ビジネスシーンでは新規事業や新サービスの展開によって提案書がマストアイテムです。しかし、提案書の内容がぼんやりしたものだと相手もイメージが湧きにくく、新規事業への熱意や企業にとってのメリットが伝わりません。
今回は、採用される提案書を作るためのコツや書き方を紹介します。提案書作りに悩んでいる方をはじめ、初めて提案書を作成する方は是非役立ててください。
提案書とは
ビジネスシーンでは企画書と提案書の2種類の書類があります。ここでは具体的にどのような違いがあるのか、提案書の種類や目的などを含めてご紹介します。
提案書の種類と目的
提案書は大きく分けて4種類存在し、それぞれの特徴を知ったうえで適切に使い分ける必要があります。
提案書の種類 | 目的 |
ステップ導入型提案 | ・小さく始めた事業やサービスの費用対効果を検証したあと、徐々に本導入、追加導入を進める提案方法 ・事業やサービスの効果に沿って提案できる ・顧客側にも変化やメリットが伝わりやすい |
コンセプト・セールス型提案 | ・自社製品の詳細や使用するメリットだけでなく、その先にある顧客満足度を重視した提案方法 ・利用によるメリット、変化が伝わりやすい |
網羅型提案 | ・顧客の目的に基づいて作成する提案書 ・自社製品導入におけるプレゼンなどに用いる |
ヒアリング型提案 | ・一般的な提案方法・費用対効果が伝わりにくく採用されにくい ・詳細に煮詰めるほか、顧客に合わせた内容を盛り込む必要がある |
いずれも顧客を相手とする一方で、内容には大きな違いがあります。提案書を作成するときは、顧客との関係性や状況などを踏まえたうえで作成するのが望ましいでしょう。
企画書との違い
提案書とは、顧客に対して提出する書類のことで、顧客が抱えている課題・トラブルを解決すべきときなどに作成・提出します。つまり、顧客の抱える問題や悩みに対して解決策を提案するビジネス書類のことです。
一方、企画書は自社で使用する書類を指します。厳密な定義はありませんが、上司に実施しても良いかを決めてもらうため、アイデアやプランを綿密に記載したのが企画書です。
なお、自社内でも提案書を提出する機会がありますが、この場合は提案書を提出した後に企画書を提出するのが一般的な流れとされています。
提案書の書き方
提案書を作成するにあたって、陥りやすいのが「独りよがりの提案」です。提案書の作成においては、作成者の熱意が強く反映される傾向にあります。熱意を相手に伝えることは大切ですが、本当に伝えたいものがぼやけてしまえば内容の伝わりにくい提案書となり、納得のいく結果には結びつきません。
そうならないためにも、ここでは基本的な提案書の書き方についてご紹介します。
1:提案先を調査する
提案書は顧客の抱える問題を解決させるためのビジネス資料です。そのため、提案先である顧客について細かく調査することが大切です。
「どのような悩みを抱えているのか」「どのように改善させたいのか」など、細かな情報収集を徹底しましょう。勘や上澄みだけの情報では顧客が自社の提案を理解しきれない可能性があるので、必ず時間をかけて調査するよう心がけましょう。
2:業界を調査する
顧客が抱える問題に対して適切な提案書を作成するには、業界の調査も必要不可欠です。同様のサービスや事業を展開する競合他社ではどのような対策を取り入れているかを調査し、顧客視点の提案ができるよう綿密な情報収集を実施しましょう。
なお、業界の調査も綿密に行い、顧客・自社双方にとってベストな提案書作りを心がけましょう。
3:社会動向を調査する
社会動向の変化や政策転換等による外部環境を調べることも大切です。厚生労働省・経済産業省の公式サイトや白書で、社会動向の変化や政策転換といった外部環境を調査しておきましょう。また、採用において重要な福利厚生に関するニュースも追っておくべきです。
4:ストーリーを整理する
1から3までの調査内容を踏まえ、事実・課題・解決策について整理しましょう。顧客からの問題を整理したら解決したい部分を洗い出し、そのうえで業界を調査し動向をピックアップします。
解決したい問題点、そして業界調査によって洗い出した動向を押さえたら、社会動向について調査し、顧客にとって必要不可欠なものとは何かをより細かく抽出しましょう。
5:清書する
1から4までに抽出した問題点や動向を整理したら、次は提案書に清書しましょう。このときは、”5W1H”を用いてストーリーに仕立てながら清書することをおすすめします。
5W1Hとは具体的に以下のようなものを指します。
When | いつ |
Where | どこで |
Who | 誰が |
What | 何を |
Why | なぜ |
How | どのように |
この基礎をビジネス寄りにしたものとして”6W2H”もあり、「Whom(誰に)」「How much(いくらで)」を付け足したものを指します。より具体性がある詳細な提案書を作成したいときは、6W2Hを用いて作成すると良いでしょう。
6:送付する
