ビジネスシーンにおいては、円滑なコミュニケーションが成果・業績の向上の助けになることも珍しくありません。今回はその中でも「ノンバーバルコミュニケーション」という種類のコミュニケーションについて解説します。意識的に取り入れることでビジネスに役立てられるため、ぜひチェックしておきましょう。
ノンバーバルコミュニケーションとは
ノンバーバルコミュニケーションとは、言葉を使わずに行うコミュニケーションすべてを指す言葉です。「ノンバーバル」には「非言語」という意味があります。言葉でのやり取りではなく、身振り手振り・表情・見た目・距離感・匂い・温度などさまざまな手段が該当します。ビジネスにおいてはノンバーバルコミュニケーションを上手に活用することで、より大きな成果につなげている人も存在します。
メラビアンの法則とは
ノンバーバルコミュニケーションを語る上で欠かせないのが、「メラビアンの法則」です。メラビアンの法則とは、コミュニケーションにおいて人が受け取る情報のうち、「言語情報」はわずか7%に過ぎず、残る38%が「聴覚情報」、55%が「視覚情報」を占めるという心理学の法則です。
アメリカの心理学者・アルバート・メラビアンが行った実験により、人はいくら言葉で正しいことや論理的な説明をしたとしても、五感から受け取るイメージを優先して相手を評価してしまうことが実証されました。このことからも、いかに無意識のうちからノンバーバルコミュニケーションに影響されているかが分かります。
ノンバーバルコミュニケーションを構成する要素
ここでは、ノンバーバルコミュニケーションを構成する要素を3つに分類して解説します。
聴覚的要素
聴覚的要素は声の大きさや太さ、声色や声の高低などさまざまな情報から判断します。
例えば、同じ言葉を掛けられたとしても、声質によって「緊張しているのかな?」「怒っているみたい」と無意識に感じ取ることがあるのではないでしょうか。また、話す間の長さや話すスピードによっても相手に与える印象は異なります。耳から伝わる情報1つをとっても、日頃からさまざまな判断を行っているのです。
視覚的要素
視覚的要素とは、主に話し手の表情をコミュニケーションの手段とする場合を指します。人の表情は多彩で、その数は60種類以上にも及ぶといわれています。普段から使い慣れている絵文字や顔文字からも、表情だけで感情が明確に伝わることの重大さが理解できるのではないでしょうか。また、ジェスチャーは国や文化が違うと伝わらないことも多いですが、表情は世界共通で人種も問いません。表情によるコミュニケーションは、言葉が通じない相手にも感情を伝えることができます。
身体感覚的要素
身体感覚的要素には身振り手振りや姿勢、呼吸などが該当します。相手の話にうなずきながら相槌を打ったり、大きさを手ぶりで表現したりと、日常において意識することなく行っているものです。姿勢ひとつをとっても「しっかりした人」「だらしない人」などと相手に与える印象は大きく異なります。もちろんビジネスシーンにおいても同様です。
ノンバーバルコミュニケーションの効果
続いて、ノンバーバルコミュニケーションを意識的に取り入れることで期待できる効果を解説します。
言語だけでは伝えきれない情報を補完する
ノンバーバルコミュニケーションによって、言葉だけでは伝わりきらない情報を補完することが可能です。ビジネスシーンにおいて仮にたどたどしい説明であっても、以下のように非言語の情報によって与える印象が大きく変化します。
- 若いから新人なのかな、一生懸命頑張っているな
- こんなに息を切らして、急いで駆けつけてくれたんだな
反対に「この営業担当、目が泳いでいて信頼できないな」といったように悪い方向にも補完されてしまうので、十分注意しておきましょう。
相手の考えや本音に気づきやすくなる
話し相手の非言語情報に着目することで、相手が言葉にしていない本心にも気づきやすくなります。「いつもよりガラガラ声だけど、風邪を引いたのかな?」「何度も時計を確認しているけど、急いでいるのかな?」といったように、相手が表に出さないようにしている本心はノンバーバルコミュニケーションにこそ表れます。これは「空気を読む力」と言い換えられるものであり、相手がストレスを感じずに過ごせるような配慮にもつながります。
強固な信頼関係を築ける
相手との強固な信頼関係の構築にも、ノンバーバルコミュニケーションが有効です。メラビアンの法則で学んだ通り、人は相手に対する情報の大部分を非言語のコミュニケーションから得ています。だからこそ、清潔感のある身だしなみや綺麗な姿勢、自信に満ちた大きな声などは、それだけで相手からの信頼を勝ち取れるでしょう。
