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【2023年最新版】大企業が続々と賃上げする理由とは?過去の推移と現在の状況、関連する税制について解説

2023年10月1日

2024年2月18日

著者

Izul広報チーム

Izul広報チーム

2022年の物価高をきっかけに、同年2月以降の円安の影響から、賃上げを求める労働者が増加しました。多くの企業ではベースアップを含む賃上げを発表しましたが、賃上げの具体的な理由にはどのようなことが関係しているのでしょうか。

この記事では、賃上げにおける過去の推移と現在の状況に合わせて、関連する税制について詳しく紹介します。転職を検討する上で賃金は重要な項目となるため、しっかりとチェックしておきましょう。

2023年の賃上げ事情

新型コロナウイルス感染症の感染拡大や、ロシアのウクライナ侵攻による世界情勢の変化などによって、日本を含む世界はさまざまな苦難を迎えています。

これまでの日本は賃金のベースアップに消極的だったものの、世界情勢の変化によって円安や物価高が進んだ時代背景を踏まえ、ベースアップを含む賃上げに乗り出す企業が増えてきました。

賃上げが開始となったのは2022年12月ごろ。円安や価格高騰による原材料高によって労働者の安定した生活が困難に陥ったことを踏まえ、「日本労働組合総連合会(連合)」が春闘で5%の賃上げを要求しました。同年10月時点でのインフレ率が3.7%だったために、この数字を上回るだけの賃上げを要求したのです。

労働者の生活に配慮した企業は、連合に続き賃上げを表明しました。大手衣料品店を運営する企業が、国内労働者の年収を最大40%引き上げると発表したのは記憶に新しいでしょう。世界情勢が大きく動いたことで、日本でもさまざまな企業が賃上げに踏み切ったのです。

2023年における各業界・企業の賃上げ状況

2023年に先行して賃上げを行ったのが、上場企業を含む大企業です。金融業界では、みずほフィナンシャルグループが2024年入社の大卒初任給を55,000円賃上げし、26万円にすると発表しました。これまでの従業員には2.5%のベースアップと定期昇給に踏み切り、人的資本投資を合わせると実質6%ほどの賃上げになる見通しです。

自動車・輸送機器業界ではトヨタ自動車が2023年春期漏示交渉にて満額回答したものの、どの程度の賃上げとなるかは非公表でした。とはいえ15の職種・階級に細分化して要求していることから事務職・技術職・指導職の場合だと月9,730円の賃上げが予想されています。

そのほか上場企業や上場企業の子会社、グループ会社の賃上げ状況は下表の通りです。

ソフトバンクグループ約1万8,000人の社員を対象にベースアップを含め平均5.4%の賃上げを行う。ベースアップを行うのは8年ぶり。
三菱商事2023年度より、社員平均で6.5%となる基本給のベースアップを実施する。新卒の初任給も5万円増額する。
小野建2023年3月にベースアップ実施。対象は全正社員約800人で、賃上げ率は平均7%。新入社員(総合職)の初任給も9.3%引き上げる。
日東電工課長や部長クラスの管理職を対象に基本給を約10%引き上げる。管理職の給与改定は5年ぶり。
三菱ケミカルグループベースアップと定期昇給を合わせて月額5.25%の賃上げを行う。
AGC2023年春闘への対応として、6%の賃上げを実施する意向。同年春入社の総合職新卒社員についても、初任給を3万200円引き上げる。
クラレ2023年4月、8%程度の賃上げを実施し、うちベースアップ相当分は6%。対象は管理職を除く国内約4,000人。
第一三共国内のグループ会社を含む全従業員約9,000人を対象とした月額5,000円のベースアップを行う。ベースアップは7年ぶり。初任給の給与も1万円の引き上げ。
塩野義製薬5%相当の賃上げを実施する方針。
TIS2023年度より、基本給を平均6%引き上げ。新人事制度の導入で、高度人材や若手の上げ幅は最大17%となる。大卒初任給も12%、2万7,000円アップする。
福井コンピュータホールディングス2023年4月にベースアップを実施。賃金制度も一部変更し、定期昇給等を含めた賃上げ率の平均は5.3%。20〜30代の若年層を中心に、月収が平均を下回る従業員の賃上げ率は平均6.6%とする。

