「リストラ」と聞くと、一種のペナルティのようなイメージを持っている方がほとんどでしょう。しかし、リストラの明確な要件や種類について、把握しきれていない方もいるかもしれません。
今回は、リストラとはそもそも何なのかという疑問を解消します。仕事をするうえで重要な、リストラ対策やリストラの多い企業についても触れているので、ぜひ最後までご覧ください。
リストラとは
「restructuring」の略称であるリストラは、本来は「再構築」を意味する言葉です。企業の吸収合併や再編、経営における革新を示すものでした。しかし、次第に「人員削減」のイメージが強くなり、どちらかというと後ろ向きな表現として使用されるようになりました。特に昨今では、経営悪化の影響による解雇や不採算事業のダウンサイジングによる「整理」の意味合いとして定着しています。
リストラの要件
企業がリストラを有効に実施する際は、以下にあげる4つの要件を満たす必要があります。「なぜリストラに至るのか」という疑問を解消するために覚えておくべき観点であるため、ぜひ参考にしてください。
人員整理の必要性
- 企業を維持・存続するために人員整理が必要かどうか
- 人員を解雇する以外に打開策がないか
被解雇者選定の合理性
- 勤務成績・企業への貢献度に至らない点がないか
- リストラ対象の従業員の選定に客観性・合理性があるか
手続きの妥当性
- 労働協約に解雇協議事項・解雇同意条項があるか
- 解雇が無効と判断される理由(必要性・時期・方法)がないか
解雇回避努力義務の履行
- 解雇以外の方策をすでに実施しているか
- 経営悪化を回避する方法が解雇以外にないか確認したか
リストラにはいくつか種類がある?
リストラは、以下4つの目的別に分類されます。企業がなぜリストラに踏み切るのか、先ほどあげた要件とあわせて把握しておきましょう。
- 人員削減・人員整理(希望退職・転籍・整理解雇)
- 労働条件切り下げ(給与のカット・従業員の契約切り替え)
- 便乗型(リストラが一般化した現代の風潮につけ込み、不要と判断した従業員を退職させる)
- 攻撃型(企業の競争力・評価・格付けを向上させ、収益を上げる体質を作るための解雇)
クビとの違い
クビは、企業に対して直接的な損害を与えたことで懲戒解雇されることです。経営悪化など、企業側の事情による人員削減とは大きく異なることを覚えておきましょう。どちらも労働契約は解除されるものの、発生の原因に違いがあります。
リストラと混同されやすい解雇
リストラも解雇の一種ではありますが、そのほかの解雇と混在しないように注意しましょう。ここでは、リストラと混同しやすい解雇の種類をいくつか紹介します。
普通解雇
勤務態度や適性の欠如といった、従業員に原因がある場合に実施される解雇です。いわゆる「クビ」に該当します。企業をよりよくするために実施されることの多いリストラとは異なり、従業員個人に原因がある解雇であると認識しておきましょう。
懲戒解雇
企業の秩序に著しく反していると判断された場合に、履行されるのが懲戒解雇です。不正を働いた場合など、普通解雇に該当する事由以上の理由で解雇されるのが懲戒解雇に該当します。法律で濫用が禁止されている解雇でもあるため、懲戒解雇を言い渡されるのはよほど企業に対して不利益を与えた場合といえます。
リストラ対象になった場合の対策
一度リストラを言い渡されてしまうと、よほどのことがない限り覆せません。しかし、リストラ対策につながる知識を得て対策することで、リストラされずに済む可能性があります。ここでは、さまざまな観点からリストラ対策について解説します。
リストラされたときにすべきこと
リストラされた際にすべきことの選択肢には、企業に抗議するかいっそ転職してしまうかの2パターンがあります。
原則、リストラされたことに納得いかないからといって、企業に抗議することは不可能です。倒産などの理由に該当しないのであれば、企業は従業員を一方的に解雇することはできません。リストラを言い渡されることは「企業側が熟考のうえ行き着いた最善策」と認識しておきましょう。ただし、明らかに不当解雇だと判断できる場合は、なぜリストラに至ったのかその理由を明確にするといった意味で、企業に対して抗議できます。不当解雇されたと認められれば、裁判を起こせる場合もあります。リストラに至るまでの経緯も含めて、正当性がない場合以外は抗議できないと認識しておきましょう。
とはいえ、企業に対して抗議したり、裁判を起こしたりするのは時間も金銭的負担もかかります。精神的負担も大きいため、いっそ転職を検討することもおすすめです。納得できないリストラを言い渡すような企業に残り続けることができたとしても、わだかまりが残るでしょう。「自分とは縁がなかった」とポジティブに捉え、前向きな気持ちで働ける企業に転職することを検討してもいいかもしれません。
リストラされない人材になるためには?
そもそも、リストラ対象の人材にならないことを意識すれば、リストラを回避できるでしょう。自身の仕事ぶりを積極的にアピールしたり、目に見える成果を出したりすることで、リストラ候補に入れられずに済むでしょう。仕事ができる人をわざわざリストラするような企業は少ないので、まずは自身がリストラにあたる人材にならないために努力しましょう。
上司に好かれるように、積極的にコミュニケーションを取ることも大切です。ただし、上司と自身の相性の問題もあります。好かれることを意識しすぎて成果が伴わなければ、逆効果になってしまうため注意してください。また、職場で孤立しがちな人材は、チーム単位で仕事をする企業において不利益な人材と判断されやすいでしょう。チームとしての業務を滞らせる人材だと判断されないよう、同僚とも積極的にコミュニケーションをとって孤立しないよう意識してください。
不当解雇について知ることが大切
企業側の都合で、一方的に解雇することを不当解雇といいます。労働基準・就業規則を守らず、不当な理由で解雇される場合が該当します。不当解雇であるかどうかは、身に覚えのない理由での解雇であったり、解雇予告がなかったりといったケースが当てはまります。
先ほども触れたように、不当解雇された場合は企業に対して抗議できます。なぜ解雇されたのか明確にならない場合は、不当解雇である可能性が高いので抗議を検討してもいいかもしれません。
リストラを行いやすい企業の特徴
リストラされやすい企業には、以下のような特徴があります。
- 経費削減に対する意識が急に芽生えた
- 賞与・手当が急に減額された
- 企業の雰囲気とは異なった人材が人事部に配属された
- 退職勧奨がスタートした
- 不祥事が発生した
ここで挙げた特徴に当てはまる企業は、リストラを行う可能性が高いかもしれません。先ほど紹介したリストラ対策を実施するタイミングを誤らないよう、ここで挙げた特徴も理解しておきましょう。
まとめ
今回は、リストラの概要や要件、種類について解説しました。リストラと混同しやすい解雇とあわせて、覚えておきましょう。万が一リストラ対象となった際は、本記事で挙げた対策を実施しましょう。リストラされた場合の対処法だけでなく、リストラされない人材になるための意識も大切です。
本記事では、リストラを行いやすい企業の特徴にも触れています。自身のキャリアにおける障害を発生させないよう、本記事で触れているリストラの内容を把握しておきましょう。