ビジネスシーンでも注目されている、メタ認知というスキルをご存じでしょうか。自分自身を客観視し、認知することで業務の進行や目標設定に好影響を与えるスキルを指します。メタ認知の重要性は理解していても、自身の能力として会得しきれていないと悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
今回はメタ認知について、基本的な概要や分類の観点で紹介します。メタ認知が高い人と低い人の特徴、認知能力として高めるメリットにも触れています。時代の変化にも対応できる能力の会得につながるため、ぜひ参考にしてください。
メタ認知とは
メタ認知とは、自分の認知活動を客観的な視点で捉えることを指します。人間の代表的な認知活動といえば、「考える」「感じる」「判断する」「記憶する」といったものが挙げられます。“これらの認知活動を行っている自分を認知する視点”がメタ認知だと考えれば、イメージしやすいかもしれません。また、メタ認知は「自身が認知したことをコントロールする」という意味でも使われる概念です。
メタ認知は、目標を達成する力や判断力、問題解決能力を高める手法としても注目されています。自分の得意なことはもちろん、苦手なことや仕事の成果などを客観的に判断できる点も特徴です。
目まぐるしく変化する時代や市場に対応するためには、自分自身をより理解し客観視することが大切です。メタ認知はまさしく、現代のビジネスシーンにおける重要な観点であり、会得すべきスキルといえるでしょう。
そもそも「メタ」とは何か
メタは「高次の」という意味をもつ言葉です。メタ認知は「認知することを認知する」という意味であり、通常の認知とは一歩引いた客観的な視点(高次の視点)の認知であることから、メタの名が付いています。「メタ視点」といった言葉もあるように、通常の枠組みの中から外れた視点で概念全体を見る場合にも使われます。
メタ認知は2種類に分類される
メタ認知は、「メタ認知的知識」と「メタ認知的技能」の2種類に分類されます。ここでは、それぞれについて詳しく解説します。
メタ認知的知識
自分自身に関する知識のことをメタ認知的知識といいます。自身の長所・短所などが代表例です。自己分析したうえで自分の強み・弱みなどを把握し、理解することがメタ認知的知識の特徴です。しかし、自己分析できたからといってメタ認知能力が高いわけではありません。メタ認知的知識をベースに、自身の苦手分野や弱点を克服するための対策までを把握できるようになってから、初めてメタ認知能力を高められるようになります。
メタ認知的技能
メタ認知的技能とは、メタ認知的知識を理解したうえで、現在の状況を確認する能力のことです。メタ認知的知識に付随する対策を考案する能力を表す言葉でもあります。メタ認知的知識の応用ともいわれ、メタ認知を理解するうえでより重要な視点といえるでしょう。
また、メタ認知的技能の中にも、モニタリングとコントロール2種類の手法があることを覚えておかなければなりません。
メタ認知的モニタリングとは、現在の自分にメタ認知的知識を当てはめ、照らし合わせる手法です。知識が不足していないか、良い方向に進めているのかを客観的に確認する手法として活用します。
メタ認知的モニタリングで得たことを踏まえたうえで、改善に向けた行動をとることがメタ認知的コントロールです。改善に向けて、自分自身の感情をコントロールすることも該当します。
メタ認知的技能について理解する際は、モニタリングとコントロールそれぞれの特徴についても把握しておきましょう。
メタ認知が高い人・低い人の特徴
ここでは、メタ認知が高い人と低い人の特徴を紹介します。メタ認知を高めることは個人のレベルを上げるだけでなく、ビジネスにおける活躍の機会につながるかもしれません。ここで紹介する特徴を自身に当てはめ、今後の対策にお役立てください。
メタ認知が高い人の特徴
メタ認知が高い人には、以下の共通点があります。
- 冷静な感情をキープできる
- 周囲の感情に振り回されない
- 成長速度につながる成長・改善に対する意識が高い
- リスク回避能力・解決力・内省力が高い