出典:2023年春闘賃上げ動向まとめ | 最大40%アップの企業も。若手や高度人材への昇給が目立つ|求人ボックスジャーナル

各業界・企業の賃上げ状況を見ると、若手や管理職のみなど、ある特定の従業員の昇給を手厚くする企業や、人事制度の改革を通じて給与体系そのものも変更する企業、物価高や円安の影響はどの従業員にも通じることを踏まえ、非正規従業員の賃上げも対象とする企業とさまざまであることが分かります。

2022年までの賃上げ推移について

厚生労働省が発表した「民間主要企業における春季賃上げ状況の推移」によると、資本金10億円以上、かつ従業員数が1,000人以上で労働組合がある会社の賃上げ率は、2022年では5,854円でした。その後2023年には、平均妥結額が1,044円増の6,898円となりました。2021年に比べても108円アップしていることから、景気回復に至るまではこの推移はさらに続く見通しといわれています。

引用:厚生労働省|民間主要企業における春季賃上げ状況の推移

今後賃上げが起こりそうな業界とその傾向

大企業が賃上げに乗り出したことで、これまで黙っていた政府側も年初からインフレ率を上回る賃上げの要望を企業側に出しました。日本のデフレ脱却に向けて政府が動いたことで、賃上げに踏み切れずにいた中小企業も意欲的な賃上げを求められています。

もし今後、賃上げが起こりそうな業界を予想するとすれば、新型コロナウイルス感染症によって経営に影響が出た飲食店・ホテル業界が挙げられるでしょう。

緊急事態宣言が発令された2020年からの3年間は、来客数の激減によって多くの飲食店が閉店・休業を余儀なくされました。さらにマスクの着用が義務づけられたことで、外食が主流だった飲食業界が最初に影響を受けました。

また同じく緊急事態宣言により休業を余儀なくされたホテル・レジャー業界も賃上げの可能性が高まっています。Withコロナ時代となった2023年からはマスク着用も任意となったほか、同年5月8日からは新型コロナウイルス感染症が5類に移行しました。

方針の変化に伴い、コロナ禍よりも気軽に旅行できるようになったことで、旅行業界自体が賑わいを取り戻しています。コロナ禍の収束をきっかけに旅行業界が活性化することで、旅行業界全体の賃金が上がると予想されます。

そもそも賃上げとは

賃上げとは、企業が従業員に対して支払う賃金を引き上げることです。定期昇給とベースアップと、二種類の考え方があります。ここでは、賃上げにまつわる以下の3項目について詳しく紹介します。

  • 賃上げ対象の賃金
  • 賃上げの種類
  • ベースアップ・定期昇給とは

現職の賃上げについて詳しく知りたい方は、しっかりと目を通しておきましょう。

賃上げ対象の賃金

賃上げ対象となる賃金は、毎月支払われる月例賃金がベースです。月例賃金は、基本給に合わせて以下の諸手当から構成されています。

  • 家族手当
  • 役職手当
  • 通勤手当
  • 割増手当

賃上げ対象の賃金は、あくまで基本給のみです。賞与や各種手当が増額されても、賃上げとはいいません。

ベースアップ・定期昇給とは

賃上げの方法にはベースアップと定期昇給の2種類あります。ベースアップはベアとも呼ばれ、ベースである基本給を底上げさせることを意味します。

インフレによって賃金の水準が消費者物価と比較して低下したときや、世間相場よりも低い場合に行われるのが一般的です。

一方で定期昇給とは、決められた時期を基準に年齢、勤続年数を考慮して行う場合と、企業ごとに異なる評価項目を反映させるものと2種類あります。評価項目の基準に達していることが条件であることが多く、従業員によって、または企業によってアップする金額に違いがあります。

賃上げ促進税制の理解を深めることも大切!

