企業編成の手法として、昨今注目されている「コングロマリット」をご存知でしょうか。事業規模の拡大や経営方針に沿った運営、マーケットへの配慮などを理由に、さまざまな企業が企業編成の手法を取り入れています。
今回は、コングロマリットがどのような手法なのか、注目を集める理由や実践している企業の事例もまじえて紹介します。コングロマリットによる効果や注意点、コングロマリットを実践する企業の特徴についても触れているので、転職先を決めるうえでの参考にしてください。
コングロマリットとは
業種の異なる企業が、合併や買収を通じて発達した企業体をコングロマリットといいます。「集合体」の意味を持つ言葉で、ビジネスにおいては企業同士の合体を示す言葉として使用されるのが一般的です。ただし、単に企業同士が合併・買収するだけではコングロマリットになりません。多業種で構成され、多角的な視点での経営を実現するための施策としてコングロマリットがあります。複数の業態を特徴とする企業が合わさり、グループ企業として活動している企業がコングロマリットを取り入れている業態の例です。
コングロマリットが注目される理由
コングロマリットを通じて多角的な経営を行うことで、ビジネスモデルのリスクヘッジが可能です。昨今のコロナ禍における市場の変化など、不透明な先行きを生き抜くための施策として、コングロマリットが有効な経営戦略として注目されています。
代表的な手法
コングロマリットの主な手法には、資本提携・吸収合併・買収の3つが挙げられます。それぞれの特徴は以下の通りです。
資本提携 | 2社以上が提携し、強みやノウハウを共有する手法それぞれの企業が持株を持ち合って提携するため信用が高まりやすい |
吸収合併 | 片方の企業にもう一方の企業を取り込む手法すべての資産が吸収もとの企業に合併されるシナジー効果(多角的経営による相乗効果)やコスト削減が期待できる |
買収 | 他の企業を買い取る手法安定した企業成長が期待できる市場ニーズに沿ったサービスを柔軟に提供しやすくなる |
コングロマリット企業の事例
コングロマリットを実践した企業と、それぞれが実践した内容は以下の通りです。
- 楽天→楽天市場を主力とし、楽天銀行や楽天証券などの金融事業も展開
- GMOインターネット株式会社→ネット広告・メディア事業・金融事業・仮想通貨など多角的に事業を展開
- 日立製作所→Iotプラットフォームを中心に、グループ内の事業を提携させて高いシナジー効果を発揮
コングロマリットの効果
コングロマリットによる効果には、以下2つがあります。
- コングロマリット・プレミアム
- コングロマリット・ディスカウント
ここでは、それぞれの効果について詳しく解説します。
コングロマリット・プレミアム
コングロマリットにより、企業価値が高まる効果をコングロマリット・プレミアムといいます。多業種を取得することでシナジー効果が生まれ、企業価値が向上するという、コングロマリットの目的を実現した状態を指します。また、コングロマリットにより、優秀な人材や経営資源の確保につながるのも、コングロマリット・プレミアムです。
コングロマリット・ディスカウント
コングロマリットがきっかけで、株価が低下してしまうことをコングロマリット・ディスカウントといいます。事業間でシナジー効果が生まれなかったり、不調な事業に引っ張られて収益が下がったりすることが主な原因です。また、コングロマリットがきっかけで投資家が自社への興味を失った際に、コングロマリット・ディスカウントが発生します。
コングロマリットを実践する企業の特徴
コングロマリットを実践している企業には、以下の特徴があります。
- シナジー効果が期待できる
- 経営リスクが分散されている
- 中長期的なビジョンが描かれている
転職先を決めるうえでも重要なポイントになるため、把握しておくことをおすすめします。
シナジー効果が期待できる
コングロマリットを行うことで、グループ企業内に方向性の異なる事業が複数存在するようになります。結果、コングロマリット実施前になかったノウハウを的確に吸収できるため、シナジー効果が生まれます。多角的な視点で知識や技術を取り入れることで、従来の課題を解決しやすくなるのも、コングロマリットを取り入れる企業の特徴です。
経営リスクが分散されている
コングロマリットを実施することで、トレンドや市場状況に応じたビジネスを展開しやすくなります。合併前の状態だと、メイン事業が頓挫してしまった段階で経営に危険信号が灯ります。しかし、コングロマリットを実施していれば、多角的にビジネスを展開できるため、グループ内で経営リスクをカバーできます。
中長期的なビジョンが描かれている
コングロマリットは、従来とはまったく異なる方向性のビジネスを取り入れることです。そのため、短期間で成果を上げるのには向いていません。反面、中長期的な計画を立てるのであれば、シナジー効果につながるビジョンを描きやすくなります。将来性が期待できるため、コングロマリットを取り入れている企業への転職を検討する際の知識として覚えておきましょう。
コングロマリットに関する注意点
コングロマリットを実施する際の注意点には、以下が挙げられます。
- 短期的戦略ではない
- コミュニケーション不足が懸念される
- 企業価値が低下するリスクがある
- コーポレートガバナンスが難しい
転職先に懸念される視点でもあるため、コングロマリットによる注意点は把握しておくべきです。
短期的戦略ではない
コングロマリットはこれまでと異なるビジネスに足を踏み入れるため、短期的戦略としては機能しません。入社後、すぐに成果を実感したいという人は、コングロマリットを実施している企業への転職は不向きです。
コミュニケーション不足が懸念される
コングロマリットは、効率的に機能すれば多角的な事業のノウハウを取り入れられます。しかし、まったく異なる事業をマッチさせるため、グループ内のコミュニケーションが希薄になるリスクもあります。
企業価値が低下するリスクがある
コミュニケーション不足にも関連し、コングロマリットによりかえって企業価値が低下する場合があります。グループ間の歯車が噛み合わなくなると、企業価値や投資家からの評価が下がってしまいます。
コーポレートガバナンスが難しい
コングロマリットにより多数の企業が一箇所に集約するため、企業・事業ごとの特性や方針を理解したうえでコーポレートガバナンス(企業統治)を実施する必要があります。グループとはいえ、企業間の関連性が少ないことから、他の事業形態と比較して統治しにくいのが懸念点です。
まとめ
今回は、多角的な視点をもつ企業同士が集合する、コングロマリットという企業編成手法について紹介しました。コングロマリットの効果や、実践する企業の特徴にも触れています。
コングロマリットにより期待できる効果や懸念点を把握することで、転職先を決めるうえでの判断基準も備わります。今回紹介したコングロマリットの内容を参考に、自身のキャリア形成を客観的に分析してみてはいかがでしょうか。