引越しや物件の購入・管理・投資など、不動産業界にはさまざまな仕事があります。不動産業界に身を置きたいけど、業界としての特徴がよくわからないという人もいるでしょう。
今回は不動産業界について、仕組みや現状・今後の視点から解説します。不動産業界の職種や適性、新たな生活様式との関連性や転職にまつわる知識も紹介しているので、転職先の候補に不動産業界を考えている人はぜひ参考にしてください。
不動産業界とは
土地・建物といった不動産にかかわる業界のことを不動産業界といいます。デベロッパーや賃貸・売買仲介、不動産管理や投資・運用におけるサポートなど、幅広い職種があります。人が生きるうえで重要な「衣食住」のひとつに携われるため、やりがいを感じやすいのが不動産業界の特徴です。
不動産業界の仕組み
不動産業界は、以下に挙げる4つに大別されます。
設計・建設・施工 | ゼネコンハウスメーカー |
販売 | デベロッパーハウスメーカー販売会社 |
賃貸 | 賃貸不動産仲介会社 |
管理 | 不動産管理会社 |
上記4つの企業から、最終的に「消費者」である個人や企業の手元に不動産が行き渡ります。
新築物件を例に挙げると、まずデベロッパーが土地を仕入れ、ゼネコン・ハウスメーカーと協力し合いながら建物を建てます。その後、デベロッパーやハウスメーカー、販売会社が個人もしくは企業に販売するのが、不動産業界の一般的な仕組みです。
不動産業界の現状と今後
不動産業界における現状は、都市部・地方それぞれでの二極化が注目されています。
東京を中心とした都心部では不動産価格が高騰し続けており、2021年には新築マンションの価格がバブル期を超えました。中古物件も売りに出した段階で軒並み売れる状況が続いているため、都市部に関しては活性化しているといえます。
一方、地方では人口減少・高齢化の影響を受け、物件が売れない状況に陥ることも珍しくありません。売り手がつかないため、不要になった不動産を手放せない人が増えているのも現状です。
不動産業界全体において、都市部と地方の二極化改善がまずは大きな課題となっています。コロナ禍により注目されたU&Iターン転職の需要に基づいた地方物件の販売強化、ネット・ゼロ・エネルギー住宅の増加など、市場ニーズに応じた改革が必要になったと判断できます。
不動産業界の代表的な職種
ここでは、不動産業界の代表的な5つの職種を紹介します。不動産業界への転職を検討するのであれば、職種別の特徴を理解しておくことが大切です。
- デベロッパー
- 賃貸仲介
- 売買仲介
- ビル・住宅・マンション管理
- 投資・運用
デベロッパー
商業施設の開発やリゾート開発、都市開発を担当する職種です。開発可能な土地の調査・分析を実施し、土地の所有者と交渉もします。土地や大規模な施設を取り扱うことが多いため、ゼネコン・ハウスメーカーと共同事業者として企画や開発を行う場合もあります。
賃貸仲介
賃貸物件の情報掲載や問い合わせ対応、カウンターセールスなどを担当する職種です。内見の立ち会いや契約書の作成など、反響営業としての仕事をメインに行います。営業スキルなどを身に付けておけば採用されやすいため、未経験でも目指せるのが特徴です。
売買仲介
マンション・アパート・戸建などの売買を担当する職種です。売主と買主の仲介に入り、契約や金銭のやり取りなどを代行します。仲介だけでなく、不動産買取・再販・リフォームの提案・不動産テックなど業務内容が幅広いのも特徴です。
ビル・住宅・マンション管理
ビルや住宅、マンションをはじめ、土地や駐車場の管理も担当します。オーナー開拓から管理委託の受理、オーナーフォロー・客付け賃貸対応・集金業務など業務内容は多岐にわたります。管理する物件が自社所有・委託物件かで業務内容が変動するため注意してください。
投資・運用
投資家から資金を集め、賃貸物件の購入・運用による利益の分配を行う職種です。マンション・オフィスビル・商業施設を取り扱うのが一般的です。投資にかかわる職種であるため、利回りなどに関する専門知識・経験が重視されます。
不動産業界への適性
不動産業界への転職を目指すうえでは、自身に適性があるかどうか客観的に分析しておくことが大切です。ここでは、不動産業界に向いている人・向いていない人の特徴をまとめています。自身の特徴と照らし合わせたうえで、不動産業界への適性を判断してください。
向いている人の特徴
不動産業界に向いている人の適性には、以下の共通点があります。
