「営業職に就きたいけど、断られることが多い新規開拓は避けたい」と思っている人は多いのではないでしょうか。営業職にもさまざまな形態があり、顧客からの問い合わせに対して提案する形の営業や、既存顧客に対してアプローチする営業があります。今回紹介するのは、既存顧客を対象とする営業手法である「深耕営業」です。
今回は、深耕営業の概要や目的、求められる能力や成功につながるポイントについて解説しています。深耕営業の効果をより高めるために意識しておきたいことも紹介しているので、営業職の種類を把握したうえで転職活動を進めたい人はぜひ参考にしてください。
深耕営業とは
深耕とは「畑を深く耕す」という意味を持つ単語です。深耕営業は、既存顧客のニーズを深掘りして引き出しながら、課題解決につながる提案を行う手法を指します。新規顧客を開拓する必要がないため、断られることに関するストレスを感じにくいのが特徴です。ここでは、深耕営業の目的や重要性、他の営業手法と異なる点を紹介します。
深耕営業の目的・重要性
深耕営業は、既存顧客のニーズを引き出す目的で行われる営業手法です。一度成約して課題を解決したからといって、その後新たな課題が生まれないわけではありません。契約を通じた課題解決後に発覚する新たな課題を解決するために、深耕営業が重要視されています。既存顧客の現状を改めて確認する目的もあり、顧客自身が自社のニーズを客観的に把握するために行われる手法として取り入れられます。
また、既存顧客との取引内容を拡大し、自社の利益につなげる目的で行われるのも深耕営業の特徴です。このことから深耕営業は、顧客はもちろん自社の「今後」をより良いものとするために行われる営業手法といえます。
ほかの営業とはどう違う?
深耕営業と異なる営業手法として挙げられるのは、新規営業・既存営業・ルート営業です。それぞれの営業手法と、深耕営業の違いを以下に掲載しているので参考にしてください。
営業手法 | 深耕営業との違い |
新規営業 | 新しい顧客を獲得するための営業手法訪問・電話・メールなどの手法で行う断れる可能性が高く、顧客との信頼関係を構築する段階から行わなくてはならない |
既存営業 | 深耕営業と同様に既存顧客を対象とした営業手法契約後のフォローを行いながら提案を行う受動的なスタイルで、潜在ニーズを引き出す能動的なスタイルである深耕営業とは異なる |
ルート営業 | 取引のある顧客先を回ってフォロー・提案する営業手法既存顧客を対象とする点では深耕営業と同様だが、あらかじめ決められたルートにしたがって営業活動を行うのが特徴 |
深耕営業に必要な能力
ここでは、深耕営業担当者として活躍するために必要な、洞察力・聞く力・対応力について解説します。自身にこれらの能力が備わっているか客観視したうえで、深耕営業担当者になるための転職活動を進めてください。
洞察力
深耕営業は、顧客が把握しきれていないニーズを引き出し、解決策を提案する営業手法です。そのため、表面化していない課題を分析し、解決策の考案につなげられる洞察力が求められます。洞察力をもって顧客の潜在的なニーズを引き出せれば、顧客の課題を解決するだけでなく、顧客からの評価を上げることにもつながります。
聞く力
既存顧客の課題を発見するためには、根気強くヒアリングを続けることが大切です。そのため、聞き上手でないと深耕営業は成功しません。ただし、聞くことに加えて適度に相槌を打ったり、的確に質問を投げかけたりと、細かい配慮も求められます。
対応力
顧客が抱える潜在的な課題は変化する可能性もあります。そのため、顧客の課題に対して適宜柔軟に対応できなければ、深耕営業担当者として務まりません。また、一度対応を終えた企業だからといって、そこで止めてしまうことも避けましょう。一度課題を解決した顧客でも、引き続き対応することで新たな課題が生まれることもあります。都度課題が生まれることを想定し、適切な対応を繰り返すことが深耕営業担当者に求められる能力です。
深耕営業の成功につながるポイント
ここでは、深耕営業を成功させるうえで押さえておきたい以下3つのポイントを紹介します。
- 顧客目線で課題と向き合う
- 目標から逆算して行動する
- 顧客情報を細かく把握する
顧客目線で課題と向き合う
深耕営業は既存顧客が抱える潜在的な課題を抽出し、解決していくための営業手法です。そのため、自社目線での提案ではなく、顧客の立場になって課題を見つけ出す意識を持たなければなりません。顧客目線で課題と向き合えれば、よりリアルな解決策を導き出せるだけではなく、顧客が自社に抱くイメージも良いものとなります。
目標から逆算して行動する
深耕営業に限った話ではありませんが、課題をもとにした目標(解決策)から、どう施策を進めていくか考えることが大切です。ゴールが明確になっていなければ、そこに至るまでのプロセスも定まりにくいでしょう。課題と目標を直結させたうえで、どのような手段で解決していくかを、顧客目線で考えることが大切です。
顧客情報を細かく把握する
顧客目線で課題と向き合い、目標から逆算して行動するためには、顧客の情報をしっかり把握しておくことが大切です。どのような企業で、どのような商材を取り扱っているのか、事前情報をまず整理しておきましょう。そのうえで、ヒアリングの機会などを通じ、自身の仕入れた情報との相違点を把握し、顧客情報として正確なものに昇華させてください。
深耕営業の効果をより高めるには?
深耕営業の効果をさらに高めるには、顧客の信頼獲得を目的とした行動を心がけることが大切です。そのうえで定期的なアプローチを行うことで、深耕営業の効果をさらに高められます。
顧客の信頼獲得に向けた行動
顧客から信頼されなければ、深耕営業担当者としての役割を果たせません。信頼を獲得するためには、どんな小さな頼まれごとだとしても、全力で対応することが大切です。自身にとって優先度が低くても、顧客にとってはすぐに解決したい案件かもしれません。顧客目線に立つことを改めて意識し、顧客からの依頼には誠心誠意対応するよう心がけましょう。
また、連絡をこまめにとることも、顧客の信頼獲得に向けた行動として重要です。こまめに連絡しなければ、顧客から忘れられてしまう可能性があります。連絡が少ないと「不誠実な対応」をする担当者だと思われてしまうかもしれません。こまめに連絡をとることで顧客も逐一課題について話しやすくなるため、信頼獲得のうえで重要な行動です。
定期的なアプローチ
上述した「顧客の信頼獲得に向けた行動」は、できるだけ定期的に行うことを意識してください。日々の業務中に隙間時間ができたら、既存顧客を訪問して課題感をヒアリングすることも大切です。定期的にアプローチすることで顧客は「自社にしっかり向き合ってくれている」と感じます。信頼獲得につなげるうえでも、定期的にアプローチすることを意識しましょう。
まとめ
今回は、既存顧客の潜在ニーズを引き出す営業手法である、深耕営業について紹介しました。新規営業とは異なり、断られることによるストレスを感じにくいのが特徴です。ただし、洞察力や聞く力、対応力が優れていないと、深耕営業担当者として活躍するのは難しいでしょう。今回は、深耕営業を成功させるためのポイントや、効果をより高める方法も紹介しています。これから深耕営業担当者を目指す方はもちろん、深耕営業担当者として伸び悩んでいる人にとって、本記事が参考になれば幸いです。