転職活動をしていると、求人情報の応募条件にある「実務経験○年以上」という表記を目にするでしょう。興味のある業種や職種であっても、実務経験が足りずに応募を諦めた経験をお持ちの方もいるかもしれません。今回は、実務経験を求める企業側の心理や実務経験の定義、上手にアピールするためのポイントなどを詳しく解説します。
転職活動で求められる実務経験とは
そもそも「実務経験」を簡単に説明すると、その業務に対して実際に携わった経験のことを指します。企業は実務経験の年数を元に、求職者が入社時点でどれだけの働きをできるか推し量っているのです。
即戦力としての働きを期待
企業が実務経験を応募条件とする目的は、即戦力としての期待です。中途採用は新卒採用と異なり、これまでの経験や知識を活かしてすぐに会社の戦力となってくれることを期待しています。特に、長期間の指導が必要となる経験が浅い人材の採用は考えていない場合に、実務経験を条件として応募者をふるいにかけているのです。
経験のある実務を明確にする
実務経験を応募条件に加えることで、応募者が経験したことのある実務を具体的に把握できるようになります。この点も、企業にとってのメリットといえるでしょう。「営業職」「事務職」などのような広い職種ではなく、より細かな業務内容を問うことで、お互いのミスマッチを防ぐことにも繋がります。
実務経験の定義とは
単に「実務経験」といっても、人によって業務への関わり方はさまざまです。そこで、実務経験の具体的な定義について確認しておきましょう。解釈の違いにより、今まで諦めていた求人にも応募できるかもしれません。
派遣やアルバイトも実務経験に含まれる
実務経験は、正社員として働いた仕事だけをカウントすると考える方も多いのではないでしょうか。しかし、実際にはアルバイトや派遣として勤務した経験を含めても問題ありません。企業側は業務内容の理解度やスキルを重視しているため、ここでは雇用形態の違いが実務経験年数の数え方に大きく影響することはありません。
実務経験年数はあくまでも目安
実務経験を問う場合「実務経験3年以上」などと条件を付けるケースが多いでしょう。しかし、実際のところこの年数はあくまでも目安といえます。企業の採用目的は「経験年数3年以上の人材を集めること」ではなく「即戦力となる人材を集めること」です。仮に経験年数が足りない場合でも、十分なスキルを持っている事をアピールできれば、採用に至る可能性も十分に考えられます。経験年数が条件に多少及ばないからといって、すぐに諦める必要はありません。
資格と実務経験はどちらが重要?
企業が採用において一定の知識量を求める場合、実務経験以外に資格の保有を条件とする場合があります。資格と実務経験を比較すると、どちらが重視されるのでしょうか?
結論としては、基本的に実務経験を重視する会社が多くなっています。例えば経理担当者を募集する場合、日商簿記2級を取得した実務未経験者はどのような評価を受けるでしょうか。実際には、資格を持っていないものの実際に何年間も経理職に従事していた人の方が、即戦力として高い評価を得られるでしょう。ただし、弁護士や税理士、公認会計士といった、業務の遂行にあたって資格が必要な職種も存在するので注意しておきましょう。
実務経験をアピールするためのポイント
続いて、転職活動において実務経験を上手にアピールするためのポイントについて紹介します。伝え方を誤って実務経験のアピールを無駄にしないように、要点を押さえておきましょう。
これまでの経験やスキルを洗い出す
まずは、これまでの経験やスキルを時系列で整理することが大切です。その際には、求人情報を元に、応募先の企業がどのような人材を求めているかを読み解くことも欠かせません。企業目線でどのようなジャンルの情報が欲しいかを念頭においた上で、洗い出しに取り組んでみましょう。一度正確な情報を書き出しておかないと、伝えるべき情報もついつい抜け落ちてしまうものです。また、書き出すことで頭の中の情報も整理されるため、面接での受け答えがスムーズになることが期待できます。
数字やデータを交えてアピールする
実務経験を記載する上で「〇〇に取り組んだ」「〇〇を担当した」という書き方では具体性に欠けるため、大きなアピールにはなりません。そのため「営業成績1位を記録した」「売り上げが3倍になった」等、具体的な数字やデータを交えて伝えることで、受け手にとってのイメージが膨らみやすくなります。
業務内容をできるだけ具体的に伝える
実務経験のある業務内容は、できるだけ詳しく伝えましょう。例えば事務職の募集に対して、「事務の経験があります」という回答は、大雑把でおすすめできません。事務とは一般事務なのか、営業事務なのか、パソコンスキルはどのくらいあるのか、経理の経験はあるのかといった、大事な情報が企業に伝わりません。自分が持つスキルをアピールするためにも、これまで従事してきた業務を具体的に伝える必要があります。
職務経歴書としてまとめる
自分の経験やスキルをわかりやすく伝えるためには、職務経歴書としてまとめて提出する方法もおすすめです。職務経歴書の提出を求められていない場合でも、応募書類のひとつとして提出することに問題はありません。履歴書の限られた記入欄では伝わりきらない実務経験をA4用紙1〜2枚ほどで詳しく表現することは書類選考において大きな力を持つといえます。
実務経験がない場合の対処法
転職活動を続ける中で、応募したいと思う求人があるものの、企業が求める実務経験がないために悩んでしまうケースもあるかもしれません。ここでは、実務経験がない場合の対処方法を解説します。
応募先の候補を広げる
まずは、ひとつの企業にこだわりすぎず、応募する候補の範囲を広げてみましょう。どれだけ強い熱意があったとしても、実務経験を有する経験者が多数応募していた場合は、選考において不利になってしまいます。企業の規模や職種などの条件を少しずつ広げることで候補となる求人数も増えるため、採用を勝ち取れる可能性も高まっていきます。
自己PR欄で意欲をアピールする
履歴書の自己PR欄で、「どうしてもその仕事をしたい」という意欲をアピールすることもひとつの手段です。「勉強会への参加を重ねてきました」「学習を続けています」といった意欲的な行動は、経験不足をカバーするかもしれません。熱意やポテンシャルを買われて採用されるケースも中には存在するので、取り組んでみるべきでしょう。
勉強期間や資格をアピールする
実務経験を問われるジャンルに関連した資格や学習経験は、有効なアピールポイントになります。大学や専門学校、職業訓練などで学んだ知識、取得した資格などは、アピールしておいて損はありません。実務経験があるほかの応募者と比較される場合も想定して、少しでも多くのプラスになる情報を記載しておきましょう。
実務経験にブランク期間がある場合
実務経験があるとはいえ、一旦ほかの職種に就いていたり、産休や育休で休職していたりと、さまざまな理由で数年間のブランクがある場合も想定されます。職種によっては進歩が早く、在職当時のスキルが通用しないといった事態もあり得るでしょう。ブランク期間が長い場合は、応募前に求人内容をしっかりと確認して、当時のスキルが今でも使えるのか、あらかじめ把握しておくことをおすすめします。
まとめ
転職活動において、自分の市場価値を第三者目線で考えてみることは重要です。企業にとって「即戦力」ほど魅力的な人材はいないでしょう。言い換えると「実務経験」にはそれほどの高い価値があるのです。なかなか思い通りの転職ができないという方こそ、一度自分の経験を洗い出し、自分の魅力を企業へしっかりとアピールできるよう自分自身についての情報を整理しましょう。