- 人と接する仕事にやりがいを感じる
- メンタルの強さに自信がある
- 社会・市場の変化を敏感にキャッチできる
- アドバイスを素直に聞き入れられる
- フットワークの軽さに自信がある
- 知識面を常にブラッシュアップできる
- ノルマや収入に対する目的意識が高い
- 周囲に営業の悩みを相談できる人がいる
向いていない人の特徴
以下の特徴に当てはまる人は、不動産業界の適性はないと判断できます。
- 人と接する仕事に苦手意識がある
- 安定志向を重視して働きたい
- 仕事よりもプライベートを重視したい
不動産業界と新しい働き方・生活様式の関連性
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、不動産業界の働き方や生活様式にも変化が見られました。コロナ禍が収束しても、不動産業界の新たな動きは続くと考えられるでしょう。
住居選びの変化
コロナ禍以前に重視された「駅近」は、リモートワークの浸透により最重要項目ではなくなりつつあります。同様に、都心の物件にこだわる必要もなくなりました。
また、サブスクリプションが注目されはじめたことに比例し、新築物件にこだわらず状況に応じて住居を変えていくライフスタイルが人気を集めています。コロナ禍で需要のなくなった物件をあえて購入してリノベーションするといった、これまでの住居選びとは反対の流れが生まれたといえるでしょう。
不動産投資への影響
コロナ禍による新しい生活様式は、不動産投資にも影響を与えています。賃貸需要・物件価格・融資の視点から主な影響を見てみましょう。
賃貸需要 | 物件価格 | 融資 |
・テナント入居者からの家賃減免措置 ・テナント企業撤退による長期的な空室 ・賃貸収入の低下 | ・新築マンションの平米単価引き下げ ・相場の低下(日経平均株価の下落と同程度) | ・景気停滞による融資姿勢の降下 ・物件評価額の低下 ・不動産物件の担保評価低下 |
業界として実施している対策
コロナ禍において、不動産業界が実施している対策は以下が挙げられます。
- ビデオ通話による問い合わせ対応
- VR技術を駆使したオンライン物件見学
- 店頭窓口へのアクリル板設置
- 不動産管理ツールの活用
これらの対策はコロナ禍初期に講じられたものではありますが、コロナが収束しても継続されると予想できます。
不動産業界への転職で知っておきたいこと
ここでは、不動産業界への転職前に把握しておきたい、業界の魅力や収入面、求められるスキルや未経験での転職に関する情報をまとめています。
業界の魅力
不動産業界は、誰かの人生における大きな起点に立ち会えるのが魅力です。大きな金額が動く業界であるため、お金の知識や経営目線が身につく業界でもあります。案件の受注やノルマ達成などの成果がわかりやすく、評価対象になりやすいため、成長を実感しやすいのも不動産業界の魅力です。
年収・将来性
不動産業界の平均年収は、正社員で414万円です。年収額はあくまで平均であり、土地の建物販売・経営・施設入居者のテナント料で収益を得られるデベロッパーなどの職種であれば、年収1,000万円台も実現できます。
ただし、高収入を得るためには商材の単価に見合ったより専門的な経験・知識が必要です。
参考:求人ボックス|不動産営業の仕事の年収・時給・給料(求人統計データ)
スキル・資格
不動産業界で活躍するためのスキルと資格は、以下のとおりです。転職を進めるうえでの準備にお役立てください。
スキル | 資格 |
・不動産に関する法律の知識 ・売買契約、賃貸契約を交わすうえでの実務スキル ・コミュニケーション能力 ・顧客のニーズを聞き出す能力 ・的確なアドバイス力 | ・宅地建物取引士 ・不動産鑑定士 ・ファイナンシャルプランナー |
未経験での転職は可能?
賃貸仲介など、反響営業のような職種であれば未経験でも就業可能です。とはいえ、活躍し続けるためにはより専門的な経験や知識を身につける必要があります。デベロッパーや管理・投資担当者の場合は、最初から専門知識や経験を得ておく必要があるため、未経験での就業は困難です。
まとめ
今回は、不動産業界の特徴・現状・今後に触れながら、実際に転職するうえで必要な知識をまとめました。不動産業界の職種は多岐にわたるため、職種ごとの業務内容や業界人としての適性を把握しておくことが大切です。また、コロナ禍の影響で大きく変化した業界でもあるため、現在の状況や今後の予測も怠らず、転職活動を進めていくべきです。