自身のキャリアに対し、最も大切にしたい軸となる価値観や能力、欲求などを示す指標がキャリアアンカーです。自分の軸を持ちたいが、どのように行動すべきかわからず悩んでいる方も多いのではないでしょうか。この記事では、自身の価値観を客観的に振り返る役割も果たすキャリアアンカーについて解説します。キャリアアンカーが注目されている理由や分類、診断方法について触れているので、今後の転職活動などに役立ててください。
キャリアアンカーとは
キャリアアンカーとは、自身が理想とするキャリアにおいて、譲れない軸になる価値観・能力・欲求を示す指標です。1970年代に、マサチューセッツ工科大学ビジネススクールの組織心理学者であるエドガー・シャインによって提唱されました。
キャリアに対して抱く譲れない観点は、働き方や年齢、環境が変化してもブレることが少ないと言われています。つまりキャリアアンカーは、自身のキャリアの方向性を定めるのに重要な役割を果たすのです。
なぜキャリアアンカーが注目されているのか
キャリアアンカーは、一般的な自己分析などでは掘り下げきれない希望を客観的に理解できるため注目されています。これまでの仕事内容や成功体験などを活用して行う自己分析に対し、キャリアアンカーは「仕事に対して何を大切にしたいか」を示す指標です。人格面に寄り添った観点であることから大きく変化しないという側面もあり、通常の自己分析よりも重視される場合があります。
またキャリアアンカーは、企業とのミスマッチを防ぐのにも役立ちます。自身の抱くキャリアと企業が理想とする人材のイメージがズレていては、双方にとってデメリットとなります。自身のキャリアに軸があれば、面接の段階でミスマッチがないか判断しやすくなるでしょう。
キャリアアンカーと混同しやすい用語
キャリアアンカーと混同しやすい用語には、「プランドハップンスタンス」と「キャリアサバイバル」があります。
プランドハップンスタイルとは、キャリアが「偶然」形成されると考えた理論です。キャリアサバイバルは、個人が重視している働き方に対する価値観を、企業のニーズと調和させる考え方を指します。
いずれも、キャリアアンカーと比較したり、あわせて考えたりすることで効率的に自身の考え方に落とし込めるでしょう。
キャリアアンカーの8つの分類
キャリアアンカーは主に、8種類に分類されることをご存じでしょうか。ここでは、キャリアアンカーの分類をわかりやすくまとめているので、自分がどの分類に当てはまるのかぜひ参考にしてください。
専門・職種別コアコンピタンス
- 専門家としての能力を発揮したい人の分類
- レベルの高い技能を身につけることに魅力を感じる
- 専門スキルを不要とするマネジメント職には不向き
経営管理コアコンピタンス
- 出世欲が強い人の分類
- キャリアを重ねることで経営側に回ることに魅力を感じる
- 責任感のある仕事をしたい人に向いている
保障・安定
- 報酬や仕事量など、安定性を重視したい人の分類
- 雇用保険・終身雇用などに魅力を感じる
- 積極的なキャリアチェンジを望む人には不向き
自立・独立
- 集団行動のもと仕事をすることに苦手意識を感じる人の分類
- フリーランスや起業などに魅力を感じる
- 自分の納得できるやり方を進めたいと考える人に向いている
奉仕・社会貢献
- 自分の行動で社会に好影響を与えたい人の分類
- 人の役に立つ仕事に魅力を感じる
- 報酬面や安定性を重視したい人には不向き
起業家的創造性
- 新しいサービス・製品を開発したいと考える人の分類
- 起業・独立に魅力を感じる
- 企業内での新規部署立ち上げなどにも向いている
生活様式
- 個人だけでなく会社や家族のニーズを重視したい人の分類
- 仕事とプライベートを両立することに魅力を感じる
- 在宅勤務・育児休暇などに重きを置いている人に向いている
純粋な挑戦
- 他の人が挑戦しないような仕事をしたい人の分類
- 困難な仕事ほど魅力を感じる
- ルーティンワークをこなすのが得意な人には不向き
キャリアアンカーの診断方法
上記で紹介したキャリアアンカーの分類は、分類別の特徴などを自身に当てはめることで診断できます。また、インターネット上で利用できる「キャリアアンカー診断サイト」を活用することで、より客観的な目線で自身のキャリアアンカーを診断できるでしょう。
「近くナビ」から提供されている以下の診断サイトがおすすめです。
「近くナビ」キャリアアンカー診断サイト
自身のキャリアアンカーを明確にするうえでも、ぜひ一度診断してみてはいかがでしょうか。
キャリアアンカーを活用できる場面は?
ここでは、キャリアアンカーを有効活用できる3つの場面について解説します。
自己分析
キャリアアンカーは、自分自身が抱くキャリアに対する考え方を客観視するために活用できます。これまで特にキャリアについて考えたことがない人でも、キャリアアンカーを意識することで自分でも把握できていなかった価値観に気づけるかもしれません。どのような働き方が合っているのか、自身のキャリア形成を見直すきっかけに、キャリアアンカーを活用しましょう。
研修
キャリアアンカーの重要性を理解する目的で、企業が研修のテーマに設定することもあります。将来や今までのキャリアを振り返る意味で、新入社員・中堅社員問わずメリットのある研修になるでしょう。また、キャリアについてディスカッションする場を設けることで、コミュニケーションが活性化する可能性があります。
人員配置
キャリアアンカーを活用し、従業員が自身のキャリアを把握できるようになれば、適切な人員配置のヒントとなります。従業員にとっても、自身の理想とするキャリアを実現するために、どの部署にいるべきかを判断し、会社に打診できます。「適材適所」の判断をより確実に、かつ客観視するためにキャリアアンカーを活用しましょう。
キャリアアンカーについて把握するメリット
キャリアアンカーを把握することは、個人はもちろん企業にとってもメリットがあります。双方のメリットを以下でまとめているので、ぜひ参考にしてください。
個人としてのメリット
キャリアアンカーを活用することで、自身の今後についてより明確にできることが、個人にとってのメリットです。今いる会社での立ち位置や、今後の転職に向けた考えや行動を明確にできます。
企業側のメリット
従業員が抱くキャリアに対する思いを吸い上げ、適切な人員配置を実現できることが企業側のメリットです。また、採用活動時にキャリアアンカーに関する質問などをすることで、自社にマッチした人材を見つけやすくなる点もメリットといえます。
キャリアアンカーを活用する企業が押さえたいポイント
従業員を対象にキャリアアンカーを活用しようと考えている企業は、以下のポイントを押さえておきましょう。
- キャリアアンカーの結果だけで従業員の価値観を判断しない
- キャリアアンカーの結果に「良し悪し」はないと理解する
- 従業員個人の強みとして活かす
また従業員側の目線としては、上記のポイントを企業がしっかり把握しているかどうか判断し、今後の自分の動きを定めていくことが大切です。
まとめ
キャリアアンカーは、自身の働き方における価値観や能力などを客観的に判断するために重要な指標です。企業とのミスマッチはもちろん、自身の理想と反する働き方を続けることも回避できるでしょう。企業側の施策として、キャリアアンカーを重視していることもあります。キャリアアンカーを大切にしている企業かどうか見極めることで、今後の自身のキャリアを納得いくものにしていけるかもしれません。
今回紹介したキャリアアンカーの内容は、自身を見直し、理想の道に進むためのきっかけになるものです。自身のキャリアに疑問や不安のある方は、ぜひ本記事の内容を参考にしてください。