求職者支援訓練制度とは、再就職や転職、スキルアップを支援してくれる制度のことです。要件を満たせば、10万円程度の給付金を受け取りながら職業訓練を受講できます。本記事では求職者支援訓練制度の概要について、対象者や利用条件、コースの種類などを含めて解説します。国の制度を上手に活用して、より良い転職や再就職を実現しましょう。
求職者支援訓練制度とは
求職者支援訓練制度とは、転職・再就職・スキルアップを目指す方に向けた制度のことです。生活支援の給付金(10万円)を受け取りながら、無料の職業訓練を受講できます。厚生労働省によると、令和2年度は全国で2万人以上の方が職業訓練を受講したことがわかっています。
公共職業訓練との違い
求職者支援訓練制度と混同される制度に、公共職業訓練があります。公共職業訓練とは、雇用保険を受給している求職者が就職に必要なスキルや知識を習得するための訓練制度です。
求職者支援訓練制度と公共職業訓練には、訓練対象者と内容に違いがあります。
訓練対象者 | 訓練内容 | |
---|---|---|
求職者支援訓練制度 | 雇用保険の被保険者ではない方 雇用保険の受給資格者ではない方 | 民間企業・学校などが訓練を実施している |
公共職業訓練 | 雇用保険を受給している求職者 | 公共職業訓練校が実施している場合が多い |
求職者支援訓練制度の対象者は?
求職者支援訓練制度は、誰もが利用できるわけではありません。本章では以下2つのケースに分けて求職者支援訓練制度の対象者について解説します。
- 給付金を貰わずに訓練を受講する場合
- 給付金を貰って訓練を受講する場合
なお本章では、それぞれのケースの対象者について解説します。実際に訓練を受講、給付金の受給を行う場合は後章で記載している「求職者支援制度の利用条件」をクリアする必要があることを覚えておきましょう。
給付金を貰わずに訓練を受講する場合
給付金を貰わずに無料の訓練のみを受講する場合の主な対象者は、以下の通りです。
- 在職者の場合:
今もなお働いていて一定の収入がある方
(例:フリーランスとして働きながら正社員への転職を目指している方など) - 離職者の場合:
配偶者や親と同居しており一定の世帯収入がある方
(例:親と同居している大学卒業後未就職の方など)
給付金を貰って訓練を受講する場合
給付金を貰って訓練を受講する場合の主な対象者は、以下の通りです。
- 在職者の場合:
一定額範囲内の収入のパートタイムで働きながら、正社員を目指している方など - 離職者の場合:
雇用保険の適用がない離職者の方、自営業やフリーランスをやめた方、雇用保険の受給が終了した方など
求職者支援制度の利用条件
前章の対象者に当てはまっている方のうち、本章で紹介する利用条件をクリアした方は、本制度を利用できます。
【訓練を受講する際の利用条件】
- 雇用保険の受給資格者でない
- 雇用保険の被保険者でない
- 労働する意思と能力がある
- 職業訓練を行う必要があるとハローワークが認めている
- ハローワークに求職申し込みをしている
【給付金を受給する際の利用条件】
- 世帯全体の収入が月40万円以下
- 世帯全体の金融資産が300万円以下
- 本人収入が月8万円以下(シフト制で働く場合は月12万円以下)
- 現在住んでいる場所以外に、建物や土地を所有していない
- 訓練の8割以上に出席可能
- 世帯内でこの給付金を受給して訓練を受けている人がいない
- 過去3年間以内に、不正行為により(虚偽の申告など)給付金を受け取っていない
求職者支援訓練制度を受けるには?
