自己都合とは異なり、会社側の事情で解雇されてしまうことを会社都合退職といいます。自らの意思に反して雇用契約が終了してしまうため、会社都合退職に対して危機感を抱いている方も多いでしょう。実際に多少の利点はあるものの、やはり会社都合退職には懸念点の方が多い傾向にあります。
今回は、会社都合退職に挙げられる主な理由や自己都合退職との違い、会社都合退職をする際に覚えておきたいポイントについて解説します。会社都合退職で懸念される点や、利点ともいえる部分にも触れているので、ぜひ最後までご覧ください。
会社都合退職とは
名前の通り、従業員側ではなく会社側の都合で雇用契約を解消することが会社都合退職です。一般的には「解雇」が例に挙げられますが、会社都合退職には他にもさまざまな理由が該当します。
以下では、主な会社都合退職の理由を挙げています。
会社都合による退職の主な理由
会社都合退職に該当する退職理由には、主に以下が該当します。
- 解雇
- 倒産
- 事業所の廃止
- 人員整理
- 退職奨励
あわせて、経営の動きなどが変化したことにより、契約内容と異なる労働条件での勤務を余儀なくされた場合の退職も、会社都合退職に該当します。給与の大幅な削減や長時間の残業、各種ハラスメントでの退職も会社都合退職として認められます。近年は、新型コロナウイルスの感染拡大によって業績が悪化し、人員整理による会社都合退職を余儀なくされる人も増えています。
会社都合退職の利点と懸念点
会社都合で退職を余儀なくされることに対して、ネガティブなイメージを持っている方がほとんどではないでしょうか。確かによくない側面が目立つものの、会社都合退職には多少の利点があることも覚えておくとよいでしょう。
会社都合退職の利点
会社都合退職は、自己都合退職と比べて失業保険を受け取るまでの期間が短いという利点があります。自己都合退職の場合、失業保険を受け取るまでには3ヶ月かかることが一般的です。しかし、会社都合退職の場合はハローワークに申請すれば、最低7日間の待機期間を経てすぐに失業保険が支給されます。また、自己都合退職に比べて失業保険の金額が多く、給付期間が330日と長いことも利点です。
会社都合退職の懸念点
自分のタイミングで退職できないことで生活に影響が出るのはもちろん、転職活動にも影響が及ぶことが懸念点として挙げられます。職歴に会社都合退職があると、面接官が「どういった事情なのか」と聞いてくる可能性があるでしょう。倒産などの理由であれば深掘りされにくいものの、解雇の場合はなぜ解雇されたのか聞かれるかもしれません。面接時により入念な対策が必要になることが、会社都合退職による懸念点といえるでしょう。
自己都合退職との違い
会社都合退職と自己都合退職とは、どのような違いがあるのでしょうか。
会社都合との主な違い
ここまででも触れているように、退職に至るまでの理由が会社側・自分側どちらにあるかという違いがあります。それによって失業保険を受け取れる期間や金額など、金銭面での違いも生じます。また、自己都合退職の場合、退職金が減額される可能性があります。対して会社都合退職だとその可能性は低くなるでしょう。
自己都合退職に挙げられる主な理由
以下に挙げる自己都合退職の理由を、会社都合退職の理由と比較して違いを把握しておきましょう。
- 結婚
- 妊娠・出産
- 家族の介護
- 転職
- 起業
- 家業を継ぐ
- 資格の勉強に力を入れる
- 大学・大学院への進学
- 留学
- 懲戒解雇
基本的には、自らの意思で退職することが自己都合退職に挙げられます。懲戒解雇に関しては、自分が犯してしまったことに対するペナルティとして科せられるものであるため、会社都合退職には該当しないため注意しましょう。
また、会社都合退職に該当するハラスメントなどは、ハラスメントと判断できない微妙なラインのものであった場合、自己都合退職になってしまう可能性があります。ただし、明らかな証拠となるものを用意できれば、会社都合退職に変えることは可能です。
自己都合退職の利点・懸念点
自己都合退職には、転職活動の際に深掘りされることが少ないという利点があります。「一身上の都合」と記載するだけで、大半はそのまま面接が進んでいくでしょう。ただし、極端に転職回数が多かったり、転職までの期間が短かったりすると、追求される可能性はあります。
対して、失業保険を受け取るまでに3ヶ月かかる点が、自己都合退職するうえでの懸念点です。7日間の待機期間もあるため、失業保険を受け取るまでの期間は実質3ヶ月と7日ほどです。会社都合退職であれば待機期間のみで受け取れます。まとまったお金がすぐ必要になる場合は、収入がしばらくなくなってしまうことは大きなデメリットとなるでしょう。ただし、事業所の移転や医師の推奨による退職の場合など、止むを得ない事情の場合は自己都合退職でも失業保険の給付が早まる可能性があることを覚えておきましょう。また、退職金が減額されやすいのも、自己都合退職において懸念される観点です。
会社都合退職を受けるうえで押さえたいポイント
最後に、会社都合退職を受けるうえで押さえておきたいポイントを、自己都合退職と比較しながらみていきます。ここまでで触れた内容の振り返りとしても活用できるので、ぜひ参考にしてください。
失業保険
会社都合退職は、自己都合退職と比べて失業保険を受け取るまでの期間が短い傾向にあります。退職後の資金繰りなど、以下を参考にしておくとよいでしょう。
会社都合退職 | 自己都合退職 | |
---|---|---|
給付開始 | 7日後 | 3ヶ月と7日後 |
給付日数 | 90〜330日 | 90〜150日 |
給付制限 | 無 | 有 |
退職金
退職金の金額は、勤続年数などに応じて決まるのが一般的です。会社都合退職の場合は、減額されることなく支給されます。ただし、自己都合退職の場合は会社都合退職と比べて少なくなることがほとんどです。退職金の金額や減額の割合などは、就業規則を確認しておきましょう。会社都合退職にもかかわらず会社規則の金額よりも減額されていた場合は、会社関係の金銭トラブルに対応してくれる専門家などに依頼して対策を練ってもらいましょう。
履歴書への書き方
「一身上の都合により退職」と記載する自己都合退職に対して、会社都合退職の場合は「会社都合により退職」と記載します。会社都合退職には解雇や倒産、人員整理などさまざまな理由が挙げられます。ただし、履歴書にはそのすべてを詳細に書く必要はありません。「会社都合により退職」とだけ記載し、面接時に詳細を聞かれた場合に直接回答すると認識しておきましょう。
まとめ
今回は、会社都合退職の定義や主な理由について解説しました。
解雇や倒産、人員整理など、あくまで会社側の都合でやむを得ず退職するのが会社都合退職に該当します。結婚や出産、転職や起業などは自己都合退職になるため注意してください。ただし、極端に変化した労働環境やハラスメントによる自己都合退職は、会社都合退職として認められることもあるでしょう。
また会社都合退職と自己都合退職には、失業保険や退職金、履歴書への書き方といった点で違いがあります。今回紹介した内容を参考にそれぞれの違いを把握し、転職活動や失業保険の手続きをスムーズに進めてください。