業務委託契約は、企業間や企業と個人が一緒に仕事する上で結ばれる契約です。正社員の働き方とは大きく異なるため、違いや契約の特徴、注意点を知っておかなければなりません。この記事では、業務委託契約と正社員の違いから契約の特徴、業務委託契約に向いている人について解説します。
業務委託契約とは
発注者が業務遂行を外部の企業や個人に委託し、受託者が自己の裁量によって業務を行う契約です。企業側としては、雇用契約よりも教育に掛かる時間や人件費を削減できるため、近年需要が増えています。
働き手としては、勤務時間や稼働時間を決められておらず、働く時間や場所の自由度が高い点が魅力です。また、業務委託契約は企業間・企業と個人で締結できます。
類似する契約・雇用形態との違い
契約形態の違いを知らずに業務委託契約を結んでしまい、あとから困ることがないように、類似する契約・雇用形態との違いを理解する必要があります。ここでは、4パターンにわけてそれぞれの内容を解説します。
正社員雇用との違い
正社員雇用との違いは、労働者が受けられる権利を受けられない点です。正社員には労働法が適用され、有給休暇・雇用保険・健康保健・年金加入などの権利が保障されています。権利が保障される代わりに会社とは主従関係にあり、勤務時間や仕事の進め方に制約があるといえるでしょう。
業務委託の場合は委託された業務を行うことで対価を得るため、会社とは対等な関係です。ただし縛りがない代わりに、固定的な給与は発生しません。
派遣契約との違い
派遣契約との違いは、雇用関係と指揮命令関係の有無です。派遣社員は派遣元企業との間に雇用関係を持ち、派遣先企業との間には指揮命令関係があります。つまり、派遣元と労働者に雇用契約が存在し、派遣先企業の指揮指導のもと、業務に従事します。派遣社員は労働基準法・就業規則のいずれも適用されます。業務委託では、雇用関係・指揮命令関係・労働基準法などいずれも適用外です。
委任契約・準委任契約との違い
委任契約・準委任契約との違いは、報酬発生の基準が異なる点です。委任契約は、業務の「遂行」に対して報酬を受け取る形態です。契約期間中の業務全般に報酬が発生し、原則的に成果物の完成責任を負わない点が大きな違いです。委任契約では、行為の遂行によって生じた成果物の質や結果に責任を負いません。
業務委託契約の場合、成果物の品質が最初に取り決めた基準に達しなければ、報酬が発生しない可能性があります。また、委任契約は法律行為の事務処理、準委任契約は法律行為以外の事務処理を取り扱う場合に結ばれます。
フリーランス(個人事業主)との違い
フリーランス(個人事業主)が企業から業務を請け負う際、業務委託契約が締結されます。事前に業務委託契約を結んでおくことで、あとから受託した業務範囲で揉めるリスクを軽減できます。
委託する業務の範囲や成果物に求められる品質などの詳細が決まるまでは、契約を結ばない方がよいでしょう。仕事を獲得した後に細部を詰めて、適切な契約を結ぶように心掛けてください。
業務委託契約を結ぶことが多い職種
業務委託契約を結ぶことが多い職種は、デザイナー・ライター・プログラマー・エンジニア、などクリエイティブ関連の職種がほとんどです。
いずれの職種も成果物の品質を定めやすく、働く時間に縛られにくい点が特徴です。また、職種ごとに求められるスキルは異なりますが、個人の裁量を発揮しやすい仕事といえます。業務に関する知見やスキルによっては高収入を得られるため、企業から独立してフリーランスとして働く人も増えています。
業務委託契約で働くメリット・デメリット
業務委託契約で働くうえでは、雇用形態としてのメリット・デメリットも把握しておきましょう。ここでは、業務委託契約で働く主なメリット・デメリットについて解説します。
メリット
業務委託契約のもっとも大きなメリットは、時間や場所にとらわれず、得意分野の仕事に取り組めることです。あくまで成果物が報酬発生点となるため、いつ・どこで働いてもよい特徴があります。さらに、得意分野の業務のみを契約することで、自身の得意分野を活かした仕事に取り組むことができます。会社員として働く場合、不得意な仕事を依頼されても受けざるを得ません。しかし、業務委託であれば条件が合わない仕事は断ることが可能です。
また、業務に対する報酬が決まっているため、成果や収入が見えやすくモチベーション向上にもつながります。成果物の量が増えた分、収入も比例してアップするでしょう。働き方によって時間や場所、収入などの裁量をすべて自分で持てる点が、業務委託契約で働く魅力です。
