どんな企業にも必ずといっていいほど存在する「営業職」。企業や個人へ商品を売り込む仕事で、営業職の働きは会社の利益に直結します。営業職というと、なんとなく仕事内容をイメージできる方が多いかもしれませんが、一口に営業職といっても、実は営業手法や営業先などで仕事内容はさまざまです。
仕事内容に応じて活かせる強みが異なってくるため、営業職を志望するにあたっては、これらの分類をしっかり理解しておくことで、企業に対してより効果的な自己PRが可能になります。この記事では営業職の仕事内容に関して解説しつつ、志望動機を書くうえでのポイントと、実際に使える例文をご紹介します。
営業職の特徴
営業職の仕事を一言でいえば、「会社に利益を上げること」です。事務職や製造などと異なり、営業職は企業や個人といったお客様を相手にして、実際に商品を売り込みます。
その売上件数はそのまま会社の利益として反映されるため、数ある職種の中でも重要であることはいうまでもありません。商品を売り込むにあたっては、優れたコミュニケーション能力が必要です。
お客様に「欲しい」と思ってもらうためには、会話によって信頼関係を築き、お客様のニーズを引き出し、悩みや課題を解決できる商品を紹介することが大切です。会話のバリエーションや商品知識が多いほどお客様に合わせた対応が可能になるため、採用にあたって経験や実績がある人は有利に働きます。
営業未経験であっても、過去にアルバイトで接客業をしていた人や、人当たりが良くコミュニケーション能力に自信がある人は積極的にアピールしましょう。また、抱えるお客様の数に限らず、それぞれに合わせた提案を常にできるよう情報収集も欠かせません。
顧客が増えれば管理するためのリスト作成も必要ですし、さらに新規開拓のためのテレアポも重要な業務です。業務は多岐にわたるため、時間管理を上手にこなせなければ大変に感じる方も多いでしょう。マルチタスクや計画的に行動することが得意な方は、大いにアピールしてください。
【種類別】営業職の仕事内容
ここでは営業職の仕事内容に関して、以下の3つに分けてより具体的に解説します。
・手法別
・顧客別
・形態別
これらの分類を知ることで、あなたに合う営業職はどのようなものなのか、どんな営業職に就きたいのかがより明確にイメージできるはずです。志望動機を書く際にも大いに活かせるため、しっかりと理解しましょう。
手法別
始めに「手法別」での分類です。一口に営業する、売り込むといっても、企業によって手法はさまざまあります。主要な営業手法とその特徴はそれぞれ以下の通りです。
・新規開拓営業 新たな取引先を獲得するための営業活動です。企業が成長するために利益の向上は必須ですが、新しい契約が増えれば当然売り上げは上がります。一番分かりやすい営業実績といえるでしょう。 |
・ルート営業(深耕営業) 新規開拓とは異なり、取引先である企業や個人に対して、さらに営業をかけるのがルート営業(ルートセールス)です。納品などで日々訪問する際に、会話の中で新たなニーズや悩みをヒアリングし、それに見合った自社商品を紹介します。 「御用聞き営業」とも呼ばれており、日頃からこまめに連絡を取り良好な関係を築いていることが大切です。ルート営業を重ね、顧客と深い関係を築けてくると、「深耕営業」と呼ばれる手法になってきます。既存の顧客の潜在的なニーズを探って、新規取引を狙うという点でルート営業と同じです。 強い信頼関係を構築することで、商品そのものの魅力というよりも「○○さんが提案してくれる商品なら」という、セールスマンの魅力による契約が期待できます。企業に安定した利益をもたらすために非常に重要な営業手法であり、これができる人材は代えがききません。 |
