退職者から発行依頼があった場合、会社は離職票を発行しなければなりません。ただし、従業員の退職時には離職票や離職証明書、退職証明書などのさまざまな書類があるため、区別できていない方も多いでしょう。そこで、当記事では離職票の概要や発行手順、よくあるトラブル事例を紹介します。
離職票とは
離職票とは、退職者が失業給付金の受給申請をする際にハローワークへ提出する書類です。言い換えれば、失業給付金を受給する予定がなければ、離職票は必要ありません。そのため、離職票は本人の希望がなければ、基本的に発行しなくてもよい書類です。ただし、本人からの希望があった場合は発行義務が発生し、退職者が会社を退職した翌日から10日以内に手続きしなければなりません。
離職票の発行に際し、手続きを行うのは会社の人事や総務などの部署ですが、実際に離職票を作成し、発行するのはハローワークとなります。
離職証明書との違い
離職票と似た書類として「離職証明書」があります。離職証明書は会社側が退職者の離職票を発行するために、ハローワークに提出する書類です。離職証明書は離職票とは異なる書類ですが、離職票発行には欠かせません。離職票関連の書類として一緒に覚えておくとよいでしょう。
退職証明書との違い
離職票と退職証明書の違いは「書類発行先」と「用途」です。
前述の通り、離職票はハローワークが発行し、失業給付申請時には欠かせない書類です。
一方、退職証明書は勤務先が発行するもので、転職先などへの退職証明などに使用される書類です。会社が発行する書類であり、公文書として扱われない点が特徴です。ハローワークなどを通す必要もありません。また、離職票とは異なり、雇用保険加入者でなくても発行可能です。
離職票を受け取る必要がある人
離職票を受け取る必要があるのは、雇用保険加入者かつ失業給付金・失業手当の申請予定がある人です。失業給付金・失業手当は雇用保険の基本手当と呼ばれ、労働意欲があり、なおかつ求職活動をしている人に支給されます。
退職後の転職先会社がすでに決まっている場合などは必ずしも離職票を受け取る必要はありません。そのため、本人の希望によって発行手続きが行われます。ただし、退職者が59歳以上の場合は本人の希望に関係なく離職票の受け取りが必要です。前述の通り、失業給付の申請には離職票は欠かせない書類です。
退職後の働き口が見つかっておらず、失業給付金・失業手当を受給する予定の人は忘れずに離職票を受け取りましょう。
離職票の種類
離職票は以下2種類に分類されます。
- 離職票-1
- 離職票-2
「離職票-1」は「雇用保険被保険者離職票-1」と呼ばれ、雇用保険の資格喪失を通知している書類です。一方「離職票-2」は「雇用保険被保険者離職票-2」と呼ばれ、こちらは被保険者期間や退職理由、賃金支払いなどが記載されている書類です。A4サイズと横長A3サイズの書類が2通1組で発行されます。
離職票が発行されるまでの流れ
ここまで離職票の概要や種類、ほかの書類との違いについて紹介しました。ここからは、離職票発行の主な流れについてみていきましょう。
退職者が会社に離職票の発行を依頼する
退職が決定したら、退職者本人が離職票の発行を会社の担当者へ依頼します。会社によっては退職手続きの段階で離職票の発行有無について尋ねてくれるケースもあるでしょう。
会社が離職証明書を準備する
退職者からの発行依頼を受け、会社は離職証明書を準備します。書類の準備といっても、それほど複雑な内容ではありません。会社と退職者が離職証明書にそれぞれ必要事項を記入するだけです。会社から書類の記載依頼があったら、迅速に対応しましょう。
会社がハローワークに離職証明書を送付
次に、会社が準備した離職証明書をハローワークに送付します。この際、雇用保険被保険者資格喪失届も提出し、退職者の雇用保険被保険者資格を取り消す手続きを同時に行うことが多いです。会社は退職した翌日から10日以内にこれらの手続きをするよう義務付けられています。
会社から退職者に離職票が送付される
最後に、会社から退職者に離職票が送付されます。ハローワークで準備された離職票の中には会社の控えも含まれており、ハローワークから会社を経由して退職者に送付される仕組みです。ハローワークから直接送付されない点には注意が必要です。離職理由などを確認し、内容に相違がなければ失業給付金の申請を行いましょう。
離職票でよくあるトラブルと対応方法
前述の通り、離職票の発行はそれほど難しいものではありません。しかし、手続きを巡って全く問題が起きないというわけではありません。ここでは、離職票関連で起きやすいトラブルと対応方法についてみていきましょう。
離職票が届かない
離職票関連で多いトラブルのひとつが「離職票が届かない」という問題です。この場合、離職票の手続きを行う「退職した会社」に問い合わせましょう。
退職者が離職票の発行を希望した場合、会社は退職した翌日から10日以内に手続きすることが義務付けられています。故意に手続きを進めないことは違法であり、問い合わせて状況を確認しましょう。
会社への問い合わせは避けたいという場合は、ハローワークでも進捗を確認できます。「手続きがされていない」や「何らかの不備である」といった場合は、ハローワークが手続きを催促してくれます。
また、これらの事情で交付が遅れ、手元に離職票がない場合でも仮手続きで失業給付金の申請を進めることが可能です。仮手続きの基準はハローワークによって異なるため、自宅のあるエリアを管轄するハローワークに確認してみてください。
離職票を紛失してしまった
離職票を紛失してしまった場合は、再発行が可能です。再発行の方法として、次の2つが挙げられます。
- 退職した会社に再発行を依頼する
- ハローワークに行って自分で再発行申請する
スムーズに手続きを進めたいのであれば、自分での再発行申請をおすすめします。
手続き自体は簡単で、再交付申請書に必要事項を記入してハローワークに申請するだけです。再交付申請書を提出する場合は以下を持参しておきましょう。
- 身分証明書(免許証など)
- 印鑑
- 雇用保険被保険者証
自宅のあるエリアを管轄するハローワークで再発行申請できますが、退職した会社があるエリアを管轄するハローワークでも申請可能です。
離職理由の行き違いがあった
離職理由の行き違いも、離職票で起こりやすいトラブルです。離職票に記載されている離職理由は、失業給付金の支給がスタートする時期や給付期間に影響を与えます。
金銭を含めて退職者の生活にも関わり「離職理由が退職者の意にそぐわない」や「解釈に行き違いがある」といった場合は重大なトラブルにも発展しかねません。会社側と事前確認を行い、見解に相違がないようにしておくことがおすすめです。
まとめ
離職票は退職者が失業給付金の受給申請をするために欠かせない書類です。離職票に手元がない場合でも仮申請で受給手続きできます。
しかし、仮申請は退職してからある程度の時間が経過していないと受け付けてもらえません。また、離職表発行が遅れると、失業給付金の支給スタートの時期や給付期間に影響が及びます。退職が決まった段階でスムーズに発行手続きを進めてもらえるように、退職する会社に依頼するようにしましょう。