優良な顧客を社内の別部門に紹介するトスアップ。効果的なトスアップは、営業活動を円滑に進める基礎となる仕組みです。流れるような営業プロセスを目指しながらも、施策がなかなか上手くいかず苦戦している人も多いのではないでしょうか。本記事では、トスアップの特徴や部門連携、ビジネスシーンでの活用事例について解説します。トスアップに磨きをかけて効率的に売上を伸ばしたいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
ビジネスシーンにおけるトスアップとは
ビジネスシーンにおけるトスアップとは、顧客を社内の別部門に引き継いで営業効率を高めることを指します。顧客を全て営業部門に引き継ぐと多大な負荷がかかるため、顧客と接する部門が事前に絞り込みを行い、ある程度成約する見込みのある顧客を選別してから引き継ぐことで効率化を目指します。また、ある一定の条件・課題をクリアし、営業活動を次の段階に繋げることもトスアップと言います。
トスアップの語源
トスアップの元々の語源はバレーボールで、アタッカーへトスを上げるように、人から人へ繋いだり、何かを上げることを指して使われます。マーケティングや営業の世界で使われるトスアップは、潜在顧客から見込み顧客を拾い上げて、次のプロセスへつなぐ際に使われます。
横断的な部門連携
トスアップは、潜在顧客のふるい分けを行うための重要なプロセスです。すべての顧客に同じように対応していては、本当にニーズのある顧客の要望に対して十分な対応ができません。成約の可能性が高い顧客を見極めて次のステップへ送ることで、結果として顧客満足度の向上にも繋がります。
フィールドセールスへのトスアップを行う主な部門
最終的に商談を詰める役割を担うフィールドセールスへのトスアップを行うチームは、「マーケティングチーム」「インサイドセールスチーム」「コールセンター」の3つがあります。それぞれのチームが果たす役割の詳細を説明します。
マーケティングチーム
マーケティングチームとフィールドセールスの連携は、セールスをより機能的に運営するための重要な要素です。まずは、ターゲティング(営業活動で狙っている顧客層)を共有する必要があります。
例えば、マーケティングで価格の安さを強調する広告を出したとしても、フィールドセールスチームでは納品の早さやアフターサポートの充実ぶりを強調していると、ユーザーのニーズとはかけ離れた訴求になります。サービスの軸を合わせて強みを訴求することが何よりも重要です。
また、トスアップを行う際は、引き継ぎを行う際のトリガーとなる顧客の行動を共有することも重要です。トリガー設定に有効なユーザーのアクションは次の通りです。
- ホームページから資料請求があった
- 金額や納期など具体的な質問があった
- セミナーや展示会に出席した
以上のアクションを基準として、アンケートなどを用いてニーズを探り、見込み客をフィールドセールスへトスアップします。
インサイドセールス
インサイドセールスは、資料請求や問い合わせがあったユーザーに対応する部門です。組織によっては、マーケティングとインサイドセールスを一つのチームで担当しているケースもあります。インサイドセールスはニーズ喚起と同じく、成約見込みの見極めも重要な役割です。
インサイドセールスが担当する見込み顧客の選定が甘いと、フィールドセールスの仕事が増えてしまい、流れるような組織連携ができません。そのため、インサイドセールスとフィールドセールスは常に情報共有しておく必要があります。数ある共有事項の中でも押さえておきたいポイントは次の通りです。
- どんな流れで話を進めて顧客の関心を高めてきたか
- 顧客の規模や業務内容、使っている業務システム
- 個人的な好みや盛り上がる話のテーマ
情報は社内の連絡・共有ツールでやりとりするのが基本ですが、的確な情報共有のために定期的なミーティングの場を設けることも大切です。
コールセンター
テレアポを営業手法に取り入れている企業では、コールセンターからフィールドセールスへのトスアップが重要になります。本質的なニーズの見極めと、サービスの訴求ポイントの明確化がコールセンターの大切な役割です。コールセンターからフィールドセールスへのトスアップは認識違いが発生しやすく、綿密なトスアップがより重要視されます。
ユーザーのニーズを見極めるためのポイントは次の通りです。
- 代金に関する質問が出た
- 詳細資料が欲しいと言われた
- 納期に関する質問をされた
特に数字や期日に関する質問が出た場合、ある程度のニーズがあると考えて良いでしょう。フィールドセールスへ連携することをあらかじめ伝えておくと、相手の安心感が増します。
フィールドセールスへのトスアップを円滑に進める方法
フィールドセールスへのトスアップを円滑に行うには、どのようなポイントに注意すべきなのでしょうか。良いトスアップの条件として知られる3つの要素について解説します。
部門間で目標レベルをあらかじめ共有しておく
