近年は女性が働く環境を見直す動きが強まり、産前・産後休暇や育児休暇制度の活用も広まっています。一方で結婚を機に「寿退社」を選択する方が多いのも事実です。この記事では、寿退社するメリットや注意点、必要な手続きについて詳しく解説します。
寿退社とは
寿退社とは、女性が結婚をきっかけに今まで勤めてきた会社を退職することです。日本ではかつて、結婚した女性は専業主婦として家庭に専念することが一般的でした。そのため、お祝い事である結婚を機に退職することを「寿退社」と呼びます。
寿退社のメリット
時代背景によって多少の違いはありますが、寿退社にはいくつかのメリットがあると考えられます。
仕事のストレスから解放される
寿退社に限った話ではありませんが、退職することで仕事のプレッシャーやストレスから解放されるというメリットがあります。仕事をするうえで、仕事量の多さや人間関係など、何らかの精神的な負担を抱える人は多いでしょう。寿退社をすることで、仕事のことを考えずに生活できることは魅力的です。
家事・育児に専念できる
寿退社によって、家事や子育てに多くの時間を割けるようになります。現在では産休・育休制度の活用や保育園を利用することで、仕事と子育てを両立させている方も多くなっています。しかし、仕事と子育てを両立する負担は非常に大きなものです。家のことだけに専念できる環境は大きなメリットといえるでしょう。
結婚を退職理由にできる
いつか仕事を辞めたいと思っていても、立場や周りへの影響を考えて辞めづらいと悩んでいる人にとって、結婚を理由に退職できることはある意味チャンスといえるでしょう。寿退社の場合、ネガティブな退職理由と比べて周りから引き留められることも少なく、上司にも退職理由を伝えやすいため、退職のハードルが下がります。
結婚式の準備に時間をかけられる
寿退社をすることで、働きながら結婚式の準備に追われることなく、じっくりと時間をかけられるようになります。結婚式の準備は数ヶ月に渡り、考えなければならない内容も多岐にわたります。しかし一生に一度の晴れ舞台として、妥協したくないと考える方も多いでしょう。衣装選びやエステ通いにも多くの時間を使えるので、より理想に近い結婚式を実現できるでしょう。
寿退社で後悔しやすいポイント
ここまで寿退社のメリットを紹介しましたが、反対に寿退社してから後悔してしまうことも考えられます。寿退社が抱えるリスクについても目を向けてみましょう。
家事の負担が増える
仕事を辞めて専業主婦になると、全ての家事を担当するケースがほとんどです。家のことに専念できるとはいえ、将来的に育児も全て担うことになると大きな負担です。子育てには夫の協力も欠かせないため、家事や育児の役割分担については夫婦間でしっかりと相談しておきましょう。
世帯収入が減る
共働きの世帯と異なり、片方の収入だけに頼る形になるため世帯収入は少なくなってしまいます。収入額によっては、子育てや老後の資金に不安を感じてしまうかもしれません。家計のやりくりを考慮したうえで寿退社すべきかを決めるようにしましょう。
再就職のハードルが上がる
寿退社をして一度職歴に空白期間ができると、再就職しようと思ってもなかなか就職先が決まらない可能性もあります。長いブランク期間や育児による欠勤の可能性を理由に、選考においてマイナスの評価がつけられてしまうことも多いといえます。正社員ではなくパートの仕事を探すなど、選択肢を広げることも視野に入れておきましょう。
社会との繋がりが減る
寿退社をして家庭に入ることで、社会とのつながりは薄くなるでしょう。家事や育児に追われていると家の中にいる時間が長くなり、人と会う機会が少なくなってしまいます。特に孤独感から不安を覚える人は、習い事に取り組んだり友人と会ったりと、積極的に人と会う機会を作ってみることをおすすめします。
円満に寿退社するためのコツは?
寿退社するときは、できるだけトラブルを避けてスムーズに退職したいものです。円満に寿退社するためには、まず直属の上司に面談の機会を設けてもらい、結婚の報告と寿退社の意向を伝えましょう。挙式の準備などの都合で退職日の調整が必要な場合は、このタイミングで相談します。
また、結婚式の日取りが決まっている場合はあわせて報告しましょう。今までお世話になったという感謝の気持ちを込めて、真摯で謙虚な受け答えに徹しましょう。
寿退社後に必要な手続き
寿退社後も、会社に関わる手続きがいくつか必要です。自分で行う手続きを忘れることのないように、しっかりとチェックしておきましょう。
健康保険
今まで会社で加入していた健康保険の切り替え手続きが必要です。また、扶養に入る場合も手続きが必要となります。その他、国民健康保険への加入や任意継続被保険者制度の利用など、条件によって選択肢が異なるため事前に確認しておきましょう。
雇用保険(失業保険)
退職に伴い、ハローワークで失業保険の給付手続きを済ませましょう。失業保険は、退職前の2年間のうち12ヶ月以上雇用保険に加入していた場合に受け取れる手当です。受給額や給付日数は人によって大きく異なるため、ハローワークの担当者に確認しましょう。寿退社の場合は自己都合退職の扱いになるため、約3ヶ月の給付制限期間後に支給が開始されます。
年金
配偶者が会社員で扶養に入る場合は、年金保険料が免除されます。その他の場合は厚生年金から国民年金に切り替えなければならないので、自治体の年金窓口で手続きを進めましょう。
税金
住民税は、前の年の所得をもとに金額が算定されます。そのため、寿退社して働いていなくても、前年の所得に応じた税金を自分で支払わなければなりません。また、年末調整や確定申告の必要性も出てくるので、納税や申告が漏れないように気をつけましょう。
寿退社と嘘をついて転職するのはあり?
他の退職理由と異なり、寿退社が円満に退職しやすいと感じる方は多いでしょう。中には、どうしても仕事を辞めたいため、寿退社と偽って退職しようと考える人もいるようです。しかし、退職の意思を伝えてから実際に退職するまではある程度の期間があります。その間も、上司や周りの社員からかけられる祝福の気持ちに対して嘘をつき続けなければならないため、おすすめはできません。
まとめ
寿退社は、お祝い事である結婚を含んだ喜ばしいことです。しかし、退職する本人にとってはメリットばかりでなくリスクも存在しています。退職してから後悔しても、取り返しがつかないケースが大半です。メリット・デメリットを考慮した上で、新生活に向けて素晴らしいスタートを切れるよう決断しましょう。