雇用・労務のペーパーレス化から、タレントマネジメント領域まで広がり続ける「SmartHR」。マルチプロダクト化が進み、登録社数も7万社を超える同社では、PdM組織が40名規模に拡大し、今まさに「組織としての第二成長曲線」を描こうとしています。
今回は、SmartHR CPOの安達隆さんに、 「今SmartHRがPdMに求めること」 「なぜ今、多様なバックグラウンドのPdMを迎えたいのか」 「SmartHRで働くことの面白さ」 について伺いました。
目次
- SmartHR PdM組織の現在地
- “領域拡大”と“複雑化”に備える採用強化
- 今、求めているPdM
- SmartHRが認める、候補者の可能性を引き出す言語化支援とは?
- スケール感とフラットな文化が共存する稀有な環境
- “現状を壊せるPdM”に期待したい
<プロフィール>

安達 隆(あだち たかし)さん:株式会社SmartHR CPO
2009年チームラボ株式会社入社。受託開発等に従事した後、2012年に株式会社Socketを共同創業SaaS事業を立ち上げ、KDDIグループに売却。株式会社メルカリを経て2019年にSmartHRへ入社。2020年に執行役員・VP of Product Management就任。プロダクト戦略の策定と組織作りを推進。2024年1月より現職。
太田 新作(おおた しんさく):株式会社Izul コンサルタント
https://izul.co.jp/consultants/consultants-ota/
SmartHR PdM組織の現在地

ー現在のSmartHRにおけるPdM組織の規模や現状を教えてください。
安達:組織全体で40名弱の規模で、領域は労務、タレントマネジメント、情シス、従業員ポータル、プロダクト基盤の5つです。その中でさらに複数のプロダクトがあり、1人もしくは複数人のPdMが担当しています。複数のPdMがいる場合は、プロダクトオーナーという責任者を置く体制です。そして、事業別の組織と事業を横断したPdM組織が存在しています。
太田:2025年6月の事業戦略発表会の場で5年後に売上5倍を目指していくといった発表もありましたが、それに合わせて組織も拡大していかれると思います。PdMの役割はどのように変わっていくでしょうか?
安達:大きく役割は変わりませんが、より事業拡大に資するプロダクトマネジメントを求めていきます。また、組織が拡大して権限委譲が進めば、各領域のPdMに対する期待値や職務範囲が広がっていくでしょう。例えばカンパニー制のような形になり、各カンパニーにCPOが生まれていくといった形も考えられます。
“領域拡大”と“複雑化”に備える採用強化
ーSmartHRはすでに大規模な組織ですが、それでもなおPdM採用を強化されています。その背景を教えてください。
安達:大きな理由の1つに、SaaS市場の構造が変化していることが挙げられます。現在SaaS市場全体として、マルチプロダクト化やオールインワン化が加速しています。企業単位での買収や統合が活発化し、最終的には大きなSaaSプラットフォームに機能が集約されていく流れです。
そういった環境のなかで、我々も既存の領域を深掘りするだけでなく、プロダクトのラインナップを増やし、領域を広げていく必要があります。多様なプロダクトを並行して成長させるためには、より多くのPdMが必要不可欠です。
2025年は12名のPdMが入社し、来年は今年以上の採用数になる見込みです。長期的な採用人数は決めていませんが、事業成長に合わせて採用は継続していきます。
太田:今後はSIerやコンサルなどこれまで採用していなかった層も採用する可能性があるとお聞きしました。その背景をお聞かせください。
安達:大きく二つの背景があります。一つは、基幹システムやSIerの領域に知見がある方のニーズが高まっていることです。我々が今後進むのは、大企業がオンプレミスで運用し、SIerがカスタマイズしてきた基幹業務システムによって牽引されてきた領域です。そのため、クラウドの経験も大事ですが、複雑な業務要件を紐解く力、大企業の業務運用に関するドメイン知識の重要性が高まっています。そのため、SIer出身・業務改革プロジェクト経験者などの新しい層を迎えたいフェーズに入っています。
二つ目の理由は、PdM組織が40名ほどとなり、適材適所の分業ができるようになったこと。これまでは、クラウドの知見があるネット系のスタートアップ出身者を多く採用してきました。カルチャーの親和性が高く、何でもできるワイルドカードのような人材が重宝されていたからです。現在は個人の万能性に依存せず、強みを活かし、弱みをチームで補完できる体制になったので、より多様なバックグラウンドの方を受け入れられるようになっています。
