医薬品の開発から生産、販売まで一連の流れを担う製薬会社。日常生活で医薬品は使用するものの、業界の実態を掴めていない方も多いでしょう。
今回は製薬会社に関して、種類や職種、年収ランキングを含めて解説します。なお本記事後半では、製薬会社への転職を成功させるための3つのポイントも紹介します。
製薬会社とは
製薬会社とは、医薬品の開発から生産、販売までの一連の流れを担う会社のことです。生きていくうえで必要不可欠な医薬品を取り扱うこともあり、不況による影響を被りにくいといわれています。
製薬会社の中には福利厚生が充実している会社が多く、中には家賃の7割を住宅手当として支給する企業もあるようです。
製薬会社の種類
製薬会社は扱う医薬品によって、主に以下の3つの種類に分類されます。
- 一般用医薬品・医療品メーカー:医薬品の開発や生産、販売を行う
- ジェネリック医薬品メーカー:後発医薬品を取り扱う
- OTC医薬品メーカー:ドラッグストアなどで市販されるOTC薬品を取り扱う
なお場合によっては、外資や内資かによって製薬会社を分類する場合もあります。文字通り外資系製薬会社は、外国の資本が一定以上入っているのが特徴です。具体的にはファイザー株式会社やノバルティスファーマ株式会社が、外資系製薬会社にあたります。
製薬会社の年収ランキング
AnswersNewsは、製薬会社計85社の2021年度の平均年収ランキングを公表しています。本調査によれば、6年連続でバイオベンチャーのソレイジアファーマが平均年収1490万円の1位となっており、上位11社についても年収1,000万円を超えています。
製薬会社の年収が高い理由としては、医薬品の利益率が高いことが挙げられます。薬品を開発するためには十分な資金が必要ですが、ヒットすれば数千億円規模のお金が動くこともあるようです。
製薬会社の職種と仕事内容
製薬会社では研究職や生産、開発なども含めて主に5つの職種が活躍しています。本章ではそれぞれの職種の概要を、仕事内容も交えて解説します。
研究職
研究職は一言でいうと、医薬品をつくる職種のことです。薬を作るために仮説を立てて実験を繰り返す基礎研究や、探索研究・臨床試験が含まれる応用研究などが主な仕事内容です。
研究職への転職は非常に難易度が高いといわれています。そもそも募集数が少なく求人があったとしても、専門的な知識を持つ層が応募の大多数を占めてしまうでしょう。
開発
開発職は新薬を開発する際の最終段階となる、臨床試験(治験)を行い安全性を確認する職種です。また場合によっては新薬開発だけでなく、既存薬を服用しやすい形に変更するといった開発も行います。
開発職は新薬を開発する際の総仕上げともいえる業務を担うため、やりがいを感じやすいでしょう。
生産
生産職は、処方が認められた医薬品の生産や品質管理を担当する職種です。人の健康に関わる衛生面や品質面を担当するため、責任のある立場といえるでしょう。主な仕事内容としては異物混入点検や機械準備、他部署や業者とのミーティングなどが挙げられます。
さまざまな部署と円滑な連携が取れるコミュニケーション能力や、責任感のある人が生産職に向いています。
営業
営業は主に、医薬品を医療現場に販売する役目を担う職種です。なお製薬会社の営業職は「MR」と呼ばれることもあります。MRは医薬品の特徴を情報提供する役割です。
営業は医薬品を販売するために、日々アップデートされる医療情報を追わなければなりません。また訪問先の医師によっては、診療終了後の夜間に営業せざるを得ない場合もあるため、体力が必要な一面もあります。
事務
製薬会社では研究職や開発職以外にも書類作成やデータ入力、経理などを行う事務職が活躍しています。研究職や開発職に必要なスキルや経験がないが、どうしても製薬に関わりたいのであれば事務職への転職に絞るのが有効な手段です。
製薬会社の仕事に向いている人の特徴
前述したように製薬会社には、研究職や開発職、営業職などさまざまな職種があります。そのため製薬会社の仕事に向いている人の特徴は、職種によって異なります。
しかし生物や化学への興味と学ぶ意欲は、どの職種にも必要だといえるでしょう。医療業界は日々情報がアップデートされます。生産職や開発職は当然のことながら、営業職も学習意欲と興味がなければ、正しく医薬品を営業・販売することはできません。
製薬会社は人の命を預かるため、責任感や倫理観があり、丁寧に仕事をこなせる人でなければ務まらないでしょう。
製薬会社への転職を成功させるには?
