セールスイネーブルメントは、営業組織の強化および改善を目的とした取り組みです。本記事では、セールスイネーブルメントの活用メリット、導入プロセス、および実際の企業事例を詳細に解説します。営業力を向上させたい、または売上を増加させたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
セールスイネーブルメントとは
セールスイネーブルメントとは、営業組織を強化し、継続的な成果を目指す取り組みです。このコンセプトは元々1990年代にアメリカで生まれましたが、現在では多くの日本企業でも注目を集めています。営業に関わる人材育成・オペレーション・マーケティングなどを部門ごとに管理するのではなく、全社的に一貫して取り組むことで、営業担当全員のスキルアップを目指します。
セールスイネーブルメントが注目される背景
セールスイネーブルメントが注目されている背景として、営業活動が属人的になっている点が挙げられます。日本の多くの企業では営業担当者ごとに営業方法やスキルに差があるため、成果に偏りが生まれやすい点が特徴です。しかし、セールスイネーブルメントを導入することでノウハウを共有できるようになるため、組織全体で営業活動の効率化が期待できます。そのため、売上を拡大させたい成長企業などを中心に近年ニーズが高まっています。
セールスイネーブルメントを導入するメリット
セールスイネーブルメントを導入することで、多くのメリットが享受できます。以下では、代表的なメリットを3点紹介します。
営業活動を効率化できる
セールスイネーブルメントの導入によって、営業活動や人材育成のノウハウを仕組み化できるようになります。そのため、チームの現状に合わせた教育を実施しやすくなり、組織全体での営業活動の効率化が可能です。また、成果を上げている担当者のスキルを共有できるため、営業活動の属人化を防ぐことにもつながります。
営業とマーケティングの連携を強化できる
セールスイネーブルメントを取り入れることで、営業活動とマーケティング活動で得たデータの連携や情報共有が可能です。それぞれの部門の連携が強化されることで、マーケティングの内容を営業活動に活かしやすくなります。その結果、優良な顧客にアプローチする機会が増えることが期待できます。
成果を可視化しやすくなる
セールスイネーブルメントによって営業活動が数値化されるため、成果を視覚的に見ることが可能になります。営業に関する施策の効果が数値として現れることで、定量的な分析がしやすくなり、課題の発見や改善が効率的に行えるようになります。さらに、営業活動に対する評価基準が明確になるため、各担当者のモチベーション向上が期待できる点もメリットです。
セールスイネーブルメントを導入する際の注意点
セールスイネーブルメントにはさまざまなメリットがありますが、新しい仕組みの導入時には懸念点も付き物です。ここでは、主な注意点を2つ紹介します。
従業員の負荷が一時的に増加する
セールスイネーブルメントの導入によって業務内容やフローの大幅な変更が想定されるため、新体制に慣れるまでは多くの従業員が負荷を感じやすくなります。さらに、新しいツールやシステムの導入に伴って社内研修が必要になる場合もあるため、通常業務に割く時間が一時的に減ってしまう点も懸念されます。
追加コストが発生する
セールスイネーブルメントに取り組む際は、営業活動の最適化のために専用ツールを新たに導入する必要があります。どうしても追加コストが発生するため、慎重に検討することがおすすめです。また、システムメーカーによって機能や価格に大きな差があるため注意してください。
セールスイネーブルメントを導入する流れ
ここでは、企業にセールスイネーブルメントを導入する際の流れを解説します。必要なステップを順に追っていくことで、スムーズな導入が期待できるでしょう。
1:担当者を選定する
まずは、セールスイネーブルメント導入に関する担当者の選定が必要です。担当者は営業職から選ぶのが一般的ですが、マーケティングに関わる業務も多いため、マーケティングの知識もある人が適しています。また、業務内容はデータの収集から効果測定まで多岐にわたることから、責任をもって取り組める人材を選ぶことが大切です。
2:営業データを収集・整備する
これまでの営業データを収集するには、営業担当者の活動や商談の進捗状況を管理できるSFA(セールス・フォース・オートメーション)や、顧客管理を一元的に行えるCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)などのツールが効果的です。営業フローや営業活動の管理項目を設定したうえでこれらのツールを導入し、集めた営業データの環境整備を行いましょう。
3:プログラムを開発・提供する
好成績を上げている営業担当者のデータを分析したら、他の社員にもノウハウを共有できるようなトレーニングプログラムの開発に着手しましょう。この際、自社製品の特徴や強み、顧客のニーズについて深く理解していることが必要不可欠です。自社の現状に合ったプログラムを開発できたら、実際に担当者へ提供してフィードバックを得る段階に移ります。
4:評価制度を整える
プログラムの開発と同時に、セールスイネーブルメント導入に適した評価制度を整えておくとよいでしょう。これまで設定していたKPIを見直し、単純な売上の数字だけでなく、営業に至るまでのプロセスを評価する仕組みづくりが重要です。その他にも、営業ノウハウを組織全体に共有するための働きかけも評価対象として認められます。
5:効果測定を実施する
営業担当者にトレーニングプログラムを提供したあとは、施策ごとにデータを取りまとめ、どのような効果が得られたか測定しましょう。あらかじめ設定しておいたKPIと比較し、目標まで大きな差が生じている場合は改善が必要です。それぞれの課題点を分析し、改善を繰り返すことでセールスイネーブルメントの実現につながります。
6:組織全体に共有する
トレーニングプログラムを通じて得られたノウハウを組織全体で共有することで、営業スキルの底上げが期待できます。SFAやデータ集約サービスなどを活用し、どの社員も閲覧できるような仕組みを整えておくとよいでしょう。ツールとして集約するのも効果的です。
セールスイネーブルメントの取り組み事例を紹介
企業活動においてセールスイネーブルメントを導入することで、業務効率を上げられるケースがあります。ここでは、セールスイネーブルメント活用の取り組み事例を3つ紹介します。
営業教育
営業教育にセールスイネーブルメントを取り入れることによって、研修の質を高めてより効果的な教育の実施が可能になります。成績の良い営業担当者のノウハウや考え方を共有すれば、営業職に必要な素質を効率よく身に付けられるようになります。また、研修後は受講者にアンケートを取り、その内容を反映させることで、営業教育の向上にも活用できます。
マーケティング
マーケティング活動にセールスイネーブルメントの考え方を取り入れると、顧客の流入経路と受注率との関係性を把握しやすくなります。受注率やその後の成約状況を分析することで、顧客が懸念を感じやすい部分をピックアップし、改善につなげられるようになります。また、効果の薄い施策を取りやめ、より売上に結びつきやすい流入経路を設計できるといった強みもあります。
採用活動
セールスイネーブルメントの導入によって、自社で成果を上げている人材の特徴や能力を可視化できるようになります。採用活動でそれらの素質を測れるような選考方法を実施することで、今後の活躍が期待できる人材の獲得に近づくでしょう。さらに、採用後の社員の活動を継続的に調査することで、より精度の高い採用活動の実現が可能になります。
まとめ
この記事では、セールスイネーブルメントについて解説しました。セールスイネーブルメントを導入することで、各営業担当者が蓄積していたノウハウを集約し、組織全体に共有できるといったメリットがあります。売上に悩んでいる企業の担当者は、ぜひ導入を検討してみてください。