仕事のパフォーマンスを維持するために、メンタル面のケアは欠かせないポイントです。心の健康状態は近年重視されるようになり、健全な組織運営を目指す上で注目度が高まっています。今回はその中でも、考え方を切り替える手段である「リフレーミング」について解説します。具体的な手法や期待できる効果、活用例などを解説しているので、前向きな気持ちで仕事に取り組めるようぜひチェックしてみてください。
リフレーミングとは
リフレーミングとは、対象となる物事を今と異なる見方で捉え直すことです。別の枠組みで見てみることで、従来は不満・不安に感じていた出来事の捉え方が変わり、ネガティブな気持ちが軽くなります。
ポジティブシンキングとの違い
「ネガティブな気持ちを切り替えるもの」と聞くと、思い浮かぶのは「ポジティブシンキング」です。しかし、リフレーミングとポジティブシンキングには次のような違いがあります。
- リフレーミング:確かな根拠に基づく解釈の見直し、発想の転換
- ポジティブシンキング:常に物事をプラス方向に捉える
リフレーミングの手法
ここでは、リフレーミングの具体的な手法を5つに分けて紹介します。
As IFのリフレーミング
As IFのリフレーミングとは、「もしも◯◯だったら」などの形でポジティブに仮定することで発想を転換する手法です。「もし自分がお客様の立場だったら」「もし目標にしているあの人が今の自分と同じ状況に置かれたら」と自分に問いかけることで、新たな視点で物事を考えられるようになります。「もし上手くいかなかったら」とネガティブな仮定はせず、前向きに考えるよう意識しておきましょう。
言葉のリフレーミング
言葉のリフレーミングは、出来事を言語化する際の表現方法を言い換えることで、思考を変化させる手法です。主に、ネガティブな言葉や欠点などを前向きな言葉に置き換えます。例えば次のような言い換えが言葉のリフレーミングに該当します。
・飽き性→好奇心が旺盛
・心配性→慎重で用心深い
・神経質→細かいところにまで目が行き届く
時間のリフレーミング
時間のリフレーミングとは、過去・現在・未来という時間軸を元に新たな視点で物事を捉える手法です。「あの頃に比べると成長した」「若いうちに失敗を経験できて良かった」といったように長い目で見ることで、ネガティブになりがちな出来事に対しても一歩引いて冷静に対処できるでしょう。
解体のリフレーミング
解体のリフレーミングとは、物事を細かく解体して考えることで課題を整理し、新しい視点を取り入れる考え方です。例えば仕事量が多く余裕のないときに、それぞれの業務内容や期限、必要な時間などを細かく分けて整理しましょう。混乱していた頭の中も整理され、集中して業務を遂行できるようになります。
Wantのリフレーミング
Wantのリフレーミングとは、「それなら自分はどうしたいのか?」と問いかけることで感情を落ち着かせる手法です。「仕事が辛い」という悩みで苦しみ続けるのではなく「どうしたいのか?」と自分に質問してみましょう。「もっとスムーズに仕事をこなしたい」「やりたかった分野の仕事ができないから転職したい」などと考えが整理されます。また、解決方法をさらに自分で問い続けることで悩みの解決につながる行動を取れるようになるでしょう。
リフレーミングの効果
続いて、リフレーミングがもたらす効果について解説します。
モチベーションの向上
物事の見方を意識的に変えるリフレーミングは、仕事上の悩みや不安の解消につながります。そのため仕事に対して前向きに取り組めるようになり、モチベーションが向上します。
人間関係の改善
苦手な相手に対する意識は、無意識のうちに自分の態度にも出てしまうものです。たとえ敵対的な態度を取られたとしても「そんな考え方もあるんだ」「そのように受け取る人もいるんだ」と、アドバイスを受けたように前向きに捉えられるようになります。自分の態度が変わることで、次第に人間関係も改善されていきます。
自分に自信を持てる
