採用・配属管理など、企業における「人」の動きに携わるのが人事の仕事です。人と接することにやりがいを感じ、人事として働くことを目標にしている人も多いでしょう。
今回は、人事という仕事の概要や内容について解説します。人事に求められるスキルや人事の経験を通じて得られるスキル、人事の適性も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
人事とは
人事とは、人材の確保や活用など、企業における目標達成に向けた仕組み・環境を構築する仕事です。ここでは人事について、以下4つの視点から解説します。
- 人事の必要性
- 総務・労務との違い
- 平均年収
- 人事担当になるには
人事の必要性
人的資源の管理に特化した企業ニーズから、人事が必要とされています。また、経営層の負担を軽減する意味でも、人事の重要性を認識している企業がほとんどです。
昨今は、終身雇用制度が見直されつつあり、人材の流動性が高まりました。テクノロジーの著しい発展もあり、より優秀な人材の確保が多くの企業における課題となっています。
人材の確保までを経営層が担うことは大きな負担となり、経営そのものの円滑化を妨害してしまいます。そのため、適切な人材確保の役割を担う人事の必要性が注目されているのです。
総務・労務との違い
人材の採用や育成、評価といった人的資源を管理するのが人事の仕事です。以下を参考に、人事と混同しやすい総務・労務との違いを把握しておきましょう。
総務の仕事 | 労務の仕事 |
オフィス契約備品管理企業ルール整備法務・広報などが取り扱わない業務 | 社会保険の手続き毎月の給与計算福利厚生などの管理 |
平均年収
人事の平均年収は、担当するポジションによって変動します。ポジション別の年収を以下に掲載しているので、人事を目指す際の参考にしてください。
- スタッフ:約300~450万円
- リーダー・課長:約500~700万円
- 人事戦略・制度の企画立案担当者:約600~900万円
- 人事部長・管理部門:約1,000万円
人事担当のなり方
人事担当は未経験からの就業が難しいため、まずは人事アシスタントに応募し、実務経験を積む必要があります。ほかにも、実務経験がない状態で人事になる方法がいくつかあります。
ひとつは、同企業内での異動を希望することです。人事の経験がなくても、これまでの実績や人柄を評価されれば、人事部門へ異動できる可能性があります。
ほかにも、未経験から人事の正社員を採用している企業に応募する方法もあります。未経験からスタートする前提で、派遣社員として人事に応募するのもひとつの方法です。
人事の仕事内容
人事の主な仕事内容は、以下のとおりです。それぞれの仕事内容を把握し、人事を目指すうえでのイメージ作りを実施しましょう。
- 採用・雇用管理
- 組織配置企画
- 評価制度設定
- 育成・能力開発
- 労務管理
採用・雇用管理
採用や雇用に関する、以下の業務を担当します。
- 募集業務
- 選考
- 入社手続き
- 休職手続き
- 退職手続き
採用・雇用におけるすべての業務を担うのが人事の特徴です。しかし、場合によっては一部の業務を各配属部門が担当することもあります。
組織配置企画
人事は企業全体における組織・人材配置の企画を担当します。組織配置企画には、新規採用の計画も含まれています。経営戦略と密接に関わる領域であり、企業全体の目標達成に必要な人材を検討する重要な業務です。
評価制度設定
従業員がモチベーションを高く維持できるよう、適切な評価制度を設定するのも人事の仕事です。業績に対する評価や、報酬制度の企画も担当します。従業員を正当に評価できないと人材が流出してしまうため、経営にも関わる重要な領域です。
育成・能力開発
新入社員の教育や中堅社員の研修など、人材の育成や能力開発も人事の役割です。教育・研修制度の企画立案から担当する場合もあります。従業員の育成は経営に直接影響する領域であるため、人事に関する豊富な経験や知識が求められます。
労務管理
人事担当者が、労務管理を担当することもあります。主な業務は以下のとおりです。
- 勤怠データの集計・管理
- 給与計算
- 健康保険・厚生年金・雇用保険・労災の手続き
- 賃金規定・就業規則の整備
- 社内問題の対応
企業によっては人事と労務で役割が分かれていますが、兼務することもあるので覚えておきましょう。
人事の仕事とスキルの関係性
ここでは、人事の仕事に就くうえで有利なスキルを紹介します。また、人事の仕事を通じて得られるスキルも紹介しているので、キャリア形成にお役立てください。
人事に求められるスキル
人事に求められる主なスキルと活用される場面は、以下を参考にしてください。
求められるスキル | 活用される場面 |
コミュニケーションスキル | 採用活動における入社希望者向けのイメージ作り従業員一人ひとりが個性を活かせるような研修制度の検討 |
進捗管理能力 | 選考スケジュールの管理選考回数・選考人数の設定採用目標数と実際の採用数の把握採用数の相違がある場合の施策立案 |
機密情報管理能力 | 企業情報の管理従業員の個人情報管理 |
人事の仕事で得られるスキル
人事の実務経験を積むことで、就業規則や労働環境にまつわる法令知識が身につきます。進捗管理能力に基づく戦略的思考や、機密情報管理能力に基づく秘密保持に関する意識やスキルが身につくのも人事の特徴です。また、採用活動の経験を積み重ねることで、コミュニケーション能力もアップします。
人事の適性
ここでは、人事の適性がある人の特徴を紹介します。自身の特徴と照らし合わせ、人事に向いているのかどうか客観的に判断してください。
秘密保守ができる
人事担当は、従業員の個人情報や企業の採用戦略におけるデータを取り扱う仕事です。情報漏洩への危機感を持ち、秘密保守への意識を高く維持できる人は人事に向いています。
相手の目線に立てる
社員一人ひとりに寄り添い、それぞれの立場に応じた悩みを一緒に解消できる人は人事に向いています。人事担当は自分の考えや理想だけにとらわれず、従業員や経営層の目線に立って業務を遂行することが大切です。
時には厳しい判断を下せる
人事担当には、フラットな視点での判断力が求められます。状況によっては、契約社員や派遣社員の契約を打ち切ったり、正社員を解雇しなければならない場面もあります。特定の従業員を特別扱いすることなく、時には厳しい判断を下せることも必要とされます。
柔軟な対応力がある
人事の業務は多岐に渡ります。業務の優先順位を考える意識や、2つ以上の業務を同時に進行させられる柔軟な対応力が必要です。
論理的思考力がある
人材の評価や採用において、感情に流されてしまうことは厳禁です。論理的思考力をもって、冷静かつ的確に判断できる人が、人事に向いているといえます。
愛社精神がある
自社に対する愛情がなければ、そもそも人事の仕事は務まりません。企業経営のサポートを、人材の採用・管理を通じて実現したいと考えられる、愛社精神のある人が人事に向いています。
裏から支えることにやりがいを感じられる
人事の仕事は「人」を支える仕事であるため、目に見える成果が出にくい傾向にあります。しかし、そういった裏方の仕事にやりがい・意義を感じれる人こそが、人事の適性がある人の特徴です。
まとめ
人事の仕事は、企業や従業員を裏から支える重要な仕事です。人と関わることが多い仕事であるため、コミュニケーション能力や機密情報の管理能力が求められます。業務内容も多岐にわたることから、それぞれの業務における理解度やモチベーションを高いレベルでもつことが大切です。本記事で紹介した人事の仕事に関する内容を、今後のキャリア形成にお役立てください。