就職活動の中で「学歴ロンダリング」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか。似たようなワードでは「マネーロンダリング」という用語がネガティブなニュアンスで使われていますが「学歴ロンダリング」にはどのような意味合いがあるのでしょうか。
この記事では学歴ロンダリングの意味やメリット・デメリット、就職や転職への影響について詳しく解説します。
学歴ロンダリングとは
学歴ロンダリングとは、出身大学よりもレベルの高い大学院に進学することで、最終学歴のランクを高く見せることを指します。マネーロンダリングのように違法性があるものではないものの、学歴を良く見せるという性質からネットスラングとして使われるようになりました。努力を重ねて高いレベルの大学に合格し、そのまま大学院に進む人がいる中で、外部からの大学院入試は大学入試よりも難易度が低い傾向にあります。別の大学から同じ大学院に進まれることに不満を覚え、ネガティブな表現になっているという側面もあるでしょう。
学歴ロンダリングは敬遠される?注意すべき行動
前述の通り、学歴ロンダリングは場合によって有効に働くものの、注意すべき点もあります。学歴ロンダリングが敬遠されるリスクもあるので、気をつけるべき行動を確認しておきましょう。
大学院のネームバリューばかり求める
ランクの高い大学院のネームバリューだけを求めて学歴ロンダリングを行っている場合は周囲から敬遠される恐れがあります。本来は深い研究や発展への寄与こそが大学院の目的ですが、肩書だけを求める学生は研究に対するモチベーションが低く、教授から高い評価を受けることも難しいでしょう。
学歴ロンダリングの目的が就職活動になっている
より良い企業に就職するためだけに、学歴ロンダリングによって最終学歴の見栄えを良くしようと考えるケースも注意すべきです。ネームバリューばかり求めるパターンと同様に、本来研究目的で進むはずの大学院が肩書のための手段になってしまっているためです。目的のない大学院進学は、企業の採用担当者にも悪い印象を与えかねません。本末転倒にならないよう気をつけるべきでしょう。
学歴ロンダリングの失敗例
実際に学歴ロンダリングを行うためレベルの高い大学院を志望しても、思い通りに進められないリスクがあることも実情です。ここでは、学歴ロンダリングにおける失敗例を紹介します。取り返しのつかない事態を避けるためにも、想定されるリスクを確認してみましょう。
大学院入試に落ちてしまう
大学院入試が大学入試よりも低いハードルであるとはいえ、確実に合格する保証はありません。大学院入試に落ちてから就活を始めても周りからは大きく出遅れてしまい、理想とする企業に入社することは困難です。志望とは異なる大学院へ進むか、浪人して翌年の再受験または就活に切り替えるという選択肢になるリスクを心得ておきましょう。
授業のレベルについていけない
志望していた大学院に進学できたとしても、レベルの高い研究内容についていけなくなる恐れがあります。これまで学んできた大学よりも高学歴の学生が集まる環境で、さらに高い水準の学術的な研究に取り組まなければなりません。高いモチベーションや学習意欲がなければ苦労するでしょう。
研究内容や研究室の雰囲気が合わない
学歴や受かりやすさを重視して進学すると、研究内容や研究室の雰囲気に自分の想定とのズレを感じてしまうかもしれません。大学院は本来、志望する分野をより深く研究するという目的をもって進学するものです。学歴や入試の難易度ばかりに注目していると、研究内容や研究室に対する下調べがおろそかになってしまい後悔するかもしれません。
学歴ロンダリングを行うメリット
ここまで学歴ロンダリングの難しさや失敗例をお伝えしてきましたが、学歴ロンダリングにはメリットも存在します。
周囲から高く評価されやすい
就職・転職活動や初対面の人とのやり取りにおいて、学歴について話すときは最終学歴を評価することが多いでしょう。学歴の高くない大学と誰もが知る有名な大学院とでは、周りからの評価も異なることでしょう。偏差値の高い大学院を修了しているという実績は、立派な人物として初対面の相手へ安心感を与えることにもつながります。
高学歴を得られる
純粋に高学歴を得られることが大きなメリットです。志望する大学に入れずコンプレックスを抱いたままで、自分に自信が持てないという方もいるのではないでしょうか。ランクの高い大学院を修了することで、コンプレックスは解消され、自信を持って就職活動に臨めることでしょう。
転職活動を有利に進められる
出身大学よりもレベルの高い大学院を修了すると、履歴書の最終学歴にはその大学院名を記載することになります。最終学歴の偏差値が高くなることで、後々の転職活動にも有利に働くことが期待されるでしょう。出身大学卒業のままの最終学歴だと手が届かなかったような企業にも転職できる可能性があり、大きなメリットといえます。
学歴ロンダリングのデメリット
学歴ロンダリングには、メリットばかりではなくデメリットも存在します。後悔のない判断を下すため、注意点をしっかりと覚えておきましょう。
研究期間が短いので修士論文に苦労する
大学院を修了するために作成しなければならない修士論文は、当然ながら学士論文よりも高度なレベルが要求されます。内部進学の場合、大学生の時から一貫した研究内容に取り組む場合も多いでしょう。しかし外部生は、新たな環境で1から研究を始めなければなりません。修士1年目の時点で研究期間や知識量に差が開いているため、修士論文を書き上げるまでに膨大な労力を要するかもしれません。
人間関係の構築に苦労する場合も
学歴ロンダリングを行うと、これまでの大学生活と全く異なる環境に身を置くことになります。大学時代に築いた教授や仲間との人間関係が一旦リセットされるでしょう。場合によっては内部進学者だらけの研究室に、自分ひとりだけが外部からの進学者として身を置くことになるかもしれません。初対面の人とのコミュニケーションに苦手意識を持つ方は、人間関係で悩む可能性も考慮しておく必要があります。
社会人としてのスタートが遅れる
大学院に進学すると、社会人としてのスタートが大卒で就職した人と比べて2年以上遅くなってしまいます。年下の社員が戦力として働いている中で、自分は働く上での常識やビジネスマナーを1から身に付けなければならないような環境も大いに考えられるでしょう。企業によっては、社会人としての出だしが遅く人件費の高い修士卒を敬遠する可能性もあります。志望先が修士卒以上をどのくらい採用しているのか、事前に調べておくと良いでしょう。
まとめ
高学歴を得られる学歴ロンダリングですが、デメリットやリスクも存在します。大学院への進学が学歴を得るための手段になってしまうと、その後の研究や就活で苦労するかもしれません。レベルの高い大学院を志望する場合は、まず自分のキャリアプランをよく考えたうえで判断しましょう。