太田:採用要件も多様化しているのですね。
安達:そうですね。他にはプロジェクトマネジメントが得意な人も増やしていきたいですね。マルチプロダクト化が進み、2〜3つのチームが合同で一つの機能開発を行うケースが増えているのですが、そこで課題になっているのがプロジェクトマネジメントです。
弊社の開発現場はアジャイルに慣れているので、探索的にモノを作るのは得意ですが、複数チームが絡む大規模プロジェクトでは後から手戻りが起きたり、スケジュールが大幅にずれたりすることもあります。今後はウォーターフォール型のアプローチも柔軟に取り入れていくことが必要です。
しっかり計画を立て、関係者間で言葉の定義や認識をすり合わせるような段取り力がある方も求めています。ただ、PdMとしてアジャイル開発ができることが前提ではあります。
また、今までの採用要件と変わらない点でいえば、情報の整理や構造化が得意で、複雑な業務要件を紐解いてプロダクトの形に落とし込んでいける方です。
今、求めているPdM
―PdMに求める人物像について教えてください。
安達:最近、社内で活躍人材の言語化を行い、4つのタイプに類型化しました。
- 切り拓く人:既成概念を疑い、創造力を強みとして新たな価値を生み出す人
- 基準を引き上げる人:妥協なき姿勢で自身と組織の基準を引き上げる人
- 機能させる人:人と人との関係性やチームの空気を整え、組織を正しく機能させられる人
- 熱を広げる人:小さな熱を、情熱と論理で周囲を巻き込みながら、大きな熱量に変えて組織に広げる人
当然いずれのタイプも重要な人材だと考えていますが、SmartHRは高い目標をもって成長していく会社なので、組織の熱量を上げてくれる「熱を広げる人」の重要性は特に再認識しています。例えば、売上目標を達成しようと言われても、それだけでモチベーションが上がる人は少ないです。そのときに「これが実現すれば、社会はこんな風に良くなる。あなたのキャリアにもプラスになる」とストーリーを語って、チーム全体を鼓舞できるリーダーは貴重です。実は、SmartHRの経営陣にはあまりムードメーカー的な人がいないんです(笑)。やはり盛り上げがうまい人は重要だと改めて確認しました。
また、開発組織全体に共通して求めたいのは「モノづくりに対する熱量が高い人」です。私たちは2030年までに売上を5倍にするという難易度の高いチャレンジをしていますが、売上のためにユーザー体験や品質を妥協するつもりはありません。良いプロダクトを作りたいという強い熱意があり、それをチームに伝播できる人を求めています。逆に、スキルが高くても冷めている方は今のSmartHRに来ても楽しくないと思います。
会社が小規模なときは社長や経営陣の熱量が自然に伝わりますが、規模が大きくなるとその熱量が行き渡ることがなかなか難しくなります。熱源となってくれる人がPdMにいてくれると会社全体としてモメンタムが作れると感じています。
太田:「モノづくりの熱量が高いな」と安達さんが思うのは、どんな人ですか?
安達:「担当してきたプロダクトについて楽しそうに話す方」という観点はあるかなと思います。「どんなドメイン固有の課題があって、どんな手を打って何を学んだのか」という話を面白く語ってくださると、熱量の高さを感じます。
―面接で、どんな方にお会いしたいですか?
安達:夢中で仕事する人に来てほしいので、「何に夢中になれる人なのか」がわかるといいですね。自己分析がしっかりできていて、「私はこういう課題解決をしている時に一番燃えるんです。これが私の原動力です」と断言できる人だと、より具体的な話ができます。その人のソース・オブ・エナジーをまず知りたいですよね。
太田:なぜ、そこを重視されるのでしょうか。
安達:入社後の成長角度が高い人に来てほしいからです。SmartHRもどんどん成長して、求められることも変わっていきます。だからこそ、変化への適応力が高く、自ら変化を作り出せる人であるかを重視しています。
また、単純に熱量高く仕事に取り組んでいる人が好きだからというのもあります。PdMが「とにかくこれを作りたいんだ!」という強い思いを持っていると、チーム全体が引き締まります。一方、スキルが高くても気持ちが冷めている人が小手先でプロダクトマネジメントをすると、チームも本人も不幸になってしまうので、そこは見極めたいポイントです。
SmartHRが認める、候補者の可能性を引き出す言語化支援とは?
―Izulの支援に対する印象はいかがですか?
