キャリアアンカーとは?分類・診断方法・メリット・活用場面における知識を解説

2024年10月21日

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Izul広報チーム

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自身のキャリアに対し、最も大切にしたい軸となる価値観や能力、欲求などを示す指標がキャリアアンカーです。自分の軸を持ちたいが、どのように行動すべきかわからず悩んでいる方も多いのではないでしょうか。この記事では、自身の価値観を客観的に振り返る役割も果たすキャリアアンカーについて解説します。キャリアアンカーが注目されている理由や分類、診断方法について触れているので、今後の転職活動などに役立ててください。

キャリアアンカーとは

キャリアアンカーとは、キャリアを選択・形成していく上で「絶対に譲れない価値観や欲求」のことです。マサチューセッツ工科大学の組織心理学者エドガー・H・シャイン教授によって提唱されたキャリア概念で、仕事において最も大切にすることを「船の錨(いかり)」に例えています。個人のキャリア形成において仕事や人生で求めているものを明確にすることで、納得のいく働き方ができると考えられています。

キャリアアンカーの基になるのは、以下の3つの要素です。

  • どんな仕事がしたいのか(動機)
  • 自分は何が得意なのか(コアコンピタンス)
  • 何に価値を感じるのか(価値観)

転職活動において自身の軸となる価値観を持つことは、適職を選択するための重要なポイントです。そのため、徹底的な自己分析で自分のキャリアアンカーを把握し、今後のキャリアプランに活かしましょう。

キャリアアンカーにおいて重要な3つの問い

キャリアアンカーを考えるためには「コンピタンス」「動機」「価値観」を深掘りする必要があります。これら3つの要素の重なる部分が、自分のキャリアアンカーです。仕事でやりたいことや得意分野の活かし方など表面的な分析ではなく、個人としての人生における「絶対に譲れない価値観や欲求」を考えます。

コンピタンスは才能や能力のことですが、一般的な能力ではなく、たとえ不利な状況においても発揮できる自分独自の能力を指します。

動機では「本当にやりたいこと」を考えることで、やりがいや達成感の高い仕事選びに活かします。価値観とは「やることに意味や価値を感じること」を指し、向上心や目標達成へのモチベーションにつながるものです。

この3つの要素の中心となる軸となるキャリアアンカーは、中長期的なキャリアプランを形づくるものです。そのため、これまでの業務経験や働き方への価値観をていねいに言語化し、転職後はどのように働きたいかを分析しましょう。

キャリアアンカーの8つの分類

キャリアアンカーには以下の8種類のタイプがあります。診断サイトやチェックシートで分析すると、どれか1つか複数の項目に当てはまるでしょう。複数のタイプに当てはまる場合は「最も譲れないこと」を軸に共感できるものを選び、優先順位をつけるのがおすすめです。この分類方法は、自己分析の指標として価値観の再認識を促すため、適職探しや企業選びの軸として役立つでしょう。

キャリアアンカーの分類概要
専門・職能別能力・専門家としての能力を発揮したい人の分類
・レベルの高い技能を身につけることに魅力を感じる
・専門スキルを不要とするマネジメント職には不向き
経営管理能力・出世欲が強い人の分類
・キャリアを重ねることで経営側に回ることに魅力を感じる
・責任感のある仕事をしたい人に向いている
保障・安定・報酬や仕事量など、安定性を重視したい人の分類
・雇用保険・終身雇用などに魅力を感じる
・積極的なキャリアチェンジを望む人には不向き
自立・独立・集団行動のもと仕事をすることに苦手意識を感じる人の分類
・フリーランスや起業などに魅力を感じる
・自分の納得できるやり方を進めたいと考える人に向いている
奉仕・社会貢献・自分の行動で社会に好影響を与えたい人の分類
・人の役に立つ仕事に魅力を感じる
・報酬面や安定性を重視したい人には不向き
起業家的創造性・新しいサービス・製品を開発したいと考える人の分類
・起業・独立に魅力を感じる
・企業内での新規部署立ち上げなどにも向いている
ライフスタイル・個人だけでなく企業や家族のニーズを重視したい人の分類
・仕事とプライベートを両立することに魅力を感じる
・在宅勤務・育児休暇などに重きを置いている人に向いている
純粋な挑戦・他の人が挑戦しないような仕事をしたい人の分類
・困難な仕事ほど魅力を感じる
・ルーティンワークをこなすのが得意な人には不向き

自分のキャリアアンカーから見出せる転職先の候補

キャリアアンカーの分析は、適職探しの「糸口」として活用できます。ここでは、8つの分類に応じた適職を紹介します。

キャリアアンカーを活用できる場面は?

