個人に任される仕事量が多くなるほど、複数の仕事を効率的にこなす「マルチタスク」の能力が求められます。しかし、マルチタスクの重要性を理解できてはいるものの、その特徴やメリット・デメリットまで理解しきれていないという方は多いのではないでしょうか。
今回は、さまざまな仕事を同時にこなし、ビジネスパーソンとしてのレベルや評価を上げるために必要なマルチタスクについて解説します。マルチタスクをこなすうえでの適性や効率的に実践するうえでの問題にも触れているので、ぜひ最後までご覧ください。
マルチタスクとは
複数の仕事を短時間で同時にこなしていくことを、マルチタスクといいます。同時に複数の作業を完遂させるコンピューター用語が由来です。
昨今、年功序列の傾向が薄まり、個人に求められる能力が高くなっています。同時に、個人に与えられる仕事量も増加傾向にあります。そのため、多くのビジネスパーソンが無意識のうちにマルチタスクをこなしているケースが多くなっています。
また、マルチタスクとはあくまで概念であり、直接的な行動そのものを指す言葉ではありません。しかし、マルチタスクが言葉として使われることが多くなったため、個人における「適性」として注目されるようになりました。
シングルタスクとの違い
シングルタスクとは、ひとつの作業に特化して取り組み、遂行することです。マルチタスクとシングルタスクには、取り組む仕事の数に違いがあります。
シングルタスクではひとつの仕事のみを行うため、マルチタスクをこなせる人のほうが優れていると思われがちです。しかし、重要な決断を行う場合や、大きな集中力が必要になる作業では、一点集中できるシングルタスクのほうが優れている場合があります。
仕事の種類や本人の適性によって生産性が変わるので、どちらが優れているかどうかは状況によって変わると覚えておきましょう。
マルチタスクは効率的?
一度に複数の仕事に取り組むよりも、ひとつの仕事に特化できるほうが集中度やクオリティの観点でも効率的といえます。ただし、複数の仕事を同時にこなすコツを掴んでしまえば、かえってマルチタスクのほうが遂行しやすいと感じる方もいるでしょう。
特にメール送信やスケジュール管理などの細々とした作業が多くある仕事や、受付や電話対応など複数の作業を同時並行で進める必要がある仕事では、マルチタスクが有効に働きやすいといえます。
マルチタスクが求められる職業
例えば管理職などは、マルチタスクをこなせることで成果を挙げやすい傾向があります。チーム全体の動きを把握し、一人ひとりのタスク管理を並行して行うためです。
また同じ理由で、医療従事者にもマルチタスクが求められます。複数の患者ごとに適した治療や対応が必要になることが理由です。
マルチタスクのメリット・デメリット
ここでは、マルチタスクの主なメリットとデメリットをそれぞれまとめています。
メリット
マルチタスクを有効に活用することで、以下のようなメリットを得られる場合があります。
- 複数の仕事を同時にこなすことで生産性が上がる
- 幅広い作業を任されることで、プロジェクトの全体像を把握しやすくなる
- 複数のタスクを処理する過程で課題を発見しやすくなる
- さまざまな作業に携わることで社内業務への理解が進み、上司・部下とのコミュニケーションを円滑にとれる
仕事の進捗だけでなく、さまざまな観点で「広い視野」を身につけられるのが、マルチタスクのメリットです。
デメリット
一方で、以下のデメリットがあるのもマルチタスクの特徴です。
- 別の仕事に取り組む際に気持ちを切り替えにくい
- キャパオーバーしやすい
- 納期に追われやすくなる
- 焦りなどが原因で生産性・クオリティが低下する
マルチタスクのデメリットは、シングルタスクであれば回避できるようなものばかりなのが特徴です。
マルチタスクに向いている人の特徴
マルチタスクのメリットとデメリットをおさえたうえで、以下に挙げる適性を自分に当てはめてみましょう。自分がマルチタスクに向いているか把握しておくことで、業務の効率化につながるかもしれません。
連絡を頻繁にとれる
