企業全体の方針・方向性を示すために作られるのが社是です。社是の重要性は理解していても、従業員への浸透といった観点で実際の経営に落とし込めていない企業も多いでしょう。また、そもそも社是をどのように作成すべきかわかっていない方もいるかもしれません。今回は社是とは何か?その概要や作り方について、有名企業の事例を交えて解説します。社是を周知・浸透させる取り組み事例も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
社是とは
社是とは企業の経営方針、もしくはその主張を指す言葉です。ほとんどの企業で定められている「経営理念」をベースに、よりわかりやすい表現で従業員・顧客に周知させる目的で作られます。社是には、どのような方針で進んでいくべき企業なのか?ということをわかりやすく伝える効果があります。そのため、経営層の方針と従業員の意向が噛み合わない企業は、この社是を見直す必要があるかもしれません。
社訓との違い
社是と似た言葉である社訓とは、アピールする「対象」が異なります。社是は企業を経営するうえでの方針であり、社内の人間はもちろん、社外へのアピールに活用されます。一方、社訓は従業員に向けての「教訓」として活用されるのが特徴です。そのため社外には公表されず、従業員へ「こうあってほしい」と伝えるためだけに作成されます。社是と社訓には、似たようでまったく異なる意味があるといえるでしょう。
経営理念との違い
社是は、経営理念をもとに作成される「方針」のことです。企業がどこにどう進んでいくべきかを明確にする役割があります。一方経営理念は、企業の考え方そのものを表す言葉です。なんのために経営しているのか?という企業としての存在意義を明確化する役割を持っています。経営理念と社是は混在することも多く、そこまで大きな違いが出るわけでもありません。したがって、社是=経営理念と捉えていても問題はないでしょう。
社是の事例を紹介
ここでは、自社の社是を作成するうえで参考になる、有名企業の事例を紹介します。今回は、以下4つの企業から抜粋します。
- セブン&アイ・ホールディングス
- 本田技研工業株式会社(ホンダ)
- 株式会社村田製作所
- キユーピー株式会社
自社でどのような社是を作るべきか悩んでいる企業は、この4社の社是を自社の経営に当てはめて考えてみてはいかがでしょうか。
セブン&アイ・ホールディングス
セブンイレブン・イトーヨーカドーなどを経営するセブン&アイ・ホールディングスでは、以下の社是が掲げられています。
私たちは、お客様に信頼される、誠実な企業でありたい。私たちは、取引先、株主、地域社会に信頼される、誠実な企業でありたい。私たちは、社員に信頼される、誠実な企業でありたい。 引用:セブン&アイ・ホールディングス公式サイト |
本田技研工業株式会社(ホンダ)
自動車メーカーとして事業を展開する本田技研工業では、顧客満足を価格・質の視点で実現する社是を掲げています。
わたしたちは、地球的視野に立ち、世界中の顧客の満足のために、質の高い商品を適正な価格で供給することに全力を尽くす。 引用:本田技研工業株式会社公式サイト |
株式会社村田製作所
電子部品メーカーとしてトップの地位を確立する村田製作所では、ものづくりへの真摯な姿勢が垣間見える社是が掲げられています。
技術を練磨し科学的管理を実践し独自の製品を供給して文化の発展に貢献し信用の蓄積につとめ会社の発展と協力者の共栄をはかりこれをよろこび感謝する人びととともに運営する 引用:株式会社村田製作所公式サイト |
キユーピー株式会社
マヨネーズをはじめとした製品で多くの家庭に浸透しているキユーピー株式会社の社是は、以下の通りです。
楽業偕悦(らくぎょうかいえつ) 志を同じくする人が、仕事を楽しみ、困難や苦しみを分かち合いながら悦びをともにする、という考え方です。 引用:キユーピー株式会社公式サイト |
社是を作るときのポイント
社是を作成する際は、以下のポイントを意識しておくとよいでしょう。
- シンプルな言葉で短くまとめる
- 直感的に意味が伝わる言葉で作る
- 経営方針の中で最も重要な要素を選ぶ
- 外部への情報発信を意識する
ここでは、自社に合った社是を作成するうえで重要なポイントについて、詳しく解説します。
シンプルな言葉で短くまとめる
できるだけシンプルかつ短い言葉でまとめることで、従業員や社外の人間に浸透しやすくなるでしょう。社是には定型文などは存在しないものの、できるだけわかりやすいものにした方が好まれる傾向にあります。企業を表す印象的な言葉をシンプルに短く伝えることで、インパクトを与えられるかもしれません。
直感的に意味が伝わる言葉で作る
企業の方針に則っているからといって、難しい言葉を選んでしまっては理解度が深まりません。文字列を見ただけで意味が伝わるような社是を意識しましょう。崇高な社是でも、伝わらなければ意味がありません。従業員の理解度を高めるためにも、直感的に意味の伝わる言葉を選ぶようにしてください。
経営方針の中で最も重要な要素を選ぶ
経営方針における最重要部分を抜粋することも、自社に適した社是を作るうえでは欠かせません。企業によっては、経営方針がいくつかの軸に分かれている場合もあるでしょう。その場合は、経営理念を社是としてひとつのものに落とし込む必要があります。また、経営理念の実現に最も近いものをピックアップするのもおすすめです。
外部への情報発信を意識する
社是の多くは従業員に向けて作られますが、顧客へのアピールとしても活用できます。外部に企業としての意義や使命をアピールすることで、ブランディングにも効果が期待できます。
社是を周知・浸透させる取り組み事例
ここでは、社是の周知・浸透に効果的な取り組みについて、いくつかの事例を参考に解説します。
従業員向けの冊子やパンフレットを作る
従業員を対象に、社是が記載された冊子・パンフレットを作成して配布しましょう。社是はほとんどの場合企業ホームページに掲載されますが、それだけでは十分に浸透しないかもしれません。手元に置いておける形で配布することで、従業員にとって社是がより身近な存在になるでしょう。
新人研修の内容に盛り込む
社是の周知を、新人研修の内容に盛り込むのもおすすめです。企業としての方針を理解するうえで重要なプログラムとして浸透すれば、社外へのアピールも期待できるでしょう。
懇親会や社内イベントで定期的に周知する
企業全体で実施するイベント内で、社是の周知を目的とした時間を設けるのもおすすめです。従業員に自然な形でアピールできるのはもちろん、企業方針を全体に統一させる機会にもなるでしょう。従業員一人ひとりの自発性を高める効果もあるため、積極的に実施しましょう。
まとめ
社是とは、企業の方針を従業員・社外へ周知させるために作成・活用されます。経営理念をベースに作成されるため、企業理解を深める意味でも重宝されるでしょう。従業員への教訓として用いられる社訓と合わせて、自社に適した社是を作成してください。社是は、ただ作成するだけでは意味がありません。作成するうえでのポイントを押さえ、浸透させることが大切です。従業員が社是を身近に感じられる機会を積極的に作り、企業全体で社是に向き合えるとよいでしょう。