トレードオフとは、何かを得るために何かを失わなければならない関係性を指す概念です。ジレンマや機会費用との違い、実際にどんな状態がトレードオフにあたるのか理解しきれていない方も多いでしょう。そこで今回はトレードオフについて、ビジネスにおける3つの事例や関連用語も交えて解説します。
トレードオフとは
トレードオフとは、何かを得るためには何かを失わなければならない関係性のことです。具体的には、環境を守るために生産方法を工夫するとコストが上がる状態や、倉庫費用を削減するために在庫を減らすと販売機会の損失が起こる状態などが挙げられます。
トレードオフという言葉は日常生活だけでなく、ビジネスシーンでも利用されます。
トレードオフの例文(使い方)
一般的にトレードオフは、以下のように使用されます。
- 新型コロナウイルスの感染対策は、経済活動とトレードオフの関係にある
- 機能性の高いランニングシューズは、お洒落とトレードオフの関係にある
トレードオフの関連用語解説
トレードオフと定義や活用されるシーンが類似している言葉がいくつかあります。ここでは、トレードオフの関連用語を3つ紹介します。
ジレンマ
ジレンマはトレードオフと定義がよく混同される言葉の一つです。そもそもジレンマとは相反する事柄の板挟みになり、選択を決めかねる状態やどちらを選んでも不利益を被りうる状態のことを指します。
これに対してトレードオフとは、何かを選択すると何かを失う状態のことです。この定義を比べるとジレンマとトレードオフは、選択肢の前提が違うことがわかります。
なおジレンマという言葉はトレードオフ同様、ビジネスシーンでも使用されます。具体的に既存サービスを改良していく間にイノベーションが遅れ、新興企業に先をいかれる状態のことを指す「イノベーションのジレンマ」が有名です。
機会費用
機会費用は、トレードオフと同時に使われることの多い概念です。そもそも機会費用とは、トレードオフの関係において、一方の選択肢を選んだ場合に、選ばなかった案を採用していれば得られたであろう利益のことを指します。
例えば、環境を考慮して生産方法を工夫した場合だと、一般的に生産コストが高くなるため、この場合の機会費用は生産コストになります。
また倉庫費用を削減するために在庫を減らした場合だと、販売機会を失う可能性があるためこの場合の機会費用は販売機会になります。
トレードマーク
トレードオフとトレードマークは、同じ「トレード」という言葉が含まれるため、定義や使われ方が混同されやすい傾向にあります。そもそもトレードマークとは日常生活において、特定の人を際立たせる特徴のことです。なおトレードマークは、ビジネスシーンにおいて商標のことを指す場合もあります。
「トレード」が含まれる言葉はほかにも、トレードマネーやフェアトレード、トレードシークレットなどが挙げられます。どれも言い間違いが発生しやすい言葉であるため、以下を参考にそれぞれの定義を押さえておきましょう。
トレードマネー | プロスポーツにおいて選手が移籍する際に取り引きされるお金のこと(移籍料) |
フェアトレード | 開発途上国の原料や商品を適正価格で購入し、その国の生活水準向上などを目指す取り引きのこと |
トレードシークレット | 経済用語の一つで、企業が持っている機密情報のこと |
トレードオフのビジネスにおける事例
トレードオフの関係は商品の生産場面など、多くのビジネスシーンでよく見受けられます。ここでは、ビジネスにおけるトレードオフの事例を3つ紹介します。
品質と価格のトレードオフ
一般的に消費者は高品質の商品やサービスを求めているため、企業側は品質を追い求める必要があります。しかし消費者は同時に価格の安さも求めているため、できるだけ価格を抑えなければなりません。
消費者にとっては、高品質で低価格な商品やサービスの方がメリットを感じるでしょう。しかし、企業側の利益は減るため、品質と価格はトレードオフの関係にあるといえます。
SDGs(環境)のトレードオフ
一般的に経済成長には多くのエネルギーやモノが必要ですが、エネルギーやモノを生産する過程では二酸化炭素が発生するため、地球環境問題が悪化することになります。
しかし環境を考慮しすぎると、エネルギーやモノが生産できなくなるため経済成長が鈍化してしまいます。今後二酸化炭素を発生させない発電・生産方法が登場する可能性はありますが、生産方式を活用することでコストが上がるとなると、次は環境問題とコストの間でトレードオフが発生することになります。
在庫のトレードオフ
一般的に在庫を多く抱えすぎると、売れなかった場合に代金を回収できない他、無駄な保管料や倉庫料がかかるなど多くの負担を抱えることになります。しかし在庫をある程度持たなければ、納期に間に合わなかったり、急な需要の増加に対応できずに販売機会損失を起こしたりします。
需要や納期と在庫の間には、トレードオフの関係があることを覚えておきましょう。
トレードオフの日常生活の例
トレードオフの関係は、ビジネスシーンだけでなく勉強や健康など日常生活においても見受けられます。ここでは、トレードオフの日常生活の例を3つ紹介します。
勉強のトレードオフ
多くの方は「ビジネスに活かすために勉強したい」「資格を取りたい」と考えていますが、勉強するためにはそれ相応の時間と労力が必要です。勉強の時間を勉強に使わなければ、その分時間を自分の好きな趣味に使えるため、機会費用は時間であることがわかります。
健康のトレードオフ
「タバコを吸いたい」「ファストフードを食べたい」などの欲求は健康とトレードオフの関係にあります。タバコやファストフードはたしかに魅力的ですが、健康面で考えると体に良いものとはいえないでしょう。摂取の快楽により、健康を害しているため健康にはトレードオフの関係があるといえます。
お金のトレードオフ
一般的に我々は時間をかけて何か成果物を作り、その対価としてお金(報酬)をもらっています。また時間を節約したいと考える場合では、お金を払って代行してもらえば自分の時間を獲得できます。このようにお金と時間の間には、トレードオフの関係があるといえるでしょう。
まとめ
在庫やSDGs(環境)、商品生産など、ビジネスシーンではさまざまな側面でトレードオフの関係が成り立っています。ビジネスではトレードオフの関係を経営課題と考える場合も多く、このトレードオフを解消すれば大きな成果が創出されると考えられているため、非常に重要な概念です。ジレンマや機会費用など関連用語も押さえながら、トレードオフについて理解を深めておきましょう。