- ミスを次に活かせる柔軟性をもっている
- 俯瞰的な視線をもてる
- 周囲に適切な配慮ができる
- 多様な価値観を受け入れられる
- 協調性が高い
自分に当てはまっている場合は、長所として活かすようにしましょう。当てはまっていない観点があれば、会得する意識も大切です。
メタ認知が低い人の特徴
メタ認知が低い人の主な特徴は、以下の通りです。
- 思い込みが激しい
- 物事の一部の側面しか捉えられない
- 感情的になりやすい
- 他人と衝突することが多い
- 自己肯定感が低く、成長意欲に乏しい
上記の中に当てはまっているものがあれば、レベルアップに向けてどのように解決していくべきか考えましょう。
メタ認知を高めるメリット
メタ認知を高めることで、時代の変化に適応しやすくなります。また、自己分析能力も上がるため、ビジネスシーンにも活かせることでしょう。ここでは、メタ認知を高めるメリットについて詳しく解説します。
時代の変化に適応しやすくなる
昨今、テクノロジーの普及や情勢の変化により、時代そのものが目まぐるしく変化し続けています。時代の変化に適応するには、まず自分自身を客観的に理解しなければなりません。
メタ認知能力を高めることで、時代の変化に自身の考えや理想を当てはめ、時代に合わせた行動や成果につなげられます。反対に、自身を理解しきれていない状態では、時代が変化するスピードについていけないかもしれません。
また昨今では、時代の変化に合わせて方針や商材を変化させる企業も増加傾向にあります。メタ認知を高めておけば、自身が所属する企業の変化にもスピーディに対応できることでしょう。
自己分析能力が上がる
メタ認知を意識することは、自分自身を客観的に見つめ直すことにつながります。自分の能力を企業の方針に落とし込むことで、企業が必要としている成果を上げられるでしょう。自身に足りない部分を補うためにどうすべきか、客観視して考えられることもメタ認知のメリットです。
また、状況に応じてフラットな視点で課題に向き合える点もメタ認知のメリットといえます。フラットな視点で課題を明確にすれば、解決策を効率よく立案できるようになるでしょう。
メタ認知には危険な側面もある?
メタ認知を意識しすぎると、自分自身に対するプレッシャーに耐えられなくなる可能性があります。プレッシャーに押し潰されてしまうと、自身のポテンシャルを活かしきれないかもしれません。また、メタ認知を常に意識することで、単純に疲れてしまうこともあるでしょう。メタ認知を高めるうえでは、多少の休息やリラックスする時間を持つことも大切です。
メタ認知はセルフモニタリング・コントロールで鍛えられる
メタ認知を鍛えるうえで重要なセルフモニタリングとは、無意識の思考や行動を観察し、課題や欠点を抽出する手法です。セルフモニタリングの実施は、自身の弱点を把握するところから始まるメタ認知において重要であるといえます。セルフモニタリングで抽出した課題や欠点は、コントロールすることで改善できます。自分自身の気持ちを前向きにする効果もあるため、セルフモニタリングの後は必ず実施しましょう。
メタ認知は、自身に関する知識を示す「メタ認知的知識」と、応用編である「メタ認知的技能」から成り立っています。より明確なメタ認知能力を身につけるために重要なメタ認知的技能は、セルフモニタリングとコントロールを実施することで鍛えられます。
まとめ
自身の認知活動を客観視できるメタ認知は、ビジネスパーソンが成長するうえで必要不可欠です。
メタ認知はすでにもっている特性が反映される側面もあるため、高い人と低い人の特徴が明確になりやすいといえます。反面、自身の長所と短所を把握するきっかけにもなるため、成長していくためには非常に重要な観点といえるでしょう。
メタ認知を高めることで時代の変化に対応できるだけでなく、自己分析能力を高めるきっかけにもなります。メタ認知について考えることが負担にならないように、バランスを意識することも大切です。昨今の市場ニーズや時代は、目まぐるしく変化しています。メタ認知を高めて、ビジネスパーソンとしての成長に結びつけましょう。