利益を生み出すためには、ある程度の経費がかかります。その経費は予算に基づいて使用するべきであるため、予算の設定および管理が必要です。予算管理を行う際は、予算とその実行結果の実績を比較・分析し、より適切な予算設定を行えるようにする「予実管理」を行いましょう。本記事では、予実管理の必要性から方法、流れ、失敗例まで詳しく解説します。
予実管理とは
予実管理とは予算と実績を比較分析し予実の割合や今後の課題を明確化することで、より適切な予算設定をできるようにする手法です。予算が少なすぎると利益を生み出すために必要経費を使用できず、売上が低下する可能性があるほか、現場に大きな負担をかけてしまいます。
一方で予算が高すぎると別事業の予算が少なくなり、想定した利益を得られなくなる可能性があるのです。
予実管理の必要性
経営者の経験則で予算を立てている企業もあります。予実管理を行わなくても利益を十分に挙げることができるケースもありますが、より適正な経営を目指すのであれば予実管理行は行った方が良いでしょう。また、金融機関から融資を受ける際に提出する事業計画書には、予算と実績を掲載することが必要です。
予実管理が適切に行われていないと、金融機関に返済できることを十分に証明できません。今は融資を受ける必要がなくとも、新型コロナウイルス感染症の影響のように外的要因によって、急遽融資を受けざる得なくなる可能性もあるため、日頃から予実管理を行っておきましょう。
予実管理の方法
予実管理を行うときは、次のような予実管理表を作成しましょう。
予算 | 実績 | 差異 | |
売上 | 200 | 250 | +50 |
売上原価 | 100 | 90 | -10 |
売上総利益 | 50 | 70 | +20 |
販管費 | 15 | 15 | ±0 |
営業利益 | 10 | 12 | +2 |
営業外費用 | 14 | 14 | ±0 |
税引前利益 | 11 | 11 | ±0 |
Excelのような表計算ソフトを使うと効率的です。1つの表で複数月を管理することも可能ですが、速やかに分析できるように見やすさを重視し、1ヶ月毎に1つの表で予実管理することをおすすめします。
予実管理のポイント
予実管理は単に予算と実績を記録し、その差異を確認するだけのものではありません。次の3つのポイントを押さえて予実管理を行いましょう。
- 定期的に行う
- 予算と実績の差異を分析する
- 必要に応じて予算を修正する
定期的に行う
予実管理の分析は、定期的に行う必要があります。1年まとめて分析すると人的・時間的リソースが一時的に大きく必要になるうえ、問題の発見が遅れてしまいます。月単位で分析し、改善を繰り返して効率的に予算設定を適正化しましょう。
コア業務が多忙だと、予実管理がおろそかになってしまいます。コア業務と同レベルの優先順位で予実管理を行うことをおすすめします。
予算と実績の差異を分析する
予算と実績の差異を分析し、次の予算設定に活かすことが重要です。例えば売上原価の予算が100万円で実績が90万円だった場合、10万円を引き下げる余裕があります。ただし売上原価が変化するケースにおいては、10万円を引き下げてしまうと予算オーバーするリスクが高まります。このように、種別ごとの性質まで考慮することが大切です。
必要に応じて予算を修正する
予算と実績の差異を分析した結果、予算を修正すべきと判断した場合は、速やかに修正しましょう。ただし予算と実績の差異が起きた原因や課題を明確にしなければ、次も大きな差異が生じる恐れがあります。改善策を打ち出したうえで、適切に予算を修正することが重要です。
予実管理のよくある失敗
予実管理の方法を誤ると、適切な予算設定ができません。予実管理のよくある失敗について詳しくみていきましょう。
予算が高すぎて従業員のモチベーションが低下する
予実管理の分析を誤ると、高すぎる予算を設定してしまう可能性があります。予算が高すぎると、予算消化のために短期間で多くの経費を使用することになり、結果として大きな利益を得られないうえに従業員に負担がかかってしまうのです。その結果、従業員のモチベーションが低下する恐れもあります。
予算が低すぎて企業が成長しない
予算が低すぎると、必要経費を最小限に抑えることになります。その結果、十分な経費をかけられなくなり、企業が成長しない事態に陥る恐れがあります。経費には将来的に利益を得るための先行投資としての側面もあるため、必要十分な予算を設定することが大切です。
予実管理の流れ
予実管理は次の流れで行います。
(1)達成不可能ではない予算を立てる
(2)月単位で決算する
(3)差異を確認して軌道修正する
それぞれ詳しくみていきましょう。
1:予算を立てる
予算は、次の条件を満たす形で設定しましょう。
・努力することで達成できる可能性がある
・企業の成長につながる
・過去データを見る限り妥当性が高いと考えられる
予算が高すぎると、従業員のモチベーションが低下する恐れがあります。反対に低すぎると、企業の成長につながりません。
2:月単位で決算する
予実管理は、月ごとに行うことが大切です。翌月の予算を修正すれば、企業への不利益を最小限に抑えることができます。また月の中でも週単位で予実を確認し、原因を分析することも大切です。原因がわかれば、同じミスが起きないように対策できます。
3:予算と実績の差異を分析する
予算と実績の差異を分析し、予算の適正化を目指しましょう。例えば、予算に対して実績が著しく少ない場合は、次のような原因が考えられます。
・無駄な経費が発生している
・売上に貢献している商品や活動に十分なリソースを割けていない
・従業員のモチベーションが著しく低下している
これらの原因を分析し、さらにその原因まで深掘りしましょう。例えば無駄な経費が発生していることが判明した場合は、仕入れ先の値段設定が適切かどうかや、仕入れの数が多すぎないかなどを確認します。そのうえで改善目標を部署ごとに定め、フィードバックを行いましょう。
予実管理の内容は各部署にも伝え、当事者意識を持ってもらうことが重要です。
4:対策を立てて実行する
予算と実績の差異から想定した課題をもとに、改善策を立てます。また場合によっては、売上に貢献していない業務を取りやめる必要もあるでしょう。改善策を実行する際は予実の分析だけではなく、世の情勢やトレンド、内的要因なども踏まえて検討することが大切です。
予算を達成できていないからといって予算を大きく変更するだけでは、再び大きな差異が生じてしまいます。
まとめ
予実管理は予算と実績の差異を埋めて、経営を適正化するために行います。売上や営業利益などの項目別に予算と実績、その差異を確認し、翌月以降の予算設定・調整に活かすことが重要です。予実管理ができている企業は効率的に利益を挙げられるとともに、早く成長できるといわれています。今回、解説した内容を参考に予実管理を始めてみてはいかがでしょうか。