・訪問営業(テレアポ営業) 事前にアポイントを取り、顧客を訪問して営業を行うのが訪問営業です。営業職の基本的なスタイルであり、いかに数多くの顧客を訪問できるかが勝負ともいわれています。訪問営業するにあたってアポイントを取るのがテレアポ営業です。 テレアポはあくまで顧客と会う約束をするのが目的なため、この時点では商品説明や提案などの必要はありません。「より詳しく話を聞いてみたい」と思ってもらうために、商品やサービスのメリットを簡潔、具体的に説明するのがポイントです。 また、事前のアポイントなしで訪問する営業手法は飛び込み営業といいます。相手に商品に対するニーズがあるとは限らないうえ、心の準備もできておらず警戒心も持たれやすいため、拒否されるケースも少なくありません。 |
・テレコール営業 対面することなく、電話のやり取りのみでクロージングまで完結させる営業手法です。相手の顔が見えないため声のトーンが大切で、対面による営業より困難に感じるかもしれません。効果的な台本を作ることで、短時間で信頼を獲得しつつ相手のニーズをヒアリングし、商品への期待感を高めて成約につなげやすくなります。 |
・反響営業 インターネットやテレビ、新聞などといったメディアを用いて広告宣伝をし、問い合わせてきた人を見込み客とみなして営業をかける営業手法です。ターゲットがすでに絞られているため、営業をかけ始めてから成約までがスムーズで効率化できます。 |
・受付営業(カウンターセールス) 受付に座っている際、顧客からの購入依頼などに対応する営業方法が受付営業です。購入まで取りこぼしなく結びつけることができるよう、きっちりとした対応をする必要があります。その場での質問などにも慌てず対応するために、コミュニケーション能力の高さが求められます。 窓口となるカウンターに来店した顧客に対し、購入依頼への対応や商品案内、提案からクロージングにつなげる営業手法が受付営業(カウンターセールス)です。すでに商品やサービスに関してある程度の知識を有していることが多い点で、反響営業の一面もあります。 その場での質問に慌てず対応できるだけの知識が求められるほか、顧客のニーズを的確にくみ取って最適な提案をするコミュニケーション能力が必要です。 |
・インサイドセールス 見込み顧客に対して電話やメール、あるいはZoomなどのWeb会議システムを用いて営業をする手法です。本来営業といえば、顧客を訪問して対面で行うのが基本ですが、インサイドセールスは直接会わないことで、時間や場所に囚われずに営業ができるため、働き方改革の観点からも注目を集めています。昨今のコロナ禍によるリモートワークの広がりもあり、導入する企業も増えているようです。 |
新規顧客の開拓か既存顧客との新規契約か、対面かリモートかなど、営業手法だけでもさまざまです。コミュニケーション能力が必要なのは共通として、それぞれで意識すべきポイントは微妙に異なります。
顧客別
続いては営業対象とする顧客別の分類です。「法人営業」と「個人営業」の2種類があります。
・法人営業 法人営業は企業を対象として営業を行い、「BtoB」と呼ばれます。取り扱う商品は自動車や電化製品などの有形商材、保険や広告、求人などの人材系商材、IT関連や金融関連といった無形商材などさまざまです。企業を相手にする分、商品やサービスの規模が大きくなったり、契約が高額になることも珍しくありません。 法人営業のポイントは、企業の担当者(場合によっては経営者層も)を納得させるだけの、理論的で根拠のあるアプローチです。高い情報収集能力やプレゼンスキルが問われるほか、効果的なプレゼンに必要な資料作成も重要なポイントとなります。 |
・個人営業 「BtoC」と呼ばれる、一個人を対象とする営業です。法人営業と異なり、営業を行う相手がそのまま購入者となるため、人柄の良さやコミュニケーション能力次第で、スムーズにことが運べば即日契約も期待できます。 法人営業以上に「人」と「人」の信頼関係が購入を左右する重要なポイントです。営業スタイルは電話でのアポイントや飛び込み営業などのほか、不動産のように店舗に来た顧客への営業などさまざまです。取り扱う商品も自動車や保険、ネット回線など、有形・無形さまざまです。 |
企業が相手か、一個人が相手かで、アプローチの仕方も変わってきます。また、あなたの性格によっても、どちらによりやりがいを持って働けるかが異なるでしょう。
形態別
