従業員が休職申請した場合、求職理由などを確認したうえで企業の規定に従って適切に休職手続きを行わなければなりません。ただし、休職は法律に記載されている企業独自の制度のため、休職期間や細かい条件などは企業によって異なります。また、欠勤と休業の違いがよく分からないという方も多いでしょう。この記事では、休職の概要や欠勤との違い、利用時の注意点、休職が認められるケースについて詳しく解説します。
休職とは
休職とは、従業員側の都合によって業務が困難な場合に労働契約を維持したまま、会社規定に基づいて業務を免除し長期的に会社を休むことです。休職中は給与・賞与は原則発生しませんが、独自の休職制度を設けている企業であれば補填される場合があります。休職の多くは従業員都合がほとんどですが、自然災害や経営の悪化など企業都合によって休業する場合があり、この期間中は休業手当の申請が可能です。
欠勤や休業との違い
欠勤や休業との違いは「業務免除の有無」です。前述の通り、休業は会社規定に基づいて業務を免除し長期休暇を与えることを指します。一方、欠勤も従業員の都合で休むものの、休業と違って業務を免除されていない状態です。また、欠勤が続いた後、休職へ移る場合もあるため、長期的に出勤できないことが予想される場合は休業も視野に入れて相談しておくとよいでしょう。
休職期間の上限
休職期間の上限は企業ごとに異なりますが、短くて3ヵ月、長い場合は2年が一般的です。独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査によれば、休職期間を6ヵ月〜1年と設定しているのは全体の約22%で、全体の約75%が2年でした。
休職期間の上限は休職理由や勤続年数が考慮されることが多いほか、企業規模によっても変わります。したがって、詳しい休業期間を把握したい場合は勤務先の就業規則を確認するとよいでしょう。
休職として認められる7つのケース
休職の概要は理解してもどのようなケースであれば休業として認められるか分からないという方も多いです。ここでは、休業となるケースについてみていきましょう。
1:病気・傷病休職
「病気・傷病休職」とは、業務外の病気やケガによって業務遂行が困難となり、療養するための休職です。病気・傷病休職をする場合は医師の診断書、復職する場合も医師の判断が必要となります。業務外の病気がケガで連続する3日を含む4日以上就業できなかった場合は、休職から4日目で健康保険の傷病手当金を受給可能です。
2:自己都合休職
「自己都合休職」とは、労働者の都合による休職です。休職理由としては、地域貢献・地域支援をはじめとする奉仕活動や災害復興支援といったボランティア参加が該当します。また、留学や研修など自己研鑽が目的の場合も休職が認められる場合もありますが、自己都合は幅が広いため、休職を認めるかは会社の方針次第であることを念頭に置いておきましょう。
3:出向休職
「出向休職」とは、従業員が元企業と雇用関係を維持している状態のまま、関連企業やグループ企業に一時出向する際に元企業が休職扱いすることです。休職には次の2通りがあります。
- 在籍出向:元会社に籍を残したままの状態
- 移籍出向:籍ごと出向先に移す状態
出向休職が適用されるのは、前者の「在籍出向」です。
4:事故休職
「事故休職」とは、業務外の事故が原因で長期的に欠勤することです。事故で欠勤・休職することから「事故欠勤休職」と呼ばれることもあります。
5:起訴休職
「起訴休職」とは、刑事事件の被告人となり起訴や判決が下されるまでの間、適用される休職です。ただ、起訴休職が適用されるためには以下の要件を満たしておく必要があります。
「起訴によって企業の社会的な信用が失墜し、職場秩序に支障が生じるリスクがあるなど、休職命令に合理的な必要性がある場合」
このように、起訴されたからといって必ずしも起訴休職が適用されるわけではありません。
6:留学休職
「留学休職」とは、語学や資格、専門知識の習得などのキャリア形成を理由に適用される休職で、職場復帰を前提としています。留学休職は従業員の希望で適用されるため、企業から指示されることは基本ありません。
7:公職就任休職
「公職就任休職」とは、公職業務や公職当選などによって、業務両立が難しい場合に適用される休職のことを指します。公職とは国会議員や地方議員、都道府県知事、首長のことです。公職就任休職の場合は、同僚などへ就任の経緯などを説明する必要があります。
休職を利用する際の注意点
ここまで、休職の概要や休職として認められるケースを紹介しました。ここでは休職を利用する際の注意点についてみていきましょう。
雇用を打ち切られる可能性がある
休職期間満了までに復職できない場合、雇用を打ち切られる可能性があります。したがって、休職取得時は復職を前提に療養に励み、期間内に復職を目指さなければなりません。
また、休職中であっても、社会保険料の徴収や復帰の連絡など、企業と連絡を取り合う必要があります。連絡が取れないとスムーズに復帰できなくなるほか、復帰の意思があったとしても雇用を打ち切られる事態になりかねません。病状が重い場合などは仕方ありませんが、可能な限り連絡が取れる状態を心がけましょう。
給料の支払い義務はない
休職は企業が独自に導入している制度です。したがって、法律に明記がなく、休職期間中の従業員に対して給料の支払い義務はありません。業務外の病気やケガが原因の場合は従業員の健康保険から傷病手当金が支給されるため、休職前に従業員に説明しておくとよいでしょう。ただ、支払い義務がないだけで、企業によっては休職期間中の従業員に給料を支払っている場合もあります。休職期間中の給料に関しては就業規則に明記されているため、忘れずに確認しましょう。
休職期間中も社会保険料を納める義務がある
休職期間中であっても従業員は社会保険の被保険者のため、社会保険料を納める義務があります。休職前は給与から被保険者が支払う社会保険料分を差し引いた状態で給与が振り込まれていました。
しかし、休職中は給与が発生しないため、従業員が支払う社会保険料を別途徴収しなければなりません。徴収方法としては、企業の立て替えや従業員による毎月送金、傷病手当金を企業が受け取り社会保険料を差し引いてから従業員に支給する方法などさまざまです。
まとめ
休職期間は企業によって異なり、最短で3ヵ月、最長で2~3年程度である場合が多いです。ただ、休職理由や勤続年数、企業規模によっても変化するため、勤務先の就業規則を確認したり、上司や人事部へ相談するとよいでしょう。休業が認められるケースは「病気・傷病休職」や「自己都合休職」「出向休職」など幅広いです。ただ、どの休職であっても、社会保険料を納める義務や雇用を打ち切られる可能性があるなどの注意点も存在します。
業務遂行が困難であれば無理せず休職することをおすすめします。その際は、紹介した注意点に留意しながら検討してみてください。