フレックスタイム制とは?仕組み・運用ルール・注意点について解説

2022年8月23日

2024年2月1日

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Izul広報チーム

Izul広報チーム

フレックスタイム制は、労働者が就業時間を自由に設定でき、ワークライフバランスの改善や生産性の向上、残業時間の削減などのメリットがある働き方です。この記事では、フレックスタイム制の制度や仕組み、運用ルール、注意点について解説しています。フレックスタイム制の導入を検討しているものの導入方法が分からない企業の方や、働き方のメリット・デメリットを知りたい方は是非参考にしてください。

フレックスタイム制とは

フレックスタイム制とは、労働者が出退勤の時間を自由に設定できる制度のことです。「曲げる・柔軟性」という意味を持つ「flex」が由来となっています。日本では、1987年の労働基準法改定を受けて1988年4月に導入されており、実は歴史のある制度です。通勤や勤務時間の自由度が高く、柔軟な働き方が可能になります。

フレックスタイム制の働き方

フレックスタイム制は、ワークライフバランスの充実を目指す方法のひとつとして、働き方改革に伴って注目されている働き方です。働き方改革とは、労働環境の改善や副業の解禁など、就労意欲を持つ人にとって働きやすい社会を作ることを目的とした制度です。
フレックスタイム制では自分で始業と終業の時間を決められるため、育児や介護と両立しながら働きやすくなる点が大きな特徴です。フレックスタイム制を導入している企業の中には、必ず勤務をしなければならない「コアタイム」と呼ばれる時間帯を設定しているケースが多く見られます。

就業時間の決め方

フレックスタイム制を導入する際は、清算期間と呼ばれる一定期間の中で、合計何時間勤務するのかを設定します。清算期間は1週間〜3ヵ月以内と企業により異なりますが、賃金の計算に合わせて1ヵ月に設定している企業が一般的です。法定労働時間の上限は各月の日数で変動します。

精算期間の暦日数週法定労働時間/40時間週法定労働時間/44時間
28日160.0時間176.0時間
29日165.7時間182.2時間
30日171.4時間188.5時間
31日177.1時間194.8時間

上記時間内からフレキシブルタイム・コアタイムのそれぞれを決定し、従業員と労使協定を締結します。コアタイムは「すべての労働者が必ず勤務をしなければならない時間帯」のことですが、法令上必ず設定しなければいけないわけではありません。コアタイムを設定する場合も、事業所単位で設定する必要はありません。
例えば、「部署ごとにコアタイムを設定」「日によってコアタイムが変わる」「コアタイムがない日が存在する」などのケースも認められています。

フレキシブルタイムも労使協定で自由に設定できますが、1日のうち30分しか与えられていない場合など、あまりにもフレキシブルタイムが短い場合はフレックスタイム制の趣旨に合致しないとして行政から通達が出されます。反対にフレキシブルタイムが長すぎる場合も、長時間労働や時間外労働発生の懸念が強まり、行政からの指導が入る場合があります。

残業時間の計算方法

フレックスタイム制を導入した場合の残業時間の計算は、清算期間の総労働時間が法定労働時間内か法定労働時間外かで変わります。
休日労働割増・深夜労働割増については、法定を遵守する必要があります。

  • 所定労働時間を超えているが、法定労働時間内の場合
    法内残業となり、割増賃金の対象になりません。
  • 労働時間が法定労働時間を超えた場合
    法定労働時間を超えた分の割増賃金(時間単価×1.25)の支払いが発生します。
  • 休日労働割増
    フレックスタイム制は就業時間を選択できる制度で、休日を選択できるわけではありません。使用者は、少なくとも1週間に1日、または4週間で4日の「法定休日」を労働者に与えなければなりません。法定休日に労働が発生した場合、使用者には35%以上の休日割増賃金を労働者に支払う義務が発生します。
  • 深夜労働割増
    深夜労働には、22:00〜5:00までの勤務が該当します。深夜労働を行った使用者には、25%以上の深夜労働割増賃金を支払う義務が発生します。仮にフレキシブルタイムを22:00〜5:00の間で設定したとしても、深夜労働割増賃金は発生するため注意が必要です。

