読書好きであることを仕事に活かしたいと考え、出版業界への転職を目指す人もいるでしょう。しかし出版業界にどのような仕事があるのか、具体的に把握できていない人もいるかもしれません。
今回は出版業界の特徴やビジネスモデルを紹介しながら、どのような仕事があるのかを紹介します。出版業界の現状や転職に必要な経験、業界に関する疑問にも答えているので、出版業界への転職を実現したいと考えている人は、ぜひお役立てください。
出版業界とは
出版社・取次・書店が、出版業界に該当する仕事です。書籍や雑誌、コミックスなど、あらゆる出版物を市場に流通させる仕事を担います。ここでは出版業界の特徴や昨今のビジネスモデルについて、解説します。
業界としての特徴
出版業界は出版社・取次・書店3つのセクションで構成されているのが特徴です。それぞれのセクションについては以下の表にまとめました。出版業界の特徴を把握するときの参考にしてください。
出版社 | 出版物の企画・制作・作家や印刷会社への依頼・校正・製本を行う企画立案後に編集プロダクションへ外注を委託する出版社もある(大手に多い)小説・絵本・ビジネス書・参考書・雑誌・地図など取り扱う出版物は企業ごとに異なる |
取次 | 出版業界における「卸売業者」に該当する出版物は委託販売制であるため、売り上げが見込めない場合は取次業者に返品される取次業者から出版社に返品することも可能 |
書店 | 小売店・コンビニなど出版物の検品・陳列・販売が主な業務新刊発売時のイベント・フェアの開催も行う |
ビジネスモデル
出版社から取次を経て書店に出版物が流通される形が、出版業界の基本的なビジネスモデルです。しかし近年はインターネットや映像との融合、デジタルメディア事業、電子書籍などを含めたビジネスモデルの展開を模索しているのも特徴です。紙媒体で出版物を読まないユーザーが増加していることもあり、今後、電子書籍に特化した業態が注目される可能性も視野に入れておきましょう。
出版業界の主な仕事
ここでは出版業界の主な仕事として挙げられる以下の6つの職種について紹介します。自身がどのような形で出版業界に関わりたいかを考えるうえでの参考にしてください。
- 作家
- 編集者
- 校閲者
- ブックデザイナー
- 出版営業
- 書店員
作家
出版社から依頼を受け、実際に作品を執筆するのが作家です。もしくは自身で出版社に作品を持ち込み、作家としてデビューする道もあります。作家職には小説家・漫画家・ライター・エッセイスト・イラストレーターなど、さまざまな種類があります。ただ作品を執筆するだけでなく、編集者との打ち合わせを行うのも作家の仕事です。
編集者
出版物の企画・制作・打ち合わせ・デザイン・製本などに関わる仕事のことです。作家への依頼も編集者が担当します。出版や校閲は別の担当者が行う仕事ですが、中小の出版企業であれば、編集者がこれらを担当することもあります。
校閲者
出版物の内容を確認し、校正作業を行う仕事です。校正作業だけでなく、事実関係や差別表現の有無、引用の違反なども校閲者が担当します。出版物の内容を企業・読者双方の目線でチェックし、流通させられるものにするまで精度を高めるのが校閲者の仕事です。
ブックデザイナー
書籍のデザインに特化した仕事をブックデザイナーといいます。「装丁家」と呼ばれる場合もあります。表紙・カバー・扉・背表紙・帯といった、書籍の外観部分すべてを担当するのがブックデザイナーの仕事です。書体や用紙の指定をブックデザイナーが担うこともあります。デザイン面は売り上げに直結する重要な要素であることから、トレンドや読者のニーズに沿ったデザイン力・視点が求められます。
出版営業
完成した出版物を流通させるために、書店をはじめとした場所へ訪問して営業・宣伝を行う仕事です。新刊の発行部数や価格の設定などを担当する場合もあります。POP作成や陳列方法の提案など、新刊・既刊含めて、売り上げを伸ばすためのフォローを行うのも出版営業の仕事です。
書店員