ここでは、キャリアアンカーを有効活用できる3つの場面について解説します。

専門・職能別能力

このタイプに当てはまる人は、特定分野の「専門家」として能力を発揮できる仕事を検討しましょう。生涯にわたって知識やスキルを高めることに喜びを感じるタイプのため、常に新しいことを吸収できる環境のある企業が適しています。

【適職例】
研究開発職、エンジニア、公認会計士、弁護士、出版編集、技能工、アスリート、金融専門職、エコノミスト、データサイエンティストなど

経営管理能力

このタイプに当てはまる人は、リーダーとしてチームをまとめるのに適しています。そのため、スケールの大きい仕事で責任を持てる職種や、問題解決を担う仕事ができる企業を探しましょう。

【適職例】
経営者、管理職、コンサルタント、マネージャー、企画(経営企画・事業統括など)、店舗管理(SV・店長など)など

保障・安定

このタイプに当てはまる人は、保障や報酬などが安定した組織に向いています。厳しいノルマや異動などにストレスを感じやすいのも特徴です。終身雇用が期待できるなど、堅実にキャリアが積める環境に絞ると良いでしょう。

【適職例】
公務員、団体職員、学校関係、管理部門(経理・総務・法務など)、大企業・上場企業、創業から長い歴史を持つ企業など

自立・独立

このタイプに当てはまる人は、組織のルールではなく、自分のスタイルで仕事を進めたいと考えます。転職先選びでは、裁量が大きい企業や、在宅勤務、フレックスといった柔軟な働き方ができる環境を持つ企業を検討しましょう。また、社内ベンチャーなどを採用している企業にも向いています。

【適職例】
研究職、クリエイティブ職(デザイナーなど)、エンジニア、営業(成功報酬型)、コンサルタント、外資系企業、フリーランスなど

奉仕・社会貢献

このタイプに当てはまる人は世の中に貢献したい、医療や社会福祉、教育分野で力を発揮したいと考えているでしょう。転職での企業選びでは、企業理念や組織・人への共感ができる企業や、事業内容やサービス内容で貢献したいと思える企業を探してみましょう。

【適職例】
医療・社会福祉関連職、教育職、公務員、NGO・NPO、団体職員、管理部門(人事・労務・総務など)、カスタマーサポート、事務職(アシスタント・秘書)、サービス業(旅行・ホテル・ブライダル)など

起業家的創造性

このタイプに当てはまる人は、新しいものを生み出すことを目指したいと考えているでしょう。そのため、組織の立ち上げや買収や再建、新商品やサービスの開発などクリエイティブな挑戦ができる企業を転職先に選びましょう。

【適職例】
企画(新規事業企画)、商品企画、マーケティング、CXO、営業(成功報酬型)、コンサルタント、起業家(スタートアップ・ベンチャー企業)など

ライフスタイル

このタイプに当てはまる人は、仕事とプライベートのバランスを最優先します。そのため、私生活を犠牲にすることなく仕事に打ち込める環境が整った企業を選択しましょう。フレックスタイムや育児休暇、在宅勤務といった柔軟な働き方ができる環境に向いています。

【適職例】
事務職、営業、クリエイティブ系(編集・ライター・デザイナー)、管理部門(人事・経理・法務)など

純粋な挑戦

このタイプに当てはまる人は、解決が困難な問題に挑み、そこから受ける刺激に喜びを感じる傾向にあります。例えば創業したばかりで成長過程にある企業や、海外の社会問題に貢献する企業など、挑戦しがいのある事業を展開する企業への転職にも向いているでしょう。

【適職例】
営業、企画(事業統括・経営企画・新規事業開発)、管理職、CXO、コンサルタント、メディア関係、大企業・グローバル企業、NPO・NGO、研究職など

キャリアアンカーの診断方法

キャリアアンカーの診断方法は、自己分析で「コンピタンス」「動機」「価値観」を深掘りする方法と、診断サイトや診断シートを使う方法があります。以下の表は無料かつ質が高いサービスをピックアップしたものです。設問は40問程度のため、気軽に活用してみましょう。

キャリア・アンカー 無料診断ツールhttps://career-anchors.rere.page/test/
近くナビhttps://chikaku-navi.com/carrier/
JAC Recruitmentキャリアアンカー診断シートhttps://cf.jac-recruitment.jp/contents/common/file/knowhow/career_anchor_checksheet.xlsx

キャリアアンカーは企業でも活用されている

キャリアアンカーは、個人の転職活動への使用だけでなく、企業による従業員管理にも活用されています。企業において使われている場面を以下の表にまとめています。

企業の活用方法概要
採用プロセスキャリアアンカーを用いて候補者の価値観や動機を理解し、企業文化や職務内容に適合する人材を選定します。
人材配置社員のキャリアアンカーを基に、適切な部署や職務に配置することで、社員のパフォーマンスと満足度を向上させます。
キャリアパスの提供各社員のキャリアアンカーに合ったキャリアパスを提供し、長期的なキャリア開発を支援します。
チームビルディングチームメンバーのキャリアアンカーを把握し、チームのダイナミクスを最適化するための取り組みを行います。
離職率の低下キャリアアンカーを活用して、社員が長期間働き続けられる環境を整備し、離職率を低下させます。