安達:弊社の採用担当者からは、「Izulさん経由の候補者は、レジュメの解像度が一段高い」という声を聞くことが多いです。経験の事実だけでなく、“なぜその意思決定に至ったのか”まで整理されているため、面談の段階で候補者の思考・価値観が把握しやすいと聞いています。
私としても、ここまで候補者の自己分析や言語化を伴走していただけるのは、非常にありがたいです。自己分析が不十分なまま転職活動をしている方は想像以上に多いんですよ。選考が進む中で軸が揺らいでしまったり、土壇場で今までとまったく違う軸が出てきたり。
これは結局、事前に自身のキャリアの要件定義ができていないために起きます。もちろん転職活動を通して次のキャリアの解像度を上げていくのは自然なことですが、自己分析の領域まで介在して対応してくれているのは、選考する側としてはありがたいですね。

太田:Izulでは、候補者に対し、過去のプロジェクト経験・意思決定プロセス・原体験まで含めて棚卸しを行っています。
一般に、PdMのような職種は、日々多くのステークホルダーと関わりながら意思決定をしていますが、 その体験の裏側を自分では言語化しづらい人が多いという特徴があります。Izulでは、それらを原体験から含めて丁寧に整理し、候補者自身が自分の価値を正確に語れる状態にまで導く支援をしています。
その結果、SmartHRの選考においても 「自分の強みやキャリア観を明確に伝えられる」候補者が増え、SmartHR側の評価者が理解しやすい形で伝えることができているのかなと感じています。
安達:先程多様な人材を採用していきたいという話もしたと思うのですが、Izulでそういった支援を受けていることによって、弊社側でもスキルのみに縛られない採用の助けになっていると感じます。
太田:確かに私たちがご支援した方々は、いわゆる“PdMど真ん中”のキャリアではないケースも多いです。
しかし、我々の支援を通して、過去のプロジェクト経験や意思決定プロセスを一緒に整理していくと、SmartHRが求める 「複雑な業務要件を紐解ける力」や「周囲を巻き込みながら前に進める力」を備えている方が少なくありません。
SmartHRのカルチャーは“スキル要件だけでは測れない部分”も大事にされているので、その方の原動力や、どんなときに力を発揮するかを言語化してお伝えすることで、ミスマッチなく選考に進めるケースが増えているのかなと思います。
スケール感とフラットな文化が共存する稀有な環境

―SmartHRに入社する意義や魅力について教えてください。今の局面だからこそ、面白い面はありますか?
安達:今だからこそ面白い点は三点あります。一つは自分の仕事のインパクトや社会に及ぼす影響が非常に大きいこと。二つ目は国内SaaSの中でも、この規模感で急成長を続けている企業は稀有だという点です。多様なドメインやフェーズのプロダクトがある環境で、PdMのスキルを磨けることはメリットになります。三つ目は、ビジネスサイドと開発サイドの関係性がフラットで健全であることです。
太田:なぜ、フラットな組織風土が形成されているのでしょうか。
安達:SmartHRは感情的な対立を好まない人が多く、理性で話し合って解決しようとする傾向が強いです。これは創業期からのカルチャーでもあり、皆が合理的に考えて健全な関係性である方が、事業にとってプラスであることを理解しているからです。
太田:Izulで支援してSmartHRに入社した方にインタビューしたときに、共通して話していたのが、働き心地の良さと成長環境の実感です。「社内にフラットな協働関係があって、PdMだけでなく、デザイナーやエンジニアも顧客解像度を同じ目線で高める姿勢があって、対話がしやすい。チーム間の壁がなく、リモートワークでも何でも聞きやすい」と話していました。
そして、SmartHRにはフィードバックの研修があり、ミスやインシデントのときもまず「共有ありがとう」「対応を頑張ってみよう」と伝えることも言語化されていることに驚いていました。
安達:仕事では言いにくいことを言わなくてはならない場面もありますが、そこで無用な波風を立ててしまうと貴重なエネルギーを割くことになります。そのエネルギーは顧客やプロダクトに向かうべきだと思っています。事業にとって何がいいかを合理的に考え、「お互いに言いたいことは言いながらも対立しない」という関係性の維持に労力を割いています。
プロダクトや顧客に対する熱量が高い会社で、経営とビジネスサイド、開発サイドが同じ方向性を見ていて、モノづくりに対する熱量を共有できることはPdMにとって心強い環境です。一方で、みんなが本当にいいものを作りたいと思っているからこそ、それをきちんと形にすることがPdMには求められるというプレッシャーもあります。
太田:「入社数カ月だけど、すでに来期のプロダクトのロードマップを作成している。早期の成長を求められることにポジティブなギャップを感じた」とも話していました。
安達:そうですね。プロダクトも増えていますし、会社も成長し続けているので、マネジメントなどの責任あるポジションがまだまだ空いています。大規模な会社になってきていますが、スキルとやる気、実績があればどんどん登用されることもSmartHRの特徴です。
“現状を壊せるPdM”に期待したい
―これから入社するPdMには、どんな変化を起こしてほしいですか?
安達:既存の事業規模がそれなりに大きいため、仕事の型化も進んでいますが、それを積極的に壊しに来てほしいですね。世の中の環境も事業もどんどん変わり、プロダクトマネジメントも変化していきます。既存のやり方に迎合せず、「こっちの方がいいんじゃないか」「もっとこういうプロダクトがあった方がユーザーはうれしいはずだ」。そんな変化を自ら仕掛けてほしいです。
太田:安達さんがPdMにとって一番大事だと思うマインドは何ですか?
安達:PdMとして活躍している人に共通しているのは、楽観的に考えて、悲観的に動くバランスです。顧客の大事なデータを預かる責任の重い仕事ではありますが、守りに入るばかりでは新しい価値は作り出せません。ポジティブに理想やビジョンを描き、でも実行段階では慎重にリスクを考慮して考え抜いて戦略的に動くことが必要です。この両立ができる人と一緒に働きたいですね。
―ありがとうございました!

