ハロー効果とは、対象の突出した特徴などが原因で、別の要素が際立ってしまう心理現象を指します。身だしなみや性格との関連性が高く、ビジネスシーンや日常生活にも当てはまる現象です。この記事では、ハロー効果の特徴や発生の原因、対策について解説します。ビジネスシーンで発生しやすいハロー効果の具体例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
ハロー効果とは
ハロー効果とは、マーケティング界隈でも活用される認知バイアスのひとつです。対象となる人・物への先入観やイメージが原因で、偏った印象を与える現象を指します。人は本質的な良し悪しにかかわらず、対象の目立った特徴で印象を決定づける傾向があります。第一印象が良かったけれど関わっていくうちにイメージとのずれが生じるのは、ハロー効果が原因です。
ハロー効果には種類がある
ハロー効果には、ポジティブとネガティブの2種類があります。対象の良い点を捉え、高い評価を受けることがポジティブ・ハロー効果の特徴です。対してネガティブ・ハロー効果は、悪い特徴のイメージが先行し、実際よりも低い評価を持ってしまう特徴があります。どちらも先入観による印象という共通点があります。
ハロー効果が与える影響
ハロー効果には、ふとした瞬間に悪いイメージを払拭できる効果があります。普段の印象が悪くても、優しい側面を見せた際に大きく印象が変わるような事象が該当します。また、ほかの人が持っていない特技や才能を見せることで、マルチな才能を持った人材だと評価されることもハロー効果の例です。コミュニケーション能力や人柄をアピールすることで、信頼感を得やすくなるといった効果も期待できます。
ピグマリオン効果との関係性
ハロー効果と混在しやすい言葉に、ピグマリオン効果があります。ピグマリオン効果とは、他者からの期待をきっかけに成長する現象のことを指します。ハロー効果はある一定の認識が別の方向に傾いていくのが特徴ですが、ピグマリオン効果は対象の変化にスポットが当てられる点に違いがあります。
ハロー効果はなぜ発生するのか?
ハロー効果が起こる仕組みは、原始時代から受け継がれたDNAに起因しているといわれています。即断・即決が求められる狩猟時代において、危険を的確に察知する能力が重要視されていました。そのため、強い印象(情報)を優先して捉える傾向が強まったと予想されています。太古の遺伝子に刻まれた能力が、ハロー効果として現代のさまざまなシーンで活用されています。
ハロー効果がビジネスシーンに表れる具体例
ビジネスシーンにおいては、ハロー効果が顕著に表れる瞬間があります。以下で具体例を3つ紹介します。
採用面接
短い時間で人材を評価する採用面接は、ハロー効果が表れやすいシチュエーションといえます。学歴や過去の職歴など、突出した経歴を持った人材を無意識に過大評価してしまうことが代表例です。
目立った特徴があるというだけで、業務とは関係ない特性にも好印象を持つことがあるのです。また、第一印象が良かったという理由だけで「良い人材」と判断してしまうことも、ハロー効果の影響といえるでしょう。
人材評価
人材の評価は、リアルタイムでの実績だけでなく、過去の経緯や業績などから総合的に判断されます。そのため、対象となる人材の突出した特徴が、そのまま現在の評価に繋がってしまう可能性があります。
例えば、前職や前期の評価が良かった人材に対し、過去の結果に引っ張られた評価を与えてしまうことが代表例です。また、ほかの人にないスキルや資格を持っている場合など、業務に無関係な観点が評価に影響することも該当します。
公式サイトやホームページ
企業や製品の公式サイト・ホームページの多くには、商材や有名人の写真が掲載されています。掲載されている写真が健康的なイメージを連想させるものだった場合、「この企業の商材は健康に良い」と無意識に判断される可能性が高くなります。また、有名人が起用されている公式サイトであれば、その有名人のイメージがそのまま反映されます。
視覚情報はハロー効果を生み出しやすく、企業イメージを定着させやすい側面があります。そのため、公式サイトやホームページに掲載する写真は、慎重に選定しなければなりません。
