サーバントリーダーシップとは?求められる10の特性やメリットを解説

2023年12月1日

2023年10月20日

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Izul広報チーム

Izul広報チーム

サーバントリーダーシップとは、一般的なリーダー像とは異なる、奉仕型・支援型のリーダーシップのことです。新しいリーダーのあり方として、近年多くの企業から注目を集めています。この記事では、サーバントリーダーシップの特性や企業での導入事例を解説しています。組織の人間関係や部下との接し方に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

サーバントリーダーシップとは

サーバントリーダーシップとは、メンバーに対して奉仕し、信頼関係を築きながら相手を導いていく支援型のリーダーのことです。「召使い」を意味する「サーバント」と「指導力・統率力」を意味する「リーダーシップ」を組み合わせた言葉で、1970年にアメリカのロバート・K・グリーンリーフ博士が提唱しました。サーバントリーダーシップはメンバーの意見に真摯に耳を傾け、それぞれの能力を最大限引き出せる環境づくりを重視しています。

サーバントリーダーシップと支配型リーダーの違い

サーバントリーダーシップと支配型リーダーシップには、メンバーとのコミュニケーションに大きな違いがあります。支配型リーダーとは、リーダーの意見や考えを絶対として、メンバーを統率するリーダーのことです。メンバーに対しトップダウンで一方的に指示・命令するため、双方向の会話は基本的に行いません。一方、サーバントリーダーシップはそれぞれの意見を尊重し対話しながら仕事を進めるため、メンバーの自主性が育ちやすい点が特徴です。

サーバントリーダーシップに必要な10の特性

提唱者であるロバート・K・グリーンリーフ博士によると、サーバントリーダーシップには10個の特性が必要とされています。ここでは、それぞれの特性について具体的に解説します。

1:傾聴

メンバーの話にしっかり耳を傾け、相手の意見や考え、抱えている思いや本当に望むことを聞き出すことが求められます。どのような内容であっても、否定せず柔軟に受け入れる姿勢が大切です。また、自分自身の心の声も傾聴し、どうすればメンバーに貢献できるのか・組織の方向性は間違っていないかを定期的に見つめ直す必要があります。

2:共感

一方的に指示するのでなく、メンバーの立場から物事を考えて理解を示す姿勢が求められます。自分と違う価値観や考え方でも否定せず、受け入れて尊重しようと努力することが重要です。リーダーが積極的に共感の姿勢を見せることで、お互いに信頼関係が生まれやすくなります。

3:癒やし

相手の心に寄り添い、愛情を持って接するリーダーはメンバーに癒やしを与えます。その結果、メンバーのモチベーションが上がり、パフォーマンス向上が期待できます。また、組織で欠けている部分をメンバー同士で補えるように調整するのも、リーダーの重要な役割です。

4:気づき

幅広い視点から物事をありのままに見つめ、本質に気づく能力が求められます。固定観念に囚われず柔軟な対応ができれば、あらゆる問題の早期解決にもつながるでしょう。また、リーダーが得た気づきによってメンバーが新しい価値観と出会うなど、組織全体にいい影響をもたらします。

5:説得

メンバーと信頼関係が築けているリーダーは、一方的な命令ではなく説得によって組織の意思決定を進めることが可能です。支配型のように、権限を振りかざして無理やり服従させることはありません。説得によってお互いが納得できている状態になれば、メンバーの自主的な行動も期待できます。

6:概念化

組織の目標や将来の夢を言語化し、メンバーにわかりやすく伝えることが求められます。組織全体に共通のビジョンがあることで、メンバーは迷うことなく自分の仕事に向きやすくなるでしょう。目標は一度立てたら終わりではなく、定期的に見直すことが大切です。

7:先見力・予見力

過去の出来事と現在の状況を照らし合わせ、そこから将来の出来事を予測できる先見力・予見力もリーダーには欠かせない能力です。先見力があれば、今後起こりうる問題の対策を立てるなどメンバーを正しい方向に導けるようになります。また、万が一トラブルが起きた際も組織全体で迅速に対応しやすくなるでしょう。

8:執事役

執事役とは、主人に仕える執事のように、メンバーをサポートしながら組織全体を支える能力のことです。自分の利益よりも相手の利益を優先できる人は、サーバントリーダーシップの素質があると言えます。また、メンバーから「大切なものを預けられる」と信頼されるように行動することが必要不可欠です。

9:人々の成長に関わる

メンバーの長所や特性を見つけ、一人ひとりが成長できるよう働きかけるのもリーダーの重要な役割です。それぞれの能力やスキルに合わせて、適材適所に業務を割り振ることが求められます。メンバーが自分の能力を最大限発揮できれば、組織全体の成長にもつながります。

10:コミュニティづくり

メンバーが自分の仕事に邁進し、大きく成長できるコミュニティをつくることが求められます。メンバー同士の関係にも気を配りながら、愛情を感じられる組織を目指すことが大切です。コミュニティに愛情を感じられれば、メンバーは組織のために自主的に行動できるようになります。

サーバントリーダーシップのメリット

サーバントリーダーの存在は、組織にさまざまなメリットをもたらします。ここでは、代表的なものを3つ紹介します。

従業員の生産性が上がる

リーダーがメンバーを尊重することで、メンバーもリーダーに対して信頼や尊敬の念を抱きやすくなります。「組織のために働こう」という思いが生まれることで、モチベーションが高まり生産性の向上が期待できるでしょう。また、サーバントリーダーはメンバーの成長を重視しているため、それぞれが能力を最大限に発揮できる適材適所な人員配置が可能です。