フレックスタイム制のメリット

フレックスタイム制のメリットとして、「ワークライフバランスの向上」「生産性の向上」「残業時間の削減」「労働者のエンゲージメント醸成」などが挙げられます。
それぞれの家庭環境や生活環境に合わせて就業時間を設定できるため、未就学児童がいる家庭や、両親の介護が必要な環境の方にとって、フレックスタイム制はワークライフバランスの向上に繋がります。他にも、自分の都合や集中できる時間帯に合わせて勤務時間を選べる点も魅力的です。

フレックスタイム制のデメリット

一方でフレックスタイムにはデメリットも存在しています。
フレックスタイム制は労働者が就業時間を自由に設定できる制度のため、自己管理能力が低い労働者のルーズさが目立ってしまう場合があります。
企業や部署によっては、「誰がいつ出勤で、いつ退社しているのか」が分かりづらい点もフレックスタイム制のデメリットです。業務の引き継ぎなどコミュニケーションを取る時間が少なくなる懸念もあります。 
また、取引先がフレックスタイム制を導入していない企業の場合、時間が合わずに担当者と連絡がつきづらい・不在がちになることがデメリットとなる場合もあります。

フレックスタイム制に向いている人

フレックスタイム制が向いている人の例として、エンジニア職・デザイナー職・企画職などが挙げられます。仕事を自分のペースで進められる職種や、個人の裁量が大きい職種の人にはフレックスタイム制は向いているといえるでしょう。
一方で、経験の浅い新卒や第二新卒、未経験者へのフレックスタイム制の導入は少しハードルが高くなります。 「誰がいつ出勤で、いつ退社しているのか」が分かりづらいため、サポートが必要な時に手助けできる人が近くにいないケースが想定されることが原因です。経験の浅い新卒や第二新卒、未経験者の場合は、ある程度自走ができるようになってからフレックスタイム制の導入を考えることをおすすめします。

フレックスタイム制を導入している企業

ここでは、フレックスタイム制を実際に導入している企業についてご紹介します。企業規模による導入率の変化や、導入率の高い業種、低い業種などをそれぞれ見ていきましょう。

導入率は企業規模によって変動する

令和3年度の厚生労働省の調査によると、フレックスタイム制を導入している企業の割合は6.5%となっており、まだフレックスタイム制が一般的になっているといえません。
企業規模で見てみると、従業員数1,000人以上で28.7%、300人~999人で15.6%、100人~299人で8.7%、30人~99人で4.1%となっており、従業員数が多い企業ほどフレックスタイム制の導入が進んでいることが分かります。
ただし、従業員数が少ない企業でもフレックスタイム制を導入しているケースは存在するため、今後フレックスタイム制は企業規模を問わず推進されていくことが予想されます。

導入率の高い業種

2020年度の厚生労働省就労条件総合調査によると、フレックスタイム制の導入率が高い業種は以下のとおりです。 

1.情報通信業(30.0%)
2.学術研究、専門・技術サービス業(18.0%)
3.複合サービス事業(16.5%)
4.金融業、保険業(14.4%)
5.電気・ガス・熱供給・水道業(14.2%)

導入率が最も高い割合の情報通信業では、電話などの通信業、テレビ局などの放送業、ソフトウェア開発などの情報サービス業、サーバー・サイト運営などのインターネット付随サービス業などが挙げられます。
他にも、SEやプログラマーなどのIT関連職もフレックス制の導入が進んでいる職種のひとつです。これらは個人の裁量が大きい職種であるため、フレックスタイム制の導入が他業種よりも進んでいると考えられます。

導入率の低い業種

同じく2020年度の厚生労働省就労条件総合調査によると、フレックスタイム制の導入率が低い業種は以下のとおりです。

1:建設業(1.1%)
2:教育、学習支援業(1.3%)
3:宿泊業、飲食サービス業(2.0%)
4:生活関連サービス業(2.1%)
5:小売業(3.2%)