リフレーミングによって悩みや不安、コンプレックスを前向きに捉えられるようになると、自分への評価も自然に高まります。状況が変わっていないとしても、捉え方の違いで自分に自信を持って生活を送れるようになるでしょう。
課題解決能力の向上
リフレーミングの思考が身につくと、発生した問題に対して解決策を前向きに考えられるようになります。今までは課題だと認識していた問題に対して、「上手く乗り越えるにはどうすべきか」「さらに成長できるチャンス」と捉えることができれば、会社においても頼もしい存在となるでしょう。
場面別で学ぶリフレーミングの活用例
ここでは、リフレーミングの活用事例を3つの場面別に紹介します。リフレーミングの思考を身につけるために確認しておきましょう。
何かに挑戦して失敗したとき
人は、何か大きなことに挑戦して失敗したとき、大きなショックを受けるものです。しかし、ネガティブに考えていては、いつまでも成功することはできないでしょう。リフレーミングにより「今回失敗したおかげで成功に近づいた」と考えることで、新たなモチベーション形成につながります。
批判・否定されたとき
他人から面と向かって批判や否定をされてしまい、時間が経っても思い出してしまうほどショックを受けた経験がある方も多いのではないでしょうか。しかし「あの時指摘されなければ今も気付かなかった」という捉え方を変えることで言われたことを素直に受け止められるようになり、結果として成長につながるでしょう。
重要な場面でプレッシャーを感じているとき
大人数の前でのプレゼンや大きなプロジェクトで責任を負う立場など、仕事においてプレッシャーを感じる機会は多いものです。リフレーミングを活用することで、プレッシャーを感じる場面でも前向きな気持ちになれるでしょう。たとえまだ十分な実力がないとしても、「慣れるためのいい機会」と捉えられるだけで肩の力が抜け、過度なプレッシャーからも解放されます。
リフレーミングを活用する際の注意点
これまで紹介した通り、リフレーミングは多くの効果が期待できる考え方です。リフレーミングの効果を確かなものにするためには、次に挙げる注意点を意識することが大切です。
相手を尊重して行う
リフレーミングする物事に相手が存在する場合は、相手を尊重するという気持ちを忘れてはいけません。リフレーミングのために従来とは異なる見方ばかりを意識するあまり、相手の思いを置き去りにしてしまうことも考えられます。必ず相手の立場に立って物事を捉えるよう心がけましょう。
ポジティブに考えるだけで終わらせない
先述の通り、リフレーミングとポジティブシンキングは異なる考え方です。前向きに考えることに重きを置くポジティブシンキングとは異なり、リフレーミングの強みは「根拠に基づく発想の転換」といえます。辛い出来事があったときにやみくもに前向きになろうとしても、なかなか維持できないものです。しっかりとした根拠があるリフレーミングでは、辛い課題でも自信を持って論理的に立ち向かえるのではないでしょうか。
リフレーミングは社内研修等にも導入可能
リフレーミングは、グループワークなどの形式で社内研修に導入することも可能です。2つの事例を紹介します。
ネガティブワードをポジティブワードに変換するワーク
ネガティブな言葉を書き出し、ポジティブな表現方法へとリフレーミングします。それぞれ1人で実施した後、チーム内で内容を発表しましょう。次に自分自身の短所を書き出し、同様にポジティブワードへと変換します。チームの評価手法としてリフレーミングを取り入れることで、思考法が自然に身に付きます。
メンタルヘルス研修への導入
リフレーミングの考え方を知ることで、物事の受け止め方の多様さを認識できるようになります。「自分の直感が全てではなく、訓練することで誰でもストレスを抱えない受け止め方ができる」という選択肢を持っておくことは大切です。
まとめ
リフレーミングは一見すると難しい定義のように思えますが、実際は少しのコツで簡単に習得できる考え方です。日々の業務だけでなく、職場での人間関係や自己成長にもつながるリフレーミング。今回の内容を参考にリフレーミングを活用して、一度自分のことを客観的に捉えてみてはいかがでしょうか。