ITインフラの普及によってリモートワークなどの働き方が多様化し、ビジネスにおいては必ずしもオフィスを設ける必要がなくなりました。このような状況下で近年注目を浴びているのが「バーチャルオフィス」です。この記事では、バーチャルオフィスの特徴やサービスの詳しい内容、活用するメリット・デメリットを紹介します。
バーチャルオフィスとは
「バーチャルオフィス(Virtual office)」とは、事務所の機能だけを借りられる仮想事務所です。住所や電話番号を借り、そこに事務所があるという体裁で名刺やWebサイトに記載したり、法人登記することができます。
働き方が多様化したことで、自宅やカフェなどさまざまな場所で仕事ができるようになりました。バーチャルオフィスは、事務所を借りるコストを抑えながら会社の住所を取得できるとして、起業したばかりの小規模会社や、個人事業主・フリーランスを中心に人気を集めています。
レンタルオフィスとの違い
バーチャルオフィスとレンタルオフィスの違いは、執務スペースの有無にあります。レンタルオフィスは机と椅子、棚、インターネット回線など、業務に必要な機器と環境が用意されており、実際に事務所が存在しています。一方でバーチャルオフィスは仮想の事務所なので、実際の事務所は存在せず、執務スペースはありません。
シェアオフィスとの違い
シェアオフィスとバーチャルオフィスとの違いは、レンタルオフィスと同じく執務スペースの有無にあります。シェアオフィスは、1つのオフィスを複数の個人・企業がシェアして使用します。デスクごとに企業のスペースが区分けされていて、それぞれ別々の業務を行なっているイメージがわかりやすいでしょう。
バーチャルオフィスのサービス内容は?
ここからは、実際にバーチャルオフィスのサービス内容について詳しくみていきましょう。
基本プランに含まれるサービス
バーチャルオフィスの基本プランに含まれていることが多いサービスは、次の通りです。
・法人登記に記載できる住所の貸出
・個人専用電話番号の貸出
・郵便物の受け取りや転送
・会議(打ち合わせ)スペースの貸出
上記のうち、「郵便物の受け取り・転送」と「会議(打ち合わせ)スペースの貸出」は、サービス次第で有料プランになる場合もあります。
有料オプションのサービス
バーチャルオフィスにおける有料オプションとして、次のサービスが挙げられます。
・来客対応
・社名表示
・電話転送
・受付
バーチャルオフィスの住所を法人登記したり、Webサイトなどに掲載したりしている場合、営業や融資審査の銀行員などが訪問してくる可能性があります。バーチャルオフィスの受付・来客対応サービスには、自身がその住所で業務をしていなくても常駐するスタッフが代わりに受付や来客対応をしてくれるため安心です。
また、ビルのエントランスにある案内板に社名を表示してくれるサービスもあり、オフィスに訪問したお客様のイメージアップを期待できるでしょう。前述の通り、サービスによっては郵便物の受け取りや会議スペースの貸出が有料オプションになっている場合もあります。そのため、契約前にしっかりと内容を確認しておくことが大切です。
バーチャルオフィスで起業するメリット
個人事業主やスタートアップ企業の経営者を中心に、バーチャルオフィスの需要は拡大しています。ここでは、起業時にバーチャルオフィスを利用するメリットについて詳しくみていきましょう。
初期費用を抑えられる
通常のオフィスを借りる場合、多額の初期費用を準備しなければなりません。一方、バーチャルオフィスであれば、安くて数千円、高くても数万円程度の費用で事業用の住所を使用できます。初期費用を大きく抑えられるため、資金的に余裕のない方に最適です。
すぐに契約して拠点を構えられる
通常のオフィスは手続き完了までに数週間程度を要し、契約してから実際に拠点を構えるまでに時間がかかります。バーチャルオフィスであれば、契約後に最短即日で拠点を構えることができます。急いで利用したい方や、スピーディーに事業展開したい方には適しているでしょう。
場所によってはブランディング効果を得られる
バーチャルオフィスの場合、賃料が高い丸の内や大手町、六本木、銀座、渋谷といった人気エリアも安く利用できます。そのため、利用するバーチャルオフィスの場所によっては、ブランディング効果も得られるでしょう。また、東京にあるバーチャルオフィスであれば、「03」からはじまる電話番号も使用できます。
自身のプライバシーを保護しやすい
オフィスの開設コストを抑える方法としては、自宅をオフィスにするのも効果的です。ただし、自宅をオフィスにすると、名刺やホームページなどにプライベートな情報を開示する必要がでてきます。バーチャルオフィスであれば借りている住所をそのまま使用できるため、プライバシーを保護しやすいというメリットがあります。
バーチャルオフィスを利用する際の注意点
バーチャルオフィスを利用するときには、覚えておきたい注意点がいくつか存在します。実際にバーチャルオフィスを借りてから後悔することがないように、注意すべきポイントについてみていきましょう。
運営会社によってサービスに差がある
バーチャルオフィスのサービス内容は、運営する企業によって特徴や充実度が大きく異なります。「法人登記が可能か」「来客対応サービスはあるか」など、自分にとって必要なサービスを受けられるかは、自身で事前に調査しなければなりません。
一部の業種では会社住所として登録できない
一部の業種では、バーチャルオフィスを会社住所にした法人登記ができません。そのため、自身の業種に設けられた条件を確認し、バーチャルオフィスでも問題ないかを判断する必要があります。下記の業種で開業を検討している場合は特に注意が必要です。
・不動産業
・建設業
・職業紹介業
・人材派遣業
・税理士、弁護士などの士業
・探偵業
・古物商
例えば不動産業であれば、宅建業免許取得条件に事務所機能を備えた「個別スペース」が必要です。また、建設業は請負契約の見積りなどを行う際に、実体のある事務所がなければ許認可を受けることができません。
検索すればバーチャルオフィスと知られてしまう
住所をインターネットで検索すれば、バーチャルオフィスであることはわかります。そのため、独自のオフィスを構えていないことに対し、悪いイメージを持たれるケースも考えられます。ビジネスにおいて信用面でデメリットになる可能性を考慮しつつ、利用するかどうかを検討しましょう。
まとめ
この記事では、バーチャルオフィスの概要についてわかりやすく解説しました。バーチャルオフィスは実体のある事務所ではなく、住所や電話を借りることができるサービスのひとつです。初期費用を抑えつつ少ないリスクで起業できるので、スタートアップ企業や個人事業主に人気が高いのが特徴です。利用においてはメリット・デメリットをしっかりと見極めたうえで、自身が運営する業種やビジネスに合ったオフィスを選ぶようにしましょう。