ノンバーバルコミュニケーションを身につけるポイント
ノンバーバルコミュニケーションを意識的に取り入れることで、大きな効果が期待できるとわかりました。それでは、実際に身につけるためにはどのようなコツがあるのでしょうか?大事なポイントを4点紹介します。
相手のペースに合わせて話す
会話の中で、ついつい自分ばかりが話していたり、早口で説明するような話し方になっていたりしていませんか。会話を弾ませるためには、相手と同じペースで話すことが大切です。まずは相手の話し方に耳を傾け、同じような速さやトーンを意識して話しましょう。すると相手はよく話を聞いてくれていると感じるため、スムーズに会話できるでしょう。
相手の話をうなずきながら聞く
相手が何か話している時は、相槌をとりながら聞くようにしましょう。動かずに黙って話を聞いていると、話し手は「聞いてくれているのかな?」と不安になるものです。ただうなずきながら話を聞くだけでも、相手は安心して話せるようになります。
大事な話をするときは相手の目を見て話す
話し手の目線は、相手に与える印象を大きく左右します。伏し目がちだったり、目が泳いでいたりすると、「嘘をついているのでは」と疑われてしまいます。大事な話をする時は相手の目を見て話すことで、真摯な姿勢が伝わります。相手が大切な話をしている時は、相手の目を見ながら聞くことで誠実な姿勢を見せましょう。
表情や仕草で感情を伝えるように意識する
表情や仕草で意識的に感情を示すことに苦手意識を持つ方もいます。しかし、やはり大切なノンバーバルコミュニケーションの一部です。同じ言葉でも無表情で言われるより、豊かな表情で表現されたほうが深く印象に残ります。聞き手としても、スマートフォンを操作しながら話を聞くよりも、話し手の方に体を向けて話を聞いたほうが「しっかり聞いてくれている」という印象を与えられます。
ノンバーバルコミュニケーションが役立つ具体例
最後に、ビジネスシーンにおいてノンバーバルコミュニケーションが役立つ具体例を紹介します。
プレゼンテーション・スピーチ
プレゼンテーションやスピーチのように人前で注目を浴びながら話す場は、誰もが緊張するものです。無意識のうちに姿勢が屈んで目線は下を向き、声が小さくなってしまうと、相手に話の内容が正しく伝わらず、不安や頼りない印象を与えてしまいます。ノンバーバルコミュニケーションを意識的に取り入れて声やジェスチャー、視線を改善させると、それだけで自信があるような印象が伝わるでしょう。話の内容も受け入れられやすくなるため、重要なポイントです。
取引先との商談
ノンバーバルコミュニケーションは、取引先との商談の場でも大きな効果を発揮します。見た目の印象に気を遣い、挨拶や商品説明などにおいて声質や表情を意識することが大切です。そうすることで、好意的な雰囲気の中で優位に商談を進められる可能性が高まります。
研修・ワークショップ
研修やワークショップといった学びの場においても、ノンバーバルコミュニケーションが役に立ちます。
ワークショップとは、テーマが設定された体験型講座の名称です。ワークショップではあらかじめ定められているテーマに沿って、主体的な参加が求められます。ノンバーバルコミュニケーションを活用すると、よりスムーズな意思疎通が実現できるでしょう。
企業研修では、参加すると初対面の相手と協働しながら、グループワークに取り組みます。このような場面では初対面の相手とグループワークなどを行う機会が多いものです。ノンバーバルコミュニケーションを意識して早い段階から相手との信頼関係を築けると、限りある研修時間の中でより多くの気づきを得ることができます。人見知りでこのような研修が苦手な方でも、コミュニケーションのための方法として実践するだけで、交流の機会を増やすことができます。
参加者同士が信頼関係を早めに構築することで、研修での学習内容の学びも深まりやすくなります。信頼関係を早めに構築する為には、会話をしながらノンバーバルコミュニケーションを取り入れていくことが重要になります。
まとめ
ノンバーバルコミュニケーションを会得することで、普段何気なく交わしていたコミュニケーションが大きく変わります。相手に与える印象をコントロールしたり、相手が話さない本音に気付いたりと、ビジネスにおいても多大な効果が期待されます。ぜひ積極的に取り入れ、仕事の成果につなげましょう。