サービス残業とは、雇用主から本来支払われるべき賃金が払われない時間外労働のことです。「サービス残業は違法なのか?」「サービス残業を断る方法について知りたい」など、さまざまな疑問を抱いている方は多いでしょう。本記事では、サービス残業の概要に関して、違法性や種類も含めて解説します。サービス残業を防止する方法も紹介しているので、「残業代の未払い分を請求したい」「正当な給与をもらいたい」と考えている方はぜひ参考にしてください。
サービス残業とは
サービス残業とは、就業時間外で発生する労働のことです。雇用主から本来支払われるべき賃金が払われないのもサービス残業の特徴です。そのためサービス残業ではなく「賃金不払残業」と呼ばれることもあります。残業と聞くと、終業時間を超えた際の時間外労働を想像する方が多いでしょう。しかし、始業前に業務を行った場合もサービス残業に含まれます。
サービス残業は違法?
結論、サービス残業は法律違反です。労働基準法37条には「労働者が法定労働時間を超えて働いた場合や休日労働をした場合は、割増賃金を払われなければいけない」と明記されています。
労働基準法37条を守らなければ「懲役6ヵ月以下又は、罰金30万円以下」に処せられる可能性があることを覚えておきましょう。
サービス残業に該当するパターン
ここでは、サービス残業に該当するパターンを5つ紹介します。
30分単位などで労働時間が区切られている
企業によっては、15分や30分単位で労働時間が区切られています。数分でも残業した場合、一定単位で残業時間を報告するところもあります。
そもそも労働時間は1分単位で報告・計算し、賃金が支払われなければなりません。1分の残業が発生しても給与面での大きな変化はありませんが、1分の残業が何年・何十年間も続くと大きな金額になるでしょう。
上記の状況が常態化している場合は、賃金は1分単位で支払う必要があることを伝え、交渉しましょう。
終わらない仕事を持ち帰っている
納期に間に合わないため仕事を持ち帰ったにもかかわらず、その分の賃金が支払われないケースもサービス残業にあたります。ただし、残業代が支払われるかどうかは、業務内容や状況などで変動します。例えば家の方が集中できるという理由で、納期が迫っていない仕事を持ち帰った場合はサービス残業と認定されにくいでしょう。
定時以降にタイムカードの入力ができない
企業によっては、定時以降にタイムカードの入力ができなくなります。また定時以降でも打刻できるものの、法定労働時間の終了時刻にタイムカードを押すように命じられる場合もあります。これを逆手にとり、打刻後に業務を与える企業もあります。
着替えや待機の時間が労働時間に含まれない
以下の時間に対して、残業代が支払われていない場合はサービス残業にあたります。
- 業務用の服に着替える時間
- 休憩中にもかかわらず電話対応をしなければならないため、デスクで待機する時間
- 休憩中でもお客さんが訪問した際に対応しなければならないため、オフィスで待機する時間
上記のケースは多くの方がサービス残業とは思っていないため見逃されがちですが、何らかの対応を迫られている時間は労働時間に含まれます。
就業前に仕事をする必要がある
サービス残業といえば、終業後も会社に残って仕事をするイメージがあります。しかし、始業時刻前の仕事も残業にあたります。始業前の業務はサービス残業に該当するといった認識が薄いため、見過ごされている場合が多いようです。
企業によっては、始業15分前の朝礼に参加するため早めに出勤しなければならない状況が常態化している場合もあります。これはサービス残業にあたるため、残業代が支払われていないのであれば、交渉することができます。
当たり前になっているサービス残業を終わらせるには?
上述したようにサービス残業は違法です。そのため、断ることも可能です。ここでは、違法なサービス残業を終わらせるための方法について解説します。
キッパリと断る
サービス残業を終わらせるためにまず実施すべきなのは「サービス残業はしたくない」と断ることです。サービス残業を断った社員の給与を減らす行為は違法になるため、断ることに対し後ろめたさを感じることはありません。断ってもサービス残業を強要された場合は、労働基準監督署に告発する手段も取れます。
過去のサービス残業の未払い分を請求する
残業代の未払い分を請求するのも、サービス残業を終わらせるための有効な手段です。未払い分を請求し、「サービス残業をさせると結局賃金を払わなくてはならない」と会社に分からせることで、今後の労働環境を改善できるかもしれません。未払い分も返ってくる場合があるため、金銭面での恩恵も受けられるでしょう。
未払い分を請求する際は、まず企業に相談しましょう。それでも事態が解決しない場合は、労働基準監督署に相談してください。具体的な相談方法には、メール・電話・直接訪問の3種類があります。
労働基準監督署に告発する
上述したように、サービス残業を断ったとしてもなお強要されたり、未払い分の請求に対応してもらえない場合は、労働基準監督署への告発が有効です。ただし労基署は、サービス残業の証拠がなければ動いてはくれません。相談する際は、出退勤表や給与明細、雇用契約書などの資料を用意しておきましょう。
労基署に告発する方法には、以下の3つが挙げられます。
- メールで告発する:労働基準関連情報メール窓口にメールを送る
- 電話で告発する:労働条件相談ほっとラインに電話する
- 訪問して告発する:最寄りの労基署に直接訪問して、告発する
ただし、メールや電話での告発はあくまで「相談」です。そのため、立ち入り調査の参考や解決方法のアドバイスにつながる程度かもしれません。
労基署に即動いて欲しい場合は、実名などを明かしたうえで申告しましょう。
自主的に残業すると会社が処罰されるケースも
自主的にサービス残業をしている場合でも、会社が処罰を受ける可能性があるので注意が必要です。たとえ本人の意思だったとしても、場合によっては「会社の指導監督下」の状態と判断され、会社が罰則を受けてしまいます。
上司からの評価を気にして、自主的にサービス残業している方もいるかもしれません。しかしこういった事態は、以下の悪循環につながります。
- 周りよりも長い時間働いている分過大評価される
- より多くの業務を任されるようになる
- 仕事が終わらずさらにサービス残業が増えてしまう
自主的なサービス残業は、会社に迷惑をかける可能性があることを理解しましょう。業務量が多くてサービス残業せざるをえない状況であれば、会社に相談することをおすすめします。
まとめ
サービス残業にはさまざまなパターンがあります。特に始業時刻より前から仕事を始めているにもかかわらず残業代が支払われていない場合や、着替えや待機の時間に対する賃金を受け取っていない場合は、そもそも会社側はサービス残業だと認識していない可能性があるので注意しましょう。
サービス残業を終わらせるためには、まず強要された時点でキッパリと断り、未払い分を請求しましょう。それでもサービス残業がなくならない場合は労基署に相談しましょう。繰り返しにはなりますが、サービス残業は違法であるため断ることが可能です。