このようにさまざまな場面でキャリアアンカーを活用することで、従業員のエンゲージメントや生産性の向上につながると期待されています。

キャリアアンカー診断を行うことで得られるメリット

キャリアアンカーを診断することは、転職活動やキャリアプランニングにおいて非常に有益なツールとなります。自身の価値観を深く理解し、適切なキャリアを選択するための強力な手助けとなるでしょう。ここでは、キャリアアンカー診断を行う4つのメリットを紹介します。

自己理解の向上

キャリアアンカー診断は、個人の価値観や動機を明確にするのに役立つため、満足度の高い働き方を選択しやすくします。自分が何を重視し、どのような職場環境で最も満足できるかを理解できることで、肩書や報酬などの短絡的な選択ではなく、本質的な欲求を叶える転職ができます。

長期的なキャリアプランの構築

キャリアアンカーを知ることで、短期的な職務選択だけでなく、長期的なキャリアプランの構築にも役立ちます。自身の価値観に基づいてキャリアを計画することで、キャリア選択において迷うことが少なくなり、転職活動を効率的に進められるでしょう。

転職活動をサポート

自分のキャリアアンカーを把握することで、転職活動の際に、自身の価値観や動機に合った企業文化や職務内容を持つ企業を選びやすくなります。さらに面接時に自分がどのような価値観を持ち、どのような環境で力を発揮できるかなどのアピールポイントを明確に伝えられます。

職場とのミスマッチを防止

キャリアアンカーを活用すると、自身の価値観に合った仕事や職場環境を選べるため、職場とのミスマッチを防止できます。自分に合う企業に転職することで、仕事への満足度やモチベーションが向上し、情熱ややりがいを感じやすくなるでしょう。

キャリアアンカー診断を転職に使う場合の注意点

キャリアアンカーは転職活動において有用な方法ですが、診断する際にいくつか注意点があります。以下で3つ紹介します。

タイプによって良い悪いで判断しない

仕事の選択方法は人それぞれ価値観があり、キャリアアンカーのタイプに良い悪いで判断するものではありません。キャリアアンカーは選択の優劣を決めるものではなく、満足度の高い選択を助けるツールです。転職の際の企業選びは、働き方を考える上で重要なポイントになるため、キャリアアンカーを選択の「糸口」として活用しましょう。

一度診断したタイプが絶対ではない

キャリアアンカーの診断結果は、あくまでも現在の価値観を明示したものであり、人生において絶対的なものではないことを理解しておきましょう。人生では想定外のことも起こる可能性があり、5年後、10年後で回答が変わることも考えられます。「今」の診断結果は暫定的なものとして捉えながら、転職活動に活かすと良いでしょう。

診断結果を信じ込まない

キャリアアンカーの診断結果を信じ込まないことも大切です。キャリアアンカーには8つの種類がありますが、紹介した適職についたからといって転職に成功するとは限りません。なぜなら、企業風土や文化、働き方は企業によって異なるからです。活躍する経営者すべてが「経営管理能力」タイプにではありません。キャリアアンカーを提唱したエドガー・H・シャイン教授も「仕事分析や企業分析をして環境や組織のニーズとの調和を取ることが大切だ」と唱えています。転職での企業選びではキャリアアンカー診断の活用と並行して、企業研究も怠らないようにしましょう。

まとめ

キャリアアンカーは、自身の働き方における価値観や能力などを客観的に判断するために重要な指標です。企業とのミスマッチはもちろん、自身の理想と反する働き方を続けることも回避できるでしょう。

企業側の施策として、キャリアアンカーを重視していることもあります。キャリアアンカーを大切にしている企業かどうか見極めることで、今後の自身のキャリアを納得いくものにしていけるかもしれません。

今回紹介したキャリアアンカーの内容は、自身を見直し、理想の道に進むためのきっかけになるものです。自身のキャリアに疑問や不安のある方は、ぜひ本記事の内容を参考にしてください。

監修者・中田 潤一

中田 潤一

株式会社キーエンス株入社後、サントリー株式会社→アリババ株式会社→株式会社リクルート住まいカンパニー リクルート在籍時に株式会社Izulを立ち上げ、現在に至る。株式会社Izulを含め4社の代表取締役を勤める。スキルシェアサービス「タイムチケット」では就職・転職カテゴリーで46ヶ月連続1位獲得、年間アワードを3年連続受賞。

著者プロフィール

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株式会社Izulの広報チームが運用。20代〜30代の若手ハイクラス層から、圧倒的支持を獲得中。働き方や転職のコツなど、キャリアに役立つ情報を発信していきます。

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