。基本的にこの3つのパターンを用いれば書き出しで失敗することはないでしょう。
「志望動機は〇〇です」
志望動機をシンプルに伝える書き出しです。ストレートに志望動機を伝えた後は、入社後に実現したいキャリアやその企業で活かせる自分のスキルを記載すると、スムーズで読みやすい志望動機になるでしょう。「私が貴社を志望する理由は〇〇です」「志望理由は〇〇です」といった言い回しでも、志望動機がストレートに伝わります。
私が貴社に応募したのは、お客様の要望に応じた提案型の住宅販売ができる不動産会社を探していたためです。私は不動産会社で営業職として、個人向け賃貸物件の紹介や中古マンションの仲介を行っていました。しかし、既存の物件ではお客様の要望に応えきれませんでした。そこで、お客様のご要望にお応えできる提案型の住宅営業に挑戦したいと考えています。 |
「私が貴社を志望する理由は〇〇です」「志望理由は〇〇です」といった言い回しでも、志望動機がストレートに伝わります。
「〇〇の経験を活かして将来は〜〜したい」
企業がその候補者を採用すべき理由をストレートに伝えられるため、納得感を得られやすい書き出しです。
国産車ディーラーでの経験を活かし、将来は輸入車を取り扱いたいため、貴社に応募いたしました。前職ではさまざまな年代や立場の方への仲介を担当し、新車を案内しておりました。自動車の魅力をお伝えすることにやりがいを感じており、得意な英語が活かせる輸入車というフィールドに挑戦したいと考えております。 |
書き出しの次にくるフレーズで経験の活かし方を説明すると論理的な文章になり、さらに説得力のある志望動機に近づきます。
「貴社の〇〇に強い思い入れがある」
応募先企業の商品やサービス、ビジョンに対して特別な思い入れがある場合に有効な書き出しです。意欲的な姿勢や会社に対する好意を、比較的簡単にアピールできます。
前職の事務職で貴社の製品を愛用し強い思い入れがあり、応募いたしました。環境への配慮からお客様の評価が高いことも存じ上げていました。貴社は環境配慮製品で高い評価を得るだけでなく、ボランティア活動にも積極的に取り組んでおられます。貴社で、事務職で培ったコミュニケーション能力を生かし、営業やボランティア活動を通じて社会貢献に寄与したいと感じました。 |
しかしこの書き出しを使用した際は、面接でそのサービスやビジョンについて深掘りされる可能性が高いため、より念入りに企業研究をしておきましょう。
【職種別】志望動機の書き出し例文を紹介
本章では記事前半で述べた4つのポイントや、3つの書き出しパターンを踏まえた書き出しを職種別に紹介します。
営業
営業職はさまざまな企業で募集されています。そのため、その企業でないといけない理由を明確にすることで、担当者は求職者の企業に対する熱意を感じ取れるでしょう。
日頃使用している〇〇に強い思い入れがあり、今回志望した次第です。毎日貴社の〇〇を利用しているため、実際の使用感や使ってみなければわからない魅力をユーザーに訴求・営業できるかと思います。(以降、前職での営業経験などを記載)
例文のように、応募先企業の商品やサービスに焦点を当てると、その企業でないといけない理由を容易に伝えることができます。
接客
「人と話すことが好きだから」など接客業で比較的使用されやすい志望動機を設定すると、差別化が難しくなります。これに対して下記例文のようにその企業特有の方針やサービスに着目すると、独自性の高い志望動機を作成できるでしょう。
貴社の「一人ひとりのユーザーを大切にする」といった販売方針に強く共感し、この度応募した次第です。前職ではただ企業側が販売したい商品を売るのではなく、お客様のニーズを探って本当に必要なものを提供することを心がけていました。(以降、入社後に成し遂げたいことなどを記載)
企業特有の方針やサービスに着目する方法は、未経験の方でも取り入れやすいでしょう。その企業でないといけない理由を同時に伝えられる点も魅力です。
IT・Web系
IT・Web業界で求められるスキルには、顧客分析力やコミュニケーションスキル、設計力などが挙げられます。前職でIT・Web系の職種に勤めていた場合は、こういったスキルを志望動機に盛り込むことをおすすめします。
前職でのSNS運用経験を活かして、今後はより幅広い媒体で集客したいと考えています。SNSやオウンドメディア、広告などの集客媒体はユーザーニーズを深く探って、求めているコンテンツを提供することが最も重要です。SNS運用では深くニーズを探っていましたので、入社後もこの意識を活かして業務にあたることができると考えています。(以降、その企業でないといけない理由などを記載)
なお未経験の場合は、自分が知らないことに対しても積極的に挑戦しようとする姿勢をアピールすると良いでしょう。なぜなら、IT・Web業界は日々情報がアップデートされるためです。面接で積極的に学ぶ姿勢を示せれば、未経験でも採用のチャンスはあるでしょう。