全体の業務フローの中で、ボトルネックがどこにあるのかを事前に把握しておくと、自分たちの成すべきことや次のステップで求められる内容を明確にできます。各部門で何を目標として行動しているのかを明確化すれば、全体の意識共有にも効果的です。リアルタイムの情報を常に共有しておくとなお良いでしょう。
カスタマージャーニーマップやペルソナの共有
流れるような連携ができない大きな原因の一つに「いざ商談すると想定していた見込み客と違った」というケースがあります。部門間でペルソナが共有できていないと、明確なターゲット像を浮き彫りにできません。結果として、無駄な動きが生まれてしまうのです。
ペルソナを作成する時は、インサイドセールスやマーケティングチーム、フィールドセールスと共同で取り掛かるのが良いでしょう。また、マーケティングチームが作成するカスタマージャーニーマップも部門間で共有し、訴求力を高めておきたいところです。
トスアップのトリガー条件をしっかり決めておく
情報共有が滞りなく伝達されるように、各部門の業務プロセスはあらかじめ明確にしておきましょう。見込み顧客を見つけたとしても、フィールドセールスへうまく連携できないと、重大な機会損失となってしまいます。「ある特定の条件を満たした時点で、即座にフィールドセールスへ連携する」というトリガーの設定は重要です。詳細内容を見ればすぐに商談に移行できる仕組みを構築できれば、機会損失を大幅に減らすことができます。
効率的にトスアップを行うポイントを解説
無駄のないトスアップを行うためには、どのようなポイントを意識するべきなのでしょうか。ここでは、効果的なトスアップに必要な3つの要素について解説します。
質の良いリードを収集できる環境を作る
良質なトスアップを継続的に行うには、質の良いリードを獲得し続ける必要があります。営業・マーケティング活動の起点となる、購買意欲が高いリードを創出するための環境づくりに力を入れましょう。たとえ多くのリードを獲得できたとしても、購買意欲が低いままだと受注には繋がりません。質の良いリードを獲得するには、メルマガやSNSなどをうまく活用し、ターゲットの心を掴む広告作成や情報発信を行う必要があります。
適切なタイミングで顧客のフォローを行う
顧客のフォロー体制に関しては、適切なタイミングで必要な情報のみを提供できるように意識しましょう。ただ闇雲に商品・サービスをアプローチするだけでは、鬱陶しいイメージを与えかねません。顧客が求める情報を見定めるには、カスタマージャーニーマップの作成が推奨されています。消費者行動に基づいた分析を行えば、その時点で必要な情報の予測がつきます。ペルソナの設定やカスタマージャーニーマップは全チームで共有し、共通認識を持っておくことが大切です。
インサイドセールスからトスアップする時期に注意する
リードの醸成ができていない状態でフィールドセールスへのトスアップを行うと、「商談に出向いたものの、購買意欲が低く話が詰められない」といった状態に陥り、スムーズな営業プロセスが実現できなくなります。インサイドセールスからフィールドセールスへのトスアップはリードの醸成具合が非常に重要です。トスアップの時期を決める条件は、チーム間でよく話し合っておきましょう。
良いリードの獲得方法
質の高いリードには、アプローチに必要なユーザーの詳細情報が集約されています。ここでは、良いリードを集める4つの施策について詳細を紹介します。
Web広告
Web広告はコストがかかるものの、短期間で多くのリードを獲得できます。Web広告の種類によってはキーワード設定やターゲティングも可能で、精度を高めた広告配信にも対応できるメリットがあります。リードの獲得に有効なWeb広告は、リスティング広告やSNS広告、ディスプレイ広告などがあります。
オウンドメディアやコンテンツマーケティング
オウンドメディアからのリード獲得も有効な方法の一つです。キーワード検索で集客できるオウンドメディアでは、読者にとって有用な情報を発信してニーズ喚起を行い、商品・サービスの購買意欲を高めます。具体的なリードの獲得方法は、お問い合わせフォームの設置、ホワイトペーパーや事例集などのコンテンツダウンロードなどが挙げられます。
SNS
SNSの利用者が増えるにつれ、SNSを利用したリード獲得は有効な手段となりつつあります。SNSは拡散力が高く、比較的手軽に運用できる点がメリットです。うまく拡散されれば、コストをかけずに新たなリードを獲得できる好循環を作り出せるでしょう。
ウェビナー・展示会
最近はWebツールの発達によって、多くの企業がオンライン上でセミナーを行うウェビナー施策を取り入れています。視聴者が求めるコンテンツをウェブセミナーのスタイルで展開し、参加や申込みに繋げることで多くの顧客を獲得できます。オンライン上で開催されるウェビナーや展示会は、ネット環境さえあれば場所や時間の制約を受けないのが強みです。
まとめ
トスアップの基本は、関連する各チームとの目標や意思の共有です。各チームの間で目指すべきゴールを揃えることで、円滑な営業プロセスが回り始めるでしょう。マーケティングチームやインサイドセールスと連携しつつ、カスタマージャーニーマップを使ったピンポイントなアプローチを行うことが大切です。まずは各部門間の連携を見直しつつ、営業力の強化を図ってみましょう。