企業を取り巻く環境が目まぐるしく変化する今、リーダーのあり方も見直されつつあります。その中でも注目を集めているリーダー像の一つが、メンバー全員がリーダーシップを発揮するシェアドリーダーシップです。この記事では、シェアドリーダーシップについて詳しく解説します。新しいリーダーのあり方を学び、組織力向上を目指しましょう。
シェアドリーダーシップとは
シェアドリーダーシップとは、役職にかかわらずメンバー全員がリーダーの役割を担うことです。必要に応じてリーダーシップを発揮するメンバーとフォロワーが入れ替わり、双方向のやりとりが行われています。なお、シェアドリーダーシップは権限や役職を意味するものではなく、全員が主体的に目標達成に向かう「あり方」を表しています。
カリスマ型リーダーシップとの違い
カリスマ型リーダーシップとは、カリスマ性のある特定のメンバーがトップに立ってチームを率いていくリーダーのあり方を指します。トップダウン型とも呼ばれ、命令が組織全体に伝わりやすい点が特徴的です。組織を一気に成長させやすい点がメリットですが、メンバーがリーダーに依存してしまいやすい、後継者が育ちづらいといったデメリットもあります。
サーバントリーダーシップとの違い
シェアドリーダーシップはメンバー全員で支え合うのに対し、サーバントリーダーシップはリーダーがメンバーに奉仕する形で組織を導いていくリーダーのあり方を指します。カリスマ型リーダーシップのように上から引っ張るのではなく、縁の下の力持ちのように部下をサポートする点が特徴的です。メンバーはリーダーに大切されることで、高いモチベーションを持って仕事に取り組みやすいといったメリットがあります。
シェアドリーダーシップが注目される背景
シェアドリーダーシップが注目される背景として、VUCA(ブーカ)時代が到来していることが挙げられます。VUCAとはVolatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の頭文字から生まれた造語で、不確実で変化が激しく、多様性のある現代の特性を指す言葉です。1人のリーダーが意思決定を行うだけでは企業がVUCA時代を生き抜くのは難しく、メンバー全員がリーダーとしての自覚を持って能力を発揮していくことが求められています。
シェアドリーダーシップのメリット
シェアドリーダーシップは、組織にさまざまな効果をもたらします。ここでは、代表的なメリットを3つ紹介します。
生産性の向上につながる
全員がリーダーシップを発揮できる環境下では、各個人が得意な分野では能力を活かし、それ以外の分野は他のリーダーを支えるといった協力体制が生まれやすくなります。その結果、チーム全体の生産性の向上が期待できるでしょう。また、全員の強みを発揮することで仕事の質が高くなる点もメリットです。
新しい価値観やアイデアが生まれやすくなる
シェアドリーダーシップが浸透することで、メンバーは自分の担当ではない分野に対しても意見を発信できるようになります。その結果、さまざまな視点から意見や考えがもたらされるため、柔軟なアイデアが生まれやすくなる点がメリットです。さらに、チームの中で新しい価値観がもたらされるようになり、組織全体のイノベーションにもつながります。
モチベーションが向上しやすくなる
シェアドリーダーシップではメンバー全員がリーダーとしての意識を持つため、モチベーションが向上しやすくなる点もメリットの一つです。トップダウン型の組織のようにただリーダーの命令に従うだけでなく、主体性を持って仕事に取り組むことで、自分で考える力が身につきやすくなります。
シェアドリーダーシップの注意点
シェアドリーダーシップを実践することでさまざまなメリットが生まれますが、導入時にはいくつかの点に注意する必要があります。
ここでは、シェアドリーダーシップの注意点を2つ紹介します。
組織のまとまりがなくなるリスクがある
シェアドリーダーシップを導入する際、メンバー全員で目標を確認しておかないと組織のまとまりがなくなってしまう恐れがあります。特に各個人の能力が高い場合、それぞれが自分の仕事だけを注視してしまい、連携が取れなくなることも考えられます。ゴールを共有する機会を定期的に設けるなど、メンバー同士の結束力を高めるような取り組みが必要です。
経験が浅い人にはフォローが必要
シェアドリーダーシップでは、すべてのメンバーが必要に応じてリーダーシップを発揮することが求められますが、組織に配属されたばかりの人やリーダーの経験がない人にとっては難しい場合があります。そのようなメンバーがいる場合は、周囲のサポートやフォローが必要不可欠です。また、メンバー同士がお互いに支え合えるような体制づくりが重要になります。
シェアドリーダーシップを取り入れる際のポイント
ここでは、シェアドリーダーシップを取り入れる際のポイントを5つ紹介します。
以下の内容を意識して、よりよい組織を目指しましょう。
組織の目的やビジョンを全員で共有する
メンバー全員がリーダーシップを発揮するには、組織全体で業務の目的や今後のビジョンを共有しておくことが大切です。メンバー間で認識がずれていると、チームワークを発揮できなくなるリスクがあります。各個人の能力や経験にかかわらず共通認識を持てるよう、できるだけわかりやすい表現で伝えることを心がけましょう。
リーダーシップの定義を統一する
メンバーがリーダーシップを発揮しようとしても、あるべきリーダー像がはっきりしていないとかえって混乱を招いてしまう恐れがあります。シェアドリーダーシップを導入する前に、チームにおけるリーダーシップの定義をはっきり統一させておきましょう。その際、部長や課長など役職としてのリーダーが主体となってアプローチすることが重要です。
PDCAを計画して実行する
組織の中で一人ひとりがリーダーとして活躍するためには、PDCAサイクルを回し続けることが大切です。業務において計画を立てて実行し、成果や課題点を振り返ることで、リーダーとしての成長につながるでしょう。また、目標達成を常に意識することによって、自分や組織に必要なものが徐々にわかるようになります。
各チームメンバーの特性を理解する
メンバーによって、職歴・経験・能力・得手不得手といった特性は大きく異なります。そのため、一人ひとりがリーダーシップを最大限に発揮するためには、メンバーの特性に合わせて適切なアプローチをすることが求められます。お互いが支え合って組織を動かしていけるよう、メンバー同士の相互理解が重要です。
コミュニケーションの土台を整える
シェアドリーダーシップでは、自分の得意分野でリーダーシップを発揮する一方で、その他の分野ではメンバーをサポートすることになります。そのため、お互いが信頼関係を構築し、自由に意見交換ができる風土を整えておくことが必要です。立場や職歴に関係なく、メンバー同士がコミュニケーションを積極的に取れる環境づくりを心がけましょう。
まとめ
この記事では、シェアドリーダーシップについて解説しました。シェアドリーダーシップでは、上からの指示に従うだけの従来のリーダー像とは異なり、メンバー全員が主体性を持ってリーダーシップを発揮することが求められます。しかし、経験の浅い人にとっては荷が重い課題であることも事実です。役職を持ったリーダーはそういった人材をフォローしつつ、皆が支え合って組織を動かしていける風通しのよいチームづくりを目指しましょう。