コンサル
コンサルタントには、コミュニケーション能力や論理的思考力、プロジェクト管理力などのスキルが求められます。これらのスキルを盛り込むと、より面接官に刺さる志望動機になるでしょう。
志望理由はSEとして身に付けた技術を活かして、ITコンサルとしてより幅広くユーザーをサポートしたいと考えたためです。前職では技術的な要件設計を通して、ITスキルだけでなく、プロジェクト管理力や顧客折衝スキルなどを習得しました。(以降、前職での経験の活かし方を記載)
未経験者であるからといって、コンサルタントに必要なスキルを何一つ持っていないとは限りません。上記例文のように前職で培ったスキルをアピールしてもよいでしょう。
事務
事務職は、さまざまな業界・企業で募集されています。そのため、その業界・企業でないといけない理由を明確にしなければ、面接官を納得させることは難しいでしょう。
前職では出版業界の事務員として従事していましたが、強い思い入れのある〇〇を提供している貴社の元でより経験を積みたいと考えこの度応募した次第です。(以降、思い入れのある部分の詳細を記述)
上記例文のように前職での経験を絡めて、業界・企業を設定すると説得力のある志望動機になります。
【例文付き】志望動機のNGな書き出し事例を紹介
志望動機の書き出しに「成長したい」「社会の役に立ちたい」などの抽象的でありきたりなフレーズが使われていると、採用担当者の心をつかむことは難しいでしょう。
採用担当者が志望動機から読み取りたいのは、以下の2点です。
- 自社の社風やビジョンとの相性
- 熱意・志望度の高さ
自分本位な視点ではなく、企業側の立場にたった志望動機を書く必要があります。そこで、具体的なNGな書き出し事例と改善ポイントを紹介します。
結論が後回し
前職は賃貸仲介の営業で、入居者が決まらない物件のオーナー様に家賃見直しなどを提案していましたが、物件自体の改善が必要だと感じていました。 |
結論が書き出しの100字以内に入っていないため、何がしたいのかが伝わりません。「幅広い提案ができる企業を探していた」などと先に結論を書くことで、自身の考えや採用担当者が知りたいことを伝えましょう。
志望動機が抽象的すぎる
貴社の企業理念に共感し、新エネルギー事業に魅力を感じ志望しました。OB訪問や説明会での丁寧な対応から、人を大事にする社風も実感したのも志望理由の一つです。 |
企業の魅力だけを並べており、応募者がどうしたいのかが伝わらない文章となっており、何がしたいかが伝わってきません。自身の経験や熱意と仕事内容を結びつけ、入社後にどんな貢献ができるかを具体的に述べましょう。
受身な印象を与える
近年IT業界の市場規模が大きくなっているため、ITエンジニアとして働きたく貴社を志望いたしました。貴社の充実した教育プログラムで基礎をしっかり学べる点に魅力を感じています。 |
「学びたい気持ち」は伝わりますが、即戦力になろうという意欲が感じられず、受身な印象を与える書き出しです。中途採用での転職は、過去の実績やスキルの高さが評価されるため、企業に貢献できることを書きましょう。
志望動機の締めくくり文章はどう書くべき?
書き出しと同様に重要なのが締めくくりです。締めくくりから熱意やアピール内容が伝わらなければ、インパクトの弱いありきたりな志望動機になってしまいます。締めくくりを記載する際のポイントは以下の通りです。
以下の表は締めくくり文章のポイントと具体例です。採用担当者の心に残るフレーズになるよう工夫し、志望動機の文章を締めくくりましょう。
ポイント | 具体例 |
前向きな表現で書く | 貴社であれば○○が実現できると考えたため志望した次第です。 ○○といった目標を掲げて活躍いたします。 |
意志を伝える | お客様一人ひとりに寄り添った提案を行い、○○を目指します。 ○○の資格取得などにも取り組みながら精一杯精進して参ります。 |
入社後を想像しやすくする | 入社後は○○という強みを活かして○○の実現に尽力します。 入社後は○○の経験を活かし、能動的に働きかけていきます。 |
具体的に伝える | ○○で学んだことを活かし、製品の生産技術開発に貢献します。 ○○の知識を活かし、○○の開発に貢献します。 |
まとめ
採用担当者の心をつかむ志望動機の書き出しにするには、結論を先に書くことが重要なポイントです。企業側が求める「なぜ当社を選んだのか」「当社で何をしてくれるのか」という点を念頭におき、ストレートで簡潔な言葉で書き出しを作りましょう。志望動機の書き出しが上手く作れると、自身の魅力をしっかりと伝えられるため、採用される確率が上がります。志望動機の書き出しで悩むことがあれば、転職エージェントに相談してみましょう。
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