求職者支援訓練制度を受ける際は、以下5つのステップを踏む必要があります。
- ハローワークの受付で「求職者支援訓練の相談をしたい」と伝え、制度の説明を受ける
- ハローワークで職業相談を受けた後、コースを決める
- ハローワークで受講を申し込む
- 訓練実施機関で選考(筆記試験や面接など)を受ける
- 選考に合格した後はハローワーク側から受講の指示を受ける
なお訓練を受講している最中や訓練終了後3ヵ月間は、原則月1回はハローワークに訪問して職業相談を受ける必要があります。
求職者支援訓練制度に申し込む際に必要な書類
求職者支援訓練制度の事前調査では、以下の書類を提出する必要があります。また、下記以外の書類の提出を求められる場合もあるため、その際は速やかに用意し、提出しましょう。
- 本人確認書類:
写真付きであれば1点(運転免許証など)、写真が付いていないものは2点(健康保険証など) - ハローワークから受け取った書類:
受講申込書・事前審査書・職業訓練受講給付金要件申告書など(ハローワークから案内されるので、詳細はその場で確認する)
なお給付金の受講を希望する場合は、ハローワークで支給を申請する必要があります。金融機関の口座や、配偶者等の収入を証明する書類を用意しておきましょう。
求職者支援訓練制度の給付金額
求職者支援訓練制度の給付金には、「訓練受講手当」「寄宿手当」「通所手当」があります。訓練を受講している期間、1ヵ月ごとに支給されます。
- 訓練受講手当(10万円/月):
6ヵ月間受講する場合は、10万円×6ヵ月=60万円 - 寄宿手当(10,700円/月):
配偶者や親と別居・寄宿し、往復通所時間が4時間を越す場合などの要件を満たす場合に支給 - 通所手当(上限42,500円/月):
訓練施設に通所する際の電車代など
給付金を受け取っても訓練期間中の生活費が足りない場合は「求職者支援資金融資」と呼ばれる融資制度を利用できます。
求職者支援訓練コースの種類
求職者支援訓練制度には、介護やデザイン、ITなどさまざまな分野に関するコースが用意されています。
分野 | ||
---|---|---|
介護 | 福祉施設などの入所者と通所者への入浴や食事などの介護技術 訪問介護による炊事、買い物といった自立支援に必要な知識 | ・医療施設 ・福祉施設 ・老人福祉施設 |
デザイン | HTML/CSSコーディングやJavaScriptプログラミングなどWebページの制作に欠かせない知識 | ・スマホアプリ開発会社 ・Web制作会社 |
IT | ハードウェア、ソフトウェア、プログラミング言語などの知識 | ・Web制作会社 ・ソフトウェア開発会社 ・ソーシャルゲーム会社 |
なおハローワークインターネットサービスでは、全国のコースを分野や募集期間、訓練期間ごとに検索できます。具体的なコース内容が知りたい方はぜひご利用ください。
コース選びに迷った際の対処法
求職者支援訓練制度には、さまざまなコースが用意されています。「どのコースを選べば良いかわからない」と悩んでしまう方も多いでしょう。以下を参考にして、コースを絞り込みましょう。
- 厚生労働省「求職者支援制度のご案内」に記載されている、コースを受講した方の声を参考にする
- ハローワークインターネットサービスの分野絞り込みで興味のある分野を選択する(興味のある分野がない場合は、需要が急増しているジャンルがおすすめ)
- ハローワークに相談する
求職者支援訓練に関するよくある疑問
最後に、求職者支援訓練制度を利用する方の多くが抱える疑問について回答します。
雇用保険を受給しながらでも訓練は受けられる?
前提として求職者支援訓練は、雇用保険を受給していない方が対象者であることを覚えておきましょう。しかしハローワークとの相談を通して、就職のために訓練が必要だと判断された場合、雇用保険を受給しながらでも訓練を受けることができます。
すぐに就職する意思がない場合でも訓練を受けられる?
すぐに就職する意思がない場合は、訓練を受講できません。求職者支援訓練制度は、労働の能力とすぐに働く意思がある方を対象としているためです。
子どもが小さい場合でも求職者支援訓練は受けられる?
訓練によっては、託児サービスが用意されているコースや短時間のコースが用意されています。そのため、子どもが小さい場合でも訓練を受けられます。
公共職業訓練を受講する場合でも職業訓練受講給付金は受け取れる?
求職者支援訓練よりも公共職業訓練が就職に適していると判断された際は、公共職業訓練を受講する場合でも職業訓練受講給付金を受け取ることが可能です。
まとめ
求職者支援訓練制度は再就職や転職、スキルアップを支援してくれる制度です。本記事で紹介した求職者支援訓練制度の利用可能条件に該当する方は、早速ハローワークに相談してみましょう。10万円程度の給付金が受け取れるだけでなく、職業訓練を受講できる点が求職者支援訓練制度のメリットです。国の制度を上手に活用して、金銭的な負担を軽減しながら満足のいく再就職や転職を実現しましょう。