「労働組合という言葉は聞いたことがあるけど、詳細についてはよく知らない」といった方は多いのではないでしょうか。堅苦しい印象を抱かれがちな労働組合ですが、加入すれば働きやすい職場環境を作れたり、不当な扱いに対抗できるようになったりと、さまざまなメリットがあります。
この記事では、労働組合の種類や加入するメリット・デメリット、加入方法などを紹介します。労働組合について詳しく知りたい方は、記事の内容を参考にしながら加入の有無を検討してみてください。
労働組合とは
労働組合とは、労働者が主体となり、労働条件(労働時間や賃金)の改善・維持や、経済的地位の向上を目的に組織する団体のことを指します。労働組合は労働者が複数人集まれば、自由に結成できます。行政機関への届出や許可は必要ありません。また労働組合の結成に関する相談は、それぞれの都道府県の労政主管部局や、相談に応じている労働組合の連合団体が受け付けています。
労働組合の4つの種類
労働組合は大きく分けて4種類存在し、それぞれ定義や特徴が異なります。詳細は以下の通りです。
企業別組合
企業別組合とは、同じ会社の労働者が集まり、企業単位で従業員が組織化した労働組合のことを指します。日本では営業職・事務職・技術職といった職種に関係なく、社内で考えが同じメンバーとともに組織することが多いです。
職業別組合
職業別組合とは、同じ職業や職種に従事する労働者が、企業・産業などの枠を超えて作る横断的な組合のことを指します。 イギリスなどの一部の国では、今も建設業などを中心に職業別組合が影響力を保持しているようです。しかし日本における職業別組合は、20世紀初頭に現れた鉄工組合や活版工組合などを除き、大変珍しい組合形態といえるでしょう。
産業別組合
産業別組合とは、同一産業に従事する労働者同士で、熟練度や職種に関係なくひとつの労働組合を組織することを指します。産業別組合は資本主義社会における組合組織として、今日でも支配的地位を占めています。
日本の産業別組合は一部を除いて個人加盟ではなく、企業別組合の協議体または産業別連合体に属しています。このような産業別組合の形式は、「単位産業別組合」と呼ばれることもあります。
合同労組・ユニオン
合同労組(ユニオン)とは、中小企業の労働者が地域ごとに加盟できる労働組合のことを指します。合同労組は企業別組合とは異なり、複数の企業の労働者から構成されています。中小企業に勤める方は、従業員数の少なさから企業別組合を組織しにくいという現実があります。そのため、労働者がハラスメントや賃金未払いといった労働問題に直面した際に、事態の収束を求めて合同労組に加入するケースが多く存在するのです。
労働組合に加入する社員側のメリット
社員が労働組合に加入すると、働きやすい職場環境を作れたり、不当な扱いに対抗できるようになったりとさまざまなメリットを享受できます。ここからは、労働組合に加入する社員側のメリットを紹介します。
働きやすい職場環境を作れる
労働組合があれば会社側への要望を通しやすくなるため、働きやすい職場環境を構築できます。労働時間や賃金といった労働条件だけでなく、人事制度の面でも会社に対して意見を表明しやすくなります。無事に要望を通すことができれば、従業員ファーストの働きやすい社内環境が整うでしょう。また労働組合の存在が、企業が不当な条件を提示することへの抑止力として働くケースもあります。
不当な扱いに対抗できるようになる
強制的な解雇といった不当な扱いに対しても、労働組合があれば抗議することができます。個人単位では交渉に応じてもらえない場合でも、労働組合であれば争議権や団体交渉権を行使することで会社側を交渉まで引きずり出せるでしょう。また訴訟になった際は、労働組合と関係の深い弁護士を紹介してもらえることもあります。労働組合はあらゆる面において、不当な扱いに対抗する手段として有利に働きます。
会社の経営情報を入手しやすい
労働組合に加入することで、労働条件に関する経営陣の考え方や仕組みをより深く理解できます。会社側の雇用状況を把握しておけば、いざ不当な労働条件を提示された場合でも的確に指摘できるようになります。また、組合員同士で情報交換を行うことで、より深い会社の内情や業界全体の情報を入手できるメリットがあります。
労働組合の加入に伴う社員側のデメリット
不当な扱いへの対抗や働きやすい職場環境を作れる労働組合ですが、加入に際しては一部デメリットも存在します。
組合費用を支払う必要がある
組合によって異なりますが、労働組合に入ると組合費を払わなくてはいけません。日本労働組合総連合会の調査資料によると、正規従業員組合員の一人当たりの平均月額組合費は5,023円です。具体的には、組合費が「4,000円以上5,000円未満」と答えた方は全体の26.1%、「5,000円以上6,000円未満」と答えた方は26.4%でした。労働組合に加入する人の中には、毎月5,000円の出費を痛手と感じる方もいるでしょう。
労働組合での業務が増える
労働組合で役員になれば、さまざまな業務を行う必要がでてきます。業務内容は労働条件・賃金に関する交渉や会社の経営状況に関する調査、労働組合員の意見の取りまとめなど幅広いです。もちろん、役員にならなければこのような業務は発生しませんが、組合員の総意によって役員候補に挙がる可能性もあるので注意しましょう。
労働組合に加入する方法
企業別組合が組織内にある場合は、組合の窓口に相談をすれば加入できます。ただ組織によっては、企業別組合がない場合もあります。この場合は、合同労組に加入することをおすすめします。業種ごとにさまざまな種類の合同労組があるため、インターネットで調べて自分にマッチした組合を選びましょう。
労働組合を社員が作る方法
稀なケースですが、労働組合に加入せずに自らが作るという選択肢も存在します。この章では、労働組合の作り方・手順を簡単に解説します。
まずは労働組合を作るための人員を集めて、組合の結成に必要ないくつかの手順を踏みます。具体的な手順は以下の通りです。
- 組合を結成する(本人を含めて2名以上の労働者を集める)
- 組織を形成する(組合規約の作成・意思決定機関の組成・予算編成など)
- 規約に基づく意思決定会議を開催する(意思決定機関や組合規約の承認を行う)
労働組合は労働組合法で規律される団体であるため、「労働組合法第5条2項」に記載される内容を、総合規約に記載する必要があります。また、組合規約や意思決定機関の承認がなされなければ、組合規約は効力を発揮せず組織も法的な意味を持ちません。組合の立ち上げに際しては、必ず管轄の労働委員会等から承認をもらう必要があります。
まとめ
不当な労働環境から従業員を守り、労働条件の交渉・改善をしてくれるのが労働組合です。日本にはさまざまな労働組合があるので、自身の働き方に合った労働組合を探して加入すると良いでしょう。加入にはメリット・デメリットが存在するので、特徴をしっかりと吟味したうえで活用してみてください。