出版物を直接読者に届けるのが書店員の仕事です。書籍の検品や陳列、発注やPOPの作成など、店舗単位での書籍売り上げ向上を担います。出版物は書店の工夫次第で、売り上げに変化が出やすいものです。より多くの読者に届けるためには、書店員の活躍も重要になります。
出版業界の現状
出版業界では、紙媒体ではなく電子書籍のニーズが高まっています。またインターネットの普及により情報収集が容易になったことで、若年層を中心とした「活字離れ」も深刻化しています。
ネットショッピングやフリマアプリの台頭により、書店に行かずとも書籍を購入できるようになりました。書店員という仕事の必要性を疑問視する人もいるでしょう。出版業界では書店員も含めて、新たなビジネスモデルを取り入れ、変革していくことが求められます。
出版業界への転職で求められる経験
ここからは、出版業界への転職に必要な以下の3つのスキルについて紹介します。
- 編集・ライティングスキル
- マーケティング・営業スキル
- 接客スキル
編集・ライティングスキル
出版社に勤務する場合は、執筆物を編集するスキルが必要不可欠です。作家を目指す場合でも、基本的な編集や校閲のスキルは身につけておきましょう。また作品を執筆するうえで重要なライティングスキルも、出版業界に身を置くために必要です。編集者として活動したい場合でも、ライティングスキルを理解できていなければ、正確な編集には結びつきません。
マーケティング・営業スキル
自身もしくは作家が制作した執筆物を、書店や企業に売り込むためのスキルが必要です。市場の状態を把握したうえで的確な戦略を立てられるマーケティングスキルや、実際に売り込むための営業スキルが求められます。いかに優れた作品でも、市場に流通し消費者に購入してもらわなければ意味がありません。作品をより多くの人に届けるために、マーケティングや営業のスキルを身につけましょう。
接客スキル
書店員として勤務する場合は、接客スキルが大切です。顧客に対して書籍の価値を届けたいという考えをもって、日々の業務に取り組む必要があります。第三者に対する接し方は、編集者や営業担当者の仕事でも重要視されるでしょう。
出版業界に関する疑問
ここからは出版業界で働くうえで、事前に解消しておきたい疑問に答えていきます。
年収や将来性は?
出版業界の年収は、企業によって異なります。業界トップといわれる「ベネッセHD」の平均年収が966万円であるのに対し、10位の「アルファポリス」は586万円と、年収幅が広い業界といえます。
参考:業界動向サーチ|出版業界 平均年収ランキング
年収の高さや安定性はもちろんのこと、時代の流れに強く、トレンドを押さえた出版物を扱う企業に転職できれば、ある程度の将来性は期待できます。しかしビジネスモデルの変化に対応できなければ、いずれ停滞・退化していく企業もあると認識しておくべきです。
未経験でも転職できる?
書店員であればアルバイトを募集している書店もあるため、未経験でも転職しやすいといえます。もしくは出版社の事務職や営業職であれば、人柄やポテンシャルに応じて未経験でも採用してもらえるでしょう。アシスタント業務から始める前提で、編集者や校閲担当を募集している企業もあります。
出版業界に身を置くメリット・デメリットは?
紆余曲折を経て出版物が完成した際にやりがいを感じられるのが、出版業界ならではのメリットです。ファンだった作家と仕事ができる、自分の作品が流通することを実感できるのも、出版業界のメリットといえます。
一方で作品を完成させるまでの意見のすれ違いや、市場ニーズとのミスマッチに苦しむことがあるのが、出版業界のデメリットです。作品の質を維持・向上するために残業をこなし、ときには締め切りに追われるのも、出版業界における厳しさといえます。
出版業界に身を置く際は、業界としてのメリット・デメリットを把握したうえで考えることが大切です。
まとめ
今回は出版業界の特徴や現状、職種や転職にまつわる知識を紹介しました。華やかなイメージのある出版業界も実際は課題が多く、働くうえでは事前知識や覚悟が必要です。しかしその分やりがいのある仕事です。今回の内容を受けて改めて出版業界への魅力を感じた人は、自身の経験や適性など客観視したうえで転職を目指してみてください。