最後に、営業形態によって異なる仕事内容をそれぞれ解説します。
・メーカー営業 商品開発するメーカーが自社商品を売り込むのがメーカー営業です。BtoBビジネスであることが多く、営業相手はほとんど法人ですが、BtoCの消費者一個人を対象に営業することもあります。営業スタイルは、主に新規営業とルート営業の2つです。 |
・商社営業 さまざまな企業やメーカーから商品を仕入れ、営業販売をするのが商社営業です。幅広いネットワークを持つ商社の強みを活かして、多くのメーカーは取引先とのやり取りや、新規開拓の手間とコストを減らすために商社と取引きし、手数料を支払うことで商品の販売などを依頼しています。 一方で、商社は取り扱う全ての商品に関して、個別に豊富な知識があるわけではないため、商社が対応しきれない場合はメーカーの営業が同行することもあるでしょう。商社営業とメーカー営業は、お互いの強みを活かしながら営業活動を補完しています。 |
・代理店営業 自社製品を販売してくれる代理店を開拓したり、販売のサポートをするのが代理店営業です。一般的に個人営業職は、自ら直接一般消費者に商品を販売します。一方で代理店営業は、一般消費者への商品販売は代理店が行ってくれるというのが特徴です。代理店はあらゆる企業の商品を数多く扱っています。その中でも自社商品をより多く販売してもらえるよう、代理店営業職は代理店側との関係構築を大切にし、販促ツールや商品ノウハウの提供を欠かさないことがポイントです。 |
営業職の志望動機を書くうえでのポイント
営業職について理解したところで、採用試験に向けてどんな志望動機を書くのが好ましいか、4つのポイントに分けて解説します。
どのような人材が求められるか理解しておく
営業職に限りませんが、企業がどんな人材を求めているのか明確に理解しましょう。営業職はお客様とのコミュニケーションがものをいう職種です。表情豊かで人当たりがよく、人と話すのが好きという方が向いており、企業もそういう志望者を求めています。
無愛想で、人と話すのが苦手な方と会話しても有意義な時間にはならず、いくら商品がよくても、営業の態度が悪ければ契約しようという気にはなりません。企業にとって営業職は会社の顔であり、お客様と企業をつなぐ窓口です。人との信頼関係を築くのが上手な、コミュニケーション能力の高い人材が求められていることを理解し、自己アピールに活かしましょう。
なぜ営業職に就きたいのかを明確にする
数ある職種の中で「なぜ営業職に就きたいのか」を明確に伝えましょう。他の職種ではなく、営業職だからこそ感じられるやりがいや、営業職で働くことで身に付くスキルなどを具体的に挙げ、志望動機に説得力を持たせるのがポイントです。
営業職は特別な専門的スキルが不要で、未経験でも始められる間口の広い職種です。基本的なビジネスマナーやコミュニケーション能力、プレゼン能力や課題発見・解決能力などといった、ビジネスパーソンに必要な全てを経験し身に付けられるメリットがあります。契約件数・売上金額で、自分が会社にどれだけ貢献できたかが数字で明確になることも、やりがいを感じる点です。
営業職の特徴を理解し、自分のやりたいことや強みと併せて、「どうして他の職種ではなく営業職なのか」を明確にしながら伝えるのが大切です。
読みやすさ・分かりやすさを意識して文章を書く
読み手を意識して、読みやすさ・分かりやすさに注意しながら書き進めましょう。素晴らしい実績や経験、人柄や熱意も、企業側に伝わらなければ意味がありません。
正しい文章表現かはもちろん、視覚的にも見やすい文章を心がけてください。例えば文字が小さすぎたり改行が全くない状態だと、非常に読みづらく、印象が良いとは言えません。ポイントを絞ってきれいに記載することを意識してください。
また、分かりやすい文章にするためには、結論から述べるのが大切です。一度目を通しただけで言いたいことがすぐ伝わる文章にしましょう。結論からスタートしてその理由を述べていく、という順序を意識してください。
自身を採用することで得られるメリットを記載する