 この結果を見ると、集団で作業を行う建設業や、顧客の時間に合わせて事業を運営する必要がある教育・学習支援業、宿泊業・飲食サービス業などでは、フレックスタイム制の導入率が低い傾向にあります。

フレックスタイム制を導入するときの注意点

ここでは、フレックスタイム制を導入するときの注意点を解説します。なお、フレックスタイム制を導入するには、使用者と労働者の間で労使協定の締結が必要です。
労使協定でのフレックスタイム制度の枠組みは、下記表を参考にしてください。

項目概要
対象労働者の範囲全従業員/〇〇部署など
清算期間期間の長さ/起算日を設定
清算期間における総労働時間本記事【フレックスタイム制とは】の「就業時間の決め方」を参照
標準となる1日の労働時間定めた総労働時間÷清算期間における所定労働日数が一般的
コアタイムとフレキシブルタイムコアタイムは定めた総労働時間とほぼ一致してしまわないように要注意(一般的にはコアタイムは4時間と設定している企業が多い)

運用を従業員任せにしない

フレックスタイム制の運用は従業員任せにしないよう注意してください。時間にルーズな従業員がいた場合、「フレックスタイムであれば、多少就業時間が前後しても問題がない」と思ってしまうケースが想定されます。
フレックスタイムといっても、就業時間は明確に定められています。従業員が定められた就業時間を守らないと、労働時間を管理する会社側の負担も増してしまいます。 個々に任せるのではなく、就業規則に則った運用をすることが必要です。

ルールを就業規則に明記する

フレックスタイムを導入する際は、ルールを就業規則に明記しましょう。
「始業時刻は午前8時から午前10時まで」「終業時刻は午後4時から午後8時まで」といった就業時間に関するルールの他に、超過時間や不足時間の取扱い、休日出勤に関することも就業規則に記載しておくことをおすすめします。

チーム単位でコアタイムを設定

 コアタイムの設定は会社全体だけでなく、営業部のみ・開発部のみといったチーム単位で行うことも可能です。しかし、部門ごとに別々のコアタイムを設けると、部署間のやりとりに支障が出るおそれがあります。事前に従業員に対して説明を行い、理解を得た上で導入をしていくことが望ましいでしょう。

海外におけるフレックスタイム制の事例

海外におけるフレックスタイム制について、ここでは労働生産性上位国常連のノルウェーを例に挙げてご紹介します。
ノルウェーの企業のフレックスタイム制導入率は82%にものぼり、そのうち78%の割合でリモートワーク勤務が認められています。フレックスタイム制の導入が進んでいる理由として、日本とは仕事に対する価値観や文化が異なる点が挙げられます。
ノルウェーの企業では従業員それぞれに裁量が与えられているケースが多く、個々の状況や希望に合わせて労働時間を自由に設定することが一般的です。

まとめ

この記事では、フレックスタイム制の仕組み・運用ルール・注意点について解説しました。働き方改革が進む日本ですが、フレックスタイム制を導入している企業はまだまだ少数です。少しでも多くの人が働きやすい環境になるよう、フレックスタイム制の導入を検討してみるのも良いでしょう。

監修者・植草 陽光

植草 陽光

日本製鉄株式会社⇒株式会社リクルート⇒株式会社Izul

1社目では製鉄所での生産管理、本社でのグローバル購買職などバックオフィス系の業務に従事。29歳で営業未経験でリクルートに入社し、地場大手会社の深耕営業を実施し入社半年で表彰を獲得。自身が転職を通じて人生を変えた経験から、Izulのビジョンに共感し、現在は同社のキャリアアドバイザー職として従事。

著者プロフィール

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株式会社Izulの広報チームが運用。20代〜30代の若手ハイクラス層から、圧倒的支持を獲得中。働き方や転職のコツなど、キャリアに役立つ情報を発信していきます。

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