デメリット
業務委託契約のデメリットは、自由度が高い分責任が大きく、トラブル発生時には自ら対応しなければならない点です。また、成果物を納品したあとに、求める基準に達していなければ追加対応を求められます。原則、基準に達するまで報酬は発生しないケースが多いです。
加えて、案件量が月によって変動するため、収入の浮き沈みが激しくなることも考えられるでしょう。仕事の受注から納品までの流れを自分で組み立てられれば、収入が安定しやすくなります。
ほかにも、国民年金の支払いや確定申告などの事務負担がある点もデメリットです。
業務委託契約で働く場合の注意点
業務委託契約で働く場合は、スケジュール・体調管理に注意しなければなりません。体調不良になったときに、会社員であれば有給休暇を取得できます。しかし業務委託の場合、休んでしまった分の報酬は発生しません。自分に適正な負荷を見極めてスケジュールを組む必要があります。
また、好きな仕事を選びやすい反面、意識的にチャレンジングな仕事をしなければ成長が止まってしまう可能性もあります。会社員であれば、次のステップへ進むための仕事を割り振られることから成長に繋がります。しかし業務委託の場合は、自己研鑽してスキルアップしなければキャリアアップは望めません。
業務委託契約で確定申告は必要?
業務委託契約で得た収入は、基本的に確定申告が必要です。業務委託契約で得た収入は、すべて自分で管理することになります。業務委託で得た収入から経費を差し引いた金額を申告しなければ、所得税額が決まりません。
経費には、業務に使ったパソコンの購入費用やインターネット使用料などを計上できます。そのため、適切な経費を差し引けば、支払う税金を節約することが可能です。会社員の場合、あらかじめ給与から源泉徴収や所得税が天引きされており、年末調整を行うことで、所得税を会社が申告してくれます。
確定申告が必要ないケースもありますが、要件として次の2つが挙げられます。
- 給与所得でない
- 年間所得(収益-経費)20万円以下
会社員がアルバイトなどの副業で得た収入は、給与所得となります。給与所得の場合は2ヵ所以上から報酬を得たことになり、所得税額を正しく計算するためには少額でも確定申告が必要です。
また、確定申告は年間所得が20万円を超えている場合に申告義務が発生します。そのため、年間所得が20万円以下の場合は申告が不要です。所得とは、得た収益から掛かった経費を差し引いたものを指します。
一例を挙げると、100万円の収益を得るのに90万円の経費が必要だった場合の所得は10万円となり、申告義務は発生しません。しかし、所得が20万円以下だったとしても、住民税の申告が必要な点に注意しましょう。
業務委託契約に向いている人の特徴
業務委託契約に向いているのは、以下に該当する人です。
- 自由な働き方が好き
- 自分自身で管理したい
- 強みや専門性を活かして収入を得たい
業務委託契約では、成果物の納品や品質に対して報酬が発生します。そのため、働く時間や場所に制限がなく、自分で働き方を決めることができます。働き方を自分で決められるため、仕事の内容やスケジュール・体調面のケアなどをすべて自分自身で管理する必要があります。また、自分の強みや専門性が取引先に認められれば安定的に仕事も受注できるため、高収入も見込めるでしょう。
業務委託契約に向かない人の特徴
以下の特徴に当てはまる人は、業務委託契約に向いていません。
- 自己管理が苦手
- プレッシャーに弱い
業務委託契約で働く場合、スケジュール・タスク管理など、自分ですべて調整しなければなりません。調整に失敗すると、自分だけではなく案件に関わる人に迷惑をかける可能性があります。さらに、自分を追い詰めすぎると、精神的な負担がかかるおそれもあるでしょう。
また、成果に対する責任が大きいため、プレッシャーに弱い人も不向きです。いずれかの特徴に当てはまる場合は、企業に属して正社員として働く方が安心感を得られるでしょう。
まとめ
業務委託契約は、自由度の高い働き方を選択できます。しかし、正社員には保障されている権利がない点や確定申告が必要になるなど、デメリットも知っておかなければなりません。働き方を自分で決めて働きたい場合や、スキルを活かしてみたい人は、注意点も理解した上でフリーランス(個人事業主)として働いてみてはいかがでしょうか。