社内のコミュニケーションが活発化する

サーバントリーダーがいる組織は、相手の話を受け止め尊重する文化が生まれるため、メンバーが自分の意見を積極的に伝えやすくなります。その結果、社内におけるコミュニケーションの活発化が期待できます。また、円満なコミュニケーションが増えることで信頼関係が深まり、メンバーは安心して穏やかに働くことが可能です。

顧客満足度が向上する

サーバントリーダーが活躍する職場は、従業員だけでなく顧客満足度も向上しやすい点もメリットの一つです。サーバントリーダーはエンドユーザーと接する機会が多い現場の意見にも耳を傾けるため、自然と顧客の声が集まりやすくなります。その結果、顧客の視点で経営に取り組むことが可能となり、これが企業の強みとなります。

サーバントリーダーシップのデメリット

サーバントリーダーシップは必ずしもメリットだけではなく、状況によっては課題が生じることもあります。ここでは、主なデメリットを3つ紹介します。

意思決定に時間がかかりやすくなる

トップがすべての意思決定を行う支配型リーダーとは異なり、サーバントリーダーシップではメンバーを説得しながら意見をまとめていく点が特徴的です。この方法にはメンバーの意志を尊重できるといったメリットがあるものの、全員が納得できる結論を出すまでに時間がかかってしまう可能性が考えられます。

経験・知識が少ない人には運用しにくい

サーバントリーダーシップではメンバーの自主性を尊重し、それぞれのスキルを発揮しながら成長することを重視しています。しかし、業務の経験・知識が少ない人にとっては、自分で考えながら問題を解決していくのは容易ではありません。また、やる気がなくモチベーションが低い従業員がいると、思うような結果が出ない場合もあります。

従業員によっては合わないことがある

リーダーに指示された仕事だけをこなしたい人や、意思決定に携わりたくない人にとっては、主体性を重視しメンバー全員で意見を出し合うサーバントリーダーシップの考え方が合わない場合があります。また、これまでの支配型リーダーに慣れてきた人にとっては、自分の意見を外に出すことにストレスを感じるケースも考えられます。

サーバントリーダーシップの導入事例

有名企業のなかには、サーバントリーダーシップを導入したことで成果を挙げている会社が多く存在しています。ここでは、3社の導入事例を紹介します。

良品計画

無印良品を運営する良品計画においても、元社長の松井忠三氏がサーバントリーダーシップを取り入れたことにより、業績のV字回復を達成しています。同氏は就任直後、全国の店舗に足を運んで現場の社員と直接対話する機会を設けました。そこから見えてきた課題をもとに着手したのが、業務を可視化できるマニュアル「MUJIGRAM」の作成と現場の声を吸い上げるシステムの開発です。良品計画は現在も増収増益を続けています。

資生堂

資生堂では、池田守男相談役が社長に就任した際にサーバントリーダーシップを導入したことで、経営危機からの回復に成功しています。同氏は「顧客と直接関わる店舗こそが重要」と考え、これまでのトップダウン経営とは反対の「店頭起点の経営方針」を打ち出しました。そしてビューティーコンサルタントや営業職の会議に自ら率先して顔を出し、現場の声を積極的に取り入れることで、資生堂を再建に導いています。

スターバックスコーヒー

アメリカ発祥の有名コーヒーショップ・スターバックスコーヒーは、多くの企業のなかでいち早くサーバントリーダーシップを導入した企業の一つです。かつて経営危機に直面した際、当時の社長であったシュルツ氏は従業員に対し自社の経営状況について包み隠さず共有し、最後まで従業員を第一優先に行動しました。業績が回復し順調に利益を上げている現在でも、店舗で働くスタッフが企業の中心となって自律的に働いています。

まとめ

この記事では、サーバントリーダーシップについて解説しました。サーバントリーダーシップといえば「優しいリーダー像」が想起されがちですが、実際はただ優しいだけでなく、メンバーが間違っているときには愛情を持って正しい方向へ導くことが求められます。また、リーダー自身に豊富な経験や知識が必要です。サーバントリーダーシップは、これまでにない新たなリーダーのあり方として、これからますます注目を集めていくでしょう。

監修者・眞山 裕介

眞山 裕介

新卒から30代前半までを主に大手不動産ディベロッパーにてキャリアを積み、特に商業不動産事業での管理運営・開発・リーシングへの知見が深い。
リクルート、パーソルキャリア、人材ベンチャーにて事業コンサル、人材コンサルとしても幅広い企業とのタッチポイントを持ち、一つに絞らないキャリア形成を自身の強みとしている。
その他の活動として、労組での役員や、JDLAの活動・勉強会への参画、大学の客員研究員、政治塾への参加、コーチング、パーソナルトレーナーなど、常に自身に刺激を与えつつ、変化と共に自身の成長をエンジョイし続ける。
変化をポジティブかつ可能な限り正確に選ぶことへの伴走を担うため、Izulへジョイン。

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株式会社Izulの広報チームが運用。20代〜30代の若手ハイクラス層から、圧倒的支持を獲得中。働き方や転職のコツなど、キャリアに役立つ情報を発信していきます。

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