2025年の昇給は、多くの働く人にとって大きな関心事となっています。2024年に33年ぶりの大幅賃上げを記録した流れを受け、今年も高水準での昇給が期待されている一方で、物価上昇の影響や企業規模による格差拡大など、複雑な状況が続いています。
本記事では、2025年昇給の最新動向について、全国平均額から業界別の傾向、主要企業の具体的な昇給実績まで、豊富なデータをもとに解説します。昇給に関する基礎知識や今後の展望、企業向けの支援制度についても紹介します。
昇給に関する基本情報
2025年の昇給の状況に触れる前に、ここでは昇給に関する基本情報を解説します。
昇給の種類
昇給は時期や評価の対象範囲によって、以下の6つに分類できます。
種類 | 対象範囲 | 時期 |
普通昇給 | 職務遂行能力・技能の向上 | ー |
定期昇給 | ー | ・年1〜2回、企業が定めるタイミング・業績によっては実施されないこともある |
臨時昇給 | ー | 業績が好調の場合など |
特別昇給 | 特別な功労・特殊な職務への従事 | ー |
自動昇給 | ー | 年齢、勤続年数に応じて発生 |
考課昇給 | 実績・勤務態度に基づいた評価 | 定期昇給と同じタイミングになることが多い |
昇給率の計算方法
昇給率とは、昇給後の給与が昇給前と比較してどの程度上昇したのかを表す指標です。
昇給率の計算方法は以下の通りです。
- 昇給額 ÷ 昇給前の給与 × 100 = 昇給率
ベースアップとの相違点
ベースアップとは、従業員全体の給与額を底上げする制度です。昇給は勤続年数や業績などによって従業員ごとに給与額が変動するのに対し、ベースアップでは企業単位で給与額がアップする点に違いがあります。また、企業によってベースアップの金額が異なる点や、そもそもベースアップ自体が実施されないこともある点が特徴的です。

昇給に関する2025年の最新動向
ここでは、2024年までの推移を参考にしながら、2025年における昇給の最新状況について解説します。
2024年までの推移
ここ数年、多くの企業で昇給が実施される傾向が続いていましたが、2024年は前年をさらに上回り、平成初期並みの大幅な昇給となりました。厚生労働省が発表した「令和6年民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」によると、2024年、交渉前の平均賃金に対する賃上げ率は5.33%となっており、1991年以来・33年ぶりの5%超えとなっています。
出典:厚生労働省「令和6年 民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況を公表します」
春闘2025の目標と回答状況
日本労働組合総連合会(連合)は、2025年の春闘において、昨年に引き続き「賃上げ率5%以上」を目標に掲げていました。そして、大手企業からは満額を含む高い水準での回答があり、主要な大手企業の50組合での平均賃上げ額は「月額1万4566円になった」との発表がありました。一方で、中小企業との格差をどのように埋めていくかが課題となっています。
物価と実質賃金の動向
多くの企業で昇給が続いているものの、近年の物価上昇によって実質賃金にも影響が及んでいるのが実情です。公益社団法人日本経済研究センター発表の消費者物価上昇率(前年比)によると、2025年度は2.06%の物価上昇が見込まれています。一方、厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、2024年の実質賃金は-0.2%と物価の上昇率が賃金の上昇率を上回っていることがうかがえます。ただし、2024年12月時点では0.6%とプラスに好転しているため、今後の改善が期待できるでしょう。
2025年の昇給平均額
2025年は多くの企業で昇給が実施される運びとなりました。ここでは、2025年の昇給平均額を紹介します。
全企業
2025年における昇給額の平均は、16,399円(昇給率5.26%)でした。2024年の昇給平均額15,236円(昇給率5.08%)と比較すると、上昇率はわずかであるものの、5%超えと高い水準で昇給が実施されていることがわかります。
大企業
大企業の2025年の昇給額は、16,932円(昇給率5.33%)と全企業の平均を上回っています。実際に春闘でも多くの大企業が満額や要求を上回る回答を出しており、昨年同様、積極的に昇給が行われる流れが続いていることがわかります。また、大企業は中小企業と比べて給与のベースが高く設定されていることも、昇給額が高くなりやすい要因のひとつです。
中小企業
一方で中小企業の2025年の昇給額は、12,453円(昇給率4.70%)と全企業の平均を下回る結果となりました。2024年の昇給平均額11,361円(昇給率4.45%)と比較すると上昇はしているものの、依然として大企業との格差が今後の課題となっています。

2025年に昇給を発表した主な企業
2025年に昇給を発表した主な企業と、春闘における賃上げの回答金額は以下の通りです。
企業 | 賃上げ額 |
トヨタ | 2万4,450円 |
ダイハツ工業 | 2万1,200円 |
日本製鉄 | 1万2,000円 |
三菱ケミカル | 2万6,005円 |
NEC | 1万7,000円 |
三菱電機 | 1万5,000円 |
KDDI | 1万2,000円 |
NTTグループ | 1万2,000円 |
サントリーホールディングス | 1万2,000円 |
味の素 | 1万6,000円 |
昇給に関する今後の展望
これまでに引き続いて、今後も昇給の動きは継続すると考えられます。特に少子高齢化によって労働者である若年層が減少していることから、採用を強化するために初任給をアップさせる企業が増えていくでしょう。一方で資金力に余裕がない中小企業は継続的な昇給が難しいケースも多いため、福利厚生などの充実によって従業員の採用強化や離職防止に努めていくと予想されます。
昇給支援のための助成金一覧
厚生労働省では、中小企業の昇給を支援し促進するために「賃上げ支援助成金パッケージ」を用意しています。具体的な助成金の種類は以下の通りです。
生産性向上(設備・人への投資等) | 非正規雇用労働者の処遇改善 | より高い処遇への労働移動等 |
・業務改善助成金・働き方改革推進支援助成金・人材開発支援助成金・人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース) | ・キャリアアップ助成金(正社員化コース、賃金規定等改定コース) | ・早期再就職支援等助成金(雇入れ支援コース、中途採用拡大コース)・特定求職者雇用開発助成金(成長分野等人材確保・育成コース)・産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース) |
まとめ
この記事では、2025年の昇給に関する最新動向について解説しました。全企業で見ると昨年同様、高い水準で昇給している傾向はあるものの、大企業と中小企業では依然格差が広がっているのが現状です。自身の年収をアップさせるためには、給与のベースが高い企業への転職を目指すのも選択肢のひとつといえるでしょう。
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