あなたを採用するとどんなメリットがあるのかをアピールしましょう。企業が求人を出す理由は、単なる人員不足などもあるでしょうが、なにより企業がより成長するためです。「この人は売上に貢献してくれそうだな」と印象付けられないと、当然ですが採用してもらえません。
営業職は特に売上に直結する職種であるため、数字へのこだわりと責任感を持って取り組む姿勢がj求められます。また、相手に好印象を与える愛想のよさ、コミュニケーション能力の高さも必要です。自身を振り返って、信頼関係が構築できたエピソードや、目標に向けて努力し結果を出したエピソードなどがあれば具体的にアピールしましょう。
営業職の志望動機を例文で紹介
最後に、志望動機の例文をOK例とNG例に分けてご紹介します。それぞれ解説もしていますので、ぜひ参考にしてください。
OK例
まずはOK例からです。
私の長所は人見知りをせず、誰とでもコミュニケーションをとれることです。新規顧客を獲得するにあたって、私の長所は必ず役に立つと考えています。 学生時代のアルバイトで接客業をしていたのですが、お客様一人ひとりに真摯に向き合い、ご要望をよく聞いたうえで提案することで、非常に満足していただき「次回もお願いします」と言われた経験があります。営業職として貴社の商品をさらに多くのお客様に知っていただくために、この経験を役立てたいと考えております。 貴社は顧客満足度を重視しており、事実、競合他社と比較しても非常に高い実績があります。会社説明会でもお話がありましたが、新規のお客様と少しずつ信頼関係を築いていき、長期的に関わるための関係性を構築するプロセスを大切にされている点に感銘を受けました。 入社した際には、営業職として大切なコミュニケーション力やヒアリング力、提案力や商品知識などを一日でも早く身に付け戦力になれるように、人一倍努力していきます。 |
営業職で活かせる長所を裏付けるエピソードとして、アルバイト時代の実績を具体的に述べており、企業に貢献できるポイントを分かりやすく伝えています。会社説明会での内容も織り交ぜることで「貴社の営業職」への熱意が感じられる志望動機です。
入社後の姿勢も締めの文に入れることで、前向きな印象を与えてくれます。
NG例
続いてNG例です。
私はどんな困難な状況でも諦めず、ポジティブに行動できるのが強みです。 大学の部活動において、大会直前に大怪我をしてしまい出場が困難になってしまったことがあるのですが、そこで腐らず、チームメンバーのマネジメントに回ったり筋力強化に励んだりして、怪我をしている中でもできることを見つけ注力しました。私の姿勢がチームのムードにいい影響を与え、怪我から復帰後は過去最高成績を残しています。 また、連敗が続きチーム全体が落ち込んでいた際など、逆境と向き合い改善を果たしたことから、監督から副主将に任命されました。 貴社は業界大手で、他社に先立ち業界全体をリードする存在です。積み重ねたノウハウや培ってきた経営体力を活かし、挑戦し続けているところに魅力を感じます。時流に合わせて常に新商品を開発し、現状に甘えることなく顧客のために進化し続ける姿勢に大きな感銘を受けました。逆境を乗り越える私の強みは、貴社のさらなる成長、顧客様の問題解決に必ず役立ちます。 |
強みと熱意が分かるのはいいのですが、根拠が弱いと感じる点があります。怪我中のポジティブな姿勢や行動と、チームの過去最高成績はどこまで関係があったのか、説得力に少々欠けます。
副主将に任命された時のエピソードも、「逆境と向き合い改善を果たしてきた」とありますが、具体性に欠けています。この辺りをさらに肉付けできれば、根拠もはっきりした熱意に溢れる志望動機になるでしょう。
まとめ
会社員といえばのイメージもある営業職ですが、その仕事内容は多岐にわたり、志望するにあたっては分類ごとでポイントを押さえた自己アピールが必要です。営業職は未経験からでも就業しやすい反面、周囲と自身の意欲を差別化するのが難しい傾向にあるのも事実です。志望動機における独自性を意識したうえで、採用担当者の印象に残る志望動機を作成し、営業職への転職活動を成功させましょう。