転職する際、前職で発行された源泉徴収票が必要になることがあります。源泉徴収票は所得税や住民税などの税金を計算する際に必要な書類のため、受け取ったら大切に保管しておきましょう。転職を考えている場合やすでに転職をした方は、源泉徴収票の取得や管理について事前に理解しておくことが大切です。この記事では、転職における源泉徴収票の重要性や必要なケース、取得方法などについて詳しく解説します。
源泉徴収票とは
源泉徴収票とは、企業が従業員に支払った給与や差し引かれた社会保険料、源泉徴収した所得税額などを記載した書類のことです。
源泉徴収は、従業員の給与から税金を天引きする制度であり、その情報が源泉徴収票に反映されます。
例えば、A社で働く従業員Bさんが、2023年に支払われた給与に関する源泉徴収票を受け取ったとします。この源泉徴収票には、BさんがA社から支払われた給与の総額や社会保険料の控除額、源泉徴収した所得税の額が記載されています。Bさんはこの源泉徴収票を確定申告や転職先での年末調整などに使用します。
転職した際は前職の源泉徴収票が必要
転職した際は、転職先の会社での年末調整のために前職の源泉徴収票が必要となります。これは、年末調整において前職での給与と新しい会社からの給与を合算して所得税を算出するためです。
年末調整は、1年間の給与や賞与、源泉徴収した所得税などを再計算し、過不足分を清算する作業です。過剰に徴収された税金は還付され、不足している場合は追加で納付します。これにより、正確な税金の支払いが行われます。
例えば、Aさんが2023年6月に会社Xを退職し、会社Yに入社したとします。1~6月までは会社Xから給与を受け取り、残りの6ヶ月は会社Yから給与を受け取っています。年末調整では、この1年間の給与情報を合算して税金を計算するため、会社Yで年末調整を行う際は会社Xの源泉徴収票が必要です。
源泉徴収票の取得方法
源泉徴収票が必要なことがわかったものの、いつ会社から送られてくるのかがわからず不安になる方もいるでしょう。源泉徴収票が送られてくるタイミングや送られてこないときの対処法は以下の通りです。
通常は退職から1ヶ月以内に送られてくる
源泉徴収票は退職日から1ヶ月以内に送付することが法律で義務付けられています。多くの会社は法律を守り、退職後1ヶ月以内に源泉徴収票を送付するでしょう。
例えば、Aさんが2023年11月1日に退職した場合、12月1日までに前職の会社から源泉徴収票が送られてくるはずです。
送られてこない場合は請求する
通常は退職後の1ヶ月以内に源泉徴収票が送付されますが、送られてこない場合もあります。このような場合は、退職した会社に直接請求することが必要です。
源泉徴収票が送られてこない場合、いくつかの要因が考えられます。会社の事務処理や手続きが遅れている場合、源泉徴収票が送付されるタイミングが遅れる可能性があります。特に、11月~12月にかけては年末調整の対応に追われているため、退職者への源泉徴収票の送付を忘れてしまうこともあるでしょう。
また、従業員が退職後に引っ越しをしたうえに郵便物の転送手続きを行っていない場合は、会社側が郵送していても、源泉徴収票は手元に届きません。このように自分のミスで源泉徴収票を受け取れないことがないように注意しましょう。
万が一、源泉徴収票が届かず、会社に請求する際は、「法律違反なので早く送ってください」と伝えるのではなく、単純ミスの可能性も踏まえて「源泉徴収票が送られてこないのですが、ご確認いただけますでしょうか」などと、丁寧に質問しましょう。
請求しても送られてこない場合は税務署に相談
源泉徴収票を請求しても送られてこない場合は、税務署に相談しましょう。税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を提出すると、税務署から会社へ指導が入ります。会社は源泉徴収票を発行せざるを得なくなるため、何らかの理由で発行されない場合でも源泉徴収票を受け取ることができます。
期日までに源泉徴収票を提出できない場合の対応
期日までに源泉徴収票を提出できない場合、年末調整をしてもらえません。そのままでは払いすぎている(or不足している)税金を調整できないため、自分で確定申告を行う必要があります。確定申告は、源泉徴収票を基にして年間の所得を申告するとともに、必要に応じて控除や経費を計上することで税金を確定させる手続きです。源泉徴収票が提出できない場合でも、給与明細や領収書などを元にして、収入や支出を正確に申告します。
複数回転職した場合は全ての会社の源泉徴収票が必要
複数回転職した場合、1月1日~12月31日において給与の支払いを受けた全ての会社から発行された源泉徴収票が必要です。例えば、A社、B社、C社の順に転職し、C社から12月に給与の支払いを受けた場合、C社に対してA社とB社から送付された源泉徴収票を提出します。
源泉徴収票の見方
源泉徴収票に記載された情報は、会社側が確認したうえで年末調整を行います。従業員としても、基礎知識として源泉徴収票の見方について確認しておきましょう。
支払金額
源泉徴収票に記載される「支払金額」とは、対象年度の1月1日から12月31日までに支払われた給与と賞与の総額を示すものです。通勤手当のような非課税手当は含まれていません。
給与所得控除後の金額
源泉徴収票に記載される「給与所得控除後の金額」は、支払金額から給与所得控除額を差し引いた後の金額を示します。給与所得控除後の金額が高いほど、従業員の課税対象所得が低くなり、支払うべき税金も減少します。
所得控除の額の合計額
源泉徴収票に記載される「所得控除の額の合計額」は、所得税の計算において所得から差し引かれる各種控除の合計額のことです。控除の主な種類は以下の通りです。
控除の種類 | 説明 |
基礎控除 | 全ての納税者に適用される |
配偶者控除 | 配偶者がいる場合に適用される |
扶養控除 | 所得税法において規定された扶養親族がいる場合に適用される |
社会保険控除 | 国民年金や厚生年金などの社会保険料の支払額が控除される |
生命保険料控除 | 生命保険料の支払額が控除される |
地震保険料控除 | 地震保険料の支払額が控除される |
源泉徴収税額
源泉徴収税額は、給与所得控除後の金額から所得控除の額の合計額を差し引いた課税所得金額に、所得税の税率を適用して計算されます。例えば、課税所得金額が195万円以下の場合は5%、195万円を超え330万円以下の場合は10%です。また、住宅ローンの年末残高に応じて計算した住宅借入金等特別控除の額も所得税額から控除します。そして、復興特別所得税(所得税額の2.1%)を加えた金額が、源泉徴収税額として記載されます。
まとめ
転職する際には、前職の源泉徴収票が重要です。源泉徴収票は、年末調整や確定申告に必要な書類であり、前職の給与や税金の情報が記載されています。源泉徴収票の取得方法や、送付されてこない場合の対処法についても理解しておくことが重要です。
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