急激な円安や物価高によって国民生活を圧迫している現在、日本政府は民間企業に対して賃上げ要請を繰り返し行うほか、施策として中小企業向けの賃上げ促進税制を導入しています。

ここでは、賃上げ促進税制の目的と利用条件、メリット、ポイントをそれぞれ紹介します。

賃上げ促進税制の目的

従業員の給与を引き上げた中小企業を対象に支援を行うための制度を賃上げ促進税制と言います。賃上げ促進税制の目的は、従業員の月例賃金を引き上げた場合の企業側の法人税を減税することです。

賃上げ促進税制は、国内で働く従業員の給与を3%増加させた際、増加額全体の15%を法人税から控除し、4%増加に至れば25%まで控除される仕組みです。教育訓練費を20%増加させた場合は、最大30%の控除が受けられます。

このように国の制度によって控除額を増やし、企業側の税金を減税しながら存続させる意図が含まれています。

賃上げ促進税制の利用条件

賃上げ促進税制の対象企業は、青色申告書を提出している中小企業者などが該当します。一定要件を満たしていれば、前年度よりも給与などの支給額を増加した場合は、その増額分の一部(個人事業主の場合は所得税)を法人税から控除できます。

中小企業などを対象にした適用要件は以下の通りです。

通常要件雇用者給与等支給額が前事業年度に比べて1.5%以上増加している
上乗せ要件1雇用者給与等支給額2.5%増加要件
上乗せ要件2教育訓練費の額が前事業年度に比べて10%状増加している

出典:中小企業向け賃上げ促進税制ご利用ガイドブック|経済産業省

これらの要件を満たしていれば、賃上げ促進税制の利用が認められます。企業にとっても従業員にとっても魅力的な施策であることから、中小企業の転職を希望する求職者の方は、賃上げ対策の導入有無についても調査してみると良いでしょう。

賃上げ促進税制のメリット

賃上げ促進税制のメリットは大きく分けて、以下の3つがあります。

  • 法人税減税による節税ができる
  • 人材の確保・定着が見込める
  • 従業員のスキルアップが実現できる

賃上げ促進税制は、青色申告書を提出している中小企業者等に適用されます。前年に比べて1.5%、または2.5%以上増加していれば最大40%の税額控除が受けられるため、企業の存続を懸念する現代では大きな施策と考えられます。

これにより、人材の確保がしやすく定着が見込めるといった企業側のメリットが生まれます。賃上げ促進税制には従業員の職業訓練費の増加が盛り込まれていることから、キャリアアップやスキルアップを目的とした従業員をサポートできることにもつながるため、企業・従業員双方にとっても利用すべき施策と言えるでしょう。

賃上げ促進税制で押さえるべきポイントは?

賃上げ促進税制では、賃上げ促進税制の対象が国内雇用者に限られることを理解しておきましょう。

「国内に所在する事務所につき作成された賃金台帳に記載されたもの」と定められていることから、海外に長期出張した従業員であっても、国内事業所の賃金台帳に記載のある従業員なら対象となります。

また同様の賃金台帳に記載のあるパートタイム、日雇い労働者を含むアルバイトも対象です。

まとめ

この記事では2023年の賃上げにおける情報をまとめながら、賃上げそのものの理解を深めるための解説をしました。賃上げについて理解するには、社会情勢の動きと合わせて、賃上げ促進税制について把握しておくことが大切です。コロナ禍やロシアによるウクライナ侵攻など、不安定な世界情勢の中、安定かつ安心した生活を手に入れるためには、生活に直結する「賃金」の動きを常に追いかけ続けなければなりません。この記事をきっかけに自分や業界の賃金の動きについて、興味を持ってみましょう。

監修者・齊藤 穂奈美

齊藤 穂奈美

株式会社日本アクセスで原料の調達・営業を担当→株式会社ファミリーマートへ出向し中食部門の商品担当として従事→出産を機に会社を退職。WEBクリエイターとして独立し、経営者の集客・広報全般をサポート。 現在はIzulで両面コンサルタントと広報を担当。プライベートでは2人の子を育てる母。

著者プロフィール

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株式会社Izulの広報チームが運用。20代〜30代の若手ハイクラス層から、圧倒的支持を獲得中。働き方や転職のコツなど、キャリアに役立つ情報を発信していきます。

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