製薬会社に転職するためには、本章で紹介する3つのポイントを意識しましょう。前提として研究職や開発職は、専門的な知識が必要であるため転職難易度が高いといわれています。
対して事務職や営業職は業界未経験者でも、本章のポイントを押さえられれば転職できる可能性はあります。
企業研究を念入りに行う
どの業界への転職にも共通する点ですが、企業研究は製薬会社への転職においても重要です。企業研究を入念に行い、その企業でなければいけない理由を説明できれば、面接官に好印象を与えられるでしょう。
また、企業研究をしていくと企業の働き方や経営理念、仕事内容に自ずと触れるため、自分と応募先の企業が本当にマッチしているのか判断しやすくなり、結果として採用後のミスマッチを減らすことができます。
企業研究の具体的な手順は以下の2ステップです。
- 企業理念・事業内容・制度・採用情報の4点を押さえる
- 業界内での立ち位置や、それぞれの企業の違いを把握する
周囲に製薬業界に携わったことのある方がいれば、相談することをおすすめします。しかし製薬業界の人脈がない場合は、企業のホームページや業界地図を利用し、それぞれの企業に対する理解を深めましょう。
志望動機を明確にしておく
「なぜ製薬業界なのか?」「なぜその職種なのか?」「なぜその企業なのか?」とWhyを自分に問いかけて、回答を用意しましょう。
業界経験者の場合は業務を行っている際の喜びや、やりがいなど実体験を含めた志望動機を作成するとより説得力が生まれます。
対して業界未経験の場合は、これまでの経験やスキルで活かせる部分や熱意を伝えることで転職成功に一歩近づきます。
例えば前職で営業職を担当しており、製薬業界でも営業職を志望する場合は前職で培った提案力や商材理解力などをアピールします。たとえ異業種であっても面接官に自分を採用するメリットを提示できるでしょう。
転職エージェントを活用する
転職エージェントの活用も、製薬業界に転職するための有効な手段です。転職エージェントに登録すると、以下のサポートを受けられます。
- 面接指導
- 履歴書添削
- 自分にあった企業の紹介
- キャリア設計相談
求人数の多い大手転職エージェント以外にも、製薬オンラインなどの製薬・医療業界に特化したサービスの利用もおすすめです。製薬業界を熟知したキャリアアドバイザーが転職をサポートしてくれます。
製薬会社の将来性
製薬会社の将来性は企業によって異なります。日本では高齢化が進むにつれ医療費が増加しているため、国が医療費削減対策として薬価引き下げを行っています。
このまま引き下げが行われると、新薬開発に成功したとしても、研究費が回収できず利益が十分に得られなくなることも考えられます。
この背景もあり、製薬会社は海外への参入を余儀なくされています。そのため、世界でも競争できる力を持った企業の将来性は今後も明るいでしょう。しかし変革の波に乗り切れず、今まで通りの戦い方をしている企業の将来性は安泰とは言い切れません。
まとめ
製薬会社の研究職や開発職は、専門的な知識が必要であるため転職難易度は高めです。これに対して事務職や営業職は業界未経験者であったとしても、入社後に活かせる経験やスキルをアピールすれば製薬会社への転職に一歩近づきます。
転職を成功させるために、企業研究等を行うことはもちろん、転職エージェントの利用も検討してみると良いでしょう。