ワークライフバランスの推進もあって、テレワークを導入する企業は年々増えています。しかし、テレワークがどのような働き方なのか正しく理解している方は少ないでしょう。この記事では、テレワークの概要や主な形態、メリット・デメリットを解説します。
テレワークとは
テレワークとは、ICT(情報通信技術)によって時間や場所を有効活用できる働き方です。オフィスに出社せず自宅など様々な場所で仕事ができるため、従業員の配偶者の転勤・育児・介護などによる離職の防止や、遠方にいる優秀な人材の雇用が可能になるメリットがあります。また、オフィスへの通勤が不要となれば従業員は同じ地域に集中して住む必要がなく、住居を自由に選べるようになります。さらに、災害時などの非常事態にも柔軟に対応できます。
テレワークの普及状況
総務省が発表した「令和元年通信利用動向調査」によれば、テレワークを導入する企業ならびにテレワークの導入予定のある企業は平成29年時点で「約16%」でした。しかし、平成30年は「約26%」、令和元年では「約29%」と年々増加傾向にあります。
テレワークを新たに導入する企業に向けた助成金なども用意されており、今後もその普及率は上昇すると予想できます。
テレワークとリモートワークの違い
リモートワークとは、「遠隔」の意味を持つ「Remote(リモート)」と「働く」という意味を持つ「Work(ワーク)」を組み合わせた造語で、テレワークに比べると比較的新しい言葉です。どちらもオフィスへ出社せず遠隔地で働くことを指しています。
ただし、両者の違いは明確な定義の有無にあります。テレワークには明確な定義があるのに対して、リモートワークには明確な定義がないという点が大きな違いです。
テレワークにおける主な形態
オフィスへ出社せずさまざまな場所で仕事するテレワークには、いくつかの形態があります。ここでは、各形態の詳しい特徴をみていきましょう。
在宅勤務
在宅勤務とは、勤務先のオフィスに出勤せず、自宅を就業場所とする働き方です。通常の業務だけでなく、取引先との商談や会議などもすべて自宅で行います。自宅と勤務先の往復がなくなるため毎日の負担が軽減され、ワークライフバランスの実現につながります。また、育児や介護などで通勤困難な従業員も継続して就労することが可能です。
施設利用型勤務
施設利用型勤務とは、勤務先以外の別オフィスやテレワーク用の施設を就業場所とする働き方です。例えば、別オフィスにテレワーク専用の作業スペースを設けたり、レンタルオフィスを借りたりする場合は施設利用型勤務に該当します。在宅勤務と同様に、通勤をはじめとする移動時間の削減や遠隔での顧客対応などが可能です。また、勤務先のオフィスにかかる賃料や光熱費などのコスト削減にもつながるでしょう。
モバイルワーク
モバイルワークとは、タクシーや新幹線等の車内やカフェなどを就業場所とする働き方です。営業職をはじめ、頻繁に外出をする従業員の場合はオフィスに戻って業務をすることは非効率になるケースもあります。しかし、場所を問わず、移動中でも働けるモバイルワークであれば、業務の効率化や生産性向上が期待できます。さらに無駄な移動を減らせるため、身体的な負担軽減にも効果的です。
テレワークを実施するメリット
テレワークを導入すれば、従業員は柔軟に働き方を選択できます。この章ではテレワーク勤務の主なメリットを紹介します。導入を検討している方は是非参考にしてください。
ワークライフバランスを実現しやすい
テレワークの実施による大きなメリットは、従業員のワークライフバランスを実現しやすい点です。ワークライフバランスとは、働く人々が育児や介護・趣味といった仕事以外の生活との調和を図り、いずれも充実させる働き方・生き方を指します。テレワークを導入することで通勤時間を大幅に削減できるため、プライベートな時間をより充実させやすくなります。
仕事への意欲が高まる
テレワークの導入によって、仕事への意欲が高まることも期待できます。例えばオフィスで業務をしていると、来客や電話の対応などによってなかなか業務が進まない場合も少なくありません。一方、テレワークであれば自分への連絡以外は対応する必要がなく、集中して業務に取り組めます。その結果として業務効率が上がり、ワークライフバランスも改善される可能性があります。
通勤のストレスがなくなる
テレワークであれば出社の必要がなくなるため、満員電車での移動など通勤にかかるストレスを解消できます。また、通勤前の外出準備も必要なくなるため、プライベートな時間をより多く確保できる点も嬉しいポイントです。
育児・介護との両立が可能になる
テレワークによって、育児や介護との両立が可能になる点もメリットのひとつです。これまで、仕事への意欲はあるものの、育児や介護を理由に離職する方は少なくありませんでした。また、配偶者の転勤によって職場に通えなくなるケースも多く存在しています。しかし、テレワークであれば自宅で仕事ができるため、家庭の事情による従業員の離職を防ぐことが可能です。
テレワークを実施するデメリット
ここまで、テレワークに関するメリットを紹介してきました。しかし、テレワークにはデメリットも存在するため、実施の際は注意が必要です。ここからは、主なデメリットについて詳しく解説します。
プライベートとのメリハリを付けにくい
自宅でテレワークを行うとプライベートとのメリハリが付けにくく、人によってはモチベーションが低下する恐れがあります。また、上司や同僚の目がない分、オフィス勤務以上に自己管理能力が必要です。自己管理を怠ると業務効率が落ちる可能性もあり、かえって長時間作業することにつながりかねません。オン・オフの切り替えが難しい方は、作業する部屋を分けるなど、業務にメリハリを付ける工夫が必要です。
社内コミュニケーションの不足を招く
テレワークはオフィス勤務と比べると、社内におけるコミュニケーションの機会が減少します。その結果、結束力の低下やコミュニケーション不足による認識のずれが起きやすくなります。
そのため、チャットやWeb会議に関連するツールを導入するなど、従業員同士が気軽にコミュニケーションできるような工夫が必要となります。近年ではバーチャル空間でコミュニケーションを取れるメタバースも登場しており、テレワークのデメリット解消につなげられるとして期待されています。
業務進捗が分かりづらく評価されにくい
テレワークはオフィス勤務と異なり、業務の進捗や勤務態度などを直接確認できません。そのため、従来の方法では正しい評価ができなくなるケースも多く、人事評価の際にトラブルになる場合もあります。テレワークを導入する企業で働く際は、評価方法を事前に確認しておくとよいでしょう。
まとめ
テレワークとは、ICTの活用によって時間や場所を有効活用できる働き方です。ワークライフバランスを実現でき、育児や介護などと両立しやすいといった大きなメリットがあります。一方で、プライベートとのメリハリを付けにくいと感じる方も少なくありません。また、社内コミュニケーションの不足を招いたり、人事評価時にトラブルが生じたりする可能性もあります。
テレワークを実施する場合は、メリットとデメリットの両方を理解しておくことが大切です。