ハロー効果はマーケティングにも活用できる
企業のマーケティング担当者は、ハロー効果がマーケティングに活用できることを知っておく必要があるでしょう。ここでは、ハロー効果がマーケティングに活かされる事例をいくつか紹介します。
ブランド戦略としての活用
企業としての価値を高める施策は、ハロー効果を活用して実施されます。ブランドイメージを高めるためにハロー効果を活用することで、企業全体のイメージをポジティブなものにできるでしょう。しかし、ブランド戦略にハロー効果を活用しても、すぐに効果は表れません。製品の開発・提供と並行し、継続的なイメージアップ戦略を実施しましょう。
口コミとの併用
飲食店などの口コミ評価も、ハロー効果を活用したマーケティングにつながります。実際の味や雰囲気がわからなくても、高い評価を得ている店舗にユーザーが集中することはわかりやすい例です。反対に悪い口コミがついてしまうと、味や雰囲気に触れる前から「良くないお店」という印象を与えてしまうでしょう。
有名人を起用
広告やSNS媒体に有名人を起用して商材をアピールすることで、さまざまなファンを獲得できます。「あの芸能人が使っているなら購入してみたい」といった心理を誘発させるため、実際のクオリティ以上の好印象を与えられるでしょう。ただし、有名人であれば誰でもいいというわけではありません。商材をアピールしたい年齢層や性別など、対象ユーザーに合わせた人物を起用する必要があります。
ハロー効果の対策
ハロー効果は一歩間違えると、誤った評価につながる要因になります。ここでは、ハロー効果を解消するための対策について解説します。
評価基準を明確化する
過去の学歴や職歴、第一印象を評価基準に加えないようにしましょう。対象となる人材の目立った特徴だけで評価してしまっては、公平性がなくなります。明確な評価基準を設けることで、評価のズレや採用のミスマッチを防止しやすくなります。
評価対象者の言動を参考にする
評価を受ける人材の印象や特徴を第一に考えるのではなく、一つひとつの言動や実績を参考にしてください。スキルや学歴だけで判断すると、偏った評価につながるため危険です。特徴や印象をベースに捉えるのではなく、あくまでも評価につながる実績などの要素を重視しましょう。
項目単位で評価を決める
際立った項目での評価が別の項目に影響しないように、配慮する必要があります。項目ごとに質問の仕方を変えるなどして、対象の行動力や創造力、思考の一貫性などを判断しましょう。
ハロー効果の懸念点
ビジネスシーンでも活用されるハロー効果には、デメリットともいえる懸念点があります。特に発生しやすい2つのポイントを見ていきましょう。
評価のエラーが発生しやすい
見た目や経歴など、第一印象に応じた評価を無意識にしてしまうことがハロー効果の特徴です。第一印象がネガティブなものだった場合、能力に関わらず不当な評価につながる可能性があります。また、ポジティブな印象・経歴・スキルが目立ってしまい、相手を過大評価したまま仕事を任せてしまうケースもあります。第一印象に左右され、実績や実力が反映されない評価を下されることは、企業・人材双方にデメリットがあります。
持続性がない
「第一印象が良くて採用したが、いざ実務に取り掛かると適性がないと気づいた」というケースは、企業の採用シーンにおいてよく発生する事例です。即断即決の傾向が強いハロー効果には、持続性の観点でデメリットがあります。先入観をあてにして採用を進めた結果、企業にとってマイナスな側面が多かったという事態にもつながりかねません。評価基準などを明確にし、企業にマッチした人材を採用できる体制を作りましょう。
まとめ
ハロー効果は、イメージの先行によりネガティブな要素が際立ってしまうことなどを意味します。第一印象を優先して採用を進める企業は、ハロー効果による弊害を実感しやすいといえるでしょう。ただしハロー効果は、マーケティングに有効活用できる側面もあります。適性のある人材を正当に評価・採用することを意識したうえで、ハロー効果の良い部分を有効活用していきましょう。