さまざまな視点での業務効率化を目的に、BPOの導入を検討する企業が増えています。BPOについて知ることで、転職活動における企業研究にも役立ちます。今回はBPOの概要に触れながら、現状や今後の対象業務、BPOの効果を高めるポイントやメリット・デメリットについて紹介します。
BPO事業とは
BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング・Business Process Outsourcing)とは、業務プロセスを外部へ一括して委託するアウトソーシングのことです。人事や経理、受付などの「バックオフィス」に加え、コールセンター・ヘルプデスクなどが対象になります。BPOを導入することで、企業のコア事業にリソース・費用を集中でき、競合優位性を向上させられます。
BPOの種類
BPOの種類は、以下の2種類があります。
IT分野 | 非IT分野 |
・IT関連分野のアウトソーシング ・社内システム・クラウドサーバーの運用やヘルプデスクが該当 | ・IT関連分野に含まれない業務 ・経理・人事・コールセンターなどが該当 |
アウトソーシング・シェアードサービスとの相違点
BPOと混在しやすいものに、アウトソーシング・シェアードサービスが挙げられます。それぞれの違いは以下の通りです。
アウトソーシングとの相違点 | シェアードサービスとの相違点 |
人手不足や繁忙期を理由に、業務の一部を一時的に外部へ委託するアウトソーシングに対し、BPOはプロセスごとにまとめて外部へ委託する | 社内・グループ企業内に分散している業務を一箇所に集約して自社内で解決するシェアードサービスに対し、BPOは外部へ業務を委託する |
BPO事業の現状と今後
ここからは、業務プロセスの委託という点で注目されているBPOの現状や今後を、注目される理由や市場規模、将来性の視点から解説します。
BPOが広まっている背景
BPOは、深刻な人材不足を理由に注目されています。昨今の日本企業のなかには、人材不足を解消しきれないことで経営改善ができず、倒産につながるケースもあります。BPOの活用で専門性を有した外部業者と連携することで、自社で採用をしなくても業務効率化が実現可能です。慢性的な人材不足に悩まされている企業の課題解決に、BPOが有効であることから注目度が高まっています。
市場規模・将来性
BPO業界の市場規模は拡大傾向にあります。業務の効率化や人件費削減の需要が高まる中、新型コロナウイルスによりさらに需要が高まったとされています。「株式会社矢野経済研究所」が発表した「BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場に関する調査(2022年)」によれば、2021年におけるBPOサービスの市場規模は約4.6兆円でした。市場規模の拡大から、BPO業界は将来性も期待できるといえます。
参考:株式会社矢野研究所|BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場に関する調査(2022年)
BPO事業の対象業務
ここからは、BPO事業の対象になる5つの業務について解説します。BPOがどのような業務と関連するか知ることで、企業研究にも役立つでしょう。
人事
BPO事業における主な人事部門の業務は、主に以下の7つです。
- 給与・賞与計算
- 社会保険
- 年末調整
- 福利厚生
- 採用活動の代行
- マイナンバー管理
- ペーパーレス対応
人事に関連する業務を委託しつつ、プロのノウハウを自社に取り入れることが、BPO事業を利用する利点です。
経理
BPOの対象となる経理の仕事は、主に以下の6つです。
- データの入出力
- 取引先への請求・支払
- 予算管理
- 債権・債務管理
- 決算業務
- 利益・収益の集計
大量のデータ処理を行う経理部門においては、BPOの導入により従業員の負担軽減が期待できます。また人員配置の最適化や、正確性の高い処理も実現可能です。
総務
以下に挙げる総務の仕事も、BPOの対象になります。
- 受付業務
- 備品管理
- 文書管理
- オフィス移転・レイアウト変更の手配
- 社用施設の管理
- 社内インフラ・情報システム整備
いわゆる「オフィス管理業務」全般を委託できるのが、BPOの特徴です。
営業・マーケティング
以下の例のような、各種営業業務を委託できるのも、BPOの特徴です。
- 提案資料作成
- スケジュール調整
- 見積書作成
- 価格調整
- 取引先マスタ登録
- 電話対応
- 与信
- DM発送
- 契約書作成
- 契約締結
- 納品書発行
- 検修処理
- 請求書発行
- 伝票処理
- 入出金管理
- 返品・クレーム対応
- 備品発注管理
- 来客対応
- 問い合わせ対応
営業活動に関連するさまざまな領域を、BPO導入により効率化できます。また、BPOは間接業務のみではなく、市場調査・販売戦略の策定といったマーケティング業務にも活用できるのが特徴です。
コールセンター
BPOへ委託できるコールセンター業務は、インバウンド・アウトバウンドに分類されます。コールセンターに関するノウハウが少ない企業にとっては、BPOによりノウハウの不足分をカバーできるのが利点です。
インバウンド | アウトバウンド |
・商品、サービス受注 ・カスタマーサポート ・予約、問い合わせ対応 ・ヘルプデスク | ・テレマーケティング ・サービス案内 ・セールスアポイント ・既存顧客への新規提案、サポート |
BPOの効果を高めるポイント
BPOの効果を最大限高めるには、まずBPOの導入目的を明確にする必要があります。なぜなら、特定の領域に特化したノウハウ・スキルを有しているBPO業者の良さを自社に取り入れることで、自社にどのようなメリットがあるのかを理解する必要があるからです。
BPO導入の目的を明確にしたうえで、社内の問題を洗い出すことも必要です。BPO業者が導入時に行うヒアリング・事業構造の分析に頼らず、企業内でも課題を正確に把握することでBPO業者との認識の相違がなくなることが期待できます。
また、そもそも外部に依頼しても問題がない業務かを分析することも大切です。目的・課題を客観的に分析し、BPO業者との認識を統一することがBPOの効果を高めるポイントです。
BPO事業のメリット・デメリット
ここでは、BPO事業と連携することでどのようなメリット・デメリットがあるのか解説します。
メリット
企業内の経営資源を、コア業務へ集約できるのがBPO事業のメリットです。BPOの導入で定型的な業務の工数削減が可能になり、コア業務に人材・資金・時間を集約できます。
専門的なノウハウの活用を通じた業務品質の向上につながるのも、BPOによるメリットです。マネジメント・教育といった業務における処理速度や正確性を、BPOの利用により高められます。
また、既存業務のフロー整理による標準化・効率化をBPO事業との連携で実現することも可能です。業務の標準化・効率化で、教育コストの削減にもつながります。
デメリット
BPO事業を利用する際は、委託に向けて準備期間と費用がかかることを認識しておかなければなりません。効率化のためにBPO事業を取り入れたくても、準備期間と費用をかけられなければ、実現は不可能です。
BPO導入にあたって、セキュリティリスクへの対策を施さなければならないことも覚えておきましょう。導入したものの効果を得られなかった場合、再度内製化する際の負担がかかる可能性も視野に入れておく必要があります。
体制を頻繁に変更する企業は、BPOの導入には適していません。頻繁に体制が変わる企業においては、業務ノウハウの蓄積や進行状況の把握といった視点で、かえってBPO導入がデメリットになることがあります。
まとめ
BPOを導入している企業は、業務効率化や標準化への意識が高い企業といえます。転職先を検討するにあたって、BPOを活用した体制構築を行っているかは、自身の働きやすさにもつながる重要な要素です。本記事で紹介した内容でBPOについての理解を深め、企業研究に役立ててください。