提案書が作成できたら、顧客に郵送、またはPDFなどにしてメールで送付しましょう。送付した後は、漏れがないよう送付した旨を電話などで伝えると安心です。
提案書の基本構成を覚えておこう
提案書を作成するにあたっては、基本構成を押さえておくことが大切です。一般的な提案書では以下の7つを盛り込む必要があります。
- タイトル
- 顧客の抱える問題(課題)
- 提案内容
- 顧客にとってのメリット
- 実際に行われたことで見られる結果(成功事例など)
- 実施までのスケジュール
- 費用
送付した提案書などの書類に、細かく目を通さない方もいます。提案書を作成する際は、基本構成を踏まえ、誰でも内容がイメージできる書き方を工夫しましょう。
提案書を作成するうえで重視したいポイント
提案書を作成するうえで重視したいポイントが6つあります。ここでは顧客に向けた提案書を作成する際に押さえておきたいポイントをそれぞれご紹介します。
目的の明確化
提案書は顧客の抱える問題に対して解決策を提案するビジネス資料です。それは同時に”解決策の採用”と等しくなければなりません。
提案書を受け取る顧客にとって、まずは興味を引くような内容であることが大切です。目的の明確化を行い、顧客にとっての課題を解決できるのは自社であることを強くアピールした内容に工夫しましょう。
提案先の課題
提案書は顧客の問題解決につなげるための具体策を提案する書類です。そのため、顧客の抱える問題を提案書の最大のポイントと捉えたうえで作成する必要があります。
「なぜ顧客は悩んでいるのか」「自分が顧客だった場合どのような物だと使いやすさを感じるのか」など、顧客ならではの課題を見つけることが大切です。
提案後の流れ
提案後の流れについても明確化しましょう。提案から実施までの大まかなスケジュールをはじめ、いつ、誰がどのようにして何を実施するのか、予算はどの程度要するのかなどを明記しておくと、提案書を受け取った顧客の意思決定がスムーズに進みます。
顧客側から見て意思決定しやすい提案書かどうかも、作成においては欠かせないポイントのひとつです。そういった意味でも、提案書を作成するうえでは顧客の視点に立った書類かどうかもチェックしましょう。
提案内容・信頼性
提案内容に具体性や信憑性を持たせることも重要です。提案書の内容が曖昧なものだった場合、検討段階まで進みにくくなります。クライアント企業に具体的な内容が伝わらなければ、断られてしまうと考えるのが自然です。提案書を作成するうえでは提案内容の裏付けをして、なぜ問題を解決できるのかを具体的に示しましょう
提案を採用するメリット
提案を採用するにあたり得られるメリットについても触れておく必要があります。提案を受ける側としては最も気になる部分であるため、細かく具体的に記載し、顧客視点で確認しましょう。
メリットについて触れる場合は、数字などを取り入れることで視覚的にも伝わりやすい内容に仕上がります。
文章・デザイン
PowerPointなどパソコンを使って提案書を作成する際は、文章やデザインなども工夫しましょう。一目でわかる内容に仕上げることはもちろん、数字や単語の強調、解説文の読みやすさ、読み手を捉えた内容であるかを取り入れるのがポイントです。
作成し終えたら、同僚や上司などに確認を取り、顧客の視点に合わせた内容かをチェックしてもらうと良いでしょう。
通りやすい提案書を作成するコツとは
採用率を高める提案書を作成するには、「キーパーソン特定」と「ヒアリング」が欠かせません。ここではそれぞれの取り入れ方についてご紹介します。
キーパーソン特定
キーパーソン特定とは、提案書の受け取り手(読み手)の特定のことです。提案書は顧客の問題解決につながる解決案を提案する書類であるため、キーパーソンの特定が重要です。
キーパーソンの特定があやふやだと、問題を具体化できずぼんやりとした提案書に仕上がってしまいます。その状態では問題そのものが抽象化してしまい、顧客側も「解決に至らないだろう」とネガティブに受け止めます。
キーパーソン特定は入念に行い、顧客の的を射た提案書作りを心がけましょう。
ヒアリング
通りやすい提案書を作成するには、顧客にとっての問題、つまり抱える悩みを細かくヒアリングすることも大切です。
ヒアリングする内容は顧客が抱える問題であり、企業経営におけるデメリットの部分です。改善できなければ顧客が減る可能性にもつながるため、細かく聞き出すことを心がけましょう。
顧客からのヒアリングを実施する際は、的確に課題を聞けるよう、事前にヒアリングシートなどを作成してから行うのがおすすめです。
まとめ
提案書を作成するには、顧客調査や企業調査、市場動向の調査などが必須で、多くの時間をかける必要があります。
時間をかけて丁寧なリサーチを実施できれば、顧客の視点に合わせた適切な提案書が完成します。しかし、最初から高度な提案書は作成できないため、まずは顧客と二人三脚で作り上げる気持ちで取り組み、提案書の内容を少しずつブラッシュアップしていくようにしましょう。