マルチタスクは複数の担当者・クライアントと連絡を取り合うことになります。そのため、意識が高い方であればマルチタスクに向いているといえるでしょう。仕事に関する連携をこまめに取ることができれば、万が一問題が起きた場合でもリカバリーしやすくなります。
コミュニケーション能力が高い
複数の部署やチームと連携をとるマルチタスク業務では、上司・部下・クライアントと円滑にコミュニケーションをとる必要があります。コミュニケーション能力が高ければ、日々発生する細かなタスクを整理整頓し、状況共有が必要な人へスムーズに伝えられるようになります。
マネジメント経験がある
過去に何らかのマネジメント経験がある方も、マルチタスクへの適正があります。特に管理職的なポジションに就いていた方は、複数の業務を同時進行で進める状況に慣れているケースが多いです。そのため、仮に別の分野のマルチタスク業務を任された場合でも、ノウハウを応用しやすい特徴があります。
マルチタスクが不向きな人の特徴
ここでは、マルチタスクに向いていない人の特徴を紹介します。以下に挙げる特徴に自分が当てはまっている場合は、シングルタスクを遂行できる業務を選ぶことを推奨します。
ひとつの作業に集中したい
こだわりが強く、ひとつの仕事を完璧にこなしたい人は、マルチタスクには向いていません。複数の仕事を同時にこなすということは、さまざまなことを同時に考えるということです。集中できず、クオリティが下がることを懸念してしまう場合は、シングルタスクに切り替えましょう。
内向的な性格
マルチタスクをこなすにはコミュニケーション能力が求められるため、内向的な性格ではストレスを感じてしまう可能性があります。連絡なども主体的に行う必要があるため、受け身の姿勢ではマルチタスクをこなすことはできません。
効率的なマルチタスクを実践するポイント
最後に、マルチタスクを効果的に実践するうえで押さえておきたいポイントについて解説します。
シングルタスクに向き合う
複数の仕事であっても、一つのシングルタスクに向き合う習慣を付けましょう。マルチタスクが苦手でも、シングルタスクの感覚でクオリティを意識しながらこなし続けることで、自然にマルチタスクを実践できる可能性があります。
タスクを時間単位で区切っておく
与えられたタスク一つひとつに、目標時間を定めておきましょう。時間内に終わらない場合も想定し、最終的なゴールから逆算しつつ、都度調整しながら完遂を意識することが大切です。時間単位でタスクを区切るのは、シングルタスクとして向き合うことと同時に実践するのがおすすめです。
「1×10×1システム」を取り入れる
1×10×1システムとは、以下の順番でタスクをこなすことです。
- 1分以内に終わる仕事
- 10分あれば終わる仕事
- 1時間かかる仕事
時間管理の観点で効率化が実現できるため、おすすめの手法といえます。
関連業務はまとめて取り組む
与えられたタスクによっては、同じ作業の延長線上で進められる場合があります。1×10×1システムの概念を取り入れるうえでも重要な観点であるため、効率的かつ確実にタスクをこなすために覚えておきましょう。
パーキングロット思考を意識する
パーキングロット思考とは、タスクを実施している間に別のタスクが舞い込んでも、まずは最初の業務を完遂してから取り組むことです。新しいタスクはメモをして一旦残しておき、タスクが途中で止まらないように意識してください。
タスク管理ツールを活用する
担当するタスクが多くなるほど、頭の中だけでは整理しきれなくなります。タスク管理ツールを活用すれば、複数のタスクを管理しつつ、現状を可視化できるでしょう。また、タスクごとの優先順位を明確化し、誰に・何の情報を共有すべきかわかりやすくなるのもメリットです。
まとめ
マルチタスクとは、複数の仕事を同時にこなすことです。しかし、ただ実行すれば良いだけではなく、それぞれのクオリティや完遂までの時間も同時に求められる傾向にあります。
最近では一人の従業員に対して多くの業務を与える企業・業種も多いため、正しく対応できるようにマルチタスクの基礎を覚えておきましょう。とはいえ、マルチタスクには適性もあるため、不向きだと判断した場合は無理せずシングルタスクに切り替えましょう。
今回紹介したマルチタスクの内容を参考に、今後の